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[CEDEC 2009]「版権ゲーム制作のコツは,原作への愛!」サイバーコネクトツーの松山洋氏が語る「キャラクター版権タイトルの作り方」
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印刷2009/09/03 00:00

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[CEDEC 2009]「版権ゲーム制作のコツは,原作への愛!」サイバーコネクトツーの松山洋氏が語る「キャラクター版権タイトルの作り方」

画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2009]「版権ゲーム制作のコツは,原作への愛!」サイバーコネクトツーの松山洋氏が語る「キャラクター版権タイトルの作り方」
 「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」「NARUTO -ナルト-」など,人気漫画や人気アニメのキャラクターを自由自在に操れる版権ゲームは,それこそファミコン時代から定番のジャンルの一つだ。版権ゲームとは,どのように作られるのか。あるいは,どうすれば“作らせてもらえる”のか? 

 「みんなが知らない!?キャラクター版権タイトルの作り方」と題されたセッションでは,そんな版権ゲームの制作ノウハウ,あるいは「どうやったら,版権ゲームの開発を受注できるか」という,ゲーム会社向けの講演が行われた。

 登壇したのは,「.hack」シリーズや「NARUTO -ナルト- ナルティメットヒーロー」シリーズなどで知られるサイバーコネクトツーの代表取締役である松山洋氏と,同社のディレクター下田星児氏の二人。毎月60冊以上の漫画誌を購読するなど,自身も大の漫画好きだという松山氏だが,「版権ゲーム制作のコツは,ズバリ原作愛です!」「世の中の版権ゲームから,クソゲーを無くしたい!」など,なかなか“熱い”発言が数多く飛び出す面白い講演となった。早速その内容をお届けしたい。


版権ゲーム制作のコツは,ズバリ原作愛です!


画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2009]「版権ゲーム制作のコツは,原作への愛!」サイバーコネクトツーの松山洋氏が語る「キャラクター版権タイトルの作り方」
 最初に登壇した松山氏は,まず「版権タイトルはなんぞや?」という基本のおさらいから丁寧に公演を始めた。版権タイトルはすでに知名度があり,ターゲットが明確であること,またそれゆえにプロモーションがしやすいこと,結果として高い売上が見込みやすいことなどを説明。ただその半面,出版社,テレビ局,アニメ会社,原作者など数多くの関係者とのやりとりや,それらの監修が必要なことなど,決して楽な仕事ではないと説明する。松山氏に言わせれば「正直,オリジナルタイトルを作るよりも大変」なのだという。

 通常,版権もののゲームは,版元となる出版社ないしテレビ局/広告代理店などがゲーム化の企画を立ち上げ,ゲーム制作をパブリッシャに委託,その開発をデベロッパが請け負うなどという形になるわけだが,松山氏は,「真面目に仕事をしていれば,ある日突然,有名なアニメのゲームを作らせてもらえるのか?」と疑問を投げかける。
 松山氏が言うには,「ただ開発委託を待っているだけの姿勢では駄目」「その原作をどうゲームとして表現するのか,どうゲームというメディアを使って盛り上げていくのかを,ゲーム開発社側が真剣に考えて提案することが大切」なのだという。そしてそれを実践するためには,さまざまな心構えや準備,体制が必要だと話す。

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 具体的には,原作のキャラクターを活かしたゲーム設計,遊びの提案は当然のことながら,先にも挙げた「監修」が開発の工程で大きなポイントになることを説明。キャラクターのモデルからモーションのチェック,台詞や必殺技の表現が適切かなど,使用する素材のほぼすべてにおいて,細やかなチェックをしなければならないらしい。もちろん,そこまで細かいチェックをしないゲーム会社などもあるにはあるらしいが,松山氏に言わせれば「だから,クソゲーになる」とのことで,まぁ版元との綿密なやりとり(良い形での)があったればこそ,版権ゲームとしてのクオリティが高まるのは確かではあるだろう。
 
 サイバーコネクトツーでは,「NARUTO -ナルト- ナルティメットヒーロー」シリーズの制作においては,各キャラクターのモデルとモーションを監修するとき専用のViewerまで用意しているらしく,また「出版社さんやアニメ制作会社さんなど,版権を持たれている会社さんは,紙資料文化の会社さんも多いので,毎回束になるくらいの資料を印刷して持っていきます」など,版元とのやり取りをスムースにする工夫を随所で心がけているそうだ。
 それでも,「最初に監修してもらった時は,それこそ大喧嘩でした。死ねくらいの勢いで言われたこともあった。やっぱりゲームでの表現というのは独特のもので,そこを理解してもらうための説明はとても大変でした」という。ただ,何年かやり取りをしていくなかで信頼関係も生まれ,そうした苦労も,今では大分軽減はされてきたらしい。
 松山氏は,「ほかのゲーム会社さんだと,監修時に言われた版権元のこうした方がいいという意見を取り入れないことも多いと聞きます。それだと,やっぱり版元のモチベーションも落ちてしまう。できるだけ意見や要望は取り入れるのが望ましい」といい,そうしたことが可能な柔軟な開発体制やスケジューリングもまた,版権ゲームでは欠かせない要素だと語る。
 例えば,アニメの放映スケジュールが急遽早回しとなり,当初企画したままでゲームを完成させてしまうと,アニメとゲームで登場人物数が異なってしまうケースなどを実例として挙げていたが,その場合も,「通常の開発会社さんは,追加予算の申請などをしたりしますが,ウチは社内調整で出来る限りなんとかしています」というから驚きだ。
 そこまでいくと,意見を取り入れるとかそういう次元を超えているような……と思ったりもするが,スケジュールを立てる段階で,最初からある程度はそうしたリスクを組み込んでいるのだという。

