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ATI Radeon HD 4600
  • AMD
  • 発表日:2008/09/10
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「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
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印刷2008/09/10 13:01

レビュー

79ドルの最新GPUは,2008年秋のエントリーミドルクラス本命となるか

ATI Radeon HD 4670リファレンスカード

Text by 宮崎真一

»  AMDからリリースされた新世代のエントリーミドルクラスGPUは,低い価格と取り回しやすさが魅力的だが,肝心要のゲームパフォーマンスはどうなのか。AMDから入手したリファレンスカードを宮崎真一氏がさっそく評価する。AMDの勢いを感じる,その実力は要注目だ。


ATI Radeon HD 4670リファレンスカード
画像集#003のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
 日本時間2008年9月10日1:01PM,AMDはATI Radeon HD 4000シリーズのエントリーミドルクラスGPUで,「ATI Radeon HD 4850」の下位に位置づけられる「ATI Radeon HD 4670」「ATI Radeon HD 4650」を発表した。その概要は別途掲載しているニュース記事をぜひ参考にしてほしいと思うが,本稿では,製品発表に合わせてAMDから借用したATI Radeon HD 4670リファレンスカードを用いて,新世代の低価格GPUが持つ実力に迫ってみたいと思う。


コンパクトで外部給電コネクタのない

これぞエントリーミドル向けというデザイン


 ATI Radeon HD 4670リファレンスカードのカード長は実測で約167mm(※突起部除く)。200mmを軽く超えるミドルクラスグラフィックスカードが当たり前になりつつある昨今,このコンパクトさは印象的だ。AMDは本カードの消費電力を75W以下と謳っているが,それを裏付けるように,PCI Express用の補助電源コネクタは用意されていない。

左はHightech Information Systems製の「ATI Radeon HD 3650」搭載カード(写真中央)およびASUSTeK Computer製の「GeForce 9600 GT」搭載カード(写真右)と,カード長を比べたところ。ATI Radeon HD 4670リファレンスカードは,ATI Radeon HD 3650カードよりもわずかながら短い。右はカードを別の角度から撮影したもの。ご覧のとおり,PCI Express補助電源コネクタは用意されていない
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画像集#008のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
出力インタフェースはDVI-Iが1系統,DisplayPortが2系統。この仕様で各社の搭載カードが発売されるわけではないが,トピックとはいえる
画像集#007のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
GPUクーラーは小型だが,銅製フィンを採用しているため重い。そのため,GPU周囲の4点以外にも,数か所でネジ留めされている
 GPUクーラーは1スロット仕様のアクティブクーリングタイプ。TechPowerUp製のBIOSユーティリティ「Radeon BIOS editor」(Version 1.14)ではファン回転数を確認できなかったものの,筆者の耳で聞いた限り,動作音はそれほど大きくない。「静音タイプ」とまでは言えないが,「うるさい」まではいかないレベル,と述べれば,イメージは伝わるだろうか。

 GPUクーラーを外すと,GPUとグラフィックスメモリチップが姿を表す。開発コードネーム「RV730」と呼ばれていたGPUのダイサイズは実測で約12.3×12.3mmで,同16×16mmだった,開発コードネーム「RV770」ことATI Radeon HD 4850(や「ATI Radeon HD 4870」)と比べると一回り小さい。

 搭載するメモリチップはHynix Semiconductor製のGDDR3,「H5RS5223CFR-N0C」(1.0ns品)で,カードの両面に4個ずつ搭載することで,512MBというグラフィックスメモリ容量を実現している。

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GPUクーラーを取り外したところ。基本的に,グラフィックスカードベンダー保証外の行為となるので注意してほしい
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ATI Radeon HD 4670 GPU(左)と,リファレンスカードが搭載していたGDDR3メモリチップ(右)

ATI Catalyst Control Centerから「ATI OverDrive」で動作クロックをチェックしたところ
画像集#013のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
 なお,「ATI Catalyst Control Center」によると,動作クロックはリファレンスどおりとなるGPUコア750MHz,メモリ2GHz相当(実クロック1GHz)。ATI Radeon HD 4670は,上位モデルと同様に省電力機能である「ATI PowerPlay」をサポートするが,アイドル時の動作クロックはコア165MHz,メモリ500MHz相当(実クロック250MHz)まで下がるのを確認できた。
 なお,前出のRadeon BIOS editorでチェックする限り,アイドル時はGPUコア電圧が標準の1.25Vから0.90Vへ引き下げられるようだ。

