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攻めれば攻めるほど面白くなるハイテンション シューティング・アクション。国産TPSの新境地「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」のレビューを掲載
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印刷2010/10/23 10:01

レビュー

圧倒的なスピード感と,確かなゲーム性がクセになる。国産TPSの存在感を世界に示した意欲作

VANQUISH(ヴァンキッシュ)

Text by 御簾納直彦


 セガは10月21日,PlayStation 3 / Xbox 360向けシューティングアクション「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」を発売した。本作は,Wii「MADWORLD」やPS3 / Xbox 360「BAYONETTA(ベヨネッタ)」などで,国内のみならず世界中のゲームファンから支持を得ているプラチナゲームズが制作を担当している。また,もはやゲームファンには説明不要のサバイバルホラー「バイオハザード」の生みの親として知られる,三上真司氏がディレクションを手がけていることでも話題となっているタイトルだ。

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 これまで4Gamerでは,プレイレポートや紹介記事などで幾度となく本作を取り上げてきたが,今回はマスター版をみっちりとプレイし,より深くVANQUISHの魅力を掘り下げてみた。“ARモード”“ブースト”といった独自の要素は,本作のプレイフィールにどのような影響をもたらしているのか。また,純粋にTPS(サードパーソンシューター)としての面白さはどうなのか。本作が気になっていたという人は,ぜひ一読していただきたい。ちなみに今回は,PS3版でのプレイをもとに記事を執筆している。

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「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」公式サイト


未来は夢に溢れているはずだった・・・。

宇宙に浮かぶ米国51番目の州プロビデンス。太陽光発電の拠点として建造されたシリンダー型のコロニーだ。巨大な発電施設では、電力をマイクロウェーブに変換し地球に送電している。

しかし、そのプロビデンスが何者かに占領され、発電施設は大量破壊兵器と化してしまった。敵は、送電用のマイクロウェーブを増幅し、サンフランシスコに照射。一瞬にして50万人の命が奪われた…

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一方、ワシントンでは、『ロシアの星』による宣戦布告を受けていた。ロシアでクーデターを起こしたばかりの組織だ。彼らの要求は、米国の即時無条件降伏。さもなくば次はニューヨークを攻撃すると脅してきた。

この米国最大の危機に救世主として指名されたのは、あのバーンズ。3度の戦争を経験し、シルバースターと海軍殊勲十字章を受章した英雄だ。すでに彼の艦隊は、コロニー付近まで接近している。

この艦隊には、大統領と国防長官の直轄機関であるDARPA(国防高等研究計画局)から、一人の男が派遣されていた。今作の主人公サムだ。名目上は新型バトルスーツARSの性能テストということでの同行だが、別の密命も受けている。

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『ロシアの星』によるニューヨーク攻撃まで、残された時間はあと僅か。
それぞれの思惑が交錯する中、米国の存亡をかけた戦いがいま始まろうとしていた。


 以上が,本作の導入ストーリーだ。公式サイトやスクリーンショットを見れば一目瞭然だろうが,本作は未来の地球を舞台としており,クーデターや戦争といった政治的な背景のもと,緊張感のあるストーリーが展開されていく。
 TPSというアクションメインのジャンルであるにもかかわらず,登場人物達が織りなすドラマ性も非常に深い。ネタバレになってしまうため詳しい内容は割愛するが,終始,目が離せないストーリー展開が続くので,プレイヤーは常にモチベーションを保ちつつ,手応えのあるアクションに没頭できるはずだ。


ARモードとブーストを巧みに使い分け

弾丸の嵐が吹きすさぶ戦場を駆け抜けろ


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 ここからは,VANQUISHのキモともいえるARモード(Augmented Reactionの略)とブーストが,本作のゲーム性にどのような影響を与えているかを紹介していこう。本作に関する知識がまったくないという人は,公式サイトや4Gamerの関連記事を参照しておくと,理解が深まるだろう。

