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ALIENWAREノートPC専用の外付けグラフィックスボックス「Graphics Amplifier」レビュー。“夢のデバイス”は本当に使えるのか?
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印刷2015/04/25 00:00

レビュー

ノートPC用外付けグラフィクスボックスは本当に使えるのか

ALIENWARE Graphics Amplifier

Text by 宮崎真一


ALIENWARE Graphics Amplifier
メーカー:ALIENWARE(Dell)
問い合わせ先:問い合わせ先一覧ページ
価格:3万2184円(税および配送料込み,2015年4月25日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / ALIENWAREノートPC専用の外付けグラフィックスボックス「Graphics Amplifier」レビュー。“夢のデバイス”は本当に使えるのか?
 Alienware製ノートPCの2015年春モデル「ALIENWARE 17」「ALIENWARE 15」「ALIENWARE 13」は,いずれも,外付けグラフィックスボックス「ALIENWARE Graphics Amplifier」(以下,Graphics Amplifier)に対応している。購入時のBTOオプションとして選択可能となっており,一部のラインナップでは標準添付だ。

 Graphics Amplifierとは,ノートPCでデスクトップPC向けのグラフィックスカードを利用可能にする,いわゆる外付けグラフィックスボックスである。ノート派PCゲーマーの見果てぬ夢である「自分でGPUをアップグレードする」ことを実現する製品ということで,大いに注目している人も多いのではないだろうか。
 今回は,2015年春モデルのALIENWARE 15とGraphics Amplifierを用意できたので,その使用感や性能を徹底的に掘り下げてみたい。

ALIENWARE 15と組み合わせた状態のGraphics Amplifier。つなぎ方などは後ほど紹介する
画像集 No.015のサムネイル画像 / ALIENWAREノートPC専用の外付けグラフィックスボックス「Graphics Amplifier」レビュー。“夢のデバイス”は本当に使えるのか?

 なお,ALIENWARE 15本体のレビューはすでに掲載済みなので,こちらも合わせて参照してほしい。

「ALIENWARE 17」「ALIENWARE 15」「ALIENWARE 13」一挙検証(1)「ゲーマー向けノートPCの代名詞」最新モデルが持つ速度性能を明らかにする

「ALIENWARE 17」「ALIENWARE 15」「ALIENWARE 13」一挙検証(2)使い勝手を徹底的に掘り下げた先で見えてきたものとは



2スロット占有タイプのカードを装着可能

グラフィックスカード着脱経験があれば取り付けは簡単


15インチ級ノートPCとしてはそれなりに大きいALIENWARE 15と並べても,なかなか威圧感のあるサイズだ
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 まずは外観からチェックしていこう。Graphics Amplifierは,奥行きの長い直方体のような形状のボックスで,サイズは実測で182(W)×402(D)×170(H)mm。ノートPCの横に置くとかなり大きく見えるが,ゲーマー向けのデスクトップPCに比べればかわいいものだ。
 前面には,エイリアンの顔を模した「ALIENHEAD」があるので,これが電源ボタンかと思う人がいるかもしれないが,実は違う。Graphics Amplifierに電源ボタンはなく,電源オン/オフは接続したノートPCと連動する仕組みである。

Graphics Amplifierの背面。左側に電源ユニットがあり,右側に2スロットサイズのグラフィックスカードを装着。電源とカードの間にUSB 3.0やGraphics Amplifier接続ポートが配置されている
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 背面には,Graphics AmplifierとノートPCを接続するための専用端子「Alienware Graphics Amplifier Port」(以下,Graphics Amplifier接続ポート)と,USB(Type-A)ポートが4つ装備されており,4系統のUSB 3.0ハブとしても利用可能だ。

 ノートPC側の接続用ポートとGraphics Amplifier接続ポートは,付属の専用ケーブルでつなぐようになっている。ケーブル長は約2mもあり,根元付近以外はそれほど固くもないので,引き回しは比較的容易と言っていい。

