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  • 発表日:2009/09/23
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DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
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印刷2009/06/23 10:34

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DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー

Rick Bergman氏(Senior Vice President, Product Group, AMD)
画像集#002のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 COMPUTEX TAIPEI 2009のレポートでお伝えしているとおり,AMDは,2009年内にDirectX 11対応のGPUを市場投入すると予告し,ウェハや動作デモを公開してみせた。そんな同社でGPUやCPUの開発を指揮するRick Bergman(リック・バーグマン)上級副社長に,COMPUTEXのタイミングで話を聞くことができたので,その内容をお届けしたい。

関連記事:AMD,DirectX 11世代のGPUを用いた初の動作デモを実施


Fusionに向けた新体制へ移行


 去る米国時間5月6日に,AMDは組織改編を行い,それまでグラフィックスとCPUで別々だった部門(Product Group)を統合。新生プロダクトグループを担当する上級副社長に,S3 Graphics,ATI Technologiesとグラフィックス畑を歩んできたBergman氏を任命した。氏はこの組織改編を「グラフィックスチップとCPUを包括的に開発する体制が整ったことで,Fusion世代のCPU開発を円滑に進めることができる」と歓迎する。

画像集#003のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
2008 AMD Financial Analyst Dayで公開されたCPUロードマップ。“Fusion CPU”となるAPUは2011年投入へと設定し直された
画像集#004のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
こちらは同じイベントで公開されたGLOBALFOUNDRIESのプロセスロードマップ。この時点では,45nm Bulkプロセス技術を利用したGPUの製造も計画されていたが,実施タイミングは32nmプロセス以降ということになったようだ
 AMDは当初,2010年に,45nmプロセス世代でCPUとGPUを統合する計画を持っていたが,2008年末にそのロードマップを一新。32nmプロセスが立ち上がる2011年に,最初のAPU(Accelerated Processing Unit)となる「Ontario」(オンタリオ,開発コードネーム)を投入する計画となっている。新生プロダクトグループでは,「今もOntarioの開発を精力的に進めているが,CPUとGPU開発が統合されたことで,GPUコンピューティング機能の効率的な利用や処理の最適化なども加速する」(Bergman氏)見込みだ。

 ちなみに,AMDの製造部門が分離・独立して誕生した半導体製造会社,GLOBALFOUNDRIESは,昨年末に開催された投資関係者向けミーティング「2008 AMD Financial Analyst Day」の場で,GPUの製造にも利用可能な45nmプロセス技術をすでに立ち上げており,2009年中にもAMD製GPUの製造を可能にする意向を表明していた。しかしBergman氏いわく,「グラフィックスチップの製造は,当面,マルチソース戦略を継続する。TSMCを主軸とした製造体勢を取っていく」。GLOBALFOUNDRIESとGPUの製造で協業を始めるのは「32nmプロセス以降になるだろう」とのことだった。


GPU開発はDirectX 11世代に注力


COMPUTEX TAIPEI 2009で公開されたDirectX 11対応GPUのウェハ
画像集#005のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 冒頭で紹介したように,AMDのDirectX 11対応GPUは年内の市場投入が予定されているが,この点についてBergman氏は「トップ・トゥー・ボトムでDirectX 11チップを揃える。今後,ローエンドでもDX10 GPUを出すつもりはない」と明言。「(グラフィックス機能統合型)チップセットも,DirectX 11対応を果たすべく,開発を進めている」と述べる。もちろん,ノートPC向けGPUも同様に,DirectX 11へ向かうようだ。

 DirectX 11では,テッセレーション機能の実装に加え,マルチスレッディングやDirectX Compute Shaderのサポートなど,大幅な機能強化が果たされるが,「DirectX 11でマルチスレッディング機能がサポートされたことにより,グラフィックス処理のパフォーマンスは大きく向上するはずだ。ただし,DirectX 11対応ゲームなどが登場するまでは,(従来同様の)シングルスレッド処理になるため,DirectX 10世代のGPUとの違いは出にくいだろう」(Bergman氏)。エンドユーザーがDirectX 11の恩恵を受けられるようになるには,DirectX 11対応アプリケーションが出揃うのを待つ必要があるわけだ。

DirectX 11世代に向けたAMDの動き
画像集#006のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 そこでAMDは,DirectX 11対応GPUを,6月から,主要なゲームデベロッパやアプリケーションベンダに供給することで,DirectX 11の登場後,速やかに対応アプリケーションが提供される下地作りに取りかかる。ここ数年,ゲームデベロッパのサポートという観点において,NVIDIAに大きく遅れを取っていたAMD――あるいはその前身となるATI Technologies――だが,DirectX 11タイトルの開発でイニシアティブを取っていく姿勢を見せたことは,これからのPCゲームタイトルの動向に,少なからず影響を与えそうである。