 まず,エネルギーゲージを消費することで時間の流れをスローにできるARモードは,ゲーム中に起こるさまざまな危険に対応しうる,非常に有用なシステムだ。時間の流れをスローにすれば,激しい敵の攻撃を,じっくり見極めながら回避でき,被ダメージを抑えながら有利なポジションへ移動したり,敵を正確に狙って反撃したりできる。遮蔽物を飛び越える際や緊急回避時などが,ARモードの使いどきの,分かりやすい一例と言えるだろう。また,敵には弱点(赤く光っている部位や頭部など)が設定されていることがあるのだが,そこへ攻撃を命中/集中させる際にも,ARモードは役に立つ。

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 ARモードの存在は,プレイヤーのアクションだけでなく,カバーアクション制TPSが抱える欠点(といったら言い過ぎかもしれないが)も補ってくれる。
 従来のカバーアクション制TPSでは,カバー状態であれば被ダメージをかなり抑えることができるが,敵にまでカバー状態になられると,戦闘は当然膠着状態に陥りやすく,場合によってはゲームのテンポや爽快感がスポイルされるケースがあった。そういったゲームでも,爆発物を効果的に使うなどすれば状況を変えられるが,お手軽すぎる万能カバーに対しては,物足りなさを感じるゲーマーも少なくないだろう。

 しかし本作では,遮蔽物を飛び越える際などにARモードを活用すれば,敵の攻撃を紙一重でかわしつつ,わずかに見える敵の頭を打ち抜く……という行為が,現実的な選択肢の一つとなる。遮蔽物から飛び出て緊急回避をした場合でも,ARモードを発動すれば,次の遮蔽物まで逃げ続けることしかできない……という状況にはならず,わずかな隙を突いての反撃が十分可能だ。
 VANQUISHに登場する敵の攻撃はかなり激しく,TPSとしての難度はどちらかというと高いのだが,カバーという受け身のシステムだけでなく,ARモードという攻防一体のシステムも用意されているため,状況に応じてさまざまな戦い方が楽しめる。圧倒的なスピード感ばかりが注目されがちな本作だが,その戦術性の高さも相当なものだ。

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 筆者は最初,ARモードをあまり使わず,一般的なTPSと同じ感覚で(カバーアクションにも頼りつつ)本作をプレイしていたのだが,プレイを進めていくにつれ,ARモードが攻撃にも,防御にも有用なシステムだと気付いてからは,プレイスタイルが一変した。
 慣れないうちは,どうしても瞬殺したい敵や,どう考えても避けきれない攻撃に出くわしたときに,“切り札”的な感覚で使っていたのだが,数時間ほどプレイしたあとは,ペース配分も意識しつつ,状況に応じて指が勝手に反応するようになっていた。ARモードによって戦況をコントロールする気持ちよさは,本作の大きな魅力の一つと言えるだろう。

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 一方,VANQUISHのもう一つのウリであるブーストだが,こちらにも,移動時間の短縮やヒット&アウェイといった,さまざまな使い道がある。また,ブースト中に銃撃することにより,ARモードとの併用も可能になるなど,プレイヤーの技術次第でその利用価値が高まっていくところも面白い。

 ただ,ARモードとブーストに関しては,エネルギーゲージを使い果たしたことによるオーバーヒートに注意したい。オーバーヒートしてしまうと,再びゲージが溜まるまでの一定時間(時間にして10秒くらいか),ARモードとブーストの両方が使えなくなってしまう。こうなってしまうと非常に危険なため,ペース配分には十分に気を配っておく必要がある。


「遮蔽物に隠れていればとりあえず安全」

……という常識は通用しない!?


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 ARモードとブーストに関しては先に触れたとおりだが,それを抜きにしても,VANQUISHはTPSとして実に興味深いゲームだ。
 たとえば,カバーアクションが生み出しがちな膠着状態については,ARモードを活用すれば(プレイヤーの好みに応じて)十分打開可能だ。それに加えて,本作では一部の遮蔽物が“壊れる”ため,常に,比較的安全な状況から一方的に攻撃できるとは限らないのだ。
 遮蔽物が破壊されるシチュエーションは,主にボス戦の時に見られる。ボス戦では,通常の弾幕に加えて,レーザーやミサイルなどの特殊攻撃が襲いかかってくることがある。それらが次々と遮蔽物を破壊していくので,じっくりと攻撃を見極め,心の準備が整ったら反撃……というわけにもなかなかいかない。カバー状態になったからと言って安心していると,あっという間にやられてしまう危険もあるわけだ。

