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CrytekのCevat Yerli氏とSF小説家のRichard Morganにミニインタビュー。「Crysis 2」はなぜニューヨークなのか,そして新型ナノスーツの能力とは
Crysis 2を開発したのは「Crysis」「Crysis: Warhead」と同じくドイツ,フランクフルトに本拠を置くCrytekで,Crysis 2は彼らの最新ゲームエンジンである「CryENGINE 3」を使用し,PCだけでなくPlayStation 3およびXbox 360向けにもリリースされる。
EA,「Crysis 2」のワールドプレミアをニューヨークで開催。パワーアップしたナノスーツ2.0の威力を見よ
「Crysis 2」の最新ムービーを掲載。エイリアン相手の激しい戦いが,ニューヨークを舞台に勃発
「Crysis 2」公式サイト
Crysis 2の舞台は従来作のジャングルからアメリカ最大の都市ニューヨークに移り,Crysisで登場した凶悪エイリアンが世界を崩壊させつつあるという終末的状況。プレイヤーは,アメリカ軍特殊部隊“ラプターチーム”のNomad中尉となり,さまざまな機能を持つハイテク戦闘スーツ,ナノスーツを駆使してエイリアンや謎の部隊を相手に戦っていくことになる。
まず,なぜ新しい作品ではなくCrysisの続編にしたのかと尋ねたところ,Yerli氏は「私の定義によれば,Crysis 2は新しい作品なんです。基本的な設定についてはCrysisを踏襲していますが,ロケーションが新しくなったこと,最新の技術が数多く使われていること,そしてなによりナノスーツの“2.0”への進化により,これまでとは異なるプレイフィールを実現しています」と答えてくれた。
「とくに,コンシューマゲーム機のプレイヤーにとっては,Crysis 2のようなオープンエンドでさまざまな戦い方が楽しめるタイトルは初体験になると思います。PC版のプレイヤーにとっては続編ですが,我々の挑戦は“コンシューマ機のプレイヤーにまったく新しいゲーム体験をしてもらう”ことにあるのです」と氏は続ける。
とはいえ,PCゲーマーの中には,マルチプラットフォーム化によってグラフィックスのレベルが低下したり,メモリの制約からマップが狭くなってしまったりといったことを懸念している人もいるかもしれない。あえて実例は挙げないが,例えば「Deus Ex: Invisible War」のマップが前作「Deus Ex」に比べて狭くなってしまったのは――デザイナーのWarren Spector氏は否定しているが――メモリサイズの小さいXboxとのマルチプラットフォーム化が図られたからじゃないのと言われているって,あっ,これ実例か?
ご存じのように,コンシューマ機は基本的にDirectX 9ベースであり,もしPC版もそうであるなら技術志向のCrytekとしてはあまりアピールしたくないポイントになるだろうし,もし最新のDirectXに対応しているなら,それはそれでコンシューマ機のユーザーに向かって声を大にして言い難い……というような理由があるのではないかと推察するが,とはいえ「少なくともPC版のグラフィックスレベルが従来作に比べてダウングレードするようなことはありません。高解像度表示が可能であるぶんベターであり,グラフィックスは従来をしのぐものになります」とYerli氏は請け合ってくれたので,軽く安心しよう。
今回のワールドプレミアでも,Xbox 360版のプレイシーンが使用されるなど,PC版については発売直前まで隠されてしまう雰囲気で,うーむ,続報に期待。いずれにせよ,Yerli氏がCrysis 2で目指しているのは,「それぞれのプラットフォームにおける最高のゲーム体験」だという。
またコンシューマ機のメインメモリがPCに比べて少なめな点についても「ニューヨークという土地柄,高低差を利用した戦略的な戦いが可能になります。ジャングルに比べてマップは狭いかもしれませんが,トータルで考えるとボリュームは十分だと思います」と語る。戦いの舞台として摩天楼が選ばれたのはそういう理由もあったわけだ。
Crynet Systems(ナノスーツを開発した架空のメーカー)公式サイト
事前の非公式な情報によると,新たなナノスーツは二つの機能を同時に使えるという話だった。「クローク」から「ストレングス」に移行する途中,その二つが有効である時間があるようなニュアンスだったが,Yerli氏によると,ナノスーツ2.0にはもっと抜本的な改革が加えらえられるようだ。
