インタビュー
韓国のLoLプロチーム“Afreeca Freecs”の監督にインタビュー。韓国ではどのようにe-Sportsが発展していったのか
韓国のe-Sportsは,日本とは比べ物にならないほど発展しており,LoLでは韓国人選手が国外のチームに助っ人として加入するほどである。そんな韓国では,どのようにe-Sportsが発展してきたのか,そして韓国のプロゲーマーはどのように活動し,世間からはどのような目で見られているのか。韓国の“e-Sports事情”に興味がある人は,ぜひご一読いただきたい。
Afreeca Freecs 公式サイト
4Gamer:
カンさんはLoLのプロチーム“Afreeca Freecs”で監督をしているとのことですが,実際にe-Sportsチームの監督はどういったことをしているのでしょうか。
戦略的な指導はコーチがするので,私は選手達のスケジュールや体調管理など,全体的なマネージメントを行っています。家族構成で例えるなら,私がお父さん,コーチがお母さん,選手が子供といったところでしょうか。
4Gamer:
監督としてチームに関わる前は何をしていましたか。
カン氏:
MBCという韓国のテレビ局にあるゲーム部門で,e-Sports番組の解説者として活動していました。
4Gamer:
e-Sports業界にはかなりお詳しそうですね。ちなみに,韓国ではどのタイトルが一番プレイされているのでしょうか。
カン氏:
やはりLoLですね。少し前までは「StarCraft」が主流だったのですが,「2」に移行するときに韓国ではe-Sportsの停滞期がありました。そのタイミングでLoLが入ってきて,もう一度全盛期を迎えている状況です。
4Gamer:
韓国はe-Sportsに対して力を入れているイメージがありますが,そこで活躍するプロゲーマー達は,世間的にはどのような目で見られているのでしょうか。
カン氏:
StarCraftが競技タイトルとして挙げられるようになった初期は,プロゲーマーという存在に対する世間の目は,冷ややかなものでした。
4Gamer:
そのあたりは,今の日本にも通じるものがありますね。
カン氏:
ただ,StarCraftで活躍するプロ選手達がゲームの枠にとどまらず,地上波の番組などに出て活動するようになってから,少しずつ世間の目も変わっていきました。トークもできるしゲームもうまい。そういった選手達は,好意的な目で見られるようになったんです。
4Gamer:
要するにマルチタレント化していったわけですね。
カン氏:
はい。もう一つ大きいのは,大手企業がスポンサーとしてプローゲーマーを宣伝するようになったことです。我々のfreecsもそうですが,韓国ではスポンサー名が入ったチームが多いんです。韓国の大手通信業者であるKTや,流通会社のCJなどもプロチームを抱えていますし,いろいろな企業が選手達の話題作りを行ってきました。
4Gamer:
話題作りというと?
カン氏:
例えばKTでは,CMにプロ選手を出演させています。同じく通信業者であるSKでは,自社で開発しているモバイルゲームに,LoLのプロ選手をキャラクターとして登場させています。このように,メディアを通してプロ選手達の存在をどんどん広めていった結果,プロゲーマーに対する注目度も上がっていったのです。
4Gamer:
韓国では,野球やサッカーのプロ選手と同じような立ち位置にいるわけですね。ちなみに,プロ選手として活動を始める年齢は,いくつぐらいからなのでしょうか。
韓国では,ゲームに関する政府の取り締まりがあって,16歳未満の場合は,深夜帯になるとオンラインゲームのサーバーから締め出されてしまいます。これはプロであっても免除されるわけではないので,プロとして活躍を始められるのは,実質17歳以上からになります。
4Gamer:
ちょうど高校を卒業するあたりですね。
カン氏:
ただ,韓国には徴兵制度があって,徴兵検査を受けられるようになった時点から,20代後半までに,2年間兵役に就かなければなりません。この2年間というのはゲーマーにとっては致命的であり,兵役に就くということは実質的に引退という意味にもなります。
4Gamer:
2年間のブランクを埋めるのは大変でしょうね。そうなると,20代の早いうちに兵役を終わらせてから,プロになろうという人も多いのではないでしょうか。
カン氏:
高校を卒業したらすぐに兵役について,それを終えてからプロゲーマーの世界に入る人もいますし,兵役を終えてから種目を変えて成功した選手もいます。
4Gamer:
大学に通う時期の人も多いかと思いますが,プロ活動との両立はできるのでしょうか。
カン氏:
韓国においてプロゲーマーは1つの職業として考えられていますので,学業とプロゲーマーを両立する人はほとんどいません。プロを目指す人はそれだけに集中します。
4Gamer:
職業として認知されているというのが,なんとも韓国らしいというか。
カン氏:
今やプロゲーマーは存在感のある職業になりつつあります。私の幼いころは,将来の夢といえば芸能人だったり歌手だったりといった感じでしたが,今ではそれと同じくらいプロゲーマーになりたいという人が多いですね。
4Gamer:
e-Sportsを長年見てきたカン監督からみて,日本のe-Sportsシーンはどう映っていますか。
カン氏:
昨年の12月に秋葉原のe-sports SQUAREで行われたLoLの大会を見に行きました。そこで感じたのは,初期の韓国のe-Sportsシーンと似ているということです。e-sports SQUAREは,ネットカフェ+大会会場という形で比較的小さな規模で運営されていますが,韓国にもそういった施設が,e-Sports大会のメイン会場として使われていた時期がありましたから。
4Gamer:
日本でこれからe-Sportsが盛り上がるには,何がカギになると思いますか。
カン氏:
日本はコンシューマゲーム機が発展しているので,PC向けのオンラインゲームを流行らせるのが難しいと聞いています。そんな中で,最近日本サーバーを稼働したLoLが,どれだけユーザを獲得できるかが,日本e-Sportsシーンにおけるカギになるのではと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
※初出時,苗字の読み方に誤りがありましたので,訂正いたしました。
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