ノートPCとGraphics Amplifierをつなぐ専用ケーブルは,フラットな横長の端子で接続する格好(左)。ケーブル長は2mもあるので,Graphics Amplifierは,ノートPCやデスクトップのある机上ではなく,別の場所に置いておくということができる
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 PCにつなぐ側のコネクタには,電源ステータスLEDとUndock Button(国内では「グラフィックス同期ボタン」)があり,このボタンを押せば,ノートPCとGraphics Amplifierをまとめてシャットダウンできる。Graphics Amplifierを外すときには,これを押してPCをシャットダウンしましょう,というわけだ。シャットダウン処理中はLEDが赤く点滅するので,ケーブルを取り外すのはLEDが消灯するのを待つ必要がある。

ノートPCに接続する側のコネクタの上側には,接続解除用のUndock Buttonがある(左)。動作中はコネクタの根元にあるLEDが白く光る仕組みだ(右)
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Undock Buttonの機能は,設定ソフト側で変更できる。それにしても「Alienwareグラフィックス増幅器」という日本語訳は何とかならなかったのか
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本体カバーのロックは,背面に用意されたスライドスイッチを横に動かすだけで,簡単に解除可能。本体後方からぱかっと開けることができる
 ちなみに,ALIENWARE 15にプリインストールされている設定ソフト「Alienware Graphics Amplifier Software」(以下,Graphics Amplifier Software)を使うと,Undock Buttonの役割を再起動に変更したり,シャットダウンするか再起動するかを画面上で選択できるようにしたりできる。

 Graphics Amplifier本体に話を戻そう。
 Graphics Amplifier背面にあるスライド式ロックを解除して天板部分をはね上げると,カバーが外れて内部にアクセスできる。その内部を覗き込むと分かるが,そこにあるのは,最大出力460Wの電源ユニットと電源ケーブル,PCI Express 2.0 x4接続となるPCI Express x16スロットを備え,USB 3.0ハブ機能付きカードが差さっている小型の基板,そして90mm角のケースファンといったところだ。

内蔵する電源ユニットは最大出力460W(左)。グラフィックスカード1枚とUSBデバイス程度なら,まず問題なく駆動できると判断できるレベルにある。右は基板に寄ったところで,PCI Express x16スロットと,標準で“USB 3.0ハブ機能カード”の差さったPCI Express x8スロットが見える
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 PCI Epxress補助電源コネクタは6ピン,8ピン両対応のものが2系統。工場出荷時では本体底面にあるダミーコネクタに取り付けられており,必要なものだけここから外して使えるようになっている。このあたりは,シンプルな実装ながら,ケーブルの取り回しやすさに貢献している印象だ。

補助電源ケーブルは,左のような感じで,本体底面に固定されている。右はケーブルを外した状態でダミーコネクタに寄ったところ
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 ケーブルだけでなく,カードを差すための空間も比較的余裕がある。仕様上,搭載できるのは2スロット占有タイプのGPUクーラーを搭載するカードまでなのだが,この制限に収まっているなら,少しくらいクーラーが大きくても搭載可能な印象だ。ALIENWAREは対応するカードのサイズ制限を示していないのだが,実測では,カード長で約330mm,Graphics Amplifierのスロットに差した状態における縦方向の幅は約125mm程度まで大丈夫な雰囲気がある。

開けたGraphics Amplifierに(左上),3連ファン仕様の大型クーラー「WINDFORCE 3X 450W」を搭載した,カード長実測281mm(※突起部除く)のGIGA-BYTE TECHNOLOGY製「Radeon R9 290X」カード「GV-R929XOC-4GD」を差し(右上),補助電源ケーブルを配線し(左下),カバーを閉じた(右下)。一連の作業にあたって,窮屈な思いをすることはない
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 総じて,1回でもデスクトップPCのグラフィックスカード交換を行ったことがあれば,造作もなく作業できるレベルにあるといえる。この点は実に素晴らしい。それでも不安な人のためには,下に示したとおり,手順紹介ムービーも用意されているので,おそらくここで挫ける人はいないのではなかろうか。



