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  • 発表日:2009/01/08
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Phenom II初の省電力版「X4 905e」「X3 705e」レビュー掲載。TDP 65W版CPUの価値はどこにある?
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印刷2009/06/02 10:01

レビュー

Phenom II初の省電力版が持つバランスをチェックする

Phenom II X4 905e/2.5GHz
Phenom II X3 705e/2.5GHz

Text by 宮崎真一

»  デュアルコアの新モデルと同時に発表された,Phenom IIシリーズ初の省電力版。こちらについても宮崎真一氏によるレビューをお届けしたい。TDP 65Wで動作クロック2.5GHzのクアッドコア&トリプルコアCPUを,ゲーマーはどう認識すればいいだろうか。


 別途掲載したデュアルコアCPUのレビュー記事でもお伝えしているとおり,日本時間2009年6月2日10:01分,AMDはPhenom II X4/X3シリーズの省電力モデルとなる「Phenom II X4 905e/2.5GHz」(以下,X4 905e)と「Phenom II X3 705e/2.5GHz」(以下,X3 705e)を発表した。いずれも,初代Phenomシリーズの「Phenom X4 9350e/2.0GHz」などと同じく,モデルナンバーの末尾に「Energy Efficient」を意味する“e”が付与されている。
 どちらも,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が65Wに抑えられ,かつ,動作クロックも低めに設定されているが,今回はこれらを使って,ゲーム用途を前提にしたときの,消費電力とパフォーマンスのバランスについて考察してみたいと思う。

Phenom II X4 905e(左)とPhenom II X3 705e/2.5GHz(右)。AMDの日本法人である日本AMDから入手した個体のOPNは,順に「HD905EOCK4DGI」「HD705EOCK3DGI」となっている
画像集#002のサムネイル/Phenom II初の省電力版「X4 905e」「X3 705e」レビュー掲載。TDP 65W版CPUの価値はどこにある? 画像集#003のサムネイル/Phenom II初の省電力版「X4 905e」「X3 705e」レビュー掲載。TDP 65W版CPUの価値はどこにある?


TDP 65Wを実現した省電力モデル

動作クロックは2.5GHzと低め


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X4 905e,X3 705eとも,938ピンのAM3パッケージを採用する
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Core 2 Quad Q8400Sは,パソコンショップ アークの協力でテストすることができた。本製品は同店の店頭および通販サイトから購入可能だ
Core 2 Quad Q8400S販売ページ/店頭価格2万5980円(税込,2009年6月2日現在)
 X4 905eとX3 705eの主なスペックは表1のとおり。冒頭で紹介したとおり,両製品とも省電力版と位置づけられているわけだが,同時に,2.5GHzという動作クロックは,Phenom IIシリーズ中,最も低いため,最下位モデルと位置づけることもできるだろう。
 なお,CPUパッケージはAM3で,内蔵メモリコントローラはDDR3,DDR2両対応。L3キャッシュは6MB搭載している。

 さて今回,比較対象には,Phenom II X4とPhenom II X3シリーズのそれぞれ上位モデルとなる「Phenom II X4 920/2.8GHz」(以下,X4 920)と「Phenom II X3 720 Black Edition/2.8GHz」(以下,X3 720)を用意。ただし,機材調達の都合上,X4 920は,「Phenom II X4 940 Black Edition/3.0GHz」から倍率変更をした,“相当品”となる。
 競合となるIntel製CPUからは,「クアッドコアの省電力モデル」として,立ち位置が同じCore 2 Quad Q8000S番台から,X4 905eと動作クロックが近い「Core 2 Quad Q8400S/2.66GHz」を,秋葉原のPC&PCパーツショップであるパソコンショップ・アークの協力で入手できたので,これもテスト対象に加える。また,X3 705eの対抗は,実勢価格が近い「Core 2 Duo E7500/2.93GHz」のテストデータを,デュアルコアCPUのレビューから流用することにした。

※X4 905eとX3 705eは日本AMDによるメーカー希望小売価格,残る製品は2009年6月2日時点の実勢価格となります
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 テスト環境は表2のとおり。テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション7.0準拠だが,スコアがGPU性能に大きく依存する「高負荷設定」は省略し,「標準設定」のみ行うこととしている。

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CPUコア電圧の低減により省電力を実現

X4 920との差は40Wにも上る


 では,まずは肝心の消費電力のテストから見ていこう。いつものように,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,Prime95を30分連続実行した時点を「高負荷時」とし,ログの取得が可能なワットチェッカー,「Watts up? PRO」からシステム全体の消費電力を測定した。なお,アイドル時については,CPUの省電力機能「Cool'n'Quiet」および「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(EIST)をオンとオフのそれぞれでスコアを取得している。
 その結果はグラフ1のとおり。省電力機能無効時は,どちらも113WとX4 920からかなり消費電力が抑えられているものの,X3 720と比べるとあまり差はない。しかし,高負荷時においては,X4 905eとX4 920の差は45W,X3 705eとX3 720との差は18Wと省電力モデルらしく,消費電力の低減を実現している。これは,動作クロックが低めに設定されていることのほかに,X4 920の高負荷時におけるCPUコア電圧が1.35Vであるのに対して,X4 905eは高負荷時で1.15Vと0.2V下げられていることが大きく影響していると考えられる。また,X3 705eも同様でX3 720の1.325Vから1.175Vへとコア電圧が下げられている。その一方で,デュアルコアCPUのE7500はともかく,Q8400Sと比べても高負荷時で20Wほど依然として高い点は指摘しておきたい。

