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[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”
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印刷2011/03/01 16:56

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[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”

Zyngaの製品開発部門副社長 マーク・スカッグス(Mark Skaggs)氏
画像集#001のサムネイル/[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”
 現在約6億人もの累計会員数を誇る巨大SNSサービスへと成長したFacebookの中で,今なお最大のゲームプロバイダーとして君臨し続けるのがZynga Game Network(以下,Zynga)である。昨年10月に,アメリカ最大のゲーム企業とされたElectronic Artsの株式評価総額(約55億ドル)を抜き去ったというニュース(関連記事)は記憶に新しいところだが,数週間前には,はやくも株式評価総額100億ドル(約8200億円)というマイルストーンに達している。

 そんなZyngaにおいて,実質的にゲーム開発部隊を指揮しているのが,同社の製品開発部門副社長,マーク・スカッグス(Mark Skaggs)氏である。スカッグス氏は,去年のGDC 2010でも公演を行うなど,もはやZyngaの顔の1人として広く認知されているが,元々はElectronic Artsのロサンゼルス支部(EALA)に在籍し,「Command&Conquer: General」(2003年)や「The Lord of the Rings:The Battle for Middle-Earth」(2004年)などのリアルタイム戦略ゲームを手掛けた,コアゲーマー向けタイトルの開発者だった。

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 そんなスカッグス氏が,今回は「Click Zen: Zynga’s Evolution from FarmVille to CityVille」(クリックの禅:FarmVilleからCityVilleにかけてのZyngaの進化)という講義を行い,ZyngaがいかにしてFacebookゲーム市場に君臨する一大勢力へと成長したのか,そのプロセスに関するレクチャーを行った。

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 その理由として,スカッグス氏は開口一番に「不可能と思われることでも信じて進み続けたからだ」と話す。「Mafia Wars」の開発終了間際に雇用されたばかりだったスカッグス氏に,80年代のElectronic Artsを牽引したプランナーであり,現在はZyngaの役員の1人でもあるビング・ゴードン(Bing Gordon)氏が,スカッグス氏の背後から突然,「おい,農場ゲームでも作ってみなよ」と声をかけたのが,そもそものきっかけだったという。

 当時,他社の農場シミュレーションゲームはFacebookゲーム市場に存在していたが,これに際してスカッグス氏は,新作を「とにかく早く,軽く」市場に投入できるように心がけたという。「YoVille」のアバターを再利用したり,動物の種類を少なくしたり(当初は9種類だけだった)しつつ,去年のZyngaの講義(関連記事)でも説明されたように,たった5週間でゲームを作り上げてしまったのだ。そんな電光石火の勢いで作られた作品が,一日のアクセス者数(デイリー平均ユーザー数/DAU)3200万人の,当時最大規模のゲームに成長したのである。

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画像集#005のサムネイル/[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”
 もっとも,2009年6月19日にローンチされたFarmVilleの当初の目標は,「6月末日までに40万DAU」というものだったらしいのだが,ビジネス開発部の副社長に「30日間で100万DAUを達成したら,サンフランシスコにある超高級フレンチレストランで食わせてやる」と約束され,さらに経営責任者からも「6月末までに100万DAUなら,開発チーム全員をパリで休暇させてやる」という言葉をかけられたという。
 ふたを開けてみれば,たった5日間で100万DAUという,誰もが考えもしなかった偉業を達成することになったのだが,残念なことに高級フランス料理にはありつけたものの,フランス旅行そのものは「ジョークだった」と受け流されてしまったらしい。

 しかし,不可能を可能にしたのは,このFarmVilleだけではなかった。本作の成功により,その後18か月の間に,Facebookのゲーム市場は完全に開花し,新たなゲーム産業の一角として台頭する存在に変わった。Zyngaも,300人から1000人ほどの雇用規模に膨れ上がったというが,18か月と言えば,通常のパッケージ型ゲーム1作にかかると言われる期間に相当する。ちなみにZynga自身,「PetVille」「FishVille」「FrontierVille」といったシリーズ作品をはじめ,スカッグス氏自身も関わった「Treasure Isle」や「Poker Blitz」のような作品を次々と投入したものの,FarmVilleを超えることはできなかった。

画像集#006のサムネイル/[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”

 そんな状況下でスカッグス氏が企画したのが,2010年12月にローンチされたばかりの「CityVille」だ。2010年8月に開発が始まったというから,ちょうど5か月,つまりFarmVilleの4倍の開発期間という難産だったようだが,ゲームの複雑さはFarmVilleの比ではないのも確かである。
 同作はカリフォルニアの本部ではなく,テキサス州オースティンの支部で開発を行い,40人程度の開発部隊の半数は,ゲーム制作経験のない大学を卒業したばかりの新人だったというから驚く。開発者を育てるという目的があったのかもしれないが,スカッグス氏自身も,数週間のうちにチームが1つとなり,アップデートされるごとにゲームが面白いものになっていくのが感じられたという。実際には2010年11月にローンチを予定していたらしいが,プレイテストを続けるため,1か月ほど遅延する余裕もあったらしい。

画像集#007のサムネイル/[GDC 2011]Zyngaが「不可能を可能にした」プロセスとは?「FarmVille」「CityVille」開発の陣頭指揮をとったマーク・スカッグス氏が語る“クリックの禅”

 面白いのは,CityVilleはローンチされるやいなや,1日で100万DAUを達成。Facebookゲーム市場の新たな記録を塗り替えただけでなく,2週間で800万DAU,1か月で1400万DAUと順調にアクセス者数を伸ばしていった。最新の統計では2月25日に2000万DAUを突破しており,これはFarmVilleの倍以上のスピードである。

 CityVilleで再び不可能を可能にしたスカッグス氏だが,CityVilleの成功は決して偶然ではなかったと彼は語る。FarmVilleのときとは異なり,CityVilleのローンチに際しては,その後どのようにゲーム世界を拡張させ,どんなイベントを開催していくのかといったことや,プレイヤーのビジネスをフランチャイズ化させて,Facebookの顔写真をビジネス施設に付けるといった,ソーシャル面を強化する仕様を,事前に計画していたという。
 こういった,ターゲットの嗜好を研究し,ゲームに活かすやり方は,元々コアなストラテジーゲームを制作していたスカッグス氏らしいものである。彼のような旧来のゲーム産業からの“流れ者”達が,Facebookゲームやモバイルゲーム市場を,より強固なものへと成長させる原動力になっているのだ。
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