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[GDC 2011]「日本のセルアニメは世界一だ!」サイバーコネクトツー松山 洋氏,「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」で使われたこだわりのアニメ表現について語る
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印刷2011/03/05 00:00

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[GDC 2011]「日本のセルアニメは世界一だ!」サイバーコネクトツー松山 洋氏,「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」で使われたこだわりのアニメ表現について語る

サイバーコネクトツーの代表,松山 洋氏
画像集#002のサムネイル/[GDC 2011]「日本のセルアニメは世界一だ!」サイバーコネクトツー松山 洋氏,「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」で使われたこだわりのアニメ表現について語る
 サンフランシスコで開催中のGame Developers Conference 2011において,サイバーコネクトツーの代表 松山 洋氏は,同社の「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」PS3 / Xbox 360)で使われている“アニメ表現”に関する講演を行った。講演内では同社のアーティスト 竹下 勲氏による,具体的なアート制作の手法の説明も行われた。

 松山氏は,サイバーコネクトツーという会社の概要を海外の開発者に向けて説明したのち,同社が昨年手がけ,売上本数の世界累計が100万本を突破しているという作品「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」についての解説を行った。

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 まず松山氏は,本作が「日本産のセルアニメ的な表現」に徹底的にこだわったゲームであることを強調。そしてその後,本作がどのよう工程を経て開発されていったのかを,順を追って説明した。


プロジェクトの効率化。ツール開発


 ナルティメットストーム2の開発に際しては,すでに前作の開発経験があったので,そこで得られた経験から,どのように開発を効率化できるかが鍵となっていたようだ。

 開発チームの人数は常に一定だったわけではなく,時期によって変動し,開発にかかった23か月の期間のうち,最も多かった時期には,約80名のスタッフが開発に携わっていたという。
 効率化のために,ナルティメットストーム2の開発初期には,性能の良いツールを作ることに力を注いだという。このセッションではその際に作成された三つのツールが紹介された。

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 一つめは「スキルエディター」。これはキャラクター達が使う「忍術」のエフェクトや効果を作成するためのもので,アーティスト側ですべての忍術を制作できるようになっているのが特徴だ。ナルティメットストームのときは,アーティストが素材を作り,それをプログラマーが受け取って実装する……という手順を踏んでおり,それだと「素材待ち」「実装待ち」という状態が発生してしまい,効率的ではなかったとのこと。しかしスキルエディターがあれば,アーティストが自分の手元ですべての作業を行えるので,タイムロスがなくなり,効率が上がったそうだ。

 二つめのツールは「フローエディター」。これはイベントシーンを作るためのツールだ。ナルティメットストームでは,字幕の一つ一つまでプログラマーが付けていたそうだが,ナルティメットストーム2では総尺で16時間ものイベントシーンがあるため,プログラマーだけに頼ることは非効率的だった。そこで,誰もが使えるフローエディターが生まれたわけだ。
 フローエディターがあれば,カメラの位置やキャラクターの動きだけでなく,画面効果やサウンドのタイミングの指定までできる。このツールができたおかげで,アルバイトを含む多くのスタッフがイベントを作れるようになり,効率化がさらに進んだとのことだ。

 そして三つめは,キャラクターの表情や顔の演技を作る「リグ+フェイシャル」のツール。ナルティメットシリーズは,セルアニメ的な表現を突き詰めることを一つのテーマとして掲げている。そしてセルアニメでは,リアルではない誇張した表現が多く使われる(例えば表情に合わせて頭骨がゆがんだりなど)。それを表現するために,ボーンまで動かせる自由度の高いツールを作成したそうだ。

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 ともあれこれらのツールを完成させたおかげで,その後の作業が効率的に行え,ナルティメットストーム2ではより少ないスタッフで,前作以上のクオリティを誇る作品を生み出せたとのことだ。

 そのほか,ナルティメットストームで用意していたローポリゴンのキャラクターモデルは使用機会が少なかったので,ナルティメットストーム2では用意しないことにしたり,キャラクターの影を簡単に生成できるよう,共同開発のバンダイナムコゲームスにゲームエンジン NVライブラリの改良を依頼したりといったこともして,一層の効率化を図ったということである。


