インタビュー
前作を未プレイでも楽しめる!? 「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」の気になるあれこれを本山プロデューサーと小澤ディレクターに聞いた
今回は,「戦場のヴァルキュリア2」プロデューサーの本山真二氏,同ディレクターの小澤 武氏にインタビューして,気になる話を根掘り葉掘り聞いてきた。前作のファンや「戦場のヴァルキュリア2」をすでにプレイしている人はもちろん,気にはなっているけどまだ購入していないという人も,ぜひ読んでほしい。
「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」公式サイト
前作を未プレイでも楽しめる「2」のストーリー
戦争が題材ではあるが,学園モノとしての楽しみも
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まず,「2」は前作の2年後という設定ですが,「1」との物語的にどのくらいつながっているのかを教えてください。
本山氏:
「2」で主人公も新しくなっていますし,敵キャラクター達も一新されているので,「1」をプレイされていなくても「分からない」ということは基本的にないと思います。
ただ,2年前のガリア公国と帝国の戦いが「2」の事件のバックボーンになっているので,「1」を知っているとよりニヤリとするというか,「ああ,あのときのこのことが原因だったのか」とか,「『1』のあの事件がこのキャラの言動につながっているのか」とか,深読みをさせる要素はあります。なので,どちらのユーザーさんでも楽しめるようになっています。
4Gamer:
続編なので「1」に関するいくつかのネタバレはやむなしという部分はあると思いますが,基本的には前作をプレイしていなくとも楽しみは削がれないものですか?
本山氏:
今回,物語のテイストも外見から変わっている部分もあるので,そのあたりの戸惑いというか,一見さんお断りみたいな感じはないと思いますよ。
4Gamer:
「2」をプレイしてから「1」をプレイしても大丈夫ですか?
小澤氏:
それも全然ありですよ。
プレイヤーの分身となるアバン・ハーデンス |
主人公の一人であるゼリ |
「2」の主人公の一人であるゼリはダルクス人なのですが,「1」では,ダルクス人というと,真面目で勤勉で大人しいというか,あんまり抵抗しないという設定で描かれていました。
ですがゼリはそれをくつがえすキャラクターで,今回,彼の目から見た「2」のダルクス人像というのがあります。ダルクス人ってどうしてこういう風に大人しく従っているのか,という理由は「1」でも描かれていますので,そこへの逆の導線になればというか,興味を持ってもらえたらいいなと思います。
小澤氏:
前作の主人公とヒロインである,ウェルキンとアリシアも「2」で出てきます。ただ今回は主人公とヒロインが別にいますので,一歩引いた立場にはなっているんですね。作った側から見ても「大人になったなあ」と,重鎮っぽくオーラがあるドッシリした感じなんですよ。なので,「2」でウェルキンとアリシアに興味を持った人が「1」も遊んでもらえれば,こちらとしては嬉しいですね。
4Gamer:
「2」はガリア公国内での内乱がテーマで,ランシール王立士官学校の生徒達が反乱軍を鎮圧することが目的なんですよね。
本山氏:
はい。
4Gamer:
戦場という非日常と学校生活という日常のギャップを描くにあたって,どのような点に注意したのでしょうか?
