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[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい
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印刷2011/06/14 15:54

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[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい

画像集#004のサムネイル/[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい

 E3 2011の会期中,2K Gamesが販売を予定しているFPS,「BioShock Infinite」PC / PlayStation 3 / Xbox 360。以下,Infinite)のキーパーソンの1人,ティム・ゲリットセン(Tim Gerritsen)氏に,短い時間だったがインタビューを行った。限られたメディアを除いて,北米ではほぼ初公開ということもあり,Infiniteは今回のE3で最も期待の高い作品の1つだ。「BioShock」を開発したIrrational Gamesのメンバーが手がける本作だが,世界中のメディアの対応などで,かなり忙しい様子だった。

ティム・ゲリットセン(Tim Gerritsen)氏
画像集#001のサムネイル/[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい
 執拗な作り込みで知られるシリーズだけに,デモを数回見た程度でゲームの核心を理解するのは難しいとは思うのだが,少なくともこれまで発表されたものから判断する限り,Infiniteに“BioShockらしさ”はあまり感じられない。個人的な話で恐縮だが,宇宙船を舞台にした1999年の「System Shock 2」,そして海底都市に場所を移したBioShockと,シリーズに通じるテーマは,「孤立した空間で,暗がりの中,たった一人で戦う」ところにあるのではないかと思っていた。したがって,目に染みるような青空が広がるInfiniteは,ショッキングなほどの方向転換という印象なのだ。
 今回のインタビューでは,ゲリットセン氏にそうした基本的な疑問をぶつけると共に,ヒロインであるミステリアスなキャラクター,エリザベスに関するさまざまな情報を聞いてみた。

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「BioShock Infinite」公式サイト(要年齢認証)

[E3 2011]見えてきた「BioShock Infinite」のゲーム世界。青空のまぶしい浮遊都市でエリザベスを助けるのだ



4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。ではまず,自己紹介をお願いできますか。

Gerritsen:
 はい。Irrational Gamesで開発ディレクターやエグゼクティブプロデューサーなどをやっています,ティム・ゲリットセンです。Irrational Gamesには,そうですね……ちょうど「BioShock」の開発が終わった頃ですから,3年ほど前に入社しました。それ以前は,創設者の1人としてHuman Head Studiosに長く在籍していました。

4Gamer:
 精神的な前作といえる「System Shock 2」からBioShock,そしてこの「BioShock Infinite」へと続いてきたわけですが,これまでシリーズ作品をBioShockたらしめてきたバイオロジー(生物学)的なホラー要素は,これまで発表された内容を見る限り,失われていると思います。本作の“BioShockらしさ”というのは,どういう点にあるのでしょうか。

Gerritsen:
 そうですね。BioShockの開発が終わったとき,我々の中ではすでにラプチャー(BioShockの舞台となった海底都市)は過去のものとなり,何か新しいものに挑戦したいという意識が高まっていました。BioShockで作り上げたルールを捨て去り,まったく違うものを産み出してみようと考えたのです。
 もちろん,BioShockの名を冠した別の作品を作ることは,パブリッシャの2K Gamesの寛大さがなければ,できなかったことですけれど。

4Gamer:
 それは,必ずしもBioShockである必要はなかったということを意味しませんか。

Gerritsen:
 いや,InfiniteがBioShockであることは間違いないと思います。SFだったSystem Shock 2はともかく,BioShockは,アメリカの1つの時代を取り上げ,当時の思想なり空気感なりを誇張することでゲームの世界を作り出しています。登場するキャラクターの個性も,その世界観に合うように練り込み,うまく活用できました。BioShockで行った,こうしたユニークなアプローチを,別の時代に当てはめることは可能なはずです。Irrational Gamesは,ポップカルチャーや歴史オタク,科学オタクの集まりなんですよ。

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4Gamer:
 では,Infiniteで,BioShock以前の時代を選んだ理由はなんでしょう?