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 さらに,アイドル時と高負荷時におけるCPUの温度を測定したものがグラフ2である。測定に際し,CPU内のDTSから温度を取得するツール「Core Temp 0.99.5 Beta」を利用し,AMD製CPUクーラーにはX2 6000+(Windsor)の製品ボックスに付属するCPUクーラー,Intel製CPUはC2D E6300付属のそれを利用している。テスト環境はPCに組み込まないバラック状態にあり,室温は21℃だ。
 結果はグラフ2のとおり。高負荷時におけるX4 905eとX3 705eは,いずれも50℃前後とX4 920やX3 720の60℃弱に比べるとかなり優秀。CPUクーラーの違いがあるため,横並びの評価はできないものの,Q8400Sと比較してもCPU温度の低さはかなり魅力的だ。

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動作クロックに応じた性能の低下は免れない

しかし,対抗製品に比べると性能は立派


 省電力モデルらしく消費電力はほどよく抑えられた両CPUではあったが,動作クロックが低いことがゲームパフォーマンスにどの程度影響を及ぼすのだろうか。
 そこで,「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)の総合スコアの結果がグラフ3となる。動作クロックの差がそのままスコアに影響しており,X4 905eとX4 920との差,それにX3 705eとX3 720との差はハッキリ表れている。一方,2コアあたり2MBしかL2キャッシュを持たず,動作クロックも2.66GHzと低いQ8400SとX4 905eとの差はかなり顕著。また,3DMark06の1280×1024ドットにおけるCPUスコアをまとめたものがグラフ4である。CPUスコアも総合スコアと同じ傾向が見られる。

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 クアッドコアのメリットが活かしきれない最近のゲームの典型とも言える結果が,グラフ5の「Crysis Warhead」である。X4 905eやX3 705eがそれぞれX4 920やX3 720からスコアが低下している点は3DMark06と同じだが,動作クロックで上回るE7500がもっとも高いスコアを残している。

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 グラフ6のFPS「Left 4 Dead」でも,X4 905eとX3 705eのパフォーマンスは幾分か上位モデルから低下している。とはいえ,Q8400SやE7500に比べると良好なスコアを残している点は注目しておきたい。

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 一方,スコアが揃ってしまいあまり差が見られなかったのが,グラフ7の「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,CoD4)である。CoD4では,動作クロックの差はあまりスコアに反映されておらず,X4 905eやX3 705eのデメリットは感じない。一方で,ほかのゲームタイトル同様,Q8400Sとの差はハッキリと見て取れる。

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 グラフ8の「ラスト レムナント」では「Crysis Warhead」と似た傾向を示した。高解像度ではGPUのボトルネックによりスコアが並んでしまっているが,低解像度ではやはり上位モデルとの差はハッキリしている。また,X4 905eのQ8400Sに対する優位性もかなり大きいのが確認できる。一方で,Crysis Warheadと同じくデュアルコアCPUのE7500がもっとも高いスコアを残している。

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 グラフ9のRTS「Company of Heroes」では,X4 905eとX3 705eが持つL3キャッシュが功を奏している印象を受ける。Q8400Sは2コアあたり共有のL2キャッシュを2MBしか搭載しておらず,そのためかX4 905eとはかなり差が開いてしまっている。一方,X3 705eはE7500と同程度のスコアと言ってよいだろう。

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 最後に「Race Driver: GRID」(以下,GRID)の結果がグラフ10である。GRIDもCompany of Heroesと近い傾向を示すが,トリプルコアとクアッドコアで有意な差が見られる点は興味深い。上位モデルからスコアの低下は免れないものの,Q8400Sと比べるとそのスコアは満足のいくものだ。

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低消費電力は評価できるものの

ゲーム用ではコストパフォーマンスに難


 Phenom IIシリーズにおける省電力モデルを待ち望む声は大きかった。そういった需要に応えるべく登場したX4 905eとX3 705eは,従来モデルから消費電力の低減を実現していることはテストにより確認できた。しかし,消費電力の面では依然としてCore 2 Quad Q8000Sシリーズに利があり,さらなる省電力化を望みたいところが本音であはる。
 しかし,ゲームパフォーマンスに目を移すとQ8400SはL2キャッシュの容量などでデメリットがある点は払拭できず,X4 905eのほうが優れているのも事実。さらに,X3 705eもE7500相当のパフォーマンスを発揮しており,ゲームにおいては申し分ないパフォーマンスを発揮しそうだ。
 惜しむらくは,省電力であることに付加価値を設けてか,価格が高めに設定されている点だ。たとえば,X4 905eの想定価格は2万1000円前後だが,この価格ならX4 940やPhenom II X4 945/3.0GHzが購入できてしまうのである。そのため,これらの省電力モデルは,Phenom IIシリーズの消費電力の高さを懸念していたユーザーにとって魅力的なCPUではあるが,コストパフォーマンスはあまり芳しくない。ゲーマーにとっては,同日に発表されたPhenom II X2 550 Black EditionやAthlon X2 II 250のほうが気になる存在になるのではないだろうか。
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