インタビュー
脱出ゲームに奥深いストーリー? チュンソフトが贈る「極限脱出 9時間9人9の扉」とは一体どんなゲームなのか,イシイジロウ氏と打越鋼太郎氏にズバリ聞いてみた
このタイトルは,“脱出”をテーマとしたミステリー調のストーリーを軸に,極限状態に置かれた9人の男女が繰り広げる人間ドラマを描いたもの。随所に隠されたアイテムと仕掛けを駆使して密室から脱け出す“脱出ゲーム”の要素と,生死を分ける「ノナリーゲーム」という設定が,否が応にも絶体絶命感を盛り上げていく。
この作品を開発したのは,サウンドノベルで絶大な人気を誇るチュンソフト。そのチュンソフトが,なぜ今,DS用のアドベンチャーを世に送り出すのか,なぜ数字根をゲーム/ストーリーの中心に据えたのかなどを,プロデューサーのイシイジロウ氏と,シナリオ&ディレクションを手がけた打越鋼太郎氏に聞いた。
チュンソフトのこだわりとアドベンチャーの原点回帰を体現する脱出ゲーム要素
本日は,よろしくお願いします。
まず,本作の企画の発端や,目指したところなどを教えてもらえますか?
イシイジロウ氏(以下,イシイ氏):
実は,かなり以前から──それこそ数年前から,社内ではDSでサウンドノベルなりアドベンチャーゲームなりを作らなければならないという話をしていたんです。
世間ではDSのアドベンチャーが盛り上がっているのに,我々は何をしているんだ,と。
4Gamer:
サウンドノベルのファンにしても,そういう思いは強かったでしょうね。
イシイ氏:
しかしその一方では,作るのであれば“DSならでは”“DSでしかできない”ものにこだわりたいという思いも,我々にはありました。
4Gamer:
なるほど,サウンドノベルの第一人者であるチュンソフトだけに,中途半端なアドベンチャーゲームにはしたくないという思いが全社的にあったわけですね。
イシイ氏:
そんなこんなで企画が出ては消え,出ては消えを繰り返していたんですよ。そして1年ほど経ったとき,打越が脱出ゲームとサウンドノベルを組み合わせると面白いんじゃないかというアイデアを出したんです。
つまり,脱出ゲームにドラマとキャラクターを持ち込もう,と。そこでようやく全社一致で,999の企画に取り組むことになったんです。
4Gamer:
新機軸として,脱出ゲームをフィーチャーしようと考えたきっかけは何ですか?
もともと僕自身,脱出ゲームが好きだったんです。
しかし,Web上にあるような脱出ゲームはストーリー性に乏しかったり,あるいはシナリオがあったとしても結末が曖昧だったりというものが多いですよね。そこに,深く濃い内容のシナリオを組み合わせれば面白くなるじゃないかと考えたんです。
4Gamer:
組み合わせようという発想はどこから出てきたんですか?
