レビュー
肩肘張らず“RPGらしいRPG”が楽しめる,NDS「ノスタルジオの風」の魅力を紹介
» 不定期連載になってからというもの,大方の予想どおり更新ペースが落ちていた「極私的コンシューマゲームセレクション」。2008年の最終更新日になって唐突に2本も掲載されるのだから,不定期にもほどがある(もう1本は「こちら」)。本稿では,大方の予想どおりゲームを遊びすぎて執筆が遅れた大路政志が,NDS「ノスタルジオの風」を紹介する。
本稿では,ノスタルジオの風を実際にプレイしてみて感じた印象を,ゲームの概要と共に紹介していこう。併せて,菊地氏へのインタビュー記事に目をとおしてもらえれば,本作がどのように作られ,どのように楽しめるゲームなのかがおおむね理解できるだろう。この年末年始,変に気負うことなく,安心してプレイできるRPGを探しているという人は,ぜひ参考にしてほしい。
初めてなのに既視感を覚える?
いつか見たアニメのような物語が心地良い
ある日,高名な冒険家ギルバートは,一人の少女をめぐって謎の組織と対峙し,消息不明となってしまう。ギルバートの一人息子であるエディは父を捜すため,自らも冒険者になることを決意。父の残した飛空船“マーベリック号”に乗り込み,仲間と共に世界中を旅することになる。
以上が,ノスタルジオの風の導入ストーリーの概要だ。ゲーム自体は,ギルバートが謎の組織と対峙し,救い出した少女をマーベリック号に乗せるものの,ギルバート自身は不運にも行方不明になってしまうというくだりからスタートする。最初に操作できるのはギルバートだが,別におじさんが主人公ではないので,その点はご安心(?)を。
エディ |
パッド |
メロディ |
フィオナ |
また,時代設定の影響もあるのだろうが,飛空船での冒険や,不思議な力を秘めた少女の存在,秘密結社との対立,魅力的な悪役の活躍などなど,物語を構成するパーツや,それらが醸し出すゲーム展開が,いい意味で「いつか見たアニメのよう」であり,プレイ中に心地よい懐かしさを感じもした。
こういった設定やストーリーをどう受け取るかは人それぞれだろうが,少なくとも筆者は,先の展開にワクワクしつつプレイを続けることができた。本作の制作に,「天外魔境」シリーズや「サクラ大戦」シリーズのレッド・エンタテインメントが関わっていると言えば,「いつか見たアニメのよう」という表現の意味が分かるという人も,いるのではないだろうか。
ゲーム展開は素直だが遊びの幅は広く
人それぞれのプレイが楽しめる
街から街へ,あるいは街からダンジョンへの移動には,基本的に飛空船を使うことになる。そのため,序盤から行動範囲が広々としているわりに,移動が快適な点も好印象だ(ただ,下画面のワールドマップに地名や遺跡名が表示されないのはちょっと不便だった)。
例えば,ゲームをある程度進めていくと,エヴァンズという人物から“ワールドトレジャー”と呼ばれる遺跡の探索を依頼される。エヴァンズや世界中の人から情報収集し,飛空船を操縦してそれがあると思われる場所にたどり着くと,“アブ・シンベル神殿”や“アンコール・ワット”といった有名な遺跡が発見できるという仕組みだ。発見した遺跡の数に応じて,エヴァンズから報酬がもらえるというご褒美もある。ストーリーを進めるついでに発見/報告するだけでもいいが,もちろん,ワールドトレジャーのコンプリートを目指すのもおもしろい。
またゲーム序盤,エディが冒険者協会の一員になると入手できる“冒険者手帳”では,出会ったキャラクターの詳細や,(エディの日記という形で)ストーリーの再確認ができるほか,ワールドトレジャーの発見状況やアイテムの入手率,戦闘回数をはじめとするゲームデータなどなど,ありとあらゆる情報が閲覧できる。やり込み派にはうれしい機能といえよう。
ちなみに,上述した冒険者協会では,さまざまなミッションを受けることが可能。クエストをクリアすれば報酬と“冒険者ポイント”が得られ,後者を蓄積して冒険者ランクを上げていけば,より上位のクエストが受注できるようになる。本作は,とくにレベル上げをせずともゲームを進められる戦闘/成長バランスなのだが,「ちょっと敵が強いな」と思えるダンジョンに当たったときなどは,このクエストを一つ二つ攻略しておくと,ちょうど良いレベル上げになる。言うまでもなく,冒険者ランクの昇級にいそしみつつ,クエストのコンプリートを目指す楽しみも味わえる。