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Radeon BIOS editor実行結果。これによると,アイドル時にはATI PowerPlayによってGPUコア電圧が引き下げられている
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こちらは「GPU-Z」(Version 0.2.7)実行結果。「GPU Clock」が異常であるなど,スペックを正しく認識できていない


価格帯で競合する3製品と比較

“HD 4650”相当のスコアも計測


 今回,ATI Radeon HD 4670リファレンスカードのテストに当たっては,GPUスペックが比較的似ている前世代のミドルクラスGPU「ATI Radeon HD 3850」,そして,価格帯で完全に競合すると推測される「GeForce 9600 GT」「GeForce 9500 GT」を用意。また,搭載するメモリチップがDDR2とGDDR3で異なるため,厳密な意味での比較には適さないが,ATI Radeon HD 4670リファレンスカードの動作クロックをATI Radeon HD 4650相当に下げた状態でも,参考までにテストを行うことにした。
 各GPUの主なスペックは表1のとおり。

※1 本文にあるとおり,ATI Radeon HD 4670の動作クロック変更を行っているため,今回のテストではGDDR3となる
※2 ATI Radeon HD 4670/4650は,AMDによる搭載グラフィックスカードの想定売価。残る3製品は9月10日時点の実勢価格
画像集#016のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か

 テスト環境は表2のとおり。テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠だ。
 なお,ATI Radeon用のグラフィックスドライバは,AMDからレビュワー向けに配布された「8.53-080805a-067864E-ATI」を利用した。原稿執筆時点における月例アップデートの最新版「ATI Catalyst 8.8」だと「Display Driver」のバージョンは8.522だったので,レビュワー向けバージョンは,“ATI Catalyst 8.9”のβ版か,それに近いものだろう。

画像集#017のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か

 なお今回は(今回も?),貸し出しスケジュールがタイトだったため,スケジュールの都合上,GeForce 9600 GTとGeForce 9500 GTのスコアは,一部を後者のレビュー記事から流用している。そのため,

  1. マザーボードのBIOSバージョンは最新版の0407ではなく0403となっている
  2. GeForceシリーズのグラフィックスドライバが「GeForce Driver 177.72 Beta」となっている
  3. GeForce 9600 GTのスコアは「標準設定」の1024×768/1280×1024ドットがAlbatron Technology製「9600GT-512X」,それ以外は今回新たに用意したLeadtek Research製「PX9600GT S-FANPIPE」のものになっている

以上の点に注意してほしい。3.については,どちらもリファレンスクロックで動作する製品なので,パフォーマンスに大きな違いは生じないと考えられるが,念のためお断りしておきたい。
 このほか,ZOTAC International製「ZOTAC GeForce 9500 GT AMP! Edition」はクロックアップ版なので,「NVIDIA System Tool」から動作クロックをリファレンスにまで落としている。

 というわけで前置きが長くなったが,以下,「文中とグラフ中のいずれでも『ATI Radeon』『GeForce』の名を省略したGPU名で表記する」と宣言して,テスト結果を見ていくことにしよう。


ゲームによっては

9600 GTに迫るパフォーマンスを発揮


 グラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の結果である。HD 4670は標準設定ではHD 3850に今一歩およばない。その一方で,9500 GTには大差を付けており,PCI Express用補助電源コネクタを要しないカードとしては最高性能を誇るGPUになりそうだ。
 また,高負荷設定では1600×1200ドット以上でHD 3850のスコアを上回っている点も興味深い。HD 4870やHD 4850で見られた高負荷に強い傾向は,HD 4670も変わらず踏襲している。

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 続いて,解像度1280×1024ドット,標準設定という,3DMark06のデフォルト状態におけるFeature Testの結果をグラフ3〜5に示したが,ここでは後二者に注目したい。
 頂点シェーダテストの「Complex」こそHD 3850に置いて行かれるHD 4670だが,同テストの「Simple」およびピクセルシェーダテストでは,シェーダプロセッサ数が同じHD 3850のスコアを上回った事実からは,HD 4000シリーズで施されたアーキテクチャの改良が,HD 4670にもきちんと生かされていることが見て取れる。

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 では,実際のゲームをプレイできるほどのパフォーマンスを備えているのか,まずはグラフ6,7,FPS「Crysis」の結果から見ていこう。
 ここではGPUの性能差が顕著に表われる「Benchmark_GPU」を実行しているが,
描画負荷が高まれば高まるほど,HD 4670のスコアがHD 3850のそれを大きく引き離す。高負荷な状況に強いHD 4000シリーズの実力が遺憾なく発揮できている印象だ。
 PCI Express補助電源のないカード同士の比較となる対9500 GTでは,ほぼダブルスコア。9600 GTに届きそうなスコアを叩き出しているのには,ただ驚くほかない。