打越氏:
そもそも黎明期のアドベンチャーゲームには,脱出ゲーム的なパズルの要素と,今でいうテキストアドベンチャーの要素の両方を持っていたものも多かったと思うんです。
しかし,最近ではあまり見かけないスタイルになっていますよね。だからこそ,今このタイミングで,その二つの要素を一緒にするのも面白いのではないか,と。
4Gamer:
ある意味,アドベンチャーゲームの原点回帰を考えたわけですか。
打越氏:
ええ,そういうことですね。
イシイが述べた通り,DSのアドベンチャーは売上を伸ばしていますが,内容的にはオーソドックスなテキストアドベンチャーが多いように見受けられます。ひょっとすると,今の多くのプレイヤーは昔のアドベンチャーにどういうバリエーションがあったのか知らないかもしれません。
また,かつてのプレイヤーも,こうして原点回帰した内容を懐かしく受け止めてくれるかもしれない,という意識は持っていました。
イシイ氏:
そんな感じで企画が形になっていったのですが,当時のチュンソフトは,対外的にDS以外のプラットフォーム作品の露出が多かったので,「DSでは,やる気がないんじゃいのか」などといわれてしまっていたんですよね。
4Gamer:
しかし,見えないところでは着々と企画が進行していた,と。
ええ。またプロデューサーの立場からすると,“打越が立てた企画”という部分も大きいんです。
というのも,チュンソフトは生え抜きのスタッフがディレクターとして企画を立てることが多いんですよ。打越のように,外部の実績があって入社した──僕自身がお願いして入ってもらったんですが──社員が,即ディレクターをすることは珍しいんですね。
4Gamer:
え,そうだったんですか。
イシイ氏:
はい。なので999では,打越がこれまで作ってきた作品のSFミステリーテイストと,チュンソフトの「かまいたちの夜」などが持つ流れをミックスした,ある種のコラボっぽい作品になっていると思います。
4Gamer:
いわば,いいとこ取りというか。
イシイ氏:
そうです。999にも,かまいたちの夜っぽい部分も入っていて……。これはとくにリクエストしたわけではないのですが,たぶん,打越がチュンソフトファンに気をつかった結果か,と(笑)。
数字根の発見と採用でタイトルなど主要な要素が次々に決定した
実をいうと初報の段階では,999がどんなゲームなのか,よく分からなかったんですよ。
概要や説明を読んで気になる部分は多いけれど,具体的なイメージが沸かないというか。
イシイ氏:
999の新しい部分は,まさに多くのキャラクターが登場するところです。そもそも脱出ゲームって,閉じ込められているのは基本的に一人ですよね。一人でブツクサいいいながら,孤独に脱出作業を進めます。
ところが999は,複数人数で閉じ込められて,会話しながら脱出していきます。ゲームには犯人探しの要素もありますから,もしかしたら誰かが脱出を阻止するために嘘をついているかもしれません。逆に,一緒に考えてヒントを出してくれることもあります。こういった要素って,今までの脱出ゲームにはなかったものですよね。その入り口の部分で「全然違ったものになる」と確信したんですよ。
4Gamer:
キャラクターを“9人”にしたのは,何か意味があるんですか?
打越氏:
話すと長くなるんですが,当初の企画では手錠で繋がれた男女二人が協力したり,時にいがみ合ったりしながら,同じような状況に陥った人達と遭遇し,脱出を進めていくという内容だったんです。
しかし,それでは若干弱いので,いろいろ企画を詰めていくうちに,数字根を使ったギミックにたどり着いたんです。数字根は1〜9までの数字を使いますから,これをキャラクターの数にも当てはめると綺麗に収まるだろう,と。
4Gamer:
というと“9時間”“9の扉”というキーワードも登場しますが,最初に決まったのは数字根に基づくキャラクターの数だったのですね。
そうです。扉については,当初の企画だと,2ケタの数字が書かれたものも考えていたんですが,数字根のギミックに沿って1〜9までの1ケタだけにしました。
また時間に関しては,最初から24時間以内に収めようと想定していたんです。さらに物語としては,夜に始まって明け方にエンディングを迎えると綺麗に盛り上がりますよね。別に12時間でもよかったんですが,せっかくなので数字を揃えて9時間にしよう,と。
4Gamer:
実際のプレイ時間が,9時間ということではないですよね?