アートワークに関するポイント


リードアーティスト 竹下 勲氏
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 続いて,ナルティメットストーム2のリードアーティストである竹下 勲氏によって,本作のアートワークについての解説が行われた。竹下氏によれば,本作ではセルアニメの世界でいうところの「神作画」を目指して,アート作りが行われてきたという。ちなみに「神作画」という語は,資料上でそのまま“Kami-Sakuga”と表現されていた。竹下氏はいくつかのキーワードを挙げながら解説を進めた。

・超アニメ的モーションブラー
 ありえない残像をあえて入れるというセルアニメ的誇張表現の一つ。動作の開始点に一瞬残る像や,手足が伸びたかのような残像を入れることで,堅さのない,迫力ある動きを表現できる。実作業としては一枚のポリゴンに,描いた残像を貼り付けて一瞬表示させているだけなので,技術的に難しいものではないそうだ。

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・ダイナミックなシーンの作成手法
 これは主に背景の話。戦闘で動きまくるキャラクターの背後で,風景をダイナミックに動かすことで,アニメ的なスピード感が表現できるとのことだ。これを行うために,本作では意図的に,背景そのものを流れるように動かしている。リアリティで考えればおかしいが,こうすることでシーンの迫力は段違いに向上する。

・神作画パスアニメーション
 松山氏および竹下氏は,これを“Itano-Circus※”であると明言した。射出された物体に“板野サーカス”を行わせるためには,ただパス上を尾を引きながら移動させるだけではダメだそうだ。そこにさらに「パスをリアルタイムでうねらせる」という追加の工夫が必要なのだという。これに上記の背景を合わせることで,日本のアニメで見られるあのダイナミックさが見事に表現されていた。ちなみに松山氏によれば,今回ここで板野サーカスの参考映像を使うために,正式な使用許可を取ったそうだ。なんという情熱。

※アニメーター 板野一郎氏の手による独特なアニメ表現手法。長い煙を引きながら目標をどこまでも追っていくマクロスのミサイルが有名

・劇画タッチ
 “Gekiga”touchは,爆発的なキャラクターの感情を表現するために,荒く描いた輪郭線などを,キャラの顔の上に重ねる手法。これも描いたテクスチャーをポリゴンに貼り付けて,それを顔の前に置いているだけであり,技術的には難しくない。だがこうすることで,漫画やアニメで見られる激しい感情表現が再現できるのだ。

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 さらに竹下氏は,アニメ的な環境の表現手法に関する解説を行った。そこで見られた手法は,ひと言で言えば「現実とは違うけれども,現実よりスゴく見せる」ための手法と言える。
 例えば,3DCGで爆発の煙や水柱などを描くとき,欧米のスタイルでは,パーティクルやシェーディング技術などを使ってリアルなものを描こうとすることが多いだろう。しかしここでは,一枚のテクスチャを動かすことで表現したり,水にボーンを仕込んで「現実とは違うけれどもっとスゴいもの」に見えるようにしたりといったことが行われている。これらは日本のセルアニメが,長年かけて培ってきた技法に通じるものだ。

 これらのアニメ的表現に徹底的にこだわって作り出されたナルティメットストーム2には,世界中から「アニメを超えている」という感想が届いているそうだ。それを受けて松山氏も,自分達の作品がアニメを超えているとは考えていないという。もっともっと研究を重ね,突き詰めていきたいと思っているそうだ。

 最後に松山氏は,この講演で最も言いたかったこととして,以下の言葉を挙げた。

Japanimation is the BEST in the world !!!
(日本のセルアニメーションは世界一だ!!)


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 そして松山氏は,日本のセルアニメのクリエイター達を尊敬しており,彼らと一緒に世界で勝負できるコンテンツを作っていきたいと考えていると述べ,この講演を締め括った。

講演内では,同社の開発環境やナルトに対する取り組みなども紹介された。日本で発売されているNARUTOグッズはすべて会社で購入。少年ジャンプは過去五年分をストック。単行本は新刊が出るたびに15冊ずつ購入。もちろんアニメDVDもすべて購入。夏の劇場版は80名のスタッフが,劇場へ足を運び映画を観る。12月のジャンプフェスタには(同社のある)福岡から20名のスタッフが視察に行く……と,本気(というか愛情,情熱)がつたわる取り組み方だ。映画館やイベント会場に足を運ぶのは,製品の受け手である子供達の姿を,作り手が知っておく必要があるからだと,松山氏は語っていた
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