レビュー
6コアと4コアのZambeziは光るものを見せてくれるか
FX-6100/3.3GHz
FX-4100/3.6GHz
2011年10月12日,AMDはBulldozer(ブルドーザ)アーキテクチャに基づく初のデスクトップPC向けCPUで,開発コードネーム「Zambezi」(ザンベジ)と呼ばれていた「AMD FX」を正式に発表した。それに合わせて4Gamerでは,発表時点の最上位モデルとなる「FX-8150/3.6GHz」を検証しているが,その性能は残念の一言で,少なくともゲーマーに勧められるようなものでなかったというのは,すでに前後編のレビューでお伝えしているとおりだ。
→「FX-8150」レビュー(前編)。ついに発進するBulldozer世代のCPU「Zambezi」はゲーマーの福音となるか
→「FX-8150」レビュー(後編)。オーバークロックで状況は変わるか
4Gamerでは,発売日の判明からやや遅れてFX-6100とFX-4100を入手できたので,FX-8150を踏襲した結果に終わるのか,はたまた価格対性能比で光るものを見せるのかを検証してみたいと思う。
Bulldozerアーキテクチャ採用の6コア&4コアモデル
コア数や動作クロックを抑えてTDP 95Wを実現
FX-6100は,2基の整数演算ユニット(など)を統合した「Bulldozer Module」(以下,Bulldozerモジュール)を3基搭載した6コアモデルで,FX-4100は2基搭載した4コアモデルだ。いずれも開発コードネーム「Orochi」(オロチ)と呼ばれていた4 Bulldozerモジュールのダイを採用しているので,Orochiをベースとして,FX-6100は1基,FX-4100では2基のBulldozerモジュールがそれぞれ無効化されたCPUということになる。
CPUパッケージはもちろんAM3+。FX-8150と同じく,Socket AM3+搭載のマザーボードに対応する。倍率ロックフリーなのも上位モデルと同じだ |
発表時点における製品ラインナップ |
一方,Bulldozerモジュールから独立したL3キャッシュ容量は8MBで変わらず。メモリコントローラがデュアルチャネルDDR3-1866仕様なのも上位モデルと共通だ。
動作クロックはFX-6100が3.3GHz,FX-4100が3.6GHz。6コアモデルであるFX-6100のほうが低く抑えられているのはTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が理由と思われる。FX-8150が125Wなのに対し,23日発売の2製品は95Wに下がっているので,TDP 95Wの枠内に収まるよう,コアの数ともども調整していった結果が,今回の動作クロックということなのだろう。
なお,AMD FXプロセッサでTDP値が余裕を持って設定されているというのは12日に掲載した解説記事のとおりだが,その余裕は,負荷状況に応じた自動クロックアップ機能「AMD Turbo CORE Technology」の第2世代版に向けられており,FX-6100,FX-4100のいずれも,1モジュール(=2コア)までに負荷がかかった場合には,当該モジュールが「Max Turbo」とされる最大ターボクロックで動作。2モジュール(=3コア)以上に負荷がかかった場合には,全コアが「All Core Turbo」とされるターボ動作になる。Max TurboとAll Core Turboのクロックは,FX-6100が3.9GHz,3.6GHzで,FX-4100が3.8GHz,3.7GHzだ。FX-4100のTurbo COREは向上幅が小さい。
そんなFX-6100とFX-4100の主なスペックを,FX-8150や,FX-6100と実勢価格が比較的近い「Phenom II X6 1065T/2.9GHz」(以下,X6 1065T)&「Phenom II X4 980 Black Edition/3.7GHz」(以下,X4 980),あるいはFX-4100と実勢価格が比較的近い「Core i3-2100/3.1GHz」(以下,i3-2100),AMD FXの下位に置かれるAMD A-Series Fusion APUから最上位モデルとなる「A8-3850/2.9GHz」(以下,A8-3850),そして,前世代のエントリークラスCPUのやはり最上位となる「Athlon II X4 645/3.1GHz」(以下,X4 645)と比較したものが表1だ。
4コア&6コアCPUとの比較を実施
FX-8150とのスコア差にも注目したい
テスト環境は表2のとおりで,少なくともAMD FXのテスト環境はFX-8150のレビュー時とまったく同じ。そこで今回は,検証結果を発売前にお届けすることを優先すべく,FX-8150とX4 980のスコアはレビュー時のものを流用することとした(※FX-8150のスコアはTurbo CORE有効時のものを用いる)。そのため,グラフィックスカードを「Radeon HD 6970」搭載製品で揃えることになり,下位クラスのCPUやAPUからすると少々バランスが悪くなっている点と,CPUクーラーはSocket AMxに共通のAMDリファレンスクーラーを用いている点をあらかじめお断りしておきたい。Core i3のテストには,製品ボックスに付属のクーラーを用いている。
もう1つ,テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション11.0準拠だが,やはり時間の都合により,テスト対象は「3DMark11」(Version 1.0.2),「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP),「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4),「DiRT 3」の4つに絞った点もご容赦を。
