企画記事
【6万円した】「LoL」歴代最高額の“Faker”スキンセットを購入したから,ちょっと語らせてくれ
長々と語る前に伝えておいたほうがいいだろうと思い,ひとまず結論から提示した。とりあえずテキトーにこきおろすわけでも,過剰に褒め称えるわけでもない,といった意志が届いていれば幸いである。
サービスインから約15年。Riot GamesのMOBA(マルチプレイヤー オンライン バトルアリーナ)「リーグ・オブ・レジェンド」,通称LoLは5vs.5のチーム戦で相手の本拠地を目指して戦い……。
なんて説明をしていると日が暮れるので割愛させていただく。ここ1年はさまざまなストリーマーを発端にドッカンバッコンとブームになっていたので,なんとなく知っている人も多いだろうから。
そんなLoLでは有料要素の主軸として,チャンピオン(LoLにおけるプレイアブルキャラクター)の見た目を変えられるスキンがある。
価格はだいたい700円から2000円。高いものだと4000円ほどだ。
そして,今回紹介するスキンは6万円。6万円だ。万札6枚で6万円だ。これは4000円のスキンのおおよそ“15倍のお値段”となる。
いきなりのとんでもないインフレに頭がクラクラしそうだが(した),正しく言うとスキン単体の値段ではない。
いろいろ入ったセットが6万円で売られた,という感じである。なんならほかにも6000円&3万円のお手ごろセットもある。
実際,3万円セットと6万円セットでは内容にそこまで違いはなく,到底「誰にとっても差額分の価値はあるよ!」と言える代物ではない。
じゃあなんで買ったのか? 理由も踏まえて言い訳していこう。
なぜ6万円も出したのか――
「Hall of Legends」がすばらしかったから
前提として,私はむさくて暑苦しい男性キャラクターや,えげつない容貌をしたバケモノが大好きなタイプである。
この9年間の試合数のうち,9割くらいはガッチガチの大男を使って互いに筋肉をぶつけ合う脳筋ファイトをしまくっていた。
そのような有様なので,もふもふ尻尾の狐耳美女「アーリ」なんてまったく使ったことがない。あったのはARAM(チャンピオンがランダムで選出されるゲームモード)で数回使った経験くらいのものだった。
スキンに6万払った理由はひと言で言える。
すべては“Fakerが好き”だったからにほかならない。
T1(旧SKT T1)所属のプロゲーマー,Faker選手。本名はイ・サンヒョク。彼はLoL界でデビューしてから10年以上,競技シーンにおいて今なおトップを走り続けている,正真正銘のレジェンドだ。
Faker選手と6万円スキンの関係は,このスキンセット自体が“選手たちの偉大なる功績を称える新たな施策”という点にある。
2024年からスタートした公式企画「Hall of Legends」シリーズは,これまでのLoL競技シーンにおける殿堂入り選手を称えるもので,その初代選手として現役ながらに選ばれたのがFakerなのである。
Hall of Legendsはゲーム内で開催されるイベントであり,さまざまなミッション達成することで,Faker選手の偉業動画がPC画面上で流されたり,彼の功績に関連するアイコンがもらえたりする。
つまり,LoLは絶賛“Faker祭り”の最中にある。右を見ればFaker。左を見ればHide on Bush。視線の先にはイ・サンヒョク。頭までFakerになりそうな最強ビルドを公式がガン推ししてきているのである。
端的に「こんなすんばらしいものを見せられては金を落とさざるを得ない!」となったのが,私の個人的結論である。
なお,地域によっては一部の人から「清貧さを重んじるFakerで金儲けをするとは何事か,リスペクトに欠けている」という声もチラホラあったようだが,Hall of Legends全体の取り組みを見るに,細かな愛にあふれすぎていて,敬意が欠けているとは感じなかった。
肝心のスキンについても同じ見解だ。今回の購入物は最高級のアルティメットスキン品質なのはもちろん,ゲーム内でのセリフも「覚醒しても謙虚さは忘れないようにしないと」「倒されても,より強くなって蘇るの」など,どこかFaker選手の面影を感じられる仕立てである。
そもそもスキン名称が“不滅なる伝説”なのもいい。10年以上もトップを走り続ける彼のキャリアを表すうえで,これほどまでに的確な言葉はないだろう。まさに「Legends Never Die」(※)というわけだ。
※2017年のWorldsテーマソングの曲名。この年,3連覇を期待されたFaker選手(およびSKT)は決勝で敗北し,以降は長らくWorlds王者へ返り咲けない時期が続いた。しかし2023年,再び王座を奪取して「伝説は不滅である」と示した。そんなドラマも込みですげー好きな曲
といっても,手放しで褒められる施策でもない。
ぶっちゃけ「Fakerの偉業を考えれば6万円でも安すぎる!」みたいな称賛は到底言えない価格帯だし,マネタイズのため……口汚く言えば商売のためとしても高額すぎる選択肢だと思っている。
Riot Games側もここ1年,「希少性の高いスキンを高額で出してマネタイズしてくよ」と明言していたが,6万円って……6万円だよ?