 ところでテッセレータといえば,「Radeon 8500」で基本機能「TruForm」を実装し,Xbox 360のGPU,「Xenon」でもテッセレーションをサポートするなど,7年以上もの時間を軸性に費やしてきたこともあって,Bergman氏は「DirectX 11で,ようやくテッセレータが標準実装されたことは喜ばしい」と,大々的に歓迎する。
 プレイヤーとキャラクターやオブジェクトとの距離に応じて,ポリゴンのディテールを切り替えるLOD(Level Of Detail)をゲームタイトルからサポートしやすくなり,より緻密なキャラクター,あるいは背景表現を実現できるテッセレータ。「これまでテッセレータは,『スタンダードではない』として,なかなかゲームタイトルでの実装が進まなかったが,DirectX 11ではこの流れが変わる」と,DirectX 11世代のGPUが搭載する,TruForm以降,第6世代を迎えたテッセレータのパフォーマンスに自信を覗かせていた。

長年に亘(わた)って取り組んできたテッセレーション機能がDirectX 11でスタンダードとなった。そんなハードウェアのアドバンテージを,DirectX 11世代のGPUにおける武器にしたい考えをBergman氏は示す
画像集#007のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー 画像集#008のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー

DirectX 11のDirectX Compute Shaderは,物理演算やAI機能を実装する標準プラットフォームとしても期待される
画像集#009のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 また,DirectX Compute Shaderは,物理シミュレーションやAIの積極的な実装を可能にするプラットフォームとして期待されるが,AMDはこれを全面的にサポートする。Bergman氏は,「PhysX」の名こそ,挙げることを避けたものの,「ハードウェアディペンデントな物理演算プラットフォームでは普及は難しい」として,業界スタンダードとしてのDirectX Compute Shader,そしてHavokを普及させていく姿勢を見せた。Intel傘下のHavok.comと協業することを辞さないあたりからは,数でNVIDIAを圧倒しようといった姿勢も見て取れよう。


40nmプロセスの今後


TulがCOMPUTEX TAIPEI 2009の会場で展示していた,オリジナルデザインのATI Radeon HD 4770搭載グラフィックスカード
画像集#010のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 深刻な品不足が続く「ATI Radeon HD 4770」。巷には,TSMCの40nmプロセスに欠陥があったなど,さまざまな噂が錯綜しているが,Bergman氏は,「40nmプロセスの歩留まり対策は,TSMCと連係して5月から取り組んでおり,改善が見られるようになってきた」と説明。ATI Radeon HD 4770の大量出荷が,6月末以降には可能になるという見通しを明らかにした。
 もっとも,ATI Radeon HD 4770のバックオーダーは全世界規模で溜まっているのも事実なので,市場へ安定して供給されるようになるのは,7月下旬以降と見るべきだと思われる。「ATI Radeon HD 4770の供給が安定すれば,一部で『ATI Radeon HD 4850』と価格が逆転している,現状のような事態は解消できるだろう」(Bergman氏)。

COMPUTEX TAIPEI 2009の会場で展示された,GDDR3メモリ版のATI Radeon HD 4770搭載グラフィックスカード
画像集#011のサムネイル/DirectX 11で攻勢に出るAMD〜Rick Bergman上級副社長インタビュー
 もう一つ,COMPUTEX TAIPEI 2009では,MSIが「GDDR3メモリと組み合わせたATI Radeon HD 4770カード」を展示して話題を集めたが,これについて氏は,ATI Radeon HD 4770の「RV740」コアに,GDDR5版だけでなく,GDDR3版のSKU(Stock Keeping Unit,「ラインナップ」とほぼ同義)があることを認めたうえで,「現時点ではGDDR5版のATI Radeon HD 4770に対する需要が非常に高いため,GDDR3版よりもGDDR5版を優先する」と断言。また,「メモリ帯域はパフォーマンス面でもGDDR5版に分があるのは確かだ。それを覆すメリットは見当たらない」として,少なくとも当面の間,“GDDR3版のRV740搭載グラフィックスカード”を,AMDとして正式に投入する計画はないとした。


 ……以上,Bergman氏の発言からは,DirectX 11を,グラフィックス市場における巻き返しのきっかけにしようと考えていることが強く窺える。OEM関係者によれば,AMDは2009年内に,複数のDirectX 11対応GPUを市場投入する計画とのことで,その状況は,NVIDIAの対応をはるかに先行しているとも伝えられる。
 その意味において,ことゲーム市場では,すでにエンジニアリングサンプルの提供が始まったDirectX 11世代のGPUによって,ゲームデベロッパの支持をどれだけ取り付けられるか,そして,それを実現すべく,AMDがデベロッパをどれだけサポートできるかが,市場における本格的な巻き返しのカギを握っていると言っていいだろう。
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