なお,AMD製プロセッサのメモリアクセス方式はデュアルチャネルアクセスとなるGangedに統一。また,これはFX-8150のレビュー時にも触れたとおりだが,AMDから貸し出しを受けた評価機に含まれるマザーボード「Crosshair V Formula」は製品版と比べてやや不安定で,DDR3-1866設定を行えなかったため,AMD FXのテストはDDR3-1600設定で行っている。
FX-6100のゲーム性能はX6 1065T相当
FX-4100はA8-3850を下回る場面も
テスト結果の考察に移ろう。
グラフ1は,3DMark 11の「Entry」「Performance」「Extreme」各プリセットにおけるスコアをまとめたもの。CPUの重みづけが大きく,CPU性能がスコアを左右しやすいEntryプリセットを中心に見てみると,FX-6100はX6 1065Tとほぼ同じか,若干高めといったところに落ち着いている。FX-8150からはEntryプリセットで16%も置いて行かれており,コア数,そして動作クロックの違いがかなり影響している印象だ。
FX-4100は同価格帯のライバルであるi3-2100に置いて行かれ,APUであるA8-3850にもわずかながら差を付けられている。
STALKER CoPの「Day」および「SunShafts」シークエンスにおけるテスト結果がグラフ2,3で,より描画負荷が低く,CPU性能がスコアを左右しやすいDayに注目すると,やはりFX-6100とX6 1065Tは同程度のスコアにまとまっている。
目を引くのは,FX-4100のほうがFX-6100よりも高いスコアを示している点だが,これは一にも二にも,FX-4100のほうが定格動作クロックが高いためだろう。ターボ動作時の動作クロックに大きな違いはないため,Turbo COREが有効に機能しているとすると,ここまではっきりしたスコア差はつかないはずだからだ。
もう1つ,FX-8150のレビュー時にはほとんどスコア差がつかなかったSunShaftsシークエンスでも,1280×720ドットでスコアに違いが生じている点には注目しておきたい。FX-6100はA8-3850といっしょに下位へ沈んでおり,Radeon HD 6970と組み合わせるには,FX-6100の性能がやや不足気味だと分かる。
続いてグラフ4はCall of Duty 4の結果となる。
Call of Duty 4ではX4 645以外でGPUボトルネックが生じているため,スコア差はあまり出ていないのだが,それでも,FX-6100がX6 1065Tと,FX-4100がA8-3850とほぼ同じスコアにまとまっているのは見て取れよう。3DMark 11と似た傾向だ。
性能検証の最後となるDiRT 3だと,それまでとは若干異なる傾向になっている(グラフ5)。
マルチスレッド処理への最適化が進んでいるため,FX-6100が息を吹き返した……といきたいところなのだが,FX-6100,FX-4100ともまったく冴えない。FX-6100ですらA8-3850に歯が立たないという状況は,さすがに看過できないだろう。
4コア仕様で定格クロックが3.6GHz,しかも8MBのL3キャッシュも持つFX-4100が,3.1GHzでL3キャッシュを持たないX4 645と同じスコアに沈んでいることからするに,K8&K10のCPUコア数と,BulldozerのCPUコア数は,同列に語ってはならないもののようにも思われる。
32nm SOIプロセスのメリットはどこへ?
消費電力の低減も期待薄
FX-8150が持つ消費電力の高さは,悪い意味でインパクトがあったが,ダイこそ同じながら有効なコア数の減ったFX-6100やFX-4100ではどうなのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体の消費電力を計測してみよう。
テストにあたっては,ストレスツール「OCCT」を30分間連続実行した時点を「高負荷時」,その後,30分間放置した時点を「アイドル時」としている。
同じマザーボード上で比較したAM3+&AM3パッケージのCPUで比較するに,FX-6100とFX-4100のアイドル時消費電力はFX-8150と同等といってよさそうだ。
一方,高負荷時を見ると,FX-4100はPhenom IIの2モデルより確実に低い。マザーボードの違いも加味すると,A8-3850と同程度ではなかろうか。FX-6100はX6 1065Tよりも消費電力が上がってしまっており,6コア&低クロック化の恩恵はあまり受けられそうにない。
最後にグラフ7は,グラフ6の各時点におけるCPUおよびAPU温度をハードウェアモニタリングツール「HWmonitor PRO」(Version 1.12)から取得した結果となる。テスト時の室温は26℃で,テストシステムは,PCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いた状態だ。
FX-8150のレビュー時にもお断りしているとおり,今回はAMD FXプロセッサの温度を正しく取得できていない(※A8-3850のも取れていないが)。ただ,AMD FX同士の比較なら意味はあるため,それを踏まえて高負荷時の温度を見ると,FX-6100やFX-4100の温度は,FX-8150から大きく低下している。有効Bulldozerモジュール数の削減がメリットとして表れた格好である。
FX-6100とFX-4100でなければならない理由がない
むしろ自社製CPUやAPUが強力なライバルに
メーカー想定売価も,FX-6100が1万4980円(税込),FX-4100が9980円(税込)と格段に安いわけでもない。FX-6100とFX-4100はAMD FXプロセッサ全体の歩留まりを上げるためにリリースされたものなのだろうが,すでにAM3+環境を持っているAMD派へアピールするには,あまりにも弱いと言わざるを得まい。
AMD公式サイト
FX-8150レビュー記事(前編)
FX-8150レビュー記事(後編)
- 関連タイトル:
AMD FX(Zambezi)
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