それに今回は6000円・3万円・6万円のセットでラインナップされたが,正直なところ「3万円と6万円のスキンで大して変わらない」。付加価値とされたのは,タワー破壊時に特殊演出があったり,スキン自体にFaker選手のサインが刻印されたりと,そのくらいなのだ。まあ,そのくらいと言いつつもファンボーイとしては喜ばしい要素ではあるが。
それでも「差額の3万円分の付加価値は絶対にあります!」なんて意気込みは,万人に向けては決して言えそうにない。
ただし,ここまでゲーム全体を使って「プロ選手をフィーチャーするイベント」を大々的に行い,リスペクトにあふれた演出まで用意し,さらにはFaker選手を含めて関係者インタビューも実施されていることを考えると,相当なコストがかかっているのは想像に難くない。
私は門外漢なのでコスト感など想像でしか測れないものの,LoLの競技シーンにおける象徴たる存在,その殿堂入りを記念して「よりいいものを見せたい」という気概を感じられる商品であることは確かだ。
私はFaker選手が好きだ。大好きである。
自分がLoLを始めた2015年に世界を獲り,続く2016年も圧倒的な強さで連覇。2017年の敗退時の慟哭には心を揺さぶられたし,2018年以降はしばらくの間,彼のいない世界大会に寂しさを感じていた。
リベンジを期待された2022年は,また倒される側の存在――“ラスボスとしてのFaker”で終わったこともあり,「俺は主人公のFakerが見たいんだよ!」と心の底から友人に熱弁したことは記憶に新しい。
Hall of Legendsは,そんな思いを受け止めてくれた。Faker選手を主人公とし,彼のキャリアを祝福するにふさわしいコンテンツを用意してくれた。それがうれしかったから,私は6万円をサモリフに捧げた。
大枚はたいて買ったスキンを目にすると,私は2023年の激戦を思い出してしまう。当時は残念ながら現地観戦が叶わなかったものの,日本国内で行われたライブビューイング「ASH WINDER Esports ARENA」に参加し,肌身ですさまじい熱狂を感じたものだ。
とどのつまり,この高額スキンはファンボだけが欲しがる商品だ。たぶんRiot Games側も「みんな気軽に買ってね」という戦略ではないだろうから,正しく「好きな人だけ買ってね」という狙いのはず。そう考えると,買った張本人である私は超納得しているから,それでいいのだ。
じゃ本題へ。「キミ,アーリ使えるん?」
さて,6万円のスキンを買ったからには,やっぱり使いたい。使いたいったら使いたい。そんな思いで使えもしないアーリを使いまくった結果,ここ最近の試合勝率はだいたい3割5分ほどに落ち着いた。
あーりえんね。
補足しておくと,ランクでは使っていない。気心の知れた仲間とノーマル(カジュアルモード)をやるときにしか使っていないため,そのあたりは安心してほしい(「スキンを見せびらかしたいだけのやつが使えないアーリで入ってきやがった!」という意味で)。
勝率は悲惨ながらも,アーリを使っているとめちゃくちゃ楽しい。前述したとおり,私はマッシブなゴリラかデカいバケモノしか使ってこなかったので,「アーリってこんなにいろいろできるんだ!」などと,大会などでも散々見ておきながら今さら初歩的な魅力を実感している。
当然,楽しいのは自分だけなので,これに付き合わされる友人たちの顔はヴォイドのクリーチャーみたいになっているのだろう。
このスキンを買わなければアーリの楽しさに目覚めることはなかった。そう思うと,これもこの商品の“1つの価値”なのかもしれない。そんなのはどのスキンでも同じだろうが,「Fakerという強烈な動機」がなければ,私はおそらくアーリになんて見向きもしなかった。
その体験に見合う価値があるのか――なんてのは人それぞれの基準だ。対象が車にせよ,食べ物にせよ,ゲームにせよ,ほかの人からはゴミに見えるようなものも,当人には一生の宝物に映ることがあるはず。
だからこそ,胸を張って言おう。
「このスキンセットには間違いなく,6万円の価値があった」と。
スキンとしてのクオリティ。Hall of Legendsという施策。そして個人的なFakerへの愛。それらを総合すると,十分な価値があった。
Hall of Legendsは1回限りのイベントではない(はず)。今年がすばらしいものであっただけに,次はどの選手が殿堂入りするのか。今から気になって仕方がない。これからもLoLの競技シーンがさまざまなドラマとともに,より大きく発展していくことを願うばかりである。
以上,“フラッシュはD派”のオクドス熊田でした。
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