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F1 2009
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世界的不況による大手撤退,名門を抑え新興勢力が活躍するなど波乱続きの2009年を収録 「F1 2009」のレビューを掲載
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印刷2010/01/19 11:00

レビュー

世界的不況による大手撤退,名門を抑え新興勢力が活躍するなど波乱続きの2009年を収録 「F1 2009」のレビューを掲載

画像集#001のサムネイル/世界的不況による大手撤退,名門を抑え新興勢力が活躍するなど波乱続きの2009年を収録 「F1 2009」のレビューを掲載
 「Colin McRae: DiRT 2」「RACE DRIVER GRID」など多くのレースゲームを開発・販売する,イギリスのゲームメーカーCodemastersの日本法人コードマスターズから,「F1 2009™」が2009年12月17日にWiiPSPの2機種で発売された。
 近年はSony Computer EntertainmentがF1のライセンスを持っていたため,ソニー以外のハードではF1のゲームを遊ぶことができなかったのだが,今回Codemastersが新たにライセンスを獲得したことで,久しぶりに幅広いプラットホームでF1ゲームが展開されることになった。なお,今回のレビューではWii版を使用している。

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本物にこだわったライセンス作品


 本作はタイトルにもあるように,FIA F1ワールドチャンピオンシップにおける2009年度のデータを使用した作品だ。ゲームにはジェンソン・バトン(ブラウンGP)やセバスチャン・ベッテル(レッドブル)ら20名のドライバーが登場する。収録コースも2009年度に開催されたレースに基づき,鈴鹿サーキット(日本)やシルバーストンサーキット(イギリス),最終戦の舞台となったヤス・マリーナサーキット(アブダビ)など,全17コースを走ることができ,ナイトレースとなったシンガポールGPもしっかりと再現されている。

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 また,2009年度のF1は「KERSシステム」(馬力を一時的に上げて加速するシステム)が搭載されたマシンも話題になったが,それもゲーム内で再現されている。このように,すべて実在のドライバー,マシン,コースが使われるのは,F1のオフィシャルライセンス作品ならではの強みといえるだろう。ちなみにブラジルGPとアブダビGPに参加した小林可夢偉(トヨタ)は,リザーブドライバーという立場だったため,本作には登場しない。

 大荒れとなった2009年度のFIA F1ワールドチャンピオンシップだが,周知のとおり,ホンダ撤退によってシーズン開幕前までは失業の危機にあったジェンソン・バトンが年間王者に輝き,彼の所属チームであるブラウンGPがコンストラクターズワールドチャンピオンの栄光を手にした。余談だがブラウンGPは設立1年目で優勝を飾り,わずか1年で事実上消滅することになった(2010年は新たにメルセデスGPとして参戦)。

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 バトンは,現実のレースでは初戦のオーストラリアGPから第7戦のトルコGPまでは表彰台に上り絶好調だったが,後半はやや苦しい戦いとなった。ゲームのほうではどうかといえば,どのレースでもほぼトップ集団を走っており,かなり手強い相手となっている。多くのドライバーが登場するが,バトンが最大のライバルといえるだろう。
 ちなみに,ゲーム内ではメールでプレスの取材情報が見られるのだが,バトンがプレイヤーに対し「○○(プレイヤーの名前)はチャンピオンの品格がない」「○○はコース上でもランキング上でも追い抜く」と,結構敵意むき出しの発言をしてきたりする。
 ほかのチームでは,レッドブルやマクラーレンのドライバーが上位にいて,トロ・ロッソやフォース・インディアなど,新興のチームは下位で争っている。このあたりは実際のレースの成績でもそうなので,ゲーム内でもうまく反映されているといえるだろう。

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 では「F1 2009」のメインとなる「キャリアモード」について紹介しよう。このモードは3シーズンにわたって行われる長期のシリーズだ。プレイヤーは無名のドライバーとなり,まずは所属チームを決めることになる。いくつかのチームからオファーをもらえるので,それに応じるとテストを受けることになり,ここで定められたラップタイムを時間内に更新すればクリアとなる。
 無事に契約できた場合は,チームから「ドライバーズポイントを30ポイント獲得してほしい」というように具体的な要望を伝えられたうえで,専属ドライバーとして活動していくことになる。勝利を重ねていくことで,評判はどんどん高まっていくが,逆に結果を出さないとチームから苦言を呈され,条件を達成できなかった場合はシーズン終了とともに契約解除となり,また新たにチームを探して契約をすることになる。
 シーズン終了後は引き続き同じチームで戦ってもいいし,ほかのチームからオファーをもらえることもあり,移籍して別のマシンに乗り換えて戦うといったこともできる。このように,現実のレースの世界でも起こりえるシチュエーションをゲームで体験できる。

