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AMD,6コアCPU「Phenom II X6」を正式発表。価格は2万円台前半から
当初のラインナップは,フラグシップとなる「Phenom II X6 1090T Black Edition/3.2GHz」(以下,X6 1090T)と,その下位に置かれる「Phenom II X6 1055T/2.8GHz」(以下,X6 1055T)の2モデル。4月29日発売予定で,AMDの日本法人・日本AMDの想定売価は前者が3万5000円前後,後者が2万2000円前後となる。
また氏は,当初,Phenom II X6の出荷予定時期が5月中旬になっていたというエピソードを披露。日本法人からの強力なプッシュで,大型連休初日の販売開始を実現できたとも述べ,AMDの6コアCPUは,休暇期間中に新しいPCを導入したり,自作したいというニーズに,価格だけでなくタイミング的にも応えられる
存在だとアピールしている。
アーキテクチャ自体はPhenom II X4と変わらずも
新機軸「Turbo CORE」で動作クロックを自動ブースト
一つ,従来製品大きく異なるのは,モデルナンバーの末尾にある「T」でその存在が示された「AMD Turbo CORE Technology」(以下,Turbo CORE)だ。Turbo COREはは,消費電力量の目安となるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)値125Wの枠内で,一部のコアを自動的にクロックアップ動作させる機能である。
AMD本社からBob Grim氏(Director of Product Marketing, AMD)が来日し,Phenom II X6に関する説明を行った |
Turbo COREの概要 |
Turbo COREの動作イメージ |
「ベンチマークソフトなどを除くと,大半のソフトウェアは2〜3コア(≒スレッド)しか使っていない」と述べた氏は,一般的なオフィスアプリケーションなどで,Turbo COREのメリットは生きてくるという見通しを示していた。もちろん,高度にマルチスレッド化された例の少ないゲームアプリケーションでも,Turbo COREは相応に生きてくるはずだが,ゲームにおいては,実際の“効き”が,タイトルごとに異なってくると氏は見ているようだ。
「TDPの余裕を見て,一部コアの動作クロックを引き上げる」というアプローチ自体は,競合の「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)と同じ。しかしGrim氏は,「搭載するコア数の半分をアクティブにするTurbo COREのほうが,各コアの伸びしろは大きく,効率がいい」と断言する。
例えば,「Core i7-860/2.93GHz」の場合,Turbo Boost有効時に,シングルコアの最大動作クロックは3.60GHzへ達する。これに対し,X6 1090Tなら,定格3.2GHzのところ,Turbo COREで3コアが3.6GHzへクロックアップ。X6 1055Tも順に2.8GHz,3.3GHzだ。マルチスレッド性能の伸び率は,Phenom II X6のほうが優れているというわけである。
一部の「Intel X58 Express」チップセット搭載マザーボードとi7-980Xの組み合わせでは,TDP値を変更することでTurob Boost有効時の動作倍率を変更できるが,「X6 1090T搭載時に,TDP値の変更や,Turbo COREのターゲットクロック変更ができるかは分からない」(Grim氏)。このあたりは実際のCPUで検証する必要があるだろう。
なお同氏は,Turbo COREを,4コアモデルにも今後採用すると明らかにしているので,今後は,Phenom II X4にも,末尾にTの付いたTurbo CORE対応製品が投入されるはずだ。
OEM関係者によると,Turbo CORE対応モデルは開発コードネーム「Zosma」(ゾスマ)と呼ばれており,第一弾としては「Phenom II X4 960T/3.0GHz」が,Turbo CORE有効時に2コアが3.4GHz動作する製品として用意されているようだ。マザーボードベンダーの中には,Phenom II X3などで実現されていた「無効化されたコアをアクティブにする“アンロック”機能」で,Zosmaコアを6コア動作させる方法を探っているところもあり,4コアモデルの登場に当たっては,このあたりも注目を集めそうである。
「X6 1090Tでは,これまでの製品以上にオーバークロックの耐性を持っている。バージョン3.2.1のAMD OverDriveと,高性能のCPUクーラーを組み合わせれば,空冷で4.2GHz,液体窒素冷却で6GHzに到達できる」(Grim氏)。
Serial ATA 6Gbpsをサポートした
AMD 8シリーズのフルラインナップも発表
AMDはまた,Phenom II X6のリリースに合わせ,AMD 8シリーズのフルラインナップを発表した。
AMD 8シリーズでは,「ATI Radeon HD 4290」グラフィックス機能を統合した「AMD 890GX」が先行発表されていたが,今回は,新世代のフラグシップモデル「AMD 890FX」とその下位モデル「AMD 870」,そしてAMD 890GXの下位モデルとなる「AMD 880G」の3製品が追加されている。
AMD 890FXは,AMD 7時代のフラグシップモデルだった「AMD 790FX」を,「A-Link Express III」に対応させたチップセットという位置づけ。ノースブリッジとサウスブリッジ間の帯域幅を,片方向2GT/sへと高めている。また,ノースブリッジ側のPCI Express(以下,PCIe)インタフェースは,グラフィックス用にPCIe 2.0 x16 ×2(または同x8 ×4)のほか,PCIe x1 ×6,PCIe x4×1の合計42レーンを確保。加えて,IOMMU(Input/Output Memory Management Unit)を実装することによって,仮想化環境におけるI/Oの分離などを可能にしている。これは,Intelが一部製品で実装する「VT-d」(Virtualization Technology for Directed I/O)に対応するものだ。
新しいメインストリーム市場向けチップセットとなるAMD 870は,PCIe 2.0 x16 ×1と同x1 ×6の合計2レーンをサポートする,A-Link Express III対応製品という位置づけだ。基本仕様だとATI CrossFireX(以下,CFX)はサポートされないが,「16レーンをスプリットすることは禁じていない」(AMD)とのことなので,8レーン×2という仕様で2-way CFXをサポートするマザーボードは登場する可能性がある。
最後にAMD 880Gだが,こちらは,「ATI Radeon HD 4250」と名付けられた,DirectX 10.1世代のグラフィックス機能を統合する製品だ。グラフィックス機能のコアクロックは560MHzで,置き換え対象となる「AMD 785G」の同500MHzから,若干のスペック向上を実現している。
一方,組み合わせられるサウスブリッジとしては,AMD 890GXと同時発表された「SB850」の下位モデルとして,「SB810」も発表された。ノートPC用サウスブリッジ設計を共用するSB810の位置づけは,SB850から,Serial ATA 6GbpsやRAID 5対応が省かれた廉価版。説明会では,これら新型チップセットを搭載した各社のマザーボードが展示されたので,本稿の最後で,写真を中心に紹介したい。
気になるPhenom II X6の実力については,別途掲載しているレビュー記事を併せてチェックしてもらえれば幸いだ。