打越氏:
ええ。プレイ時間は,およそ15〜20時間くらいです。
4Gamer:
この9という数字を並べたタイトルも,特徴的ですよね。
打越氏:
これは,イシイが思いついたものなんですよ。
イシイ氏:
タイトルをどうするか悩んでいたときに,ふと口にしたら社長が「いいねえ」と(笑)。もう一つ候補があったのですが,そちらと比較してより良いほうを選びました。
打越氏:
もう一つの候補は「9からの脱出、あるいは全員死亡」ですね。
イシイ氏:
全員死亡は,インパクトがあるけど倫理的にね……,と(笑)。
4Gamer:
確かに過激なタイトルですね(笑)。往年のミステリーやSFっぽくはありますが。
それでは9という数字の根拠であり,ゲーム内でも大きな意味を持つ数字根ですけれども,これをギミックとして採用した理由を教えてください。
打越氏:
これも説明すると長くなってしまうのですが,当初は,各キャラクターのバングルに,数字ではなく“O”“T”“F”……といったアルファベットを割り振ろうと考えていたんです。つまり“One”“Two”“Three”“Four”“Five”……の頭文字で,例えば“T”のキャラクターは,自分が“2”なのか“3”なのか分かりません。そういった自分の数字を探るという要素も考えていたのですが,物語上の問題にぶつかったんです。
4Gamer:
いかにもミステリーっぽい要素ですが,話が複雑になりすぎてしまいそうです。
そこで代わりのものをいろいろ考えたんです。全員平等の条件でグループ分けできる数字はなんだろう,と。
というのは,例えば“11”と“1”では,明らかに後者の方が多くの組み合わせに加われる可能性が高いじゃないですか。ほかにも,“8”という扉が出てきたとしたら,もう“9”のキャラは通れません。
4Gamer:
考えてみると,平等に扱うのは難しそうですね。
打越氏:
数字根なら,それぞれの数字を足して2ケタになった場合には,各位の数字を足していき,最終的に1ケタになりますから,全員に均等の機会が与えられるわけです。
4Gamer:
数字根の採用によって,ミステリーのキモとなる部分が合理的に完成した,と。
しかし,計算方法自体はそこそこ知られていますが,“数字根”という名称は999で初めて知ったという人も多そうです。
打越氏:
……実は僕自身,こういう数字の計算方法が占いなどで使われていることは知っていたんですが,当時は名前を知らなかったんですよ。検索して初めて,数字根という名前を知りました(笑)。
繰り返しプレイで物語の全貌を把握。巧みな伏線とマルチエンドは健在
それでは,ストーリーで重視したことを教えてください。
打越氏:
最初にマルチエンドにしようと考えました。これは,最近のアドベンチャーゲームに一本道のものが多いという事実を踏まえた,差別化要素の一つです。
複数の話一つ一つに特徴を付けていますので,実際にプレイして確認していただければ,と思います。
イシイ氏:
これまでに打越が手がけた作品との最も大きな違いは,今回,相当コンパクトな作りになっている点です。
以前の打越の作品は,ギャルゲー的な要素も含まれているので,日常シーンをゆったりと描く部分があったんです。しかし999ではそういう描写を削り,事件によってストーリーが展開していきます。
4Gamer:
ミステリーっぽく,スピーディに進行するわけですね。
イシイ氏:
とはいえ,マルチエンドの基本的な構造は,これまで打越が手がけてきた作品に近いです。伏線の回収と,どんでん返しがしっかりしているというか。
あとはプレイすると分かるんですが,ゲームでしか成立しないシナリオなんですよ。ゲームのシステムを上手にシナリオに取り込んでいますね。その点では428でもかなり頑張ったんですが,それに負けない“初体験の驚き”があるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
それは,期待できそうですね。
イシイ氏:
作っている僕らとしては,どんな評価が出るかドキドキしていたんですが,実際に999を先行でプレイしていただいた方からは,かなり好評価をいただいています。
……でも,1回プレイしただけだと,伏線の全貌は分からないかもしれません。プレイした方に,実はこうなっていると説明すると,「そんなに深いのか!」と驚かれましたから。そもそも伏線だと気付かれていない部分もあったり。
というと,サラッと読んでいるだけでは伏線だと気づかない?
イシイ氏:
基本的なものなら,だいたい皆さん気づいていますね。気付いていないのは「そこまでやっているのか!」という部分です。
例を出したいところですが,最初はあまり身構えて欲しくない部分でもありますので,ぜひ実際に触ってみてください。
4Gamer:
分かりました(笑)。
ところで打越さんご自身は,当初からコンパクトな内容にしようと意識していたんですか?