画像集#023のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
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 続いて,同じFPSから「Unreal Tournament 3」(以下,UT3)の結果をまとめたものがグラフ8である。UT3はCrysisと比べると描画負荷はぐっと低くなるが,そんな状況下でもHD 4670はHD 3850と互角以上に立ち回っており,対9600 GTでもいい勝負に持ち込んでいる。HD 4800シリーズでも見られた,レンダーバックエンド(=ROP)の改良による奏功だろう。

画像集#025のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か

 さらに,グラフ9,10はFPS「Half-Life 2: Episode Two」(以下,HL2EP2)のテスト結果だが,ここでも傾向は同じ。HL2EP2の描画負荷はUT3よりもさらに低いため,HD 4670の優位性は見えづらくなるが,それでも9500 GTに大差を付けているのは十分に確認できる。

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 一方で,グラフ11,12に示した,TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)の結果はいま一つ。ロスト プラネットはメモリ周りの負荷が高いこともあって,メモリバス幅が128bitに留まるHD 4670は不利だが,ものの見事にその不利が顕在化してしまった格好だ。

画像集#028のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
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 RTS「Company of Heroes」の結果がグラフ13,14である。
 Company of Heroesではロスト プラネットと同様の傾向が見られ,HD 3850との差は依然として大きい。また,9600 GTとの差も顕著だ。ドライバアップデートで,今後,差がどの程度縮まるか注目といえるが,メモリインタフェースの制限が存在することは,同時に憶えておきたい。

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消費電力の低さは想像どおり

冷却能力に多少不安が


 補助電源コネクタを有していないことから,消費電力が低いのは容易に想像できるが,実際にはどの程度なのか。いつものように,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時とし,数値をログとして残せるワットチェッカーの「Watts up? PRO」で,システム全体の消費電力を測定したものがグラフ15である。
 なお,HD 4650については前述のとおり,HD 4670からダウンクロックしたもので,搭載するメモリチップも仕様どおりではないため,テスト対象から外している。

 さて,まずアイドル時から見ていくと,HD 4670は92Wと,ATI PowerPlayの恩恵を受けて最も低い値を示している。また,負荷が掛かる状態では総じて170W程度で,さすがに9500 GTと比べると10Wほど大きいが,HD 3850や9600 GTとは20Wほど低い。表1に示した公称消費電力の違いが,ほぼそのままグラフに表われている点も興味深いところだ。

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 さらに,3DMark06を30分間連続実行した時点を「高負荷時」としてGPUの温度を測定したものがグラフ16である。測定に用いたのは,GPU温度表示機能を持つソフトウェアツール「HWMonitor Pro」(Version 1.02)。テスト環境は,室温24℃の室内に,バラックで設置してある。

 GPUクーラーが異なるため,横並びの評価にあまり意味はないが,それでもHD 4670の高負荷時の温度は少々高い。80℃台前半なので,それほど気にする必要はないと思われるが,もう少し低い温度で運用したい場合は,さほど間を置かずにリリースされるであろう,グラフィックスカードベンダー独自のクーラー採用したモデルを待つのも手だ。

画像集#031のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か


ケースや電源ユニットを選ばない点が魅力で

ライトゲーマーには最適な解


画像集#009のサムネイル/「ATI Radeon HD 4670」レビュー掲載。2008年秋,ライトゲーマーにとっての最適解か
 以上のテスト結果からして,1万円台の投資でより高い3D性能を求めるのであれば,あと数千円追加して9600 GT搭載カードを購入するのが得策だ。また,コストパフォーマンスという点では,(格安に設定されている)HD 3850カードを探すという選択肢もあるだろう。

 HD 4670が持つ最大の魅力は,消費電力が低く,カードサイズが小さく,そして補助電源が不要な点にある。それは言い換えれば,PCケースや電源ユニットを選ばないということ。さらに,HD 3850に近い――ゲームによっては上回る――スコアを発揮できており,消費電力あたりの性能は秀逸といっていい。グラフィックスカードをアップグレードしたいが,PCケースのサイズや,電源ユニットのスペックに懸念があるという人にとって,まさにHD 4670は待望のGPUだ。

 さすがに,高解像度や高負荷設定でのゲームプレイは厳しいが,そもそもそんなものを1万円台前半で購入できるGPUに期待するほうが無理な話。低解像度ならば,最新世代の3Dゲームでもかなり快適にプレイ可能ということを踏まえるに,ライトゲーマーには打ってつけといえるだろう。
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