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GeForce GTX 600
  • NVIDIA
  • 発表日:2012/03/22
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円周率の小数点以下8000兆桁めをGeForceで求める方法〜GTC 2013の「π」セッションレポート
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印刷2013/03/25 00:00

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円周率の小数点以下8000兆桁めをGeForceで求める方法〜GTC 2013の「π」セッションレポート

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Ed Karrels氏
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セッションタイトル
 数学者の間で「円周率の日」と呼ばれる3月14日。2013年のこの日に,米国サンタクララ大学,Ed Karrels氏らの研究グループは,円周率計算に関する新記録「小数点以下8000兆桁め」を達成したと発表した。
 しかもその計算をCPUではなく,ましてはHPC(High Performance Computing)向けGPUであるTeslaでもなく,ごくごく一般的なGeForce製品で達成したというのだから驚きだ。

 GPU Technology Conference 2013(GTC 2013)では,本研究グループのリーダーであるEd Karrels氏によるセッション「Computing the Quadrillionth Digit of Pi: A Supercomputer in the Garage」(円周率の千兆桁めを求める:ガレージのスパコンで)が開かれたので,レポートしよう。


円周率の小数点以下8000兆桁めを

自作PCで求めた大学院生


 一般に円周率の計算の記録というと,3.1415926535…と頭の桁から順番に求めていく桁数や速度をイメージする人が多いのではないかと思う。
 この方式の計算記録としては,2011年に,長野県在住の会社員・近藤 茂氏と米国で当時大学院生だったAlexander J.Yee氏とが共同で達成した「自作PCで1年間かけて計算した10進法10兆桁」がある。

小数点以下1桁めから求める方法としては「Chudnovskyの公式」のように,算術幾何平均を楕円積分を用いて求めるものがよく知られている
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円周率は無理数である
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 だが,円周率πは無理数で,無限級数で与えられる公式が数多く存在する。Karrels氏らが挑戦したのは,「小数点以下N桁からD桁分の数字を求めていく」というものだ。この方向性では,Yahoo!の研究チームが2010年に達成した「2進法の2000兆桁」の算出記録がある。
 冒頭で8000兆桁めと述べたとおり,Karrels氏らが達成したのは,このYahoo!の記録を上回る,2進法8000兆桁めからの算出記録だ。

 Yahoo!の研究チームは,8コアCPUベースのコンピュータ1000台で23日かけて2000兆桁めを求めた。それに対してKarrels氏らは,わずか4基のGPUを搭載しただけの自作PCで,24日間で2000兆桁めに到達。計算速度ではYahoo!の記録を破れなかったが,確かな手応えを感じた氏らは,続いて小数点以下4000兆桁めの計算に挑戦し,37日間で目標を達成したとのことだ。
 そして最後に8000兆桁めの計算に挑戦するわけだが,ここではハードウェアを増強し,大学の計算機室にあったPCまでも総動員して臨んだという。結果,26台のPC,総GPU数にして34基――下のスライドには「30 GPUs」とあるが,これはグラフィックスカードの枚数とのこと――を駆使し,26日間でこの記録を達成したのだった。

円周率小数点以下N桁め計算記録の変遷
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円周率の小数点以下N桁めからD桁分を求める方法


小数点以下N桁めからD桁分を求めるには……(下に続く)
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 「小数点以N桁めからD桁を求める」にあたっては,10N倍して整数部を切り捨てるというアルゴリズムを簡単に思いつくが,それでは結局のところ,小数点以下1桁めから求めているのと変わらない。

 そこで,計算の途中に剰余を算出する計算である「mod」を介入させる。
 この計算に都合がいいのが,David H.Bailey氏とPeter Borwein氏,Simon Plouffe氏,米国とカナダの数学者による合同チームが1995年に考案した「Bailey-Borwein-Plouffeの公式」(以下,BBPの公式)というアルゴリズムである。

(続き)各級数の項に対してmod演算を行えばよさそう
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BBPの公式
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 BBPの公式アルゴリズムで示される無限級数では,「16のk乗分の1」が頭に出ていることから,16進数でのN桁めを得たい場合には,16のN乗を各項に掛けてやれば,簡単にN桁めを小数点のところに持ってくることができる。また,この無限級数に16のN乗を掛けて変形すると,各項の分子項は2のべき乗で表せるようになる。そうなれば,高速に計算が可能だ。付け加えると,各項の計算は独立しているので,並列に計算できる。

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BBPの公式の各項に16のN乗を掛けてやれば,小数点以下N桁めからが求まるではないか。ただし16進数表記にはなるが
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小数点以下を求める計算「fract」の意味を理解してみよう
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根幹計算を高速化するには?

192bit長の整数除算
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 いかにもGPGPUで実装しやすい感じになってくるわけだが,Kepler世代のGPUであっても,mod計算に必要な192bitサイズの除算はマイクロコードによるソフトウェア実行となるため,それほど速くない。
 そこでKarrels氏らは,BBPの公式の別バリエーションである「Bellardの公式」を採用し,なおかつmod計算をビット操作だけで済ませられるように「モンゴメリ乗算」(Montgomery Reduction)のアルゴリズムを取り入れてmod演算部分の高速化を実現したという。

Bellard法を採用し,mod演算にあたってはモンゴメリ乗算を取り入れた
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時代はゲリラ・スーパーコンピューティングへ!?


GeForce GTX 690の4枚差しPC
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 Karrels氏らが8000兆桁めの円周率計算に使用したPCは,4枚の「GeForce GTX 690」カードを搭載する8 GPUシステムが1台に,2枚の「GeForce GTX 680」を搭載する2 GPUシステムが1台,そして大学の計算器室にあった「GeForce GTX 570」搭載PCが24台だったそうだ。すべてのPCをネットワークで結び,分散コンピューティングによって計算を行ったとしている。

GeForce GTX 690を4基搭載するPCで,負荷をかけたときのGPU温度(左)。すぐ100℃近くに達した。また,1800W対応の電源ケーブルが少しとろけた(右)
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GeForce GTX 570では計算エラーが。もっとも,メモリに格納されたデータが化けた可能性もある
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 興味深いのが,実験中,GeForce GTX 570搭載システムの何台かで,計算結果にエラーが出ていたことだ。Karrels氏いわく「エラー回避機能が有るECCメモリを搭載していないGeForceでは仕方のないこと」で,結果の正確さを期するために,今回の実験では複数回実行して計算結果の整合性検証を行っているという。

 ところで,今回の計算実行にあたって,計算器室に置かれたコンピュータの大部分を円周率計算で占有すると,さすがに顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまうため,「誰かがログインしたら,当該PCで円周率計算実行をアイドルさせる」制御を入れたそうだ。まるで,ウイルスかマルウェアのような振る舞いだが,Karrels氏いわく,「これこそが新しいスーパーコンピューティングの形,『ゲリラ・スーパーコンピューティング』だ(笑)」とのことである。

ゲリラ・スーパーコンピューティング!?
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Ed Karrels氏のWebサイト(英語)

GTC公式Webサイト(英語)

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