3DS版「タイムトラベラーズ」のダウンロード販売がスタート＆ディレクター・イシイジロウ氏からのメッセージが到着。半額期間もお見逃しなく

　レベルファイブは本日（5月29日），同社が2012年7月12日に発売したアドベンチャーゲーム，「タイムトラベラーズ」（ニンテンドー3DS版）の，ダウンロード販売を開始した。
　通常の販売価格は5980円だが，6月11日（火）までの期間はレベルファイブの創立15周年記念キャンペーンの一環として，半額の2990円（税込）で購入可能だ（関連記事）。なお，PlayStation Storeでダウンロード販売されている，PlayStation Vita版とPSP版も，このキャンペーンの対象となる。

「タイムトラベラーズ」公式サイト

　タイムトラベラーズは，「428 〜封鎖された渋谷で〜」（Wii / PlayStation 3 / PSP / iOS / Android）などを手がけてきた，イシイジロウ氏の直近の作品。舞台となるのは，428と同じく渋谷だ。ただし，428で描かれていた現代の渋谷とは異なり，タイムトラベラーズで描かれているのは，2031年という近未来の渋谷である。
　タイトルどおり，タイムトラベルが物語の核になっており，「SF」にカテゴライズされる作品なのだが，舞台が渋谷であること，そして遠い未来ではなく，あくまで近未来の物語として描かれていることもあってか，現代の「if」の世界を描いたものであると言われても，さほど違和感を覚えることはない。そのあたりのさじ加減もまた，本作の魅力になっている。

　本作の主人公は，刑事の神谷壮馬，キャスターの伏見 雛，高校生の深瀬有理，自称天才物理学者で詐欺師の新道究悟，そしてリアルライフヒーローのルサンチ☆マンという5人。以前掲載したイシイ氏へのインタビュー（関連記事）で，「『このキャラってどんな人なの？』と思わせるのではなく，『ハイハイ，あのタイプね』でゲームを始められるようにしています」と語っていたとおり，個性的ではあるが，あっという間にその個性を把握できるような設定が施されている。
　プレイヤーは，この5人（そして物語のカギを握る謎の少女・新道みこと）の視点を通じて，刑事ドラマ，青春群像劇，サスペンス，コメディといったバリエーション豊かな物語に接していくことになるのだ。
　一見すると，時代と舞台以外はバラバラの物語が同時進行しているように思えるのだが，やがて主人公達は世界の平和……というか，世界の存在そのものをも脅かすような大きな出来事に巻き込まれていく。その過程で，物語は一つに収束していくのだが，同時に多面性を帯びていく様は，まさに“ゲームならでは”の表現といえるだろう。


　なお今回，3DS版のダウンロード販売開始にあたり，イシイ氏からメッセージをいただくことができた。以下にそのまま掲載しよう。

今回「タイムトラベラーズ」の3DS版が新たにダウンロード販売される事になり、久しぶりに僕もプレイをし直してみました。
東京が経験した未曾有の災害から18年、私達はその事を忘れ目の前の繁栄に溺れていた。「タイムトラベラーズ」の物語はそんな始まり方をします。
まだ発売から一年も経っていない、この作品ですが、フィクションとして作り上げてきた設定の数々が、すでにフィクションだと笑っていられない様な状況に、少し背筋が寒くなりました。
そんな世界観の中で５人の主人公達が何を考え、行動し、そしてどんな選択をしていくのか？
それが僕たちが「タイムトラベラーズ」で語りたかった事です。

このダウンロード販売を機会に初めてプレイされる皆さんはどう感じるでしょうか？
そして一度プレイいただいた皆さんも、一年経った今、もう一度プレイしていただけたらとても嬉しいです。

皆さんと皆さんの大切な人たちに、素敵な未来がありますように。

2013年5月29日　タイムトラベラーズ監督　イシイジロウ

　4Gamerでは，前述のインタビューとは別に，イシイ氏と映画監督の大林宣彦氏との対談を掲載している（関連記事）。
　イシイ氏はここで，「もともとタイムトラベラーズという作品は，阪神・淡路をイメージしていて，1995年から18年後の物語を作ろうとした」「阪神・淡路で自分の実家や地元がボロボロになってしまったのを目の当たりにしたとき，そういうフィクションに出てきたようなヒロイックなタイムトラベルなんてあり得ないと感じた」「そういった自分の経験や思ったことをベースに，18年前に起きた大災害（※編注：ゲームの舞台である2031年から数えて18年前，つまりゲーム内の2013年に該当）について，思いを持ち続けている人，完全に忘れてしまっている人の物語を作ろうと思った」と，語っていた。
　だが，イシイ氏がタイムトラベラーズの制作にあたっていた2011年3月11日，東日本大震災が発生した。そこでイシイ氏は葛藤しつつも，「阪神・淡路から僕らが何を思って，何を忘れて，そして何を積み上げてきたかというイメージはきっちりあったので，そこは自信を持って変えずに出していく」という姿勢で，本作を作り上げたのだという。

　何もシリアスに受け取ることだけが正しいわけではない。先に述べたとおり，本作にはさまざまな要素が詰め込まれており，そこに託された思いから何を受け取るかは，プレイヤーの自由だ。
　ただ一つ確実に言えるのは，この作品はこのタイミングだからこそ，生まれたものであるということだ。上記のイシイ氏のコメントに込められた思いや，「『タイムトラベラーズ』で語りたかった」のはどんなことなのか。少しでも気になるという方は，この機会に遊んでみてほしい。

「タイムトラベラーズ」の制作にあたり，ディレクター イシイジロウ氏は，どうして自らに逆境と枷を課したのか

そもそも表現というのは，全部タイムトラベルなんですよ――「タイムトラベラーズ」の原点は，「時をかける少女」にあり!?　大林宣彦監督の思想にイシイジロウ氏が迫る

「タイムトラベラーズ」公式サイト