打越氏:
ええ,かなり意識しました。
DSのアドベンチャーの平均プレイ時間をベースに,展開をスピーディにしています。飽きが来ないように,先が知りたくなるように,どこをカットするか決めるのが大変でしたね。
4Gamer:
そうやってスピーディにテンポよく進んでいく中で,脱出ゲームのパズル的な部分で詰まってしまうと,投げ出してしまう人も出てきそうですが。
打越氏:
ええ,そこにも配慮していまして,ヒントを何段階かに分けて用意しています。
例えばミニゲームに詰まってしまった場合,一度キャンセルするとヒントが与えられて,それでもダメならさらにヒント,最終的には答えそのものを教えるくらいの内容になっています。テストプレイでもそこまで詰まったという話は聞いていないので,大丈夫じゃないでしょうか。
イシイ氏:
ゲームバランスに定評のある「不思議のダンジョン」シリーズのチームと組んで,全体のバランス取りをしていますので,そこは相当しっかりしていますよ。
また,僕自身遊んでみて思ったんですが,脱出ゲームとアドベンチャーのバランスもいいです。
4Gamer:
お,どんな感じですか?
最初はまず脱出ゲーム部分が面白いんです。ストーリーも序盤はどうしても設定や説明的な部分も多いですから,むしろ次の脱出ゲームが待ち遠しいくらいに感じました。
ところが,後半になると逆転して,早くストーリーが読みたいから脱出ゲームをクリアする……という感じになっていくんです。その入れ替わり加減が,今回,非常にうまくできています。そこをぜひ体験してほしいですね。
4Gamer:
確かにアドベンチャーゲームだと,前置きが長くて肝心の本編がなかなか始まらないという思いをするケースも往々にしてありますね。
イシイ氏:
ストーリー物の難しい部分ですよね。サウンドノベルだと,最初にいくら「危機一髪!」「絶体絶命!」と書いても,プレイヤー自身が緊迫感を持ってのめりこむ前段階なので「あー、はいはい」という感じになってしまいがちです。428も頑張ってはみたのですが,最初の1〜2時間くらいは説明的になってしまいました。
ところが999は最初の脱出ゲームパートで,説明しなくとも最初から絶体絶命感を体感できるようになっています。
4Gamer:
実はまだ体験版しかプレイできていないので,その最初の脱出ゲームパートしか知らないんですよね。なので,ストーリーがどう展開していくのか見当もつかないんですよ。お話を聞いていると,非常に面白そうだとは思うんですが。
イシイ氏:
例えばゲームを進めていくと,誰かを助けるために脱出ゲームをクリアするかしないかという展開も出てきます。
「助ける」「助けない」の二択ではなく,謎を解かないと助けられない。この違いは非常に大きいんです。そのキャラクターのために謎解きをするという行為によって,プレイヤー自身にキャラクターに対する愛着心が生まれる。これは,選択肢で進めていくだけでは生まれない感情です。このようにゲームデザインすることが,プレイヤーの心理に大きな影響を与えることを知って,今回,勉強になりました。
4Gamer:
マルチエンドということですが,進行次第で残念な結果に終る可能性もあるわけですよね? そうなったときに,きちんとモチベーションは維持できそうですか?
打越氏:
それは大丈夫だと思います。
4Gamer:
逆に初回プレイで,いきなり核心のエンディングを見られるのでしょうか?
打越氏:
実は今回,それはできなくなっています。とある理由によるのですが,これを説明してしまうとネタバレになってしまうので(笑)。
西村キヌ氏の絵とキャラの性格付けで幅広いプレイヤー層にアピール
ところで,9人のキャラクターの個性は,どうやって書き分けたんですか?