繰り返しになるが,本作はストーリー主導型のRPGでありながら,“脇道”が豊富に用意されたRPGなのだ。さまざまなプレイスタイルを許容するこのゲームデザインは,娯楽としてのRPGにはとても意味のあるものだろう。
遊びやすい地上戦と,やや高難度の空中戦
シンプルながら遊びがいのある戦闘システム
パーティバトルは,いわゆるコマンド選択式の擬似ターン性バトル。敵味方を含めたキャラクターの行動順を表す“オーダーテーブル”があるのが特徴的だ。オーダーテーブルはコマンド選択中/対象選択中にも確認できるので,戦術を練るための判断材料として活用できる。攻撃を集中させるべき敵を選んだり,補助魔法を使うタイミングをはかったりと,意外と緊張感のあるバトルが楽しめる。
それに加え,バトル終了後のリザルト画面において,戦闘内容に関する“評価”が表示される点にも注目したい。評価は,少ない手順で戦闘を終わらせたり,敵の弱点を突いたりすることで上昇し,良い評価で勝利しつづけると,“ランクボーナス”によって経験値やレアアイテムドロップ率などにボーナスが得られる。これも,本作のバトルを面白くしている要因の一つだろう。
絶妙なバランシングが施されているパーティバトルと比べ,飛空船バトルはやや難度が高く,地上戦以上に装備や戦術が問われる内容となっている。
基本的に敵の攻撃力が高いため,オーダーテーブルの重要性は地上戦以上に高くなっているし,例えば雨なら銃器の攻撃力が下がるなど,天候による状況の変化も注意すべき点。また,飛空船の武器には,ブレードならば正面,ガンならば左右など,パーツごとに攻撃しやすい範囲が設定されている。つまり敵のフォーメーション/飛空船の向きによっても,戦術が変わってくるのだ。
地上戦と比べて,空中戦の難度がかなり高いなど,若干ちぐはぐな印象も受けるものの,レベル上げに苦労せずともゲームをクリアできる本作においては,それもアクセントの一つとして考えられなくもない。個人的には,極めて緊張感のある飛空戦バトルは,さまざまな面で優しい本作にとっての,数少ない刺激として楽しむことができた(空中戦でのレベル上げが必須のゲームだったら,ちょっと困ってしまっただろうが)。
攻略本やWikiを見ずとも,しっかりと気軽に楽しめるRPG
NDS用ソフトのRPGとしては安心して遊べるオススメ作
しかし,ゲームの分かりやすさや,意外と戦術性の高い戦闘システム,どこでもゲームをやめられる“中断”機能など,シンプルながらも手堅くまとめられた良作であることは確かである。
個人的には,あるスキルのレベルを上げるとその威力が増し,「消費MPも減る」点が納得のいくものだったし(成長とはそういうことだろう),エディの仲間達が,ゲーム序盤から最後まで入れ替わったりしない点も好感が持てた。
……仲間にできるキャラが大量に用意されていて,キャラ毎に仲間にするためのルートが設定されているようなRPGも好きではあるが,毎回そればかりでは,さすがに(攻略本や攻略サイトでの下調べに)疲れてしまう。また筆者はPlayStation 2用RPG「P3」において,大好きなキャラを特別熱心に育てていたのに,ストーリー上の都合で死なれてしまった件がトラウマになっており,パーティメンバーの強制的な変化には臆病になっているのだ。固定パーティでゲームが進行していく本作は,そういう意味でも安心して(気を抜いて?)遊べるタイトルだった。
ともあれ,この年末年始,テレビを見ながら気軽にプレイしたり,布団の中で遊んだりするRPGを探しているという人は,本作の購入を検討してみてはどうだろうか。ゲーム歴のそこそこ長い人ならば,久しぶりに“RPGらしいRPG”を遊んだという満足感が得られると共に,昔遊んだ“RPGらしいRPG”の記憶がよみがえってくるに違いない。そういう意味では,本作は少年向けRPGの皮をかぶった大人向けRPGなのかもしれない。ほんと,忙しい社会人にもオススメのRPGだと思います。
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ノスタルジオの風
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