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「World of Tanks」の世界大会決勝戦,The Grand Finals 2017のプレスカンファレンスをレポート。9.19アップデートでランク戦が実装
会場となるVTBアイスパレスは最大収容人数最大1万4000人の多目的アリーナで,通常はその名が示すとおりアイスホッケーの競技場だ(バスケットボールの試合にも使われる)。
過去最大規模で開催されたGrand Finalsだが,まずはプレスカンファレンスの模様をレポートしたい。また,これにあわせてWorld of TanksのProduct DirectorであるThaine Lyman氏のインタビューと,ステージで行われた開発者プレゼンについてもお届けしよう。
変化し続けるGrand Finals
プレスカンファレンスに最初に登壇したのはHead of Global Competitive GamingのMohamed Fadl氏だ。ワルシャワで開催された第1回Grand Finalsから一貫してWargaming.netのe-Sports展開を指揮してきた人物である。
まず彼は,Grand Finalsとはどういうイベントなのかという点について,「世界中から人が集まってきて,夢を実現させる場所だ」と語った。Wargaming.netのCEOであるVictor Kislyi氏の素朴な疑問だった「世界で一番World of Tanksがうまいプレイヤーは誰なのだろう?」という問いかけでスタートしたこの一連のトーナメントは,今や世界中のチームがその頂点をめぐって戦うスポーツイベントとなった。
幾多のプレイヤーが戦うWargaming.net Leagueは,プレイヤーの才能を育み,洗練させ,祝福する場だとFadl氏は語る。そして同時に,World of Tanksのプロプレイヤーと,その観客に対し,適切な楽しさが提供される場でもあるというわけだ。
さて,Grand Finalsにおいて重視される要素として,Fadl氏は3つの指針を示した。
1つ目は,チームワークの重要性。
World of Tanksはチームで戦うゲームであり,個人の能力もさることながら,チームとしてどれくらい互いに協力し合えるかが勝敗に大きく影響する。それはGrand Finalsにおいても同じであり,優勝するチームは,もっともチームワークの良いチームでなくてはならない。
2つ目は,万人に対して開かれていること。
World of TanksはF2Pのゲームであり,誰もが無料で,まったく同じゲームを楽しむことができる。これはWargaming.net Leagueにおいても同じで,Grand Finalsに至る挑戦は,万人に対して開かれている。
3つ目は,コミュニティによって駆動するイベントであること。
第1回のGrand Finalsがワルシャワで開催されたのは,ポーランドのWorld of Tanksコミュニティの熱意によるものであると,かつてVictor氏は語ったことがある。この方向性は今も変わっておらず,Grand Finalsをより良いイベントにしていくにあたっては,選手から観客まで,参加者の声をどんどん取り入れているという。
Grand Finalsは,ストリーム配信されるe-Sportsコンテンツとしても好調だ。
2013年から2017年にかけて,Wargaming.netはe-Sportsに対し4000万ドルの投資を行ってきた。この投資の成果もあり,Grand Finalsへと至る一連のシーズンのストリーム中継は,非常に人気の高いコンテンツとなっている。
具体的なデータとしては,CIS地域における最終シーズンの平均視聴時間は121分,また昨年のGrand Finalsの視聴者数は200万人(ユニークユーザー数)に登っている。
ちなみにストリーム中継の視聴者数はさらに拡大傾向にあるようで,2017年においてはプレスカンファレンスのあった日までで,すでに昨年の2倍以上(つまり400万人以上)が視聴しているそうだ。
一方で,Grand Finalsのあり方そのものも,着実に変化し続けている。
Grand Finals 2017におけるもっとも大きな変化としては,言うまでもなく,会場の変化が挙げられるだろう。
World of Tanksがもっとも盛り上がっていると言って差し支えのない,CIS地域の中心地であるモスクワでの開催は,ある意味で新しいチャレンジだとも言える。当然,試合会場の規模は拡大しているし,各種演出のクオリティも向上している。
また,大会のフォーマットも改善されている。これまでのGrand Finalsは,Fadl氏曰く「早朝から始まって深夜まで続くイベント」だった側面がある。選手たちはかなり過密なスケジュールの中で試合を行っており,それを観戦する観客にとってもなかなかにタフなイベントとなっていた。
今大会においては,世界4地域から参加した12チームによる予選,予選を勝ち残った8チームによるシングルエリミネーションのトーナメント1回戦(VTBアイスパレスでの1日目),そしてセミファイナルと決勝戦(2日目)という形で,トータル1週間を使っての大会運営となっている。また試合中にもインターバルタイムが持たれるようになっており,選手がよりゲームに集中できる環境となった。
これ以外にも,どちらのチームが勝つかを占うロブスター「トマト君」によるパフォーマンスといったお遊び要素や,World of Tanksのロゴをあしらった優勝トロフィー(これまでのトロフィーは非常に重いことで知られていたが,今年からは軽量化が図られたそうだ),メインパートナーとしてFacebookを得たことなど,Grand Finalsは決勝戦という位置づけながら,多彩な試みが続く大会になっている。