Gerritsen:
 InfiniteはBioShockよりも50年ほど昔の,1912年を描いています。BioShockは「アメリカ黄金時代」が終わりを告げた1960年代が舞台ですが,Infiniteの時代背景もBioShockと同じくらい興味深いと思います。当時は産業革命がさらに進んでさまざまな発明が行われる一方,資本主義,社会主義といった思想が芽生えます。中産階級が誕生し,同時に従来とまったく別の視点,つまり科学の目で物事を考える下地が整うなど,古い時代の終わりと新しい時代が始まる境目だったわけですね。
 そんな中,1893年にシカゴで万国博覧会が開催されますが,ゲームのアイデアやアートは,この博覧会に大きな影響を受けています。

4Gamer:
 なるほど。ところで,BioShockはバイオロジーですが,Infiniteは科学でいうと,どんなジャンルを意識されているのでしょう?

Gerritsen: 
 時代は少し前後するのですが,アインシュタインやハイゼンベルグといった物理学者達のアイデアです。

4Gamer:
 どうも,あまり詳しくないんですが,量子力学とか原子物理学とか,そのへんなんでしょうか。ゲームに登場する空中都市コロンビアは,原子力で浮いているとか?

Gerritsen:
 そのあたりは,ストーリーにも深く関わってくるので,今の段階では詳しくお話しできませんが,鳥型ロボット,ソングバード(Songbird)の姿やコロンビアの街中で使われている技術,そしてパワーアップアイテムであるヴィゴー(Vigor)など,すべて当時急速に発展していたとある科学分野に関連するものであるのは間違いありません。

画像集#006のサムネイル/[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい

4Gamer:
 そこにエリザベスが絡んでくるわけですね。

Gerritsen:
 そうです。エリザベスはInfiniteのストーリーやゲームの科学原理に絡んでいます。エリザベスは,コロンビアにある塔の中に15年間も閉じこめられていて,都市の2つの勢力,つまりThe FoundersVox Populiの双方から必要とされているのです。もちろん,その理由も話せませんよ。さっきから聞きたがっているのは,よく分かりますが(笑)。

4Gamer:
 そうですか,それは残念。ところで,公開されている情報では,そもそも主人公のブッカーは誘拐された人物を追ってコロンビアに潜入したことになっています。誘拐された人物がエリザベスだとして,それは彼女が何かの能力を持っているからなんですね。

Gerritsen:
 はい,そうです。ですが,彼女は自分の持つ力をコントロールできず,ずっと隔離されていました。これまでに公開されているデモでも,無重力のような状態になったり,ティア(空間が裂ける現象)が起きたり,エリザベスが自分自身でもコントロールできないほどのパワーを持っているのが分かります。
 例えばティアは,コロンビアのあちこちで発生しているのですが,それを制御できるのはエリザベスだけです。でも,それがうまくいかなくて,さまざまなことが起こる。詳しくは言えませんが,エリザベスはストーリーにおいて重要な存在であるだけでなく,ゲームプレイにとっても不可欠な要素になっています。

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4Gamer:
 デモでは,ブッカーとエリザベスが協力してパワーを使うシーンが見られました。エリザベスが車のようなものを出現させ,ブッカーの防御に使うといった。

Gerritsen:
 それがゲームプレイの要素の1つですね。でも,エリザベスは常にパワーを発動できるわけではなく,使用のたびに彼女のリソースが減るので,回復を待たなければなりません。ある程度お話ししておくと,ゲームの後半でエリザベスはティアをコントロールできるようになりますが,プレイヤーがいつ,どのようにティアを利用するのか,エリザベスの様子を見ながら考えなければならないのです。

4Gamer:
 なるほど。

Gerritsen:
 ゲームが進むに連れて彼女もパワーの使用に慣れ,一度に複数回使えるようになります。もっとも,2人が協力してパズルを解くといったシーンもありますので,やはり闇雲に利用できるわけではありません。

4Gamer:
 プレイヤーは,どの瞬間にコンボを繰り出せるのが分かるようになっているのですか。例えば,エリザベスが音声で告げるとか。

Gerritsen:
 デモでは,貨車が突然現れて敵をなぎ倒してしまう場面がありましたね。その前に見えた影というか,ティアから飛びだすことになるオブジェクトの半透明のイメージが,プレイヤーに見えます。実際にそれを利用するかどうかは,プレイヤー次第ですが。イメージはすぐに消えてしまいますし,タイミングを合わせるのは簡単ではなく,それなりのアクションスキルが必要になります。