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 レースの流れは,現実のレースと同様に金曜プラクティスが2回,土曜プラクティスが1回,クオリファイ(予選。ノックアウト方式で3回行われる)があり,ここでの結果が本選のスターティンググリッドに影響する。ガレージではマシンのチューニング設定が変えられ,コースごとの調整も可能。ただ専門用語が多く,ヘルプメッセージもないため,自動車に関する知識がある程度必要になる。ここはちょっと不親切だと感じた部分だ。
 なお,練習走行,予選ともに納得いくタイムを出せたら,もうガレージに戻って大丈夫。いきなり本選に進むことも可能だが,この場合は予選に参加していないため,後方からのスタートとなってしまい,上位を狙うのが厳しくなってしまう点に注意。ちなみに,予選通過やポールポジションを獲得することで,アワードを獲得できる。これを収集するという楽しさもある。

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 キャリア以外のモードには,好きなドライバーを選んでチャンピオンシップの1シーズンを戦っていく「チャンピオンシップ」や,同じく好きなドライバーで練習→予選→本戦といった流れを楽しめる「グランプリウィークエンド」がある。現実のレースでは振るわなかったドライバーを選んで,上位入賞を実現してみたり,グランプリで優勝を狙ってみたりと,ゲームならではの楽しみ方ができるモードだ。
 このほか,提示された課題をクリアしていく「チャレンジモード」や,タイムを競う「タイムトライアル」など,豊富なモードが用意されている。とくにタイムトライアルは,トレーニングを有効にすることで,コーナーへの進入時にギアは何速に入れるといいか,速度はどれくらいならいいかといった情報を画面上で教えてくれるので,コースの構成を覚えるのにも適している。
 また,画面分割で対戦できるマルチプレイにも対応。対戦のほか,2人でグランプリレースにエントリし,勝ち抜いていくということも可能だ。2人で同じチームを使ってもいいし,別々のチームを使って競ってもいい。

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初心者にも配慮した豊富なアシスト機能に注目


 F1マシンは最高速度が300km/h以上出る超高速のレーシングカーであり,制御が非常に難しい。だが本作では,走行ラインや加速する場所,ブレーキングの場所を分かりやすく表示できたり,衝突予知ブレーキアシストを有効にすれば,コーナー進入時に自動的に最適な速度に落としてくれたりなど,アシスト機能が充実している。実際,衝突予知ブレーキアシストを使ってみると,アクセルとステアリングの操作だけに集中すればよくなり,コーナーをクリアするのがとても楽になった。「レースゲームって苦手で」という初心者でも,遊びやすいよう作られている印象を受けた。

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 敵となるドライバーの挙動だが,画面に表示される推奨ラインどおりに意地でも走ろうとする傾向がある。こちらがライン上を走っていた場合,ガンガン車体をぶつけてきて,コース外に弾き飛ばそうとする荒っぽさが気になった。また,AIのレベルは「イージー」なら初心者でも苦労なく相手にできるレベルだが,それ以上になるとかなり手ごわい相手になる。とくに「ハード」になると,わずかのミスでも一気に突き放されるし,前に出ると後ろから煽ってきて隙あらば追い抜こうとしてくるので,ブロックしながら走らねばならない。精神的にもタフさの要求される戦いとなる。

 先にも触れた「KERSシステム」は,加速の補助やライバルを追い抜くときなどに使うと効果的だ。実際のF1では一部チームのみが使用していたが,ゲーム内では全チームが装備している。これはほかのレースゲームでいうところのニトロのようなものなので,特定のチームでしか使えないとなると不公平になってしまう。ゲームバランスなどを考慮して,実際は使用していないチームでも使えるようにしたのだろう。KERSは1周ごとに決められた量を使用可能で,使い切った場合でも1周走りきるとまた自動的に回復する。

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 実際には長時間のレースとなるF1だが,本作ではデフォルト周回数が3周となっており,手軽に遊べる。もちろん,実際のレースと同じ設定にすることも可能だ(実際のレースの10%,25%,50%,75%,100%から選べる)。同時に燃料とタイヤの消耗,パーツの破損を有効にすれば,現実のレースのように,どのタイミングでピットに入るか戦略的な要素が発生し,エンジンブローを起こしてリタイアするマシンも出てきたりして,スリリングなレースを楽しめるようになる。ただし,一つのレースを終えるのに1時間以上かかってしまうが。


全体的にストイックな仕上がり
ストイック過ぎて少し寂しいかも?


 Wiiで初となるF1ゲームとなった本作だが,オフィシャル作品ならではのデータのリアルさだけではなく,豊富なアシスト機能で走りの楽しさを実現しており,F1にそれほど知識のない筆者でも楽しめた。

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 キャリア以外ではタイムアタックが面白く,自分の実力では銀メダルを獲るのがやっとなのだが,マシンのチューニング画面とにらめっこし,タイムの更新に一喜一憂している。全部のコースで金メダルを獲得するのは,ちょっと難しそうだ。
 気になった点としては,レース中BGMがなく,マシンのエンジン音,ピットからの無線音声,観客席からの歓声など,環境音しかないというのは,ちょっと地味な印象を受けた。また,さまざまな課題に挑戦していくチャレンジモードは,バリエーションがもうちょっとあっても良かったのではなかろうか。

 余談となるが,すでに開発元のCodemastersから告知が出ているように,PlayStation 3Xbox 360PCの三機種で「F1 2010」の発売が決定している(日本法人からのPC版発売は未定)。こちらの続報にも期待したい。

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