その試みのすべてが良い成果を出すかどうかはともかく,今後のGrand Finalsがどう変わっていくのかにも期待が持てると言えるだろう。
9.19アップデートで「ランク戦」が実装予定
さて,プレスカンファレンスではFadl氏の発表に続き,Product DirectorのThaine Lyman氏による発表があった。
・開発体制の改善
2016年は,World of Tanksというゲームを一度リセットして,新しく作り直す年であったと言える。この再構築においては,プレイヤーからの意見も参考としており,結果的により良いゲームにできた。
また従来のチームにおいては,各スタッフの才能は非常に素晴らしいものの,ゲームのサービスが全世界に広がったことに伴い,どうしても連携に問題が発生する側面があった。このワークフローを改善し,またBongFish社と開発協力を進めたことなどにより,30対30での戦闘といった大型コンテンツの開発もスムーズに行えるようになっている。
・テスト環境の改善
Sandboxと呼ばれるサーバを作った。従来のテストサーバは,次に発行されるパッチに含まれる内容のみを実装したサーバだったが,Sandboxにおいては長期的な実装予定となっているコンテンツのテストも行っている。
これによって,より綿密なテストを行うことが可能となった。
・9.18パッチについて
9.18パッチでもっとも注力したのはマッチメイクシステムの改善である。マッチメイクシステムについては,これまでもプレイヤーから大きな改善要求の声があがっており,そこに問題があることは把握できていたが,今回はその改善に成功したと考えている。
具体的には,ランダム戦においてプレイするマップが偏ってしまう問題や,ボトムTierでの参戦が続いてしまうような問題(いずれも少数試行時における「乱数が偏って感じられる」問題と言える)など,細かなフィーリングの部分にも改善を施している。
これ以外にもTier10軽戦車の導入やSPGのシステム変更など,9.18パッチでは極めて大きな変更が成されているが,その変更の多くはポジティブな反応を得ている。もちろんフィードバックとして賛否両論が飛び交っている要素もあるので,それらについても確実に改善をしていきたい。
・9.19パッチについて
9.19パッチ最大の目玉は「ランク戦」だ。
ランク戦はTier10限定の15対15ランダムバトルで,その名のとおり,プレイヤーは活躍することによって「ランク」が上昇し,それによって固有の報酬が得られる。
このランク戦は,現状のWorld of Tanksにおけるエンドコンテンツであり,Tier10戦車を開発したプレイヤーが,その先でさらにTier10戦車でどうゲームを楽しんでいくかという点に注力されている。
またランク戦に伴い,新しいゲーム内通貨が制定される。「Bonds(ボンズ)」と呼ばれるこの通貨は,ランク戦を通じて得られる(将来的にはランク戦以外でも発行される可能性があるという)。プレイヤーはBondsを消費することで新しい装備を購入したり,またDirectiveと呼ばれるギミックを導入したりできるようになる。
これらに加え,マップのHD化も進められる。
アップデート9.19は6月第1週ごろから世界各地で順次行われる予定。
Product Directorに聞く,これからのWorld of Tanks
以上を踏まえ,Lyman氏にインタビューした模様をお届けしよう。
――最初に,Lyman氏の肩書であるProduct Directorという仕事の内容を教えてください。
Product Directorは比較的新しい役職で,僕自身も以前はExective Producerという肩書で仕事をしていました。
けれど会社が大きくなって,社員も4000人という規模になり,なによりグローバル企業になったことで,従来のワークフローではうまくいかない局面が増えてきました。スタッフの間でさまざまなアイデアがぶつかってしまったり,あるいはアップデートの反応なんかにしても世界の各地域で温度差が出てしまったり,といった具合です。
そこで,World of Tanksというゲームの制作に関わっているすべてのチーム――ゲームデザインや歴史考証,パブリッシングといった,あらゆるチームの間から出てくるさまざまな意見を聞き,調整し,そして彼ら全員に同じ方向を見てもらうために動く人間が必要だ,ということになった。それが今の僕の仕事です。
――Wargaming.netはいまや世界中にオフィスを持ち,開発拠点もあちこちにありますが,World of Tanksの開発はどのように行われていますか。
Lyman:
World of Tanksについては,開発の拠点はミンスクにあります。「ミンスクですべては始まっている」と言っていいでしょう。開発協力としてBongFish社というパートナーを得たけれど,ミンスクのチームとの連携は非常に良好で,社員が互いのオフィスを行き来して仕事を進めていることも多い状態です。
実際,「ミンスクチームはこの仕事,BongFishはこの仕事」といった,厳密な仕事の分担も存在していません。Wargaming.netには「1つのゲームを,1つのチームで(1 game, 1 team)」という標語があるけれど,ミンスクチームとBongFishはこの「1つのチーム」として,一丸になって動いていると言えるでしょう。
BongFishとの協力によってFrontline(30 vs.30)のような大きなコンテンツ制作も順調に進んでいるし,Frontline自体も好評です。BongFishとは今後も長くやっていきたいと思っています。