思い切りクセのあるセットアップ周り

統一的な解説は一切用意されていないのが問題


 問題はここからだ。

 ズバリ書いておくと,「グラフィックスカードを差したあと,どうすればいいのか」に関するセットアップガイドは用意されていない。ALIENWAREの英語サポートフォーラムにFAQがある程度で,日本語の説明に至っては,原稿執筆時点における2015年4月24日時点で皆無だ。Graphics Amplifierの国内販売が始まってから約半年が経過したが,依然として,日本語によるガイドは何もない。
Graphics Amplifier Softwareにはビデオチュートリアル。いま知りたいのは外し方じゃなくて「動かし方」なんだよ……
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 唯一の希望である英語FAQも,通り一遍な手順の紹介があるだけで,Graphics Amplifierに差したGPUがGeForceのときとRadeonのときで手順は同じなのか,もしうまく動かなかったときどこを確認すべきかといった説明はない。付け加えると,前出のGraphics Amplifier Softwareにはビデオチュートリアルが用意されているのが,教えてくれるのは「Graphics Amplifierの外し方」である。

 「それくらい簡単なんでしょ?」と思った読者も中にはいるかもしれないが,もちろん,そんなことはない。ユーザーが一番知りたいのは「セットアップ方法」なので,このあたりは即刻改善してほしいところだ。
 ……と嘆いたところで始まらないので,今回は,「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)と「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)の両リファレンスカードを用い,試行錯誤した末の「おそらくこうやれば問題なく動作するはず」というポイントを,以下,まとめてみたい。


GTX 980をGraphics Amplifierで使うにあたっての手順と注意点
(2015年4月24日版。今後,変わる可能性があります)

 これは英語サポートフォーラムのFAQに書かれているのだが,GeForce搭載グラフィックスカードを利用する場合は,Graphics AmplifierをALIENWAREノートPCと接続する前に,PC側で,GeForce Driverを展開しておく必要がある。別途「Alienware Club」という英語コミュニティに投稿されたAlienware公式のコメントによれば,デスクトップ用ではなくノートPC用の,Release 344.60以降でなければならないとのことだ。
 今回筆者は,ノートPC向けの64bit版「GeForce 350.12 Driver」をダウンロードし,インストーラを起動して,インストールファイルを C:\NVIDIAに展開している(※カスタムインストール時は別の場所も指定できる)。

 GeForce Driverのインストールファイルを展開したら,いよいよ(GTX 980カードをあらかじめ差しておいた)Graphics AmplifierをノートPCと接続するわけだが,ここにも注意すべき点がある。それは,まずALIENWAREノートPCを起動し,その後,Graphics Amplifierを接続しなければならないことだ。
 デスクトップPCの“常識”だと,ALIENWAREノートPCとGraphics Amplifierを接続したうえで,ノートPCの電源を入れるべきだと考えがちだ。付け加えると,前述のサポートフォーラムにもそう書かれているのだが,この状態では,何度やっても,ALIENWARE 15はGraphics Amplifierを認識しない。

 というわけで,まずALIENWARE 15を起動し,しかる後にGraphics Amplifierを接続すると,「再起動するか否か」を選択するダイアログが,以下のとおりデスクトップに表示される。ここで[再起動]を選べば,いったん再起動された後に,先ほど展開されたドライバがGTX 980用としてインストールされ,晴れてGraphics Amplifierが利用可能になるという流れだ。

条件を満たしたALIENWARE 15の起動後にGraphics Amplifierを接続すると,画面に再起動を促すダイアログが表示される
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GTX 980の差さったGraphics Amplifierを,ALIENWARE 15と接続したところ。iGPUとGTX 980が認識され,GTX 970Mはリストから消えた
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 Graphics Amplifierが無事認識されると,ALIENWARE 15に搭載される単体GPU――今回は「プレミアム」のBTO標準構成なので「GeForce GTX 970M」(以下,GTX 970M)――は自動的に無効化される。一方で,CPUに統合されたグラフィックス機能(以下,iGPU)は有効のままとなり,以降は,iGPUと,Graphics Amplifierに装着されたGPU間で,NVIDIA独自のスイッチャブルグラフィックス機能「Optimus」が有効になるのである。

