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GeForce GTX 600
  • NVIDIA
  • 発表日:2012/03/22
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全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
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印刷2013/05/20 00:00

レビュー

全長170mm。Mini-ITXサイズのGTX 670カードが持つ価値を探る

ASUS GTX670-DCMOC-2GD5

Text by 宮崎真一


画像集#003のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
GTX670-DCMOC-2GD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
実勢価格:5万〜5万2000円程度(※2013年5月20日現在)
画像集#010のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
テストスケジュールの都合でGTX 670リファレンスカードと並べての撮影が行えなかったため,全長123.8mmの「iPhone 5」を横に置いてみたカット
 ASUSTeK Computer(以下,ASUS)から,ハイエンドクラスのGPU「GeForce GTX 670」(以下,GTX 670)を採用しつつ,カード長をわずか170mm(※実測値,突起部除く)に抑えてあるという,非常に短いカード「GTX670-DCMOC-2GD5」が登場した。
 170mmというカード長は,Mini-ITXマザーボードの一辺と同じ。そのため,極めて小型のゲームPCを構築できる可能性があるわけだ。

 今回4Gamerでは,ASUSからこのカードの貸し出しを受けられたので,GTX 670リファレンスカードとの直接比較を行ってみたいと思う。GeForce GTX 700シリーズの足音が聞こえ始めたタイミングにおいて(関連記事),GeForce GTX 600シリーズの上位モデルを搭載する短尺カードにはどれだけの価値があるだろうか。


カード長はリファレンス比マイナス72mm

基板もクーラーも独自仕様に


GTX670-DCMOC-2GD5とGTX 670リファレンスカードの全長比較
画像集#019のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
 GTX 670というGPUそのものの製品概要は正式発表時のレビュー記事を参照してもらうとして,さっそくGTX670-DCMOC-2GD5の実機を見ていこう。
 やはり最大の関心は170mmというカード長になると思うが,これはGTX 670リファレンスカードの同242mmに比べ,72mmも短くなっている。GTX 670のリファレンスデザインだと,基板長自体は実測173mm(※突起部含まず)ながら,カード後方にクーラーが大きくせり出した格好となって,結果,24cm超級になっていたわけだが,それとの違いは歴然といえよう。

GTX 670のレビュー記事より,リファレンスカードの写真を再掲。基板長はさほど長くないのだが,クーラーが後方へ大きくはみ出した結果,カード長は長くなっている
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GTX 670 TWINCOOLER(※レビュー記事より再掲
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GTX670-DCMOC-2GD5の補助電源コネクタは8ピン×1。製品ボックスには6ピンケーブル×2から変換できるケーブルが付属する
画像集#036のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
Direct Powerの概要。3DMark 11の実行時,インピーダンスは0.986mΩから0.428mΩへと下がり,基板温度も73.9℃から66.5℃に低下したという
 4Gamerでは,2012年の7月に,ZOTAC International製の短尺GTX 670カード「ZOTAC GeForce GTX 670 2GB TWINCOOLER」(型番:ZTGTX670-2GD5TCR001/ZT-60305-10P,以下 GTX 670 TWINCOOLER)のレビューも行っているが,GTX 670 TWINCOOLERは「リファレンスカードと同じ基板を採用しつつ,クーラーを基板からはみ出させない」ことで,実測173mm(※突起部含まず)のカード長を実現していた。それに対してGTX670-DCMOC-2GD5では,基板を“起こす”ところから始めてさらに3mmを削り,Mini-ITXサイズに収めてきたわけだ。

 GTX 670のリファレンスデザインだと,PCI Express補助電源コネクタは6ピン×2のところ,GTX670-DCMOC-2GD5では,それを8ピン×1に変更してあるが,これもおそらくは「あと3mm」を削るための努力の結果なのだろう。

 しかも,基板はただ短さだけを追求しただけではない。カードの裏側には「Direct Power」と書かれた金属板が見えるのだが,実のところこの金属板の下には,電気伝導性に優れる銅板を用いて電源ラインを強化する,同名の技術が用いられている。ASUSによれば,この銅板を用いることで基板のインピーダンスを56%下げ,基板レベルの発熱を17%抑えることに成功したとのことだ。

