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崎元 仁氏と岩田匡治氏がサプライズゲストで出演した,アマチュア楽団「星の調べ」による「ファイナルファンタジー タクティクス」演奏会レポート
この楽団は,「企画を決め,公表し,参加したい人を募集する」というちょっと変わったスタイルの楽団で,現在は,1997年に発売されたPlayStation用ソフト「ファイナルファンタジー タクティクス」(以下,FFT)の楽曲を交響曲にアレンジした演奏活動をしている。
2回目の開催となる今回は,FFTの楽曲から合計61曲がゲームの進行に沿った全5章仕立ての交響曲に落とし込まれ,見事な演奏が行われた。
なお主催者発表によれば,座席数1452席のところ1445人が来場したとのことで,ほぼ満員御礼の状態。約1500人が,3時間近くに及ぶ演奏を堪能したわけだ。
演目の詳細は,来場者のお楽しみということでここでは割愛する。なお演奏会のアンコール前には,なんと今回演奏された交響曲の原曲(つまりFFTの楽曲)を手がけた,コンポーザーの崎元 仁氏と岩田匡治氏がサプライズゲストとして登壇した。楽団のメンバーから事前に募った質問に対して,両氏が答えるコーナーが設けられたので,ここではその様子を紹介しよう。
崎元 仁氏 |
岩田匡治氏 |
──演奏会の感想について教えてください。
崎元 仁氏(以下,崎元氏):
素晴らしい演奏に聴き入ってしまいました。実は自分の曲を聴くのって,意外と辛いものがあるんですよ。もっとああしておけばよかった,こうしておけばよかったというのがあって,当時を思い出すことも多くて。でも今日は,本当に聴き入ってしまいましたね。
岩田匡治氏(以下,岩田氏):
皆さんのあまりの真剣な様子に,少しクレイジーなものを感じました。「ここまで演奏するのか」と。とても感動しつつもビックリして,今,いろんな感情がないまぜになっています。
崎元氏:
僕らは曲を書くときに,ほかの誰かが演奏することを考慮しないんです。
岩田氏:
それを,なんでここまで再現しようとするのか,と。やっぱり,おかしいとしか思えない(笑)。
崎元氏:
僕らの曲を演奏している人達がいると聞いたとき,最初は嬉しかったんですけれども,怒られるんじゃないかと不安な思いもありました。僕らは奏者の方によく怒られるんですよ,「こんなの弾けるか!」って。なので,今回も話を聞いたときは,「すいません」って低姿勢で(笑)。
──FFTの楽曲を生演奏で聴いた経験はありますか?
こういった演奏会の形では初めてです。あまり知られていないのですが,FFTの曲はCM 録りなどで生演奏しているんです。極めて短いもので,予算もあまりなく小規模でしたけれども(笑)。
岩田氏:
そのCM録りのときは本当に短かったんですが,それでもけっこう感動したんです。それなのに,今日は61曲も演奏してもらえるなんて……。
──曲のアイデアを思い浮かぶ場所やタイミングを教えてください。
岩田氏:
歩いているときですね。ウンウン唸っても出てこないのですが,歩いているとポッと浮かぶことがあります。
崎元氏:
僕は重度の引き篭もりで,半年くらい家から出なくても全然平気なんですよ(笑)。基本は,家の中でウンウン唸ってます。ただ,歩くのは確かにいいです。歩くと脳みそが少し動くじゃないですか。なので,僕は家の中を歩き回ったりしています。いつも使っている椅子の周りをグルグルと。半径1.5mくらいの範囲ですね(笑)。
──FFTほか,曲を手がけたゲームをプレイしますか?
崎元氏:
まったくやらないということはないです。その中で最後までできるものは,そんなに多くないですが。ただFFTは全部やりましたね。デバッグチームからけっこう高圧的に「やりなさい」「1秒でも長くやってバグを見つけなさい」と言われていたので(笑)。
岩田氏:
そのデバッグ期間の話ですが「すごく疲れたなあ」と。どよ〜んとした倦怠感を思い出します。それを思うだけで,いつでも徹夜明けの状態を呼び出せますよ(笑)。でも,ゲームができあがっていくのは面白いですね。毎回,感動します。
崎元氏:
デバッグは,曲の実奏チェックも兼ねているので,「ここで,この曲が使われるのか」と初めて知ることも多いですね。そういえば,FFTでは主人公のラムザのお兄さん(ザルバック)のシーンで使うために,美しい系の曲を書いたんです。でも実際にゲームで見てみたら,お亡くなりになるときに大爆発して(笑)。挙句に,周囲にいた僕の仲間のキャラまで吹っ飛ぶという,痛い思いもありました。
──この演奏会は女性キャラ「アグリアス」をテーマにしていますが,彼女の曲を作るとしたら?
崎元氏:
「闘う女性の曲」というリクエストはたまにあります。ベタで申し訳ないですが,高い音で,殺気立ってくるとキィキィいったりとか。
──最後に一言メッセージをお願いします。
お客様や演奏をしたいという方々がこれだけいらっしゃるということに,自分の及ぼす影響の大きさをあらためて実感し,ビックリしています。今日は本当に感動したので,ぜひこれからも活動を続けていってください。
崎元氏:
こんなに人が集まって,僕らも本当に嬉しいです。こういった誰かが曲を演奏しようという機会に,これだけ人が集まったのは本当に嬉しいです。作曲者としてだけでなく,僕自身が本当に感動しています。作曲者同士では「いつか演奏会ができたらいいよね」と,しばしば話をするのですが,それを実現してくれた発起人の蘭星さんには本当に感謝しています。2回といわず,3回4回と続けていってほしいです。
冒頭で述べたように,「管弦楽団:星の調べ」は現在FFTの楽曲演奏をメインに活動している。念のために書き加えておくが,この演奏会はスクウェア・エニックスに著作物利用許諾を取ったうえで行われているものだ。
その星の調べの第3回演奏会は,2010年10〜12月中,関西もしくは名古屋での開催が予定されている。交響曲FFTはまだまだ完成されていないそうで,今回は演奏されなかった原曲も,次回以降,編入される可能性があるとのこと。少々先の話になってしまうが,往年の名作といわれるFFTのファンや,興味を持った人は星の調べの今後の活動に注目してほしい。
「管弦楽団:星の調べ」公式サイト
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争
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