Graphics Amplifier側のグラフィックスカードから外部ディスプレイに映像を表示するには,「画面の解像度」で外部ディスプレイを有効にしておく必要がある
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 なお,Optimusなので,この時点では,GTX 980で描画した内容は,ALIENWARE 15の液晶パネルへ表示されることになる。GTX 980で描画した内容を描き戻すような感じだ。
 外部ディスプレイに描画内容を出力したい場合は,Graphics Amplifier側に差さったGTX 980カードの外部出力インタフェースと当該ディスプレイをつないだうえで,Windowsのコントロールパネルにある「画面の解像度」から,外部ディスプレイへの出力を有効化すればいい。外部ディスプレイをメインディスプレイにした状態では,ALIENWARE 15側の液晶パネルは閉じてしまっても大丈夫だ。

ディスプレイへの外部出力を行っているときは,ALIENWAREノートPCを閉じてしまっても問題はない
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 というわけで,分かってしまえば,大して難しくない。むしろ簡単なくらいだが,この作業をノーヒントでやれというのは無茶だろう。
 なお,実際の運用上は,ついついGraphics Amplifierを接続したままALIENWARE 15を起動してしまい,案の定ALIENWARE 15から認識されなくなるというケースがけっこうなペースで発生した。この実装はやはりおかしいと言わざるを得ないが,ともあれ,こういう状況に陥った場合は,慌てずにそのままALIENWARE 15をシャットダウンして,いったんGraphics Amplifierの接続ケーブルを外し,ALIENWARE 15の再起動後にまた接続すればOKだ。


R9 290XをGraphics Amplifierで使うにあたっての手順と注意点
(2015年4月24日版。今後,変わる可能性があります)

 R9 290XをGraphics Amplifierに差した場合でも,ALIENWARE 15を起動してからGraphics Amplifierを接続して,再起動を促されたらするというところまでは,GTX 980と変わらない。異なるのは,あらかじめグラフィックスドライバを展開しておいても,自動ではRadeonに適用されないことである。

 今回は64bit版の「Catalyst 15.4 Beta」を使用したのだが(※本βドライバにデスクトップPC用,ノートPC用の区別はない),Graphics Amplifierを接続する直前にあらためてCドライブにドライバのインストールファイルを展開し直したりしても,自動ではドライバが入らなかった。
 そのため,Radeonが差さったGraphics Amplifierを認識して再起動したあとは,ユーザー自身で,Catalystのインストーラを実行する必要がある。よくいえば,あらかじめインストーラを展開しておく必要がない,ともいえるだろう。

 なお,先ほども紹介したAlienware Clubの書き込みよると,ドライバは「Catalyst Omega(14.12)」以降を導入する必要があるとのことだ。

 導入後の挙動にも違いがあった。R9 290Xの場合,当たり前だがOptimusは利用できないため,どうなるのかなと思っていたのだが,iGPUとR9 290Xのどちらで3D描画処理を担当するかは,Catalyst Control Centerの「切り替え可能なグラフィックアプリケーション設定」から指定する必要があったのである。
 この設定項目から対象のアプリケーションを選んで「ハイパフォーマンス」を選択するとR9 290Xが,「省電力」を選択すると統合GPUで描画されるようになる。筆者が確認した限り,未設定の場合はグラフィックスカードが優先されるようだったが,万が一のため,切り替え方法があることは押さえておきたい。

iGPUとRadeon,どちらで描画するのかを明示的に指定したい場合は,Catalyst Control Centerの「切り替え可能なグラフィックアプリケーション設定」で行う
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 さて,前述のとおり,GTX 980を差したGraphics Amplifierを接続したままALIENWARE 15の電源を入れると,Graphics Amplifierが認識されないことがあったが,実のところ,R9 290Xを差したGraphics Amplifierだと,症状はもっと深刻だった。同じことをした場合,ALIENWARE 15はUEFI(≒BIOS)が起動するところまで辿り着けず,再起動を延々と繰り返す状態になってしまったのである。この問題はほぼ確実といえるレベルで再現性があったので,R9 290XとGraphics Amplifier,そしてALIENWARE 15の組み合わせには,どこかしら問題があるのではなかろうか。

