ニュース
DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
→関連記事:AMD,DirectX 11世代のGPUを用いた初の動作デモを実施
Fusionに向けた新体制へ移行
去る米国時間5月6日に,AMDは組織改編を行い,それまでグラフィックスとCPUで別々だった部門(Product Group)を統合。新生プロダクトグループを担当する上級副社長に,S3 Graphics,ATI Technologiesとグラフィックス畑を歩んできたBergman氏を任命した。氏はこの組織改編を「グラフィックスチップとCPUを包括的に開発する体制が整ったことで,Fusion世代のCPU開発を円滑に進めることができる」と歓迎する。
2008 AMD Financial Analyst Dayで公開されたCPUロードマップ。“Fusion CPU”となるAPUは2011年投入へと設定し直された |
こちらは同じイベントで公開されたGLOBALFOUNDRIESのプロセスロードマップ。この時点では,45nm Bulkプロセス技術を利用したGPUの製造も計画されていたが,実施タイミングは32nmプロセス以降ということになったようだ |
ちなみに,AMDの製造部門が分離・独立して誕生した半導体製造会社,GLOBALFOUNDRIESは,昨年末に開催された投資関係者向けミーティング「2008 AMD Financial Analyst Day」の場で,GPUの製造にも利用可能な45nmプロセス技術をすでに立ち上げており,2009年中にもAMD製GPUの製造を可能にする意向を表明していた。しかしBergman氏いわく,「グラフィックスチップの製造は,当面,マルチソース戦略を継続する。TSMCを主軸とした製造体勢を取っていく」。GLOBALFOUNDRIESとGPUの製造で協業を始めるのは「32nmプロセス以降になるだろう」とのことだった。
GPU開発はDirectX 11世代に注力
DirectX 11では,テッセレーション機能の実装に加え,マルチスレッディングやDirectX Compute Shaderのサポートなど,大幅な機能強化が果たされるが,「DirectX 11でマルチスレッディング機能がサポートされたことにより,グラフィックス処理のパフォーマンスは大きく向上するはずだ。ただし,DirectX 11対応ゲームなどが登場するまでは,(従来同様の)シングルスレッド処理になるため,DirectX 10世代のGPUとの違いは出にくいだろう」(Bergman氏)。エンドユーザーがDirectX 11の恩恵を受けられるようになるには,DirectX 11対応アプリケーションが出揃うのを待つ必要があるわけだ。
ところでテッセレータといえば,「Radeon 8500」で基本機能「TruForm」を実装し,Xbox 360のGPU,「Xenon」でもテッセレーションをサポートするなど,7年以上もの時間を軸性に費やしてきたこともあって,Bergman氏は「DirectX 11で,ようやくテッセレータが標準実装されたことは喜ばしい」と,大々的に歓迎する。
プレイヤーとキャラクターやオブジェクトとの距離に応じて,ポリゴンのディテールを切り替えるLOD(Level Of Detail)をゲームタイトルからサポートしやすくなり,より緻密なキャラクター,あるいは背景表現を実現できるテッセレータ。「これまでテッセレータは,『スタンダードではない』として,なかなかゲームタイトルでの実装が進まなかったが,DirectX 11ではこの流れが変わる」と,DirectX 11世代のGPUが搭載する,TruForm以降,第6世代を迎えたテッセレータのパフォーマンスに自信を覗かせていた。
40nmプロセスの今後
もっとも,ATI Radeon HD 4770のバックオーダーは全世界規模で溜まっているのも事実なので,市場へ安定して供給されるようになるのは,7月下旬以降と見るべきだと思われる。「ATI Radeon HD 4770の供給が安定すれば,一部で『ATI Radeon HD 4850』と価格が逆転している,現状のような事態は解消できるだろう」(Bergman氏)。
……以上,Bergman氏の発言からは,DirectX 11を,グラフィックス市場における巻き返しのきっかけにしようと考えていることが強く窺える。OEM関係者によれば,AMDは2009年内に,複数のDirectX 11対応GPUを市場投入する計画とのことで,その状況は,NVIDIAの対応をはるかに先行しているとも伝えられる。
その意味において,ことゲーム市場では,すでにエンジニアリングサンプルの提供が始まったDirectX 11世代のGPUによって,ゲームデベロッパの支持をどれだけ取り付けられるか,そして,それを実現すべく,AMDがデベロッパをどれだけサポートできるかが,市場における本格的な巻き返しのカギを握っていると言っていいだろう。
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 5800
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 4700
- この記事のURL:
キーワード
(C)2009 Advanced Micro Devices, Inc.
(C)2009 Advanced Micro Devices, Inc.