 筆者もプレイ中は,遮蔽物に隠れた状態でやられたことが何度もあった。カバーアクションが可能なTPSは,(安全地帯がいくらでもあるため)どちらかというとまったり楽しめる印象を持っていたのだが,VANQUISHではそんな甘い考えは通用しない。この緊張感は,ゲーム展開のスピード感とも相まって,プレイヤーに常時“ハイテンション”なバトルを楽しませてくれる。
 遮蔽物が壊されたとなると,必然的にプレイヤーは別の遮蔽物を探さなくてはならない。もちろん逃げてばかりでは敵を倒せないので,その間もARモードやブーストを活用しながら敵と応戦する。慣れてくると,それらの攻防が実に楽しく感じられ,ついつい時間を忘れてプレイに没頭してしまう。本作はそういったバランスが実に良くできており,プラチナゲームズの丁寧なゲーム作りを実感させられる。

 なお,遮蔽物がまったく役に立たないように伝わってしまうかもしれないので補足しておくが,もちろんすべての遮蔽物が壊れるわけではないので(むしろ壊れる遮蔽物のほうが少ない),常に鬼神のごとき戦いっぷりを要求されるわけではない。その点を不安に思っていた方はご安心を。

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アクションゲーム感覚で楽しめるカジュアルオートも魅力

国産TPSの実力を世界に示した意欲作に触れてみよう


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 「ロスト プラネット 2」や「フロントミッション エボルヴ」など,ここ最近,本格的な国産TPSが少しずつ増えてきているが,国内ではまだまだ馴染みが薄いため,プレイのハードルが高いと感じている人もいるかもしれない。
 そんな人にはぜひとも,VANQUISHを“カジュアルオート”でプレイしてもらいたい。このモードでは,銃を構えると,視界に入っている敵を自動的にロックオンしてくれるため,手動で照準を合わせる際の手間を一切必要としないのだ。プレイしてみれば分かると思うが,この恩恵は思った以上に大きい。VANQUISHの持つ爽快感を手軽に楽しみたいのであれば,まずはカジュアルオートでプレイすることを強くオススメする。それでさえ,ゲームをクリアするまでに何度も,ゲームオーバーを体験できるはずだ。

 もちろんノーマルモードやハードモードも用意されているので,一度クリアした人や腕に自信のあるシューターも,さらなる激戦を楽しむことができる。装甲車を守りながら進んでいく特殊イベントや,触れたら即死するトラップなど,プレイヤーを飽きさせない要素がそこかしこに用意されていることもあり,末永く楽しめる。

 ちなみに本作には,さまざまな武器が登場するので,武器を使い分ける楽しみもある。一般的な実弾兵器はもちろん,誘導レーザーのような特殊な武器も用意されており,戦い方のバリエーションも豊富だ(関連記事)。

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 SF TPSとしてのベースをしっかりと作り込みつつ,そこにARモードやブーストといった独自要素を搭載し,新たなゲーム性を提示したVANQUISH。公式blogによると三上氏は,「逃げずに前へ!」「匍匐前進やカバーはしたくない!」「弾はスウェーでかわす!」といった基本方針を掲げつつ,本作の開発を指揮したそうだが,個人的には,それらのコンセプトは見事に実現されていると思う。カバーアクション有りのTPSとは思えないゲーム展開の早さと,アグレッシブになればなるほど深みを増すゲームシステムの数々には,プレイヤーもハイテンションにならざるを得ないはずだ。
 TPSの戦術性と,アクションゲームの爽快感が見事に融合したVANQUISH。残念ながらオンラインマルチプレイには対応していないが,そこを抜きにしても,本作は極上のエンターテイメント作品に仕上がっていると思う。TPSが苦手という人でも,ぬるいゲームには興味がないというシューターでも楽しめる,懐の深さも備えているので,気になっている人はぜひ購入を検討してみてほしい。

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