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 なお,問題が発生した場合の解決方法だが,「いったんALIENWARE 15を強制電源断し,Graphics Amplifierを外す。その後ALIENWARE 15を起動して,その状態から再びGraphics Amplifierをつなぎ,最後に再起動」がベターなようだ。

 いずれにしても,ALIENWARE 15の電源をオンにするときは,Graphics Amplifierを外しておくのが鉄則ということになる。


デスクトップPCとの間に性能差は出るのか

描き戻しと外部出力のテストを実施


 Graphics Amplifierに対する疑問の1つに,PCI Express 2.0 x4接続で,デスクトップPCと同じようにGPU性能を発揮できるのかというものがある。そこで今回は,ALIENWARE 15が内蔵するGTX 970Mと,ALIENWARE 15にGraphics Amplifier経由でGTX 980およびR9 290Xを接続した場合,そしてに示したデスクトップPCにGTX 980あるいはR9 290Xを差した場合とで,性能を比較してみることにしよう。

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 テストに用いたALIENWARE 15は,CPUに「Core i7-4710HQ」(定格2.5GHz,最大3.5GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量6MB」,メインメモリに2枚のPC3-12800 DDR SDRAM 4GB,ストレージに容量1TBのHDDを搭載し,64bit版Windows 8.1 Proプリインストールという仕様だ。もっというと,3月に掲載したレビュー記事で用いたのと同じ個体である。

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 今回のテストでは,Graphics Amplifierに装着したグラフィックスカードの出力をALIENWARE 15の内蔵パネルに表示させる「描き戻し」状態と,グラフィックスカードに液晶ディスプレイを接続して,そちらに表示させる「外部出力」状態の両方でテストを実施する。描き戻しと外部出力で性能が変わるのかどうかを確かめようというわけだ。
 なお,実際にどう利用されるかを踏まえ,今回,描き戻し時のテスト解像度は,ALIENWARE 15のネイティブ解像度である1920×1080ドットと,アスペクト比16:9でその一段下になる1600×900ドットを選択。一方の外部出力時は1920×1080ドットと2560×1600ドットを選択している。そのため,描き戻しと外部出力での性能比較は1920×1080ドットのスコアで行うことになるので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション16.0に準拠しているが,テスト時間の制約により「BioShock Infinite」と「GRID Autosport」の2つは省略した。また設定も,実際の利用シーンを想定して,「高負荷設定」もしくはそれに準じる設定のみに絞っている。
 なお,GPUのレビューでは通常,Intel CPUの「Turbo Boost Technology」を無効化してテストを行っているのだが,今回は,やはり実際に利用されるシーンを考慮し,有効化したままとした。


デスクトップPCに対し,大いに善戦

やや不安定なところもあるが,スコアは十分


 それではテスト結果を順に見ていこう。なお以下,本文,グラフ中とも,Graphics AmplifierにGPUを取り付けた状態を「Amplifier+GTX 980」および「Amplifier+R9 290X」。比較対象となるデスクトップPCにGPUが差さった状態を「DTPC+GTX 980」および「DTPC+R9 290X」と表記する。