日常パートでの平穏な雰囲気であったり,楽しいノリであったりとかは意識して描いています。日常では,図書館で勉強しているシーンであったり,学食で食事しているシーンであったり,中庭で悩み事を話しているシーンであったりと,そういった何気ない出来事をあえて多く描いていますね。
なので,ストーリーミッションで実際の戦場に出たときには,「さっきまであんな平穏な話をしていた人達が,戦場で命のやりとりをするんだ」っていうようなやりとりが描かれて,その緊迫感がギャップになっています。
小澤氏:
「2」は丸めて言ってしまうと学園ものなわけですよね。本当の士官学校とは違う部分もあると思いますけど,そこは士官学校であってもエンターテイメントとして守らなければいけないというか,題材として選んだ甲斐がないので。
ユーザーさんが自分の学校生活を懐かしんでもらえたりとか,「ああ,学校ってこうだよね」って感じてもらえないと意味がないので,そういう風なノリとかイベントは,より多く盛り込んだつもりです。
自分の日常が透けて見えることによって,戦争という非日常がより際立つと思いますので,それがギャップにつながるのかなと思います。
本山氏:
楽しいだけではないんですけど,イベントは多いですよ。レーヴァテイン杯っていういわゆる体育祭のような学内トーナメントもありますし,ほかにもそのものズバリの学園祭もありますし。夏になれば,プールで水着を見てみたいっていう要望があると思いますが,それにも応えられている……んじゃないかと思います(笑)。
4Gamer:
クラスメイトとのエピソードは,かなり豊富な感じですよね。
小澤氏:
クラスメイトの個々のストーリーがまさにサイドストーリーですね。あとは,購買部で購入するミッションもありますので,そういうところでも楽しんでいただけると思います。
30人以上の個性豊かなクラスメイト達には
すべて個別のエピソードとミッションを用意
4Gamer:
「2」の舞台は士官学校ということで,キャラクター達の年齢は高校生くらいかなと想像していました。ですが,「1」の義勇軍のメンツほどではないですけど,年齢にはけっこう幅がありますね。
本山氏:
ガリア公国という国は国民皆兵制度を採っていて,職業軍人でない人も小学生くらいのときから銃を取って戦います。ランシール王立士官学校は,最初は貴族の子弟が士官候補生として学ぶ場所だったんですけど,とあることがきっかけで一般人にも門戸が開かれるようになったんです。
たとえば自警団とか義勇軍とか,戦いの中で頭角を現してきたような一般人をスカウトしてきたっていう設定になっているので,年齢が若めの人もいれば歳がいった人もいて,あと,どう見ても士官学校には合わない人もいます。それぞれに理由はあるんですが。
「2」のサブキャラクターであるクラスメイト達は30人以上いて,それぞれにエピソードが用意されていますが,前作のサブキャラクターより深く作り込んだ理由を教えてください。
小澤氏:
前作だと,義勇軍の面々は戦闘でのみ使えて,あとは人物総覧という文章での情報しか出していなかったんですね。それにもかかわらず,ものすごくご好評をいただいて,皆さんに愛していただけました。
また,「もっと知りたい」「なんで本筋にかかわってこないのか」といったご意見も,ものすごくいただきました。なので,「2」の話が出たときに,まずそこは直して,皆さんのご要望に応えたいな,というのが出発点です。
4Gamer:
なるほど。
小澤氏:
今回は士官学校に舞台を移したので,一緒に戦うクラスメイトという立場に変わりました。なので人物総覧だけではなく,キャラクターそれぞれにちゃんとしたエピソード/ストーリー/イベントを付けようというのが第一にありました。「あれは何だ!」とか「アバン! あれをどうする?」とか,掛け合いを含めて本編にかかわらせるというのが主題です。
本山氏:
「2」では,クラス全員で困難に立ち向かう印象を出したかったんです。クラスメイトのイベントとかミッションをこなしていくと,「なんでこの人が士官学校に?」みたいなキャラクターも,「なるほど」と思えるような裏の事情があることが分かるんです。
小澤氏:
文章だけだと,伝えられるものが限られてくるじゃないですか。でも今回はエピソードという,人物総覧より一歩進んでユーザーの皆さんに伝えられる手段を得たので,設定ももう一歩進んじゃってもいいかなと思って,割とはっちゃけた,突飛なキャラができたかなと思います。
4Gamer:
確かに,登場するクラスメイト達はかなりバラエティ豊かですね。
フランカは20歳って設定ですけど,20歳でブレザーにスカートって,どんなコスプレだよっていう(笑)。
4Gamer:
周りは高校生くらいの年代が多いですしね(笑)。
本山氏:
なんで20歳であのスカート履いてるんだって気になるじゃないですか。フランカのイベントを進めていくと,「なるほどね。深い思いがあって,大学をわざわざ中退してまで,ランシールに来ているんだな」と,そのあたりが明らかにされるんですよ。決して,そういう趣味なのではありません(笑)。
小澤氏:
さきほど本山が言ったように,ランシールにはスカウト制もあるし志願制も残っているので,自ら来た人もいれば,望んでないのにスカウトの名のもとに無理矢理連れて来られた人もいるんです。だから「なんで自分はここにいるんだろう」って人もいて,それらは,キャラのイベントを見るたびに明らかになっていくというわけです。
4Gamer:
サブキャラクターのイベントの発生条件はどうなっているんでしょうか?