打越氏:
「エニアグラム」で分類される九つの性格を参考にしています。それをベースに性別や年齢などを決めていきました。
4Gamer:
誰が一番人気になりそうでしょう? 皆,一癖二癖ありそうですが。
打越氏:
……難しいですねえ。ここで誰といってしまうと,犯人が誰かというヒントに繋がってしまうかもしれませんし。
イシイ氏:
そういった含みを抜きにして答えるなら,サンタと紫は人気が出そうですよね。紫はセリフもかわいいし。ちなみに作っている僕らの中では,八代が人気です。
打越氏:
西村キヌさんが描いた絵的な部分が大きいですけれども(笑)。
4Gamer:
そういえば今回,西村さんを起用した理由は何かあるのでしょうか?
これは本当に偶然で,幸運だったんです。キャラクターデザインを決めなければならないタイミングと,西村さんにお願いできるタイミングがちょうど重なったんですよ。
とはいえ,当初から,男性だけでなく女性も掴める……むしろ女性を多く掴めるキャラクターデザインにしたいくらいの気持ちはありました。同時に“ゲームらしさ”を出したいというのもありましたね。アニメではなく,ゲームらしいデザイン。
そういった諸々を考慮したとき,西村さんがピッタリだったんです。
4Gamer:
実際,女性からの反響はどうでしょう?
イシイ氏:
おかげさまで非常にいいですね。
先日,大阪で開催された「第8回Games Japan Festa」(関連記事)にもプレイアブルデモを出展したのですが,女性ばかりが集まった時間帯もあって。狙いは当たっているのかな,という感じですね。
4Gamer:
西村さんの絵を見ているだけでも,それぞれどんな人物なのか気になりますよね。
打越氏:
そうですね。そういった想像が膨らむのも,西村さんの力量のおかげだと思います。
イシイ氏:
僕個人は,打越のこれまでの作品と,西村さんの絵が合わさったときに,初めて999のイメージが掴めたんです。
これまでの打越作品は,ギャルゲー的な要素も含まれたゲームだったこともあって登場キャラの女性比率が多かったのですが,西村さんの絵なら男女比を逆転させてもスコーンとはまるなあ,と。加えて西村さんは,SF的,ミステリー的な要素も上手に表現できる方ですし。
4Gamer:
ターゲットとなるプレイヤーは女性寄りとのことですが,年齢的にはどうでしょう?
打越氏:
20代前半〜30代ですね。その層は男女ともアドベンチャーを好む方が多いので,かなり意識しています。
イシイ氏:
DSユーザーであっても,10代ってアドベンチャーゲームをプレイしないんですよね。文字を読むものは敬遠されるのかな?
ともかく,20〜30代の比較的ライトなプレイヤー層をターゲットにしています。もちろん,打越作品が好きな方にも楽しめる内容になっていますよ。
4Gamer:
アドベンチャーに限らず,ゲームのあらゆるジャンルにいえることですが,一度人気に火がつくとコアな方向にシフトしがちですよね。打越さん自身は,もっとコアな方向には進みたいとは思わないのですか?
難しい質問ですね……。
アドベンチャーゲームには面白い作品が多いと思うんですよ。それはギャルゲーもひっくるめて。しかし,例えばギャルゲーという括りがあるせいで,面白いアドベンチャーゲームなのに手を出しにくいライトユーザーさんがいるのも,また事実です。
流行のアクションアドベンチャーにしても,ストーリーに興味はあるけれど,アクションが苦手なので敬遠したりとか。
4Gamer:
そうですね。
打越氏:
そういう意味では,“分かっている”コアな人やゲームが上手な人だけでなく,もっと広い層に遊んで欲しいという気持ちは強いです。
しかしその一方で,コアな層に受ける内容がやりたいという欲求も否定できないので……難しいですね。
イシイ氏:
本質がコアだからね(笑)。
打越氏:
シナリオを書いていても,コア過ぎて多くの人にとっては面白くないだろうな,と切り捨てている部分は結構あるんです。逆にコアな自分からすると,その部分こそが面白いという気持ちもあるんですが。
4Gamer:
伝えたいのは,まず“アドベンチャーゲームの面白さ”である,と。
イシイ氏:
そうやっていくことで,アドベンチャーゲームのミリオンセラーが2〜3タイトルしかないという現状を変えていきたいですよね。
もっと多くのアドベンチャーが売れるようになったら,さまざまな需要が出てきて,コアな内容であっても採算の取れる状況になると思うんです。
ネタバレ回避の“ネット断ち”を推奨! プレイ後は議論の盛り上がりを期待
4Gamer:
そのほか,999のアピールポイントにはどんなものがありますか?
