レビュー
“男の娘”抜きでは生きていけなくなるかもしれない「アイドルマスター ディアリースターズ」のレビューをUp
ご存じのとおり,「アイドルマスター」(以下,アイマス)シリーズは,プレイヤーが765(ナムコ)プロダクションのプロデューサーとなって,お気に入りのアイドル(ユニット)を育て,トップアイドルを目指すアイドル育成シミュレーションだ。ステージ鑑賞に特化したXbox 360用ソフト「アイドルマスター ライブフォーユー!」はやや例外としても,これまでに発売されたアーケード版,Xbox 360版,PSP版のすべてを通じて,この基本的なスタイルは変わらない。
しかし,シリーズ最新作となる本作では,舞台が765プロダクションから876(バンナム)プロダクションに移り,ゲームシステムもこれまでの育成シミュレーションからアイドル視点のアドベンチャーゲームへと大きく変化している。そこで今回は,まず本作の主役であり,シリーズ初登場となる三人のアイドル候補生から紹介していこう。まあ,主に紹介しているのはその中の一人なんですがね……。
アイマスシリーズにも,ついに“男の娘”が登場
本作には,876プロダクションの新人アイドルとして,日高 愛,水谷絵理,秋月 涼の三人のアイドル候補生が登場する。それぞれのプロフィールやプロローグエピソードについては別記事で詳しく紹介しているので,そちらを併せて参照してほしいが,三人の中でも飛び抜けているのが,のちに“実は男の子だった”ことが公開された涼の設定であることに異存はないだろう。うーむ,これが最近流行の“男の娘”というやつか……。
日高 愛のプロローグエピソードは「こちら」 |
水谷絵理のプロローグエピソードは「こちら」 |
秋月 涼のプロローグエピソードは「こちら」 |
涼はアイマスシリーズでおなじみのアイドル,秋月律子のいとこに当たり,男の子から告白されてしまうほどの美少女顔の男の子だ。しかし本人はもっと男らしくなりたいと願っており,男性アイドルとしてデビューし,イケメンになりたいという理由から876プロの門を叩くのだが,876プロの石川社長からあっさりと却下されてしまう。そのとき石川社長は,「アイドルとしての才能に男も女も関係ない。女の子アイドルとしてデビューして実力を示せば,男性アイドルとして再デビューさせる」みたいな,もっともらしいこと言うのだが,イヤイヤイヤ,その理屈はおかしいから!
愛と絵理のプロフィールについても軽く紹介しておくと,愛は伝説のスーパーアイドル日高 舞の娘であることにコンプレックスを持っている女の子,絵理はネットアイドル出身で人一倍気弱な女の子という設定だ。二人ともちゃんと女の子なので,「残りの二人ももしや……」と戦々恐々としていた人は安心してほしい。
そしてここで,女の子二人に女装アイドル一人という,アイマス史上かつてない緊急事態を重く見た筆者は,生まれてこのかた,これほど真剣に考えたことがないというほど慎重に検討を重ねた結果,三人のうちで涼が最も可愛いという結論に達した。愛も絵理も,決して嫌いなわけではない。というか,むしろ好きだ。だがそれでもやはり,外見も性格も涼こそが筆者の理想であるという内なる真実は小揺るぎもしない。もういっそ,男の子でもいいから結婚してほしい。
本作のメインとなる「ストーリー」モードでは,プレイヤーはこれら三人のアイドル候補生の中から一名を選択し,アイドル自身の視点からストーリーを進めていくのだ。
ゲームシステムは変化したが,プレイフィールはまさに“アイマス”そのもの
まず,本作における営業は,新人アイドルとしての挨拶回りや売り込みなどの純粋な営業活動より,ライバルのアイドルや事務所の仲間といった,周囲のさまざまな人物とのコミュニケーションがメインになっている。さらに,絶対にこなす必要がある営業には赤い「!」がついており,これをこなさないことにはストーリーが一切進展しない。営業活動中にときおり選択肢が現れ,どれを選ぶかによって営業の成功度合いと,入手できる「思い出」の数が変化するのは従来どおりだ。
これまでのアイマスシリーズのオーディションは,ボーカル/ダンス/ビジュアルの三人の審査員が登場し,それぞれの審査員の「興味ゲージ」を見ながらアピールを行うという方式だった。しかし今回は,そのとき最も流行しているイメージの審査員一人が登場し,従来は切り札的存在だった「思い出ルーレット」のみで合否を決めるというシンプルなシステムに変更された。思い出ルーレットは営業で獲得した思い出の数だけチャレンジできるので,日頃からより良いコミュニケーションを心がけるのが合格への近道だ。
とはいえ,必須の営業だけをこなして,いきなりオーディションに挑むのはさすがに無謀というものだ。そこで本作でもレッスンを行い,アイドルの「イメージレベル」をアップさせる必要がある。本作からは,選べるレッスンはボーカル/ダンス/ビジュアルの3種類だけになり,従来のような「ボーカルとダンスを少しずつアップさせる」といった複合系のレッスンはなくなっている。基本的な方針としては,そのときの流行イメージを高めるレッスンを中心に受けるのがいいだろう。
ちなみに,レッスンを受けると時折「振付パネル」を入手できる。これは本作からの新要素の一つで,振付パネルをセットすることでダンスの振付を変更し,パネルごとに設定されたイメージも上昇するという効果が得られる。うまく使いこなせばオリジナルのダンスを作成でき,オーディションも有利になるのだが,適当に使うとバタバタしてみっともないダンスになってしまうのが悩みどころだ。
アイマスファンはもちろん,アイマス初心者にもオススメ
全体的なゲームシステムに目を向けると,本作はこれまでのアイマスシリーズのエッセンスを抽出し,より分かりやすくシンプルな形に再構成したものといっていいだろう。同時に,ゲームの難度もぐっと引き下げられており,シリーズ未経験者でも無理なく最後まで楽しめるようになっている。
本作ではオーディションの合格/不合格によってストーリーが分岐する,マルチエンディング方式が採用されているが,活動期間の制限なしで何回でもレッスンを受けられるため,じっくり取り組めば合格するのは難しくない。また,従来のオートセーブ方式から任意セーブ方式に変更され,万が一オーディションに失敗しても,以前のセーブデータからすぐにやり直しができる点も,ゲーム全体の難度を下げるのに一役買っている。
こうした変化は,本作が従来のような育成シミュレーションではなく,アドベンチャーゲームであるということを考えれば十分に納得がいくものなのだが,これまでバリバリとアイドルを育成してきたシリーズ経験者にとっては,ゲームシステムやボリュームの面で物足りなさを感じられる要素かもしれない。
アイマスファンならば,本作をより楽しめることは間違いないが,上記のような理由から,本作はこれからアイマスに触れてみようという人のための,入門作としても適しているといえる。興味を持っていたものの,これまでアイマスシリーズに触れる機会がなかった人は,本作でアイマスデビューを果たしてみてはいかがだろうか。
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アイドルマスター ディアリースターズ
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(c)窪岡俊之 (c)2002-2009 NBGI PROJECT IM@S
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