基板裏(左)。Direct Powerの金属板が目を引くが,その本体となる銅板は金属板の下だ(右)。Direct Powerの採用により,GPU周辺の基板温度を下げられているとのこと
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DirectCU Miniの構造
画像集#020のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す
 取り付けられている2スロット仕様のGPUクーラーには「DirectCU Mini」という名が付けられている。「DirectCU」というのは,銅(Cu)製のヒートパイプがGPUのダイやパッケージに直接触れる仕様のGPUクーラーにASUSが与えるシリーズ名だが,GTX670-DCMOC-2GD5では一歩進んで,銅製のVapor Chamber(ヴェイパーチャンバー)がGPUダイに直接触れる構造になっている。
 誤解を恐れずにざっくり言うと,Vapor Chamberというのは平たくしたヒートパイプのようなものだ。熱伝導性に優れ,しかも冷却機構の小型化・薄型化を可能にするものとして,以前からハイエンドGPU用のクーラーにはよく使われているが,GTX670-DCMOC-2GD5ではそれを小型化のために使ってきたというわけである。

ファンを横から覗き込むと,下からVapor Chamber,ヒートシンク,CoolTech Fanという構造になっているのがよく分かる
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 さらに,組み合わせられるファンにも手が入っている。ファンは90mm角のものが1基だが,複雑な形状をした「CoolTech Fan」は,ファンの上と下から吸気し,横に排気する構造になっているのだそうだ。下と言っても,基板に穴が空いていない以上は横なのではないかという気がしないでもないが,ASUSは,上から吸気して下へ吹き付ける一般的なファンや,ファンの上もしくは上下から給気し,一直線に横方向へ排気するブロワーファンと比べて,冷却能力にも静音性にも優れると謳っている。

従来のファンに対するCoolTech Fanの優位性がまとまったスライド。ASUSは実例としてYouTubeにビデオも掲載しているので,興味のある人は参照してほしい。ちなみにASUSは,「3DMark 11」の実行時に,リファレンスカードよりもGPU温度は7.5℃,動作音は5.6dBA低く抑えられたと主張している
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DirectCU Miniクーラーを取り外したところ
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電源部
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SK Hynix製GDDR5メモリチップ
 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為となる。取り外した時点で保証は受けられなくなるが,今回はあえて取り外してみると,当たり前だが,リファレンスカードとは異なるデザインの基板が姿を見せた。また,コンデンサには従来製品比で2.5倍の長寿命化を実現したとされる「Super Alloy Capacitor」や,オリジナル素材を用い,最大で35℃も温度を引き下げられたというチョークコイル「Super Alloy Choke」,対応電圧を30%引き上げたというMOSFET「Super Alloy MOS」を搭載しているのも目を引くところだ。
 ASUSはこれら3種の部材で構成される電源回路を「Super Alloy Power」と呼び,部品寿命や安定性,それにオーバークロック耐性の向上を謳っているが,確かにコストがかかっている印象を受けた。

 さて,Super Alloy Power仕様の電源回路だが,フェーズ数は見る限り4+1.グラフィックスメモリにはSK Hynix製の2GbitチップGDDR5「H5GQ2H24AFR-R0C」(6Gbps品)を採用し,基板両面に4枚ずつ,計8枚搭載することでグラフィックスメモリ容量2GBを実現している。さらに,メモリ用の空きパターンが用意されてあたりからすると,グラフィックスメモリ容量4GB版も検討されているのだろうか。
 基板表側に実装されたメモリチップは先のVapor Chamberを固定する台座の役割を兼ねたアルミ製ヒートシンクと熱伝導シート経由で接触するが,基板裏側の4枚は,冷却をPCケース内のエアフローへ委ねることになる。

GTX 670 GPU
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 なお,このGTX670-DCMOC-2GD5は,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられた,いわゆるクロックアップモデルとなっている。具体的にはコアクロックが915MHzから928MHzに,ブーストクロックが980MHzから1006MHzにそれぞれ引き上げられていた。
 表1にGTX670-DCMOC-2GD5とGTX 670のリファレンススペックをまとめておいたので参考にしてほしい。

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消費電力はリファレンス比でやや増加

一方で温度は低下し,静音性も大きく向上


NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を開いたところ
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 テストに入っていこう。
 今回のテスト環境は表2のとおりで,比較対象はGTX 670リファレンスカードとなる。以下,グラフではGTX670-DCMOC-2GD5を「ASUS GTX 670 mini」,GTX 670リファレンスカードを「GTX 670」と表記するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。
 なお,テストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 320.00 Driver Beta」だ。

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 テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0から,新たに追加された4タイトル,「3DMark」(Version 1.1.0)および「Crysis 3」「BioShock Infinite」「SimCity」をピックアップした。事情により,レギュレーション14.0の詳細は同時掲載できないが,追って20日中には掲載の予定なので,この点はご了承を。
 そして,これはいつものことだが,テストに用いたCPU「Core i7-3970X Extreme Edition/3.5GHz」は,テスト時の状況によって自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」の効果に違いが生じる可能性があるため,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。