まず,名称変更。従来のクロークは「ステルス」に,また「ストレングス」と「スピード」は「パワー」に統合され,ここに「タクティカル」が追加される。「アーマー」は従来どおり。フォーカスグループを使ったテストによると,最も使用されるのがクローク(ステルス)とアーマーであり,プレイヤーはまずその二つから一つを選び,それからパワーとタクティカルのいずれかを選ぶという形になるようだ。タクティカルの詳細は分からないが,敵の背後にこっそり接近したり,正確に照準をつける能力が上がったり,高い場所から飛び降りても静かだったりするものになるらしい。
さらに,それぞれの機能を個別にパワーアップすることも可能になる。どうやってパワーアップするのかは現時点では秘密だが,メタファーとして通貨のような存在があり,それを使って新機能をアンロックしていくという形になるとYerli氏は言う。
こうした機能により,戦略の自由度だけでなく,プレイスタイルの自由度も確保するというゲームデザインになっているのだ。
マルチプレイについては,これも現段階では明らかにできないことの一つ。ただ,従来作のマルチプレイ「Crysis Wars」の人気が上々と言いにくい状況もあってか,Crysis 2ではマルチプレイにも強くフォーカスしているとのことだ。
マルチプレイの開発は,Crytekのスタジオ,Crytek UKが担当しており,ここは,以前Free Radical Designとして,Time Splittersシリーズや「Second Sight」などを手がけたデベロッパ。Ubisoft Entertainmentからリリースされた「Haze」(2008年)の評価が今一つだったことなどから2009年にCrytekに買収されているが,コンシューマ機向けタイトルの経験が豊富なスタジオである。
ちなみに,PlayStation 3/Xbox 360向けのマルチプレイといえば,やはり現在流行のCo-opモード(協力プレイ)の実装が予想されるところだが,興味深いことにCo-opは用意されていないとYerli氏は言う。イベント紹介記事に掲載したムービーにマルチプレイらしきシーンが確認できるが,それを見る限り,Crysis Warsのような対人戦がメインになるようにも思える。いずれにしろ,「オブジェクトの破壊」というフィーチャーを駆使した戦略的なマルチプレイが楽しめそうだ。
最後に,Yerli氏から読者にメッセージをもらった。「日本のプレイヤーの方々,とくにPlayStation 3やXbox 360のプレイヤーの皆さんに,我々のCrysis 2を楽しんでほしいと思います。日本のプレイヤーの人達はコンシューマ機に詳しいので,ぜひプレイした感想を我々にフィードバックしてださい」
40人ほどで制作された「Far Cry」(2004年)から始まるCrytekは現在,約600人のスタッフを擁し,世界6か所にサテライトスタジオを抱える大きなデベロッパに成長した。彼らの4作目のタイトルとなるCrysis 2は,マルチプラットフォームということもあり,パブリッシャのElectronic Artsも全面的なバックアップ体制を敷いている。おそらく次は,6月にロサンゼルスで開催されるElectronic Entertainment Expo 2010で詳しい情報が公開されることになるだろう。発売予定は,2010年のホリデーシーズンだ。
ストーリーを担当したRichard Morgan氏にミニインタビュー
Crysis 2の見所は,リアルな銃撃音?
ワールドプレミアでYerli氏が認めていたように,Crysisのウィークポイントとして「物語/世界観の弱さ」が挙げられており,その辺をなんとかするために起用されたのがMorgan氏だが,果たして小説を書くようにゲームのストーリーはできあがったのだろうか。
4Gamer:
よろしくお願いします。最初に,Crysis 2の仕事を引き受けることになった経緯を教えてください。
Morgan氏:
いいですよ。私はもともとElectronic Artsのために,あるプロジェクトを手伝っていました。それをやっているときに,Crytekが会いたがっているとEAに言われて,ああそうですかと。
あとで聞いたところ,どうもCrytekに私の本の愛読者がいたようですね。
4Gamer:
そのときのCrytekのオーダーは,どういうものだったのでしょう?