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画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2009]「版権ゲーム制作のコツは,原作への愛!」サイバーコネクトツーの松山洋氏が語る「キャラクター版権タイトルの作り方」
 プロデュース業務周りの話が一段落したあと,続いてサイバーコネクトツーでディレクターを務める下田氏が壇上に上がった。下田氏は,「NARUTO -ナルト- ナルティメットヒーロー」を例に挙げ,版権ゲームならではのゲームデザインについて語った。
 内容は「NARUTO -ナルト-」の原作の設定を絡めた細かい話なので,ここはざっくりと割愛してしまうが,簡単に説明すると,曰く「キャラクターが出てくるだけでのゲームは駄目。“キャラクターを使った遊び”をいかに考えるかが大切です」「他のタイトルで培った開発資源で,短期間に制作できます。簡単に制作できます。……そんなのは駄目だと思う。一番やっちゃいけない」みたいな話である。
 簡素に言ってしまえば,「○○みたいなゲームを××のキャラで作って」みたいな作り方は論外だということ。原作に合った,その原作でしかありえないゲームデザインを考えるべきだという話だ。
 下田氏が語る内容自体は,いちいちもっともなもので,聞いていた筆者も,「今の子供は,良質なゲームを遊べて幸せだよなぁ」と思ってしまった次第。いや,昔は「キャラゲー≒クソゲー」という見られ方をしていたことすらあったからなぁ……。「原作が好きだから,多少つまらなくても気にならないと思って買うんだけど,それでも我慢できない」というのは,私の知人の名言(勝手にそう思ってるだけだが)である。

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 下田氏の講演が終わった後は,再度松山氏が登壇し,「同業者によく聞かれる質問」を紹介していった。詳しくは下記のスライド画像を見てもらえればと思うが,興味深いのは,仕事を受注したからといって,漫画本やアニメDVDなどを資料として貰えるわけではなく,あくまでも自社ですべて購入しているというあたりだろうか。

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 松山氏曰く,「版権ゲームを作るコツは,兎にも角にも“原作愛”です。それがなければ良いゲームにはならない」とのことで,サイバーコネクトツーでいえば,

 単行本は,毎巻15冊ずつ購入
 DVDも全巻購入
 週刊少年ジャンプを毎週2冊ずつ購入し,過去5年分保管
 映画チケットを会社で購入し、開発スタッフに配布
 イベントも国内外問わず極力参加
 社内のディスプレイで,絶えずNARUTOの映像を流す


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など,NARUTOと名が付くものは,漫画から何からすべてを購入し,社内で共有しているのだという。ちなみに「作り手が原作を好きになれば,それは必ずゲームのクオリティに繋がる。このくらいの投資は安いもの」だのことだったが,とはいえ社内に

 1500冊ほどの漫画のライブラリ
 2700タイトルのアニメ,映画,特撮のDVDライブラリ
 ゲーム,アニメ,漫画,CG雑誌なども完備

 
があると言うあたり,半分は「松山氏の趣味か?」と勘ぐってしまう(漫画ライブラリは,松山氏の私物らしい)わけだが……。まぁただ,確かに研究部屋≒ゲーム部屋があるゲームデベロッパは,国内外問わず結構多いのかもしれない。

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 ともあれ,版権ゲームの制作ノウハウを惜しげもなく語った松山氏の講演。「いろいろ苦労も多いが,版元の人達と一緒に仕事をすることで,キャラクタービジネスのなんたるかを学べた」と語り,最後には,「版権ゲームの制作は,原作者さん,お客さんを含めてたくさんの関係者全員を幸せにしないといけない仕事。その覚悟を持って取り組んでいくべきです」とし,講演を締めくくった。

 今後,「.hack」シリーズなどのオリジナルタイトルでも,こうした版権タイトルの制作で培ったノウハウを活かしていきたいという松山氏。サイバーコネクトツーの今後の作品にも注目していきたい。

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「サイバーコネクトツー」公式サイト




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