イベントは全3段階になっていて,友好度のようなものもあります。
「ヴァルキュリア」のメインはBLiTZを使った戦闘パートなので,それとどうしても絡めたいなと。戦闘でユニットをいっぱい使って友好度のようなものが深まると,イベントが発生します。それを見ると,より仲が深まってさらにイベントが発生するという感じです。最初は自己紹介レベルですけど,その人の抱える問題とか,なぜ士官学校に入ってきたのか,そういうものが透けて見えてくるんです。
最後にイベントだけじゃなく,必ず専用のミッションが個々に用意されています。それは困難や抱えている問題を克服するのを,ミッションという形に落とし込んでいます。それをG組含め,皆で乗り越えたときに初めてその人の真実の姿や本音が分かる,という構成になっています。
我々は“アカデミーパート”と呼んでいるのですが,ランシール士官学校の中で発生するイベントだけで完結するものではなくて,ちゃんと戦場に出て皆と絆を深めあっていくというところまで,ゲームの中に落とし込んでいます。よく30人分もやったなとは思いますけど(笑)。
4Gamer:
30人分全部を見ようとするとえらい時間がかかりそうですね。
本山氏:
エンディングを見たあとは“永遠の1937年”が始まるのですが,一からやり直すのではなく何月から始めてもいいので,好きなキャラクターのイベントをどんどん見られます。なので,一周めが終わったらお好きにどうぞ,という感じですね。
小澤氏:
一度見た主要イベントは,前作でいうところのブックモードに収まりますので,イベント自体もいつでも振り返ることができます。
本山氏:
ちなみに,発売前のプレミアム体験会では,ユーザーの方に体験版ではないROMでプレイしていただいたんですが,アバンの部屋でアルバムを見られることに気がついた方が食い入るように見ていたんですね。「やっぱり気になるんだな」なんて喜ばしく思っていたんですが,半面ネタバレしそうでドキドキでした(笑)。
4Gamer:
サブキャラの個性が際立ったことで,相対的にメインキャラクターのアバン,ゼリ,コゼットの影が薄くなるんじゃないかと,いらぬ心配もしてしまうんですが。
本山氏:
それは大丈夫だと思います。基本的にアバン,ゼリ,コゼットの役割っていうのは,ものすごく明確に分けられています。
アバンはプレイヤーの分身なので,前向きにクラスを引っ張っていくというところですごく目立ちますし,それを辛辣な言葉で抑えに回るゼリの役割というのも,重要なポイントです。間に入るコゼットも,ただ仲裁するだけではなく引っかき回したりもするので,あの三人の存在感というのは,ほかのキャラの中でも薄れるということは一切ないです。
我々も「三馬鹿,三馬鹿」なんて言って紹介していますが,それがゲーム中でもだいぶ浸透しているんじゃないかなと思います。でも決めるときはちゃんと決めますよ。
小澤氏:
今回はサブキャラをメインストーリーに絡ませようという目標がありましたが,なんだかんだでメインストーリーを引っ張っているのはあの三人です。少なくてもメインストーリーを見ている限りは,アバン,ゼリ,コゼットにどんどん引き込まれていくんじゃないかなと思っています。
本山氏:
クラスメイト達がより関わってくることになったことで,なおさらあの三人が浮き上がるというか,周りのキャラクター達が違った側面からあの三人を語ったりというか,G組全体もそうですし,あの三人の描かれ方というのも際だっていると思いますね。
キャラクターでいうと,予約特典のセルベリアをはじめ,「2」にはさまざまなゲストキャラクターが登場しますが,やはり前作でユーザー人気が高かったことが選抜理由なのでしょうか?
本山氏:
そういう面もありますし,こちらから「こんなキャラを出したら面白いかな」って選んだキャラクターもいます。まあ,どっちがどっちとも言えないですね。
小澤氏:
ゲストである以上,求められているキャラクターの方がユーザーさんも嬉しいだろうなっていうのはありました。
「マクシミリアンがランシールの制服を着ている!」なんて言われていますけど,そこに関しては「まあゲストなので」っていう感じで,完全に割り切っていています。
4Gamer:
前作をプレイした身としては,けっこう衝撃的なラインナップでした(笑)。
ゲストキャラクターは戦闘パートだけで物語には関わらないということでしたよね?
