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三国志演義のストーリーを,PCでもスマホでもタブレットでも――“あの世界”を余すところなく追体験できるシミュレーションMMORPG「三国志を抱く」が,まもなく正式サービス開始
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印刷2013/06/15 00:00

インタビュー

三国志演義のストーリーを,PCでもスマホでもタブレットでも――“あの世界”を余すところなく追体験できるシミュレーションMMORPG「三国志を抱く」が,まもなく正式サービス開始

 ネクソンは,新作MMORPG「三国志を抱く」の正式サービスを,2013年6月19日に開始する。小説などを筆頭に日本でも有名な“三国志演義”の膨大なストーリーや各種エピソードを元に,登場人物達がゲーム上に登場してところ狭しと活躍するタイトルだ。

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 しかし本作の特徴は,単に“演義”がゲームになったというだけではない。PCスマートフォン,タブレットの3デバイスに対応したクロスプラットフォーム対応になっており,昨今のゲーム業界の情勢を踏まえた,かなり意欲的な内容になっているのだ。

 今回は,本作が正式サービスを迎えるにあたり,開発元であるNDOORSのキム・テゴン氏らに話を聞くことができた。三国志演義をゲーム化するうえでの苦労話や,ユニークな試みも紹介しているので,三国志ファンはぜひ目を通してもらいたい。

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「三国志を抱く」ダウンロードページ(Google Play)

「三国志を抱く」公式サイト



三国志演義のほとんどそのまますべてを,

PC/スマホ/タブレットの中で追体験できる


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 いよいよ,「三国志を抱く」の正式サービスが近づいてきましたね。

NDOORS代表 キム・テゴン氏(以下,キム氏):
 こちらこそ,よろしくお願いします。
 本作は開発作業に