――9.18アップデートはかなり大きなパッチとなりましたが,どのような反応がありましたか。
Lyman:
9.18はアップデートとして過去最大規模のものでしたが,現状ではとても良い反応をもらっています。とくに積年の課題だったマッチメイクシステムを改善できたのは大きいし,これに対する評価はとても良好です。
ただ,何事につけ「これ以上もう改善できない」などということはない,とも思っています。だからこれは「勝利」ではないですが,「大成功」と言っていいとは思います。
それから,今後,さまざまな要素を改善していくにあたっても,ちゃんと時間をかけて修正していきたいです。
例えばTier10軽戦車は,テストサーバにおいては「強すぎる戦車」でした。だから9.18をリリースするときには,いろいろと弱体化させています。でも,その設定で本当に良いのかどうかは,リリースした翌日に分かるものではありませんよね。30日,60日,90日と期間を区切って,そのなかでどのように実際のデータが変わっていくかをしっかりと調べながら,あくまでデータ主義で確実に修正をしていきたいと思っていまする。
それから,SPGについても大きな変更を加えました。これについては,正直に言えば,賛否両論がとても大きいです。というか,SPGっていう車種はそもそも賛否が大きく別れる傾向があって,「素晴らしい! これを待っていた!」という人もいれば,「とんでもない! 元に戻せ!」という人もいるし,「そもそもWorld of TanksからはSPGなんてものをなくすべきなんだ!」という人さえいます。ともあれ,もちろんSPGについても,今後もチェックを続けて,改善していくつもりです。
これら以外にも,改善すべき点はたくさんあると思っています。だから,今後も確実にゲームをより良いものへと変えていきたいですね。
――一部のプレミアムタンク(課金戦車)について,「これは強すぎる」という声が出ることがしばしばありますが,これについてはどうお考えですか。
そういう意見をとても,とても,とても,たくさん聞いていますよ。それだけに,そこに問題があるということも,ちゃんと把握しています。
プレミアムタンクがこちらの意図どおりのバランスになっていないことは,確かにあります。テスト回数を増やし,調整に時間をかけているけれど,やはりそういうことは起きてしまうことがあるんです。それから,テスト環境ではどうしてもプレイヤーの行動が冒険的というか,普段のプレイではやらないことをしようとする傾向があって,それも正確な能力測定に悪影響を与えているところもあります。
とはいえ,お金を払って戦車を買ったプレイヤーのことを考えると,簡単に「じゃあ弱体化します」とは言いたくありません。それは裏切りですからね。
現状では,プレミアムタンクをどう活用するかという点について,詳しいコミュニティに接触して,積極的に情報を集めるようにしています。そして,これは決して簡単な問題ではないというのも,理解しています。
ともあれ,言えることとしては,調整においてはロングスパンでの確実性を重視している,ということです。アップデートによってゲームの環境は変わるし,それによってゲームのバランスも変わってくる。だから場当たり的な対応をするべきではないと思っています。
あと,この問題については,とにかく透明性が重要だと思っています。プレイヤーの声をしっかりと聞きながら,正しい対応をしていきたいですね。
――9.19パッチではランク戦が増えると聞きましたが,これについての基本的なところを教えてください。
Lyman:
ランク戦は,Tier10戦車のみによる,15対15のランダムバトルだと思ってもらえば基本的には間違いありません。プレイヤーは「ランク戦」を選んで,戦闘開始ボタンを押せば,ランク戦でのマッチングが始まります。
ただし,ランク戦は特定の時間しかプレイできません。プレイヤーの数が少ないときは,何度も同じプレイヤーと対戦できてしまうという状況があり得ますが,そうなると「わざと負ける」みたいなズルをして,意図的にランクを操作できる可能性が出てきますから。なので今のところ,いわゆるピークタイムだけの開催になる予定です。
ランク戦は4週間を1シーズンとして行われて,週ごとに成績に応じた特別な報酬が出ます。また,成績によってランクが上がったり落ちたりもします。
予定としては,6月にベータ版としてシーズン1を開始し,1シーズンを終えたところで,そのデータをもとに各種バランス調整を行うつもりです。ランクが上下する速度だったり,Bondsが得られる量だったりが,本当に適切かどうかを,この期間を使って確認したいんです。
それから肝心のBondsですが,今のところ装備品とDirectiveの購入にだけ使えます。ただ,これについても将来的には拡張する可能性があります。
――最後になりますが,VR機器を使ってWorld of Tanksを楽しめる可能性はありますか。実際に対戦するのはさておき,観戦モードがVR機器で見られたら面白いと思うのですが。
Lyman:
VR機器がどれくらい普及するかに依存するところがあります。
でも,VRには当然,興味を持っています。例えばですが,World of Tanksにおける自分の「ガレージ」をVR空間にして,そこを自由に歩き回れたら,絶対に楽しいと思うんですよね。
――ありがとうございました。
最後になるが,Grand Finalsの会場で発表された9.19アップデート関係の画像もお届けしたい。
なお画像はすべてロシア語版のクライアントで,かつアナウンスもすべてロシア語であったため,写真のキャプションは「たぶんこういうものではない,かな……?」という範囲に留まることに注意してほしい。
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