小澤氏:
そうですね。世界観が違うって話も聞きますけど,僕らもそのあたりは覚悟していたので,物語には関わらず戦闘のみで使える形にしたのが,一つの落としどころだったのかなと。
4Gamer:
今回,主にパスワードでゲストキャラクターが提供されていますが,予約特典のセルベリアなどについても「限定」ではなく「先行」としているのは,どういった理由からですか?
本山氏:
予約特典がいい例なのですが,セルベリアが使えるというのは絶対にインパクトのあるネタだろうと思っていたんです。でも,「予約をしていただいた方だけに差し上げます」だと,さすがに「どうかな?」って部分もありました。サービスという形で登場させるキャラクターなので,そこはあくまで“先行入手”ってことにしないと,さすがにアコギ過ぎるかなと。
小澤氏:
ただ,予約までしてくださった方には当然報いないといけないので,そこはあくまで“先行”ということになりました。で,先行して入手した方のプレイを見て「おっ,セルベリアいいじゃん」って興味を持ってもらえれば,我々も嬉しいので。
本山氏:
現在発表されているキャラクター以外にも,まだ隠しキャラクターがいるんですけど,そういったキャラクター達も,それほど間を置かないタイミングでパスワードを公開していきます。逆にミッションとかは,毎週ちょっとずつ配信していき,長く遊んでもらえるようにしたいですね。
4Gamer:
ゲストキャラクターって何人くらいいるんですか?
本山氏:
パスワードで登場するキャラクター以外にも,いわゆるフラグオープンで出るキャラもいます。そういうのも合わせると,20人くらいですね。
全部合わせると,「1」の義勇兵50人と同じくらいのボリュームになるんですね。ちなみに,ゲストキャラクターのエミリアはじめ,「ファンタシースターポータブル2」との連動が多いのは,同じ第三CS研究開発部というのが影響しているんですか?
本山氏:
そうですね。フロアも一緒ですからね(笑)。
小澤氏:
ハードも同じPSPで発売日も近いなら,それはもう連動しない手はないだろうと。まあ世界観が違うといえばそれまでですが,これはお祭りという感じで一緒に盛り上げていこうということになりました。
4Gamer:
ニコニコ動画(9)の“「戦場のヴァルキュリア2」本山動画EX 戦車をつくろうPart1”では,ドラゴンサカーイさんも出ていましたしね。この動画って,本山さんが企画されたんですか?
本山氏:
いえいえ,私は「こういうことをやるらしいよ」ってことくらいしか聞かされていないですね。この前の朝霞の自衛隊に行ったときなんていい例で,会社の研修かなんかで私がいないときのミーティングで決められていましたから(笑)。「ヴァルキュリア」チーム怖いなって思いますね。
4Gamer:
戦車のペーパークラフトを作るのも大変だったと思いますが。
はい,あのペーパークラフトのクリエイターさんはすごくこだわりのある方で,ものすごくいっぱい「設定がほしい」って言われたんです。で,設定を担当している人間が用意したら,それを本当に忠実に再現してくれました。
4Gamer:
ちなみに第2弾はあるのでしょうか?
第2弾はオドレイ専用戦車のゲイレルルで,第1弾のG組戦車を上回るパーツ数という凶悪さです。
4Gamer:
また戦車を作る本山さんが見られるんですね。
本山氏:
あれ,何日で作れるのかって,ちょっと自信がないです(笑)。
4Gamer:
ほかにも,「2」を題材にしたフラッシュ小説も提供されていますが,そちらの内容は本編とリンクしているのでしょうか?
本山氏:
ゲーム中の話と一部リンクしているものもありますが,サイドストーリーのようになっているので,ゲーム中の日常を描いている感じですね。よりキャラクターの素顔というか,ゲーム中でも描かれていない側面から描かれています。ゲームをやっていない方がみても楽しめますし,ゲームをやっている方が見たら「なるほどね」って感じになると思います。
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戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
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