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AMD,40nmプロセスで製造される初のGPU,「ATI Radeon HD 4770」発表。1万円台前半で約1TFLOPSを実現
4Gamerでは別記事にてレビューをお届けしているが,本稿では,AMDの日本法人である日本AMDが開催した,報道関係者向け事前説明会の内容を中心に,その技術的なポイントをまとめてみたい。
→HD 4770レビュー記事
40nmプロセス技術で製造される初のGPUは
1万円前半の価格で約1TFLOPSの演算能力を実現
Zvika Greenstein氏(Manager, Product Marketing, Desktop Discrete Graphics Division, AMD) |
世界初の40nmプロセス技術採用GPUと謳われる |
とくに注目すべきは,GPUとしてだけではなく,CPUを含むプロセッサ製造技術において,2009年4月時点における最先端の微細プロセスとなる,TSMCの40nmプロセスルールを採用していること。事前説明会でHD 4770を紹介したAMD本社のZvika Greenstein(ズビカ・グリーンスタイン)氏は,HD 4770が「GeForce 9800 GT」の対抗製品であると明言したうえで,「GeForce 9800 GTは,『GeForce 8800 GT』のリブランド品で,『シールを貼り替えている』だけだ。対して,HD 4770にはイノベーションがある」と,競合に対する優位性を強調する。
先ほど,「最適化された」と指摘したSP数は640基。RV7xxアーキテクチャでは,“4SP+1ビッグSP+1分岐ユニット”をひとまとめの「SIMDユニット」とし,さらにSIMDユニット16基を「SIMDコア」と呼んでいる(関連記事)。このSIMDコアを10基搭載し,800SPとなっていたのがHD 4800シリーズだったが,HD 4770では,このSIMDコアが8基となっているので,「5(SP)×16(SIMDユニット)×8(SIMDコア)=640基」というわけだ。
テクスチャユニット数は,HD 4800シリーズと同じく,1SIMDコアあたり4基(相当)。SIMDコアは8基なので,「4(テクスチャユニット)×8(SIMDコア)=32テクスチャユニット」ということになる。
SP数はHD 4800シリーズと比べると160基少ないHD 4770だが,750MHzと,高く設定されたコアクロックの効果もあって,性能指標は960GFLOPSを達成している。「Terascale Graphics Engine」として,HD 4800シリーズが大々的に発表されたのは2008年6月だったので,あれから1年足らずで,想定売価109ドルのGPUが1TFLOPS近い数字を示すというのは実に感慨深い。
コアクロック750MHzということで,消費電力が気になるかもしれないが,カード全体での公称最大消費電力はわずか80W。HD 4850の公称スペックは110Wだったので,パフォーマンスはほぼ同じままに,30%近く,省電力化を実現したことになる。
HD 4770では,消費電力当たりの性能が過去最高を記録したとされる |
GeForce 9800 GTと比べて,あらゆるポイントで優位という |
GDDR5の採用で
128bitメモリインタフェースの弱点を克服
グラフィックスメモリ容量は512MBが標準仕様とされる。メモリバスは128bit。HD 4850やGeForce 9800 GTの同256bitと比べて見劣りすると思うかもしれないが,この点においても抜かりはない。
HD 4770では,グラフィックスメモリにGDDR5を採用することで,バス幅の狭さを補うのである。GDDR5は,動作クロックの4倍というデータレートを実現するため,バースト転送時のピーク性能を同一クロックで比較するとGDDR3の2倍。いってしまえば,ピーク性能は,GDDR3の256bitバスと同等なのだ。
下の表は,ミドルクラスGPUの主なスペックをまとめたものだが,実際,メモリクロックが800MHzでありながら,HD 4770のメモリバス帯域幅はHD 4850にかなり近いところまで迫っている。
メモリインタフェースが128bitなのにも関わらず,レンダーバックエンド(ROP:Rendering Output Pipeline)数がHD 4800シリーズと同じになっているのも,GDDR5採用の恩恵だ。
カードベンダ−のオリジナルデザインでは,シングルスロット仕様も登場する見込み。しかし,省電力とはいえ,6ピンのPCI Express外部給電が必要で,動作クロックも高いという事実があるため,シングルスロット仕様に収めるには,(より背の低いコンデンサなど)高価な部材を揃えねばならない。このクラスのグラフィックスカードでは販売価格が重視されることも考えると,HD 4770カードの主流は2スロット仕様になると予測される。
“HD 4890 X2”は保留中
次世代GPUは2009年第3半期にアナウンスへ
HD 4770搭載カードは,当初,1万3000〜1万4000円程度の価格で流通することになる見込みだ。
HD 4770登場後のAMD製GPUラインナップは下記のとおりで,HD 4770は,HD 4830を置き換える。一方,先ほどパフォーマンスが「ほぼ拮抗」すると紹介したHD 4850の販売は今後も継続されるという。
ウルトラハイエンドを担うデュアルGPUソリューション,「ATI Radeon HD 4870 X2」も,販売は継続される。気になるのは,“ATI Radeon HD 4890 X2”が出てくるのかどうかだが,Greenstein氏はこれについて「予定がないわけではないが,今は話すタイミングではない」という言い方をしていた。同時に氏は,DirectX 11世代の次世代GPUについて,「2009年第3四半期には正式なアナウンスをしたい」と表明していたので,そのタイミングとのバランス調整を行っているのだろう。次世代GPUが予定どおり登場するなら,“HD 4890 X2”は幻で終わる可能性が高そうだ。
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 4700
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