4Gamer:
 エリザベスが撃たれて死んでしまうということはないのですか。

Gerritsen:
 エリザベスは死にません。テスト段階でいろいろと試したのですが,エリザベスが倒されてしまうと,あまり興味深い結果になりませんでした。「コンパニオンキャラクターと一緒に戦うゲーム」というアイデアは我々が初めてではありませんが,Infiniteではコンパニオンの生死を気にするというよりは,プレイヤーがやられないようにエリザベスがついて回っているという雰囲気に近いかもしれません。

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4Gamer:
 なるほど。ところで彼女,最初に発表されたときより美人になった気がしますが。

Gerritsen:
 そうですね。ちょっと頬からアゴにかけて細くしたりしています。まあ,もうほとんどキャラクターのイメージはロックされていて,今後は急激に変更されるようなことはないでしょうが。

4Gamer:
 そもそも,年齢はいくつぐらいなんですか。

Gerritsen:
 ええと,設定ではいくつだったかな……。コロンビアに来て15年で,少女の頃に誘拐されていますから,まあ20代前半ってところで間違いなんですけど。成人はしてますね。

4Gamer:
 ブッカーとエリザベス以外のコロンビアの人間は,The FoundersとVox Populiに分かれているようですが,このあたりの説明をお願いできますか。

Gerritsen:
画像集#005のサムネイル/[E3 2011]「BioShock Infinite」のエグゼクティブプロデューザーへインタビュー。ミステリアスなエリザベスについて,もっと知りたい
 いいですよ。コロンビアはアメリカンドリームの具現化というか,新興国アメリカの活気ゆえのプロジェクトだったわけです。The Foundersは愛国者から国粋主義者へ,そして純血主義者へと進んでいったような人々です。アメリカ人として最も純粋であると信じており,そのためコロンビアを以前のままに維持しようと努めています。一方,Vox Populiはもともと,The Foundersと対立する労働者グループとして発足しました。しかし,会員が増えるにつれてリーダーの力が増し,平和的な組織から好戦的なアナーキスト集団へと変化しました。

4Gamer:
 デモで,プレイヤーを攻撃しているのはVox Populiの勢力ですか。

Gerritsen:
 ええ。もっとも,あの地域はコロンビアの中でも「エンポリア」と呼ばれる,The Foundersによってコントロールされていた地域です。ちょうどVox Populiの一団が占拠したばかりで,ブッカーとエリザベスは,そこから逃げ出したThe Foundersの要人を追っているという設定になっています。大きな市民戦争が始まっているのです。

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4Gamer:
 そろそろ時間のようですね。では最後に,Infiniteをプレイした人に,どんなことを感じてほしいと思っているのか,教えてください。

Gerritsen:
 そうですね,「スカイライン」という新しい要素をぜひ楽しんでもらいたいですね。なにしろ,今のようになるまでに苦労しましたから(笑)。
 天空の都市でのビルからビルへの移動手段として,最初はジップラインのような直線的なものを考え,それからトロッコ,さらにはジェットコースターのようなものへ進化させてみました。スカイラインでは移動中にも銃を撃ったり,途中で飛び降りたりすることができますので,BioShockやほかのゲームでもあまり例を見ない,非常にスピーディなアクションが楽しめるようになっています。発売まではしばらくありますが,続報にも期待してください。

4Gamer:
 どうもありがとうございました。


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 Infiniteは,今のところ2012年の第2四半期のリリースが予定されており,発売までにはまだかなりかかりそうな気配だ。世界観の深さで知られるシリーズだけに,今回のインタビューだけでは分からない部分も多く,話を聞きながらも新しい疑問が次々とわいてきた。BioShockが試行錯誤を繰り返し,当初アナウンスされていたゲームシステムとはかけ離れたものになったのを覚えている人も多いだろう。Infiniteもこの先,どのような展開が待っているのかは分からないが,数多くの名作ゲームを作ってきたIrrational Gamesの手腕に期待しよう。
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