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GPUベースのAIが携帯電話ネットワークを支える? NVIDIAが次世代ネットワーク「5G」への取り組みを紹介
Velayutham氏によると,通信業界ではトラフィックが1年で2倍にも増える成長が普通であるにも関わらず,顧客数や利益は,運が良くても一定のままということが少なくないそうだ。そのため,さまざまな技術革新を行いつつ,事業が単なる「土管」にならないよう,さまざまなサービスや付加価値を提供していく必要があるという。
たとえば,現在の米国において,自動車の中で利用されるiPhoneのデータ通信量は1か月あたり平均1〜2GBであるのに対して,2050年のスマートカーになると,1時間あたり最大で40TBものデータ通信量が必要になるという予測もあるそうだ。つまり,iPhoneにおける3300年分のデータ通信量をたった1時間で使ってしまう勘定になる。
多くの携帯電話事業者は,ストリーミングビデオのようなコンテンツサービスだけでなく,クラウドサービスや今後増えるであろうIoT関連,仮想現実(VR)や拡張現実(AR),あるいはモバイルゲームといったさまざまなサービスを導入することで,デジタルライフスタイルサービス企業へと変貌して,収益構造を変更する必要に迫られているという。
また,ネットワーク管理などのコストを下げ,より高い帯域を確保できる通信技術を導入することなどにより,トラフィックの増大に対応するといった必要もあるだろう。こうしたネットワーク分野では,Software Define Networks(SDN,ソフトウェアによる制御されるネットワーク技術)やVirtual Network Function(VNFまたはNFV,ソフトウェアと汎用機器により構成した仮想的なネットワーク機器)といった技術が活用されているそうだ。
通信量の増大は,端末からネットワーク,クラウドまで,すべての領域でデータ処理の量を増大させるのだが,汎用CPUは性能向上が鈍化しており,劇的な性能向上は難しい。しかし,GPUコンピューティングは,まだムーアの法則を維持し続けているため,こうした処理量の増大に対応できるのだと,Velayutham氏は主張する。ここでNVIDIAの出番というわけだ。
Velayutham氏によると,GPUコンピューティングを利用するシステムをNVIDIAは「Supercharged Computers」と呼んでいるそうで,その利用はすでに広く普及しはじめているという。氏が挙げた例によると,600台のラックマウントサーバーを使ったHPCシステムは,360kWの電力を消費し,設置面積も大きいのでデータセンターのような大きな施設を必要とした。しかし,「Telsa V100」ベースのシステムであれば,4基のTelsa V100を搭載したラックマウントサーバー30台で同等の性能を実現できるので,ラック2つ分のスペースに収まって,消費電力も48kWですんだとのことだ。
NVIDIAは,GPUコンピューティングをHPCだけでなく,AIや自動運転,ヘルスケアといった分野にも広げており,CUDAアーキテクチャと対応ソフトウェアを使うことにより,さまざまなハードウェアでソフトウェアを共通化できるとしている。
Velayutham氏は,こうしたGPUコンピューティングを通信分野にも利用することで,通信を“再発明”(Reinvent)できると主張した。たとえばAI技術を使うことで,現在はルールやポリシーとして逐次処理していたSoftware Define Networks(SDN,ソフトウェアによる制御されるネットワーク技術)の最適化が可能だという。
また,ネットワーク機器専用の半導体デバイスを開発するのではなく,汎用品のプログラマブルな半導体を使うことで,VNFを高速化可能することも可能となるそうで,結果的に5Gの「ソフトウェア無線」(信号をソフトウェアで処理すること無線LAN技術)における遅延を低減して,スペクトル効率や電力効率を向上させることもできるとのことだった。
また,米国のライス大学における研究では,5Gのソフトウェア無線処理における性能を,NVIDIA製スーパーコンピュータ「DGX-1」を使うことで,汎用CPUに対して10倍以上向上させることができたとのことだった。
GPUとAIの話題は,直接ゲーマーに恩恵をもたらすものではないが,普段使っているスマートフォンのネットワークを支える技術にも活用されているわけだ。GPUによるこうした事例は,AIの利活用が社会に広がっていくに連れて,ますます増えていくことだろう。
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NVIDIA RTX,Quadro,Tesla
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