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海外ゲーム四天王 / 第49回:「Lead and Gold: Gangs of the Wild West」
ゴールドラッシュによる西部開拓で,北米大陸が沸きかえっていた時代,銃にすべてを懸けるガンマンとなって戦うオンラインゲーム「Lead and Gold: Gangs of the Wild West」。
開発は,スウェーデンのストックホルムに本拠を置くFatshark ABで,同社はDirectX 11のテクニカルデモ「Stone Giant」の開発にも携わった実力派として知られている。現在は2009年にリリースされた「バイオニック コマンドー」の続編,「Bionic Commando: Rearmed 2」を開発中だ。
そんな,Fatshark ABが開発した西部劇モノである本作のマルチプレイモードには,ほかのプレイヤーと協力して,AIが操作する敵ガンマンと戦いながら金貨を獲得していく「GOLDFEVER」,マップ上に落ちている金貨の詰まった袋を奪ってポイントを得る「GREED」,点在するオブジェクトを破壊していく「POWDERKEG」,シンプルなチームデスマッチの「SHOOTOUT」,金塊を守るチームと強奪するチームに分かれて戦う「ROBBERY」,相手チームが所有する施設を破壊してポイントを稼く「DEMOLITION」,敵チームと戦いながら特定の地域を次々と占拠していく「CONQUEST」があり,すべてチームベースのマルチプレイモードとなっている。
マップは西部劇によく出てくるような,乾燥した埃っぽい町や荒野,鉱山跡地,鉄道線路,鉱山内部など7種類あり,プレイヤーに用意されているクラスは,ショットガンによる近距離での戦いに威力を発揮する「Blaster」,カービン銃の連射による中距離での射撃戦を得意とする「Deputy」,拳銃の早撃ちテクニックを駆使し,近距離での乱射戦に強い「Gunslinger」,連射はできないが遠距離から必殺の狙撃を行う「Trapper」という4種類だ。
それぞれのクラスでは,銃を使ったメイン攻撃のほかも,罠を仕掛けて相手を足止めしたり,ダイナマイトを投げつけて吹き飛ばしたりなど,固有のスペシャルアタックが使えるようになっている。
どれも個性的で魅力あるクラスだが,Deputyが使うカービン銃は装弾数が多く,中距離までをカバーする射程を持つためオールラウンドに使いやすい。リスポーンポイントが,そのままナイスな狙撃ポイントにもなるようなマップでは,Trapperのスナイピングが凄まじい威力を発揮したのも印象的だった。Blasterのショットガンは威力はあるのだが,いかんせん装弾数が2発しかないので,すぐに撃ちつくしてしまうのが痛い。Gunslingerは,リボルバー拳銃の撃鉄を手のひらで叩くようにして連射する,ファニングというスペシャルアタックを自在に使いこなせれば,近距離での戦いではかなりの強さを見せるのだ。
コントラストの効いたグラフィックスは,アメリカンコミックを意識しているようなカジュアルな雰囲気をかもし出しているが,弾が命中すると派手に血しぶきを上げるという,ゴアな表現も取り入れられている。撃たれた敵は,その場に倒れ伏して動けなくはなるが,引き続き攻撃はできるので,完全に倒すためにはさらに銃弾をお見舞いしてトドメをささねばならない。もちろん逆もしかりで,プレイヤーキャラクターが敵の銃弾に倒れたとしても,敵にトドメを刺されるまでは,その場に横たわった状態のまま攻撃を続けられるのだ。
撃たれて減った体力は徐々に回復していくが,仲間に回復してもらうこともできる。だが大抵の場合は,倒れて動けなくなっていると,敵にトドメを刺されてしまって一巻の終わりだ。
本作は三人称視点のTPSであるため,FPSほどマニアックな雰囲気はなく,ゴアな表現を除けば,シューティングゲームの初心者にも取っ付きやすいだろう。リスポーン時にクラスを自由に変更できるので,マップやそのときの状況に応じた使い分けが臨機応変にできるのはナイスだが,最近のシューティングゲームでは当たり前ともなった,物陰に隠れながら撃つといったアクションはなく,しゃがむ動作自体も実装されていないのは少し残念だ。
ライトな雰囲気で気軽にマルチプレイを楽しめるゲームだが,テーマが西部劇のせいか,あまりプレイ人口が多くなさそうなところが気になった。筆者がプレイした日本時間の昼間という,北米のゴールデンタイムにあたる時間帯でも,それほど多くのプレイヤーは見られなかった。もちろん自分でゲームをクリエイトして,ほかのプレイヤーが参加してくるのを待つといったこともできるが,オンライン専用ゲームでは過疎がクリティカルな要因となってしまうため少々不安だ。
ここ数年(数十年?),ほとんどといっていいくらい新作が作られなくなってしまった西部劇映画だが,かつて(半世紀ほど前)は映画ジャンルの一つとして全盛を誇った時代があった。このコラムでは,そんな全盛時代を知らないという若い読者のために,筆者が独断と偏見で選んだ,小難しい理屈は抜きに“観て楽しい西部劇映画”をいくつかご紹介してみよう。
まずはハリウッド映画から,巨匠として名高いハワード・ホークス監督と,西部の男を演じさせたら右に出るものがいないジョン・ウェイン主演による「リオ・ブラボー」(1959年)だ。保安官役のジョン・ウェインが,町を牛耳る悪党と真っ向から対決する単純明快な勧善懲悪ストーリーで,西部劇の面白さがすべて詰まっている。
ジョン・スタージェス監督が1960年に発表した「荒野の七人」は,ユル・ブリナー,スティーブ・マックイーン,チャールズ・ブロンソンなど名だたる名優が出演した名作で,寒村を悩ます山賊を退治するため,損得勘定を抜きにした7人のガンマンが壮絶な銃撃戦を繰り広げるというものだ。
マカロニ・ウエスタンと呼ばれたイタリア製西部劇の傑作,賞金稼ぎに扮したクリント・イーストウッドが,賞金首のギャングを追い詰めていくという「夕陽のガンマン」(1965年)も外せない。
このほかにも,OK牧場の決闘として知られる実際の事件をベースにした「荒野の決闘」(1946年)や,あまりにも有名なラストシーンが感動を呼ぶ「シェーン」(1953年),ジュリアーノ・ジェンマ演ずる,兄の敵を討つ早撃ちガンマンの活躍を描いた「荒野の1ドル銀貨」(1965年)など,ここでは紹介しきれないほどの名作が揃っているので,ぜひ一度,ご覧いただきたい。
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