やはり作り込みの部分ですね。
僕らが見ても,DS用ソフトとしてはオーバークオリティなんじゃないかというくらいの作り込みになっています。キャラがよく動きますし,絵的な物量も凄いですし……いってみれば“大作感”がありますね。
4Gamer:
しかも贅沢なことに,それが西村キヌさんの絵であるという。
イシイ氏:
ストーリー的には,映画の「SAW」や「CUBE」が好きな人にも楽しめるんじゃないでしょうか。
あとはコミック/ドラマの「LIAR GAME」もそうですね。特定のルールに縛られる“ゲーム”をテーマにしたアドベンチャーはこれまであまりなかったので,そういった面白さを提供できていると思います。
4Gamer:
これを意識しながらプレイすると面白い,というようなことはありますか?
イシイ氏:
何よりも“ネット断ち”ですね(笑)。驚きの部分を大切にするなら,ネットを極力避けて,ネタバレを回避してください。詰まっても,頑張っていればヒントは結構ゲーム内に出てきますので。
まあ4Gamerさんみたいな情報系サイトはともかく,掲示板には行かない,と(笑)。最近ではTwitterにも注意が必要ですよ。
4Gamer:
勝手にネタバレをつぶやかれたりしたら,泣くしかないですもんね(笑)。
打越氏:
ともかく,じっくりプレイしていただきたいですね。コイツとコイツを組み合わせると,どの扉に入れるかとか,きちんと考えていくのが面白いと思います。
あとは既報どおり,9人の中に犯人の「0」(ゼロ)がいますので,誰がそうなのかを考えながらプレイするのも面白いです。
イシイ氏:
プレイしていて,ストーリーやシステムに違和感を覚える部分があると思うんですよ。なぜ,これができないんだろう,なんかやりにくい,とかね。
しかし,その違和感には全部意味があります。そこを意識すると,一つ気付いたときにいろいろ繋がって,より面白くなります。打越は意地悪な人間なので,いろいろ仕掛けていますよ。
ネットも,否定しているわけじゃないですよ。一通り解いたあと,各々の見解をもとに議論を交わしていただきたいとも思います。そうすることで新しい発見があって,かなり理解が深まるのではないでしょうか。
イシイ氏:
他人の見解を聞いてから,もう一度プレイすると,「ええっ,そうだったのか!」となるはずです。
4Gamer:
それでは最後に,999に期待している人と,4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
打越氏:
人に勧めることのできる,いい内容になっているんじゃないかと思います。時節柄,彼氏彼女へのクリスマスプレゼントなどとしても,ぜひ。
イシイ氏:
「やらなきゃ損」といわれてもおかしくない内容になったと考えています。ここ最近アドベンチャーゲームの名作が続々登場していますが,その中の1本に加われるのではないでしょうか。
4Gamer:
ありがとうございました。
また,いきなり分かる人だけに分かるコアなものに向かうのではなく,まず誰にでもアクセスしやすくクリアしやすい環境を作り,そのうえで伏線という形で掘り下げていくという表現にも注目したい。
そうした表現は,チュンソフトのゲーム全般に見られる共通点であり,999もまた,歴代タイトル同様のゲーム的な分かりやすさと面白さ,そして新たな驚きを提供してくれることだろう。
「極限脱出 9時間9人9の扉」公式サイト
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