レビュー
バーチャルアイドルとたわむれる異色のリズムゲーム
初音ミク -Project DIVA-
セガから7月2日に発売されたPSP用ソフト「初音ミク -Project DIVA-」は,バーチャルアイドル「初音ミク」をモチーフにしたリズムアクションゲームだ。
ゲームを紹介する前に,知らない人のために「初音ミク」とは何かを軽くおさらいしておこう。
「初音ミク」とは,2007年8月にクリプトン・フューチャー・メディアから発売された音声合成/DTM(デスクトップミュージック)ソフトウェア。同社の“キャラクター・ボーカル・シリーズ”第一弾で,ヤマハの開発した音声合成システムであるVOCALOID 2エンジンを使用し,音声のサンプリングは声優の藤田 咲さんが起用されている。
(うまく編集すれば)人間と変わらないほどの歌声となる,その音声合成のクオリティの高さで話題となった初音ミクは,制作された楽曲がニコニコ動画やYou Tube,zoomeなどの動画配信サイトに次々とアップされ,その可愛らしいキャラクターと相まって人気を博した。ちなみにボーカロイドシリーズとしては,第2弾「鏡音リン・レン」,第3弾「巡音ルカ」が発売済みだ。
クリプトン・フューチャー・メディアでは,初音ミクの盛り上がりを受け,VOCALOID関連の楽曲/イラスト/文章などを投稿/共有できるコミュニティ「ピアプロ」を2007年12月に開設。以降,CGM(Consumer Generated Media)またはUCC(User Created Contents)と呼ばれる「初音ミク」をはじめとしたボーカロイドの二次創作は,さらなる広がりを見せている。
なお4Gamerでは,「初音ミク」を世に送り出したクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木 渉氏らが出演した「OGCシンポジウム」のレポートを掲載しているので,興味のある人は目をとおしてみてほしい。
電子の歌姫が歌って踊る! ミクブームの立役者となったクリエイター達の名曲を収録
本作のシステムは,3DCGで描かれた初音ミクが歌って踊るムービーシーンを見ながら,画面に表示されるターゲットと,画面外から飛んでくるメロディアイコンが重なった瞬間にタイミングよくボタンを押す,というごくごくシンプルなもの。曲の最後までプレイして一定以上の点数を獲得できればクリアとなる。
ここでは,実際にプレイした模様を4曲分,メドレー形式に編集したムービーをアップしたので,再生して雰囲気を感じ取ってもらいたい。
リズムゲームを楽しむ「フリープレイ」が本作のメインモードで,クリアしていくことでプレイできる楽曲の数を増やしたり,モジュール(=着せ替え衣装)などを集めたりしていく。
ゲーム開始直後にプレイできる楽曲は6曲に限られており,難度はEASY/NORMALの2種類。これらの曲を(一定の条件を満たして)クリアしていくことで,残りの楽曲やモジュールなど,隠された要素が順次解放されていく形だ。
本作はリズムアクションゲームということで,曲(ステージ)ごとに最高得点を目指すというのが表向きの目的ではあるが,真の目的は,初音ミクのモジュールを集めて,その愛らしい姿を思う存分に眺める部分にあると強く主張したい。
モジュールはミクが初期状態+39種類,リン/レン/ルカ/MEIKO/KAITOらほかのVOCALOIDや二次創作キャラクターの弱音ハク/亞北ネルに変身できるモジュールが13種類,合計53種類が用意されている。
モジュールについては4Gamerの記事やセガの公式サイトで公開済みだが,「ピアプロ」とのコラボ企画で採用された衣装,「スペースチャンネル5」「戦場のヴァルキュリア」といったセガの人気タイトルに登場するキャラクターのコスプレ,果ては水着など,健全な青少年ならどんな困難でも乗り越えられそうな豊富なラインナップとなっている。
また,リズムゲームをプレイして高評価を獲得すると,その曲の“鑑賞モード”が解放される。リズムゲームをプレイしているときはミクの姿を眺めている余裕はあまりないのだが,鑑賞モードが解放されれば,映像と歌詞をじっくりと見られるようになるわけだ。
