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坂口博信氏へのショートインタビューを掲載:「THE LAST STORY」(ラストストーリー)のキーワードは“仲間”。本当に仲の良い友達とMMORPGでパーティを組んだときのような楽しさを
この発表会は,任天堂より2011年1月27日発売予定のWii用ソフト「THE LAST STORY」(ラストストーリー)のディレクターである,ミストウォーカーの坂口博信氏がゲームの内容を紹介するという内容で,本日の14:00から,Ustreamを通じてインターネット生放送された(関連記事)。
イベント全体のレポートは後ほどあらためてお伝えするが,ここでは,プレゼンテーション終了後に行われた,坂口博信氏への合同インタビューの模様をお伝えしていこう。
「THE LAST STORY(ラストストーリー)」公式サイト
――今回のプレゼンは,Ustreamで生放送されるだけでなく,テレビCMでの事前告知もなされるという大掛かりなものでしたが,これは誰のアイデアだったんですか?
坂口氏:
それは任天堂のプロデューサーの方です。正直,僕も驚きました。
ストリーミングで放送するのも,僕にはない発想だったんですが,今はネットワークが高速化され,インターネットで映像を見られる時代ですから,そういうものも確かにありだなと。
岩田さんが会場に来られたのにはビックリしました(笑)。本当に知らなかったんですよ。
――3年半から4年という長期にわたる「THE LAST STORY」の開発をほぼ終えた,今の心境はいかがでしょうか?
坂口氏:
本当はもうちょっと早く終わる予定だったんですけど,やっぱり「いいものにしようよ」ということでスケジュールを伸ばしていただいたんです。とことん作り込めたということには,すごく感謝しています。
また,ゲームというのはどうしても最後はバグとの戦いになります。そこはいつものように大変で,だいたい一つか二つは,原因が分からなくてなかなか取れないバグがあるものなのですが,それもきれいに取れました。その安心感,バグがすべて取れてよかったねというのが今の心境ですね。
――約18年振りのディレクター復帰ですが,今回,直接ディレクションすることになった経緯を教えてください。
坂口氏:
今までのスタイルだったら,「これはこういう絵を用意しておけばいい」「こういうプログラムを書いておけばいい」など,チーム内である程度勝手に動けますけど,「THE LAST STORY」は新しいシステムにしたかったので,そういった「お約束」がないんですよね。
自分で直にスタッフと話をして整理しながら開発して,ときにはそれこそ組織ごと再構築しないといけないこともあるので,より現場に近いところでといいますか,ディレクションするという形を取りました。
――「THE LAST STORY」のテーマやキーワードを教えてください。
仲間というのが,今回の一番のキーワードですね。
主人公はちょっと優しくて,悪く言えば優柔不断な性格で,口調にもそういう特徴が表れています。彼らがぎゃーぎゃー言いながらダンジョンを歩くのを見ていただいたと思いますが,周りにいる連中が生きていて,自分の友達みたいに思えてくるところがあって,ゲームを最後まで終わらせると,仲間というものをすごく意識するんですよ。
制作中に「ああ,それはいいな」と思ったので,最終的にそういったところをプッシュして,遊んでくれた方が「あの仲間達と冒険できてよかったな」と思ってくれたらいいなと。
――戦闘シーンを見ていて,MMORPGに近い感覚を覚えたのですが,意識した部分はあるのでしょうか?
坂口氏:
そうですね。MMORPGを,本当に仲のいい友達と遊ぶと楽しいじゃないですか。オフラインゲームなのでそれは完全に一緒ではないんですが,その楽しさを一人で味わえるというか,MMORPGを仲良しの6人パーティで30〜40時間くらい,ずーっとチャットしながら遊ぶといったところに感覚的には近い部分があると思います。
戦闘のシステムでも,壁役の戦士がいたり,魔法使いは叩かれると弱いけど,その代わりに強力な一撃を放てたりと,MMORPGに代表されるシステムに似ている部分があるとは思います。
――ちなみに坂口さんは,どのようなMMORPGをプレイしていましたか?
坂口氏:
昔は「EverQuest」をよくやっていたんですけど,最近はやっていないですね。僕は「THE LAST STORY」が終わっていちばん何がやりたいかといえば,「World of Warcraft」なんですよ(笑)。まだ一度もやっていないんで,完全に初心者なんですけど。
――ダンジョンの移動中などに仲間が勝手にしゃべりますが,ボリュームはどのくらいあるんですか?
坂口氏:
比較対象はないですけど,ダンジョンの中であれだけしゃべっているゲームはほかにないんじゃないですかね。しゃべっていることはしょうもないことが多いですけど,それが集積して,ライブ感というかノリというか,そういったところに繋がっていると思うので。
ささいなことなんですけど,重要視して詰めるだけ詰め込みました。
ただ,とくに後半はもちろん,ストーリーにのっとった会話もします。まったくくだらない会話だけ,というわけではありません(笑)。
――ダンジョンの会話は,どのように進行するんですか?
坂口氏:
基本的には,ダンジョンごとに,進む道に合わせた調整をしています。ダンジョンの道にはときどき分岐があるので,そうすると進んだ道以外での会話は聞けないということはあります。
――プレゼンでは,街中でバナナをばらまいて,それを町の人が踏むと滑って転ぶ,というデモがありましたが,そのほかにもお遊び要素はあるのでしょうか?
坂口氏:
レモンが籠に入っていて,それをばらまくと皆がそこらじゅうで転んだりします。
バナナでいえば,イベントにも絡んでいるんですよ。たとえば,貴婦人達が広場でお茶しているんですけど,みんな鼻持ちならないんですね。ウエイトレスが,「あんな人達,バナナで滑っちゃえばいいのに」というので,バナナで全員を滑らせると,その子がお礼をくれたりとか(笑)。
活気があるというか,ああいう街なので,そういったことが起きたほうが楽しいと思い,くだらないものをものすごくいっぱい入れましたね。
――「THE LAST STORY」のタイトルを決めるとき,「これで最後の作品になるかも」という決意を込めたとのことですが,完成した今の心境としては,次も作れそうな感じでしょうか?
自分では120%やれたと思う内容ですが,そういうことではなくて,遊んだ方がどう思うかなんですね。
あまり評判が良くないのであれば,たぶん僕の感覚が時代とずれている。それであれば,「一生作らない」とまではいかないまでも,しばらくは作っても意味がないでしょう。そういう気持ちで,自分を全部出しました。
発売後,手に取っていただいた方にジャッジしていただいて,今はその結果がいろいろなソースから入ってきますから,そこで噛み締めたいと思います。
――ありがとうございました。
「THE LAST STORY(ラストストーリー)」公式サイト
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