 というわけで,今回はDirectCU Miniクーラーの実力からチェックしてみたい。
 ここでは,PCの起動後,アイドル時にもディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで30分放置した時点を「アイドル時」,3DMarkの「Fire Strike」30分間連続実行時を「高負荷時」として,各時点におけるGPU温度を,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.7.0)から追うことにした。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いてある。

 その結果がグラフ1で,GTX670-DCMOC-2GD5は,GTX 670リファレンスカードと比べて,アイドル時に2℃,高負荷時に6℃,いずれも低い温度を示した。ASUSの謳う「7.5℃」には若干届いていないものの,「GTX 670リファレンスカードに搭載されたGPUクーラーより冷却能力が高い」のは間違いない。

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 また,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,DirectCU Miniクーラーは,GTX 670リファレンスカードのクーラーより明らかに静かだ。実際に5.6dBAもの違いがあるかどうかは定かでないものの,静音性が確実に向上しているとは断言できる。

 そしてこの静音性の高さは,GTX 670 TWINCOOLERに対する大きな差別化要素にもなるだろう。レビュー記事で指摘したとおり,GTX 670 TWINCOOLERの動作音はリファレンスクーラーと大差ないものだったからだ。

 消費電力も合わせてチェックしておこう。PCI Express補助電源コネクタが6ピン×2から8ピン×1に変更されたといっても,供給できる電力がPCI Expressスロットの75Wに補助電源が150W――6ピンケーブルは1本あたり75W,8ピンケーブルは1本あたり150W――と変わらないので,大きな違いはずだが,そのあたりを,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で,システム全体の消費電力比較から確認してみたい。
 テストにあたっては,アイドル時のほか,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時として,スコアを取得することにした。

 その結果がグラフ2で,アイドル時のスコアは完全に同じ。アプリケーション実行時だと,GTX670-DCMOC-2GD5はGTX 670リファレンスカード比で23〜24Wほど高い消費電力になった。GTX670-DCMOC-2GD5ではメーカーレベルでクロックアップ設定がなされているうえ,グラフ1の結果からしてGPU Boostの到達クロックも高くなると思われるので,これはある程度やむを得ないところか。
 なお,各アプリケーション実行時のコア電圧をGPU-Zから追ってみたところ,GTX 670は最大1.175Vだったのに対して,GTX670-DCMOC-2GD5は最大1.15Vと低かったので,消費電力が高いのは,カード全体の設計が異なっていることに起因すると見るべきかもしれない。

画像集#028のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す


性能向上率は1〜4%程度

安くはないが,サイズと静かさは大いに魅力


 同じGPUを搭載するカード同士の比較なので,ざっとにはなるが,ベンチマークテスト結果も確認しておこう。グラフ3は3DMarkのFire Strikeとその「Extreme」プリセットにおけるテスト結果で,ここにおいてGTX670-DCMOC-2GD5はGTX 670リファレンスカードに対して約2%高いスコアを示した。両製品でブーストクロックの違いが3%弱ということを踏まえるに,順当な結果ともいえそうだ。

画像集#029のサムネイル/全長170mm。“Mini-ITXサイズ”のASUS製GTX 670カードを試す

 実ゲームベンチマークとなるCrysis 3,BioShock Infinite,SimCityの結果がグラフ4〜9で,端的に述べて,クロックアップの効果はそれほどない。最大のスコア差がついたのはCrysis 3の2560×1600ドットにおける約4%だが,実フレームレートでは1fps未満だ。クロックアップによる恩恵はほとんどないと述べていいように思う。

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製品ボックス
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結局はASUSが示しているこのイメージにグっと来た人向けということになりそうだ
 以上,GTX670-DCMOC-2GD5が持つ魅力は,「Mini-ITXマザーボード並みのサイズしかないGTX 670カードでありながら,GPU温度面の不安がなく,しかも静音性が高い」ところにあるとまとめられそうである。

 実勢価格は5万〜5万2000円程度(※2013年5月18日現在)と,4万円前後で販売されている例が珍しくないGTX 670カードのなかでは群を抜いて高いと言わざるを得ないが,徹底的にカスタマイズされた小型基板やGPUクーラーを見ると,ある程度はやむを得ない部分もあるだろう。
 そもそも万人向けというわけでもない。GTX670-DCMOC-2GD5が持つ唯一無二の価値に惹かれたなら,購入して後悔することはないはずだ。

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GTX670-DCMOC-2GD5製品情報ページ

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