Morgan氏:
先方から最初にいわれたのは,ざっとしたストーリーを書いてほしいということでした。ロケーションやビジュアルなどの説明を受けて,ハイ,分かりましたという具合です(笑)。
コンシューマゲーム機を遊んだ経験しかなかったので,CrysisやCrysis Warheadをやりたいとお願いしたら,PCなどの入った大きな荷物がどんどん届きました。で,ストーリーを書いたら,こんどは彼らの考えをもっとブラッシュアップしてほしい,さらにキャラクターについて考えてほしい,といった注文が次々に入ってきたわけです。
4Gamer:
どっちも経験がないので分からないのですが,小説を書くのとゲームのストーリーを書くのは,どっちが難しいものですか?
Morgan氏:
それはまあ,水上スキーと料理でどっちが難しいかと聞かれているようなもので,正しく答えられませんね(笑)。
それでもちょっと考えるてみると,小説は自分の世界ですが,ゲーム制作はコラボレーションです。関係者全員をハッピーにしなければいけないので,そのための苦労はあるでしょう。もちろん,ゲーム制作にも楽しいところもあって,自分の書いた世界が目に見えるところがとても面白い。
また,ゲームの場合は会話が少ないので,そのへんは楽ですね。
4Gamer:
とはいえ,できたキャラクターやシーンが自分のイメージと違うなんて場合もあるんじゃないですか。Crytekと喧嘩になったりしませんでしたか。
幸いにして,イメージと違うというケースはありませんでした。というか,もともと小説の場合,読者がどういうイメージを持つかは読者任せであり,私と違うイメージを読者が持ったとしても気にしていません。キャラクターがこんな見かけでこんな声をしているというような細かいところはCrytekのアーティストが全部やってくれるので,こっちはそれを楽しむだけです。
私はそれほどエゴは強くないので,雇われて,説得力のあるストーリーとキャラクターを作るのが仕事と割り切ってはいますが,そうはいっても,ええ,確かに,意見がぶつかることはあります。もちろん,そういうときはじっくり話し合います。
4Gamer:
ははあ,なるほど。そうはいっても,ゲームの中にRichard Morganチックなところもあるんじゃないですか。それを教えてください。
Morgan氏:
それは,えーと……いい奴が誰も出てこないところかな(笑)。それは冗談としても,私自身はCrysis 2を勧善懲悪の物語にするつもりはありません。
こいつはいいヤツ,こいつは悪いヤツ,といった感じでストーリーは進まない。それぞれが,それぞれの思惑に従って行動し,もしかしたらプレイヤーは悪役に共感するかもしれない。ゲームにシンプルなストーリーを求める人も多いかもしれませんが,そういう点をぜひ受け入れてもらいたいと思っています。まあ,そこが私らしいところでしょう。
4Gamer:
ちなみに,Crysis 2の最大の見所は,どこにあると思いますか?
Morgan氏:
ああ,それはプレイヤーによって違うでしょう。グラフィックスや戦闘のダイナミックさ,ストーリーの緻密さ……。個人的には銃声です。とくにオープンスペースで銃を撃ち合うときの銃声が壁にこだましたりして,ゾクゾクします。私だけかもしれませんね,これは。
4Gamer:
ライティングのお仕事は終了したんですか?
Morgan氏:
ええ。とはいえまあ,ゲームの基本は変わることはないと思いますが,細かい調整は残っています。
そういえば数週間前,自分の考えとは違うことをCrytekから要求され,ゲームの方向性を変えなくてはならなくなってしまったことがありました。ゲームの性格そのものが変化するわけではないですが,自分自身としては大きく変わったような気がします。
というわけで,長期的なタッチダウンのポイントがまだ見えていないですね。ときどき,話のつじつまが合わないところに気がついたりしてもいますし。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。では最後に,日本のファンにコメントを。
Morgan氏:
いや,うーん,難しいな。ええと,私は今,仕事をすごく楽しんでいるので,日本の人達に楽しんでほしいと思います。私がゲームのレベルを上げることの一助になったのだとすれば幸いだと思っています。
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