ちなみに解放条件は最大二つ設定されており,二つの場合はその両方をクリアする必要がある。なお,この条件は重複ではないので,提示されている条件をそれぞれ満たせばよい。
たとえば,「NORMAL / STANDARD以上(でクリア)」「クリア回数○回以上」という条件の場合,前者はNORMAL / STANDARD以上の評価で1回以上クリアする必要があるが,後者は難度を問わないので,EASYでクリアしても規定回数にカウントされるというわけだ(ただし,カウントされるのは同一難度でのプレイ回数となるのでご注意を)。
NORMALモード以上の難度では,クリアするためには,ある程度メロディーと歌詞を把握する必要があると思う。本作に収録されている曲は,出現したものをミクルームで聴くことができるので,プレイ前に聴きこんでから挑戦するといいかもしれない。
また,リズムゲームのサビにかかる部分には,大幅得点を上乗せすることが可能な「CHANCE TIME」がある。最終結果としての成績をかなり左右するので,CHANCE TIMEでミスをせずコンボを繋げられるようになれば,モジュールを手に入れられる可能性も高くなるというわけだ。
とはいえ,一部の楽曲については,EASYでも難しく感じられるものがある。本作には救済措置のようなものは用意されていないので,クリアできないときは,ひたすらやり込むしか道はない。
“ミクルーム”とは,「こちら」のニュースでお伝えしたように,解除できた楽曲をBGMに,ミクがくつろぐ姿を眺められる部屋である。モジュール同様,リズムゲームをクリアするとランダムで手に入る“ルームスタイル”や“レイアウトアイテム”で,部屋を彩ることができる。
基本的には,ベッドに寝転んでくつろいだり,椅子で居眠りしたり,部屋に設置したアイテムや本棚などの前でいろいろな仕草を見せてくれるミクを眺める鑑賞モードである。リズムゲームでプレイ可能になった収録楽曲や,メモリースティック PRO DUOに入っているMP3ファイルを再生できるので,簡易メディアプレイヤーとして使うことも可能だ(単曲リピートは可能だが,複数曲の連続再生などはできない)。ミクルームでは,ミクがたまに踊ったり,普段あまり見せないようなレアな仕草をすることもあるので,お気に入りの曲を聴くついでに,ミクを思う存分愛でてほしい。
リズムゲームエディットでは,押すボタンの配置やミクの振り付け,カメラアングル/背景/などが設定できる。ゲームに収録されている楽曲だけでなく,メモリースティック PRO DUOに入っているMP3データをBGMとして使用可能だ。
ただし本作は,音声合成ソフトウェアとしての機能は持ち合わせていない。MP3ファイルの音楽がそのまま流れるだけで,初音ミクの声で歌ってくれるわけではないのでご注意を。
エディットでは解除済みのモジュールをすべて使用できるほか,踊るモーションや表情などを細かく設定できる。最大200小節,ボタンを押す回数,ステージ/モーションなどは総容量6000の中で収める必要があるという決まりはあるものの,かなり自由に作れる。なお押すボタンについては,CPUにおまかせで配置してもらったり,曲を聴きながらボタンを押してタイミングを決めたあとに,編集をすることも可能だ。
正直な感想を言えば,エディットはかなり細かく作りこめるものの,インタフェースの使い勝手はお世辞にもいいとはいえない(ゲームの主役的機能ではないので仕方ないのかもしれないが)。かなり根気が必要な作業になるのは覚悟しておいたほうがいいだろう。
なお作成したエディットデータは,アドホックモードで交換したり,自己責任にはなるがインターネット経由で交換することも可能だ。なお交換についてはエディットデータのみで,当たり前だがMP3ファイルは自分で用意する必要がある。
「初音ミク -Project DIVA-」公式サイト
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初音ミク -Project DIVA-
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(C) SEGA / (C) Crypton Future Media, Inc. VOCALOIDはヤマハ株式会社の登録商標です。