 というわけでグラフ1は,描き戻し時における「3DMark」(Version 1.5.884)の総合スコアをまとめたものだ。GTX 970Mが動作するALIENWARE 15単体に対して,Amplifier+GTX 980は61〜70%程度,Amplifier+R9 290Xは42〜45%程度,高いスコアを示した。
 対デスクトップだと,Amplifier+GTX 980はDTPC+GTX 980比で最大約2%,Amplifier+R9 290XはDTPC+R9 290X比で最大1〜3%程度下回る程度で済んでいる。グラフ化していないが,3DMarkの詳細スコアから,CPU性能を見る「Physics Score」を見ると,Fire StrikeでAmplifier+GTX 980が9106,DTPC+GTX 980が8645だったため,実際のGPU性能はさらにもう少し開いている可能性がないわけではないが,ただ,いずれにせよ,体感は難しい。懸念された性能の落ち込みは,少なくとも3DMarkにおいては,全然問題ないと言っていいように思う。

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 次に外部出力状態の結果だが,グラフ2で解像度1920×1080ドットのスコアを見ると,Amplifier+GTX 980は,描き戻し状態と比べてスコアを約1%伸ばした。Amplifier+R9 290Xでは,Fire Strikeで約1%上がった一方,より描画負荷の高いFire Strike Extremeでは逆に約1%低くなっている。これだけでは,なんとも言えない感じだ。

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 グラフ3,4は「Battlefield 4」(以下,BF4)の結果だ。
 まずGeForce搭載時から見てみると,ここでは,すべてにおいてAmplifier+GTX 980がDTPC+GTX 980の結果を上回った。ただ,とくに描画負荷が低めになる1600×900ドットで顕著であることから,これは3DMarkのPhysics Scoreでも確認されたCPU性能差によると捉えたほうがいいだろう。ALIENWARE 15単体と比べて,72〜75%程度も高いスコアを示しているのも見どころだ。
 一方,Amplifier+R9 290Xの結果は,DTPC+R9 290Xを下回っていた。GeForce DriverとCatalystでは,CPU性能による影響が異なるか,Amplifier+R9 290Xには何らかの問題が存在する気配を感じる。

 描き戻しと外部出力の結果を1920×1080ドット時で比較すると,Amplifier+GTX 980はほとんど違いがなかった。Amplifier+R9 290Xでもその差は約1%なので,ほぼ同じといっていいレベルだ。

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 グラフ5,6は「Crysis 3」の結果だが,Amplifier+GTX 980とAmplifier+R9 290Xで大きく異なる結果となっているのが興味深い。
 1600×900ドットでCPU性能の影響が出ているが,Amplifier+GTX 980のスコアは,おおむね「DTPC+GTX 980に対してあと一歩」というところ。それに対してAmplifier+R9 290Xは,DTPC+R9 290Xに対して,描き戻しで78〜83%程度,外部出力でも85〜92%程度のスコアに留まってしまった。ここでも,Amplifier+R9 290X周りに何らかの不安要素が感じられよう。

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 グラフ7,8に結果を示した「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)だと,Amplifier+GTX 980の景気がいい。描き戻し時だとDTPC+GTX 980の96〜99%程度で,外部出力時は103〜105%程度だ。
 一方のAmplifier+R9 290Xだと,対DTPC+R9 290Xで89〜91%程度となる。

 なお,描き戻しと外部出力のスコア差を解像度1920×1080ドットで比較すると,Amplifier+GTX 980で約6%,Amplifier+R9 290Xで約3%の違いが生じた。Inquisitionの高負荷設定は,かなり伝送データ量が多くなるので,そういう条件では外部出力の優位性が出てくるということなのだろう。

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 性能テストの最後は,グラフ9,10の「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)だ。グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示するので,そちらも参考にしてほしい。
 新生FFXIVベンチ キャラ編で注目すべきは,Graphics Amplifierのスコアが伸び悩んでいることだ。とくに,ここまで比較対象のデスクトップPCといい勝負を演じていたAmplifier+GTX 980が,DTPC+GTX 980の84〜95%程度というスコアに沈んでいるのは気になる。とくに描き戻し時のスコアは明らかに低い。
 Amplifier+R9 290Xは,逆に外部出力時のスコアが低く,2560×1600ドットだと対DTPC+R9 290Xで約66%のスコアしか示せていない。

 なぜこんな結果になっているのか,皆目見当がつかないのだが,「Graphics Amplifierの安定性は,まだ十分でない」とは言えそうである。

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筐体の前方側に90mm角相当の空冷ファンが装備されているのだが,これの動作音がかなりうるさい
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 ちなみに,ここまであえて触れなかったのだが,テスト実行時,というか,電源オン時のGraphics Amplifierは,たいへんうるさい。どうやら,負荷状況に応じたファン回転数制御が一切なされないようで,一定レベルの動作音がずっとし続けるため,たいそう耳障りだ。

 実際に,Amplifier+GTX 980の動作音を録音したサウンドファイルを用意したので聞いてみてほしい。このサウンドファイルは,Graphics Amplifierの正面に正対する形で30cm離れた位置にマイクを設置して,1分間何もせず放置したうえで,そこから新生FFXIVベンチ キャラ編を実行した様子を,計4分ほど録音したものだ。聞いてもらえば一発なのだが,放置状態であろうと負荷がかかっていようと,Graphics Amplifierに搭載されたファンは大きな音を立てて回転しっぱなしである。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。

 「専用ケーブルは長いんだから,遠くに置けばいいじゃない」というALIENWAREからの熱いメッセージなのかもしれないが,日本の一般的な住環境でこれは厳しいのではないだろうか。

 最後に,GPUの温度を確認しておこう。30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMarkを30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,「GPU-Z」(Version 0.8.2)で温度データを取得したものだ。なお,テスト時の室温は24℃で,比較対象のデスクトップPCはPCケースに組み込まない,いわゆるバラック状態で使用している。

 その結果はグラフ11のとおり。アイドル時と高負荷時ともに,GTX 980とR9 290Xのどちらも,Graphics Amplifierに組み込んだ状態とデスクトップPCであまり変わらない結果となった。
 つまり,Graphics Amplifierの冷却システムは,ファンの回転音がうるさい割に,大した冷却能力は持っていない,ということになる。

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ハマったときの性能は文句なし

しかし,あまりにもサポートがなさすぎる


 以上のテスト結果からも分かるとおり,Graphics Amplifierは,ノートPC向けの外付けグラフィックスボックスとして,おおむね期待どおりの実力を発揮できており,単体グラフィックスカードの利用による3D性能強化という,ノートPCユーザーが見てきた夢は,ほぼ実現されると結論づけていいだろう。発売から半年が経って,今なお性能面で安定しない部分があるのと,あまりにも残念なファンの仕様,そして税別2万9800円という微妙に高いBTOオプション価格は減点せざるを得ないものの,それでも,ALIENWAREの開発チームは,評価に値する仕事をしたと思う。

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 Graphics Amplifierの問題は,明らかにそれ以外のところにある。並行輸入品ならまだしも,世界的な大手PCメーカーの主力ノートPC用周辺機器にもかかわらず,セットアップマニュアルがなく,使い方を知りたければ英語フォーラムにある情報に自分で当たらなければならないというのは,最大限甘めに見ても「論外」としか言いようがない。
 最近のALIENWAREは,国内のゲームイベントなどへ積極的に機材を提供するなど,その定着ぶりには目を見張るものがあるのだが,それよりも先にすべきことがあるのではないか。

 現時点におけるGraphics Amplifierは,ALIENWARE 13・15・17を潜在的なユーザーのうち,何もかも自分で解決できるたけの知識と時間を持っている人には十分お勧めできるが,何かあったときにどうにもならない可能性が高い以上,それ以外の,ほとんどの人には勧められないシロモノになってしまっている。これは本当に残念だ。
 せっかくの魅力的なハードウェアを,「半年もの間,事実上,何もしていない」という自分達の怠慢で台無しにしていることを,Dell,そして日本法人のデルは事実として受け止めるべきだろう。

デルのALIENWARE Graphics Amplifier製品情報ページ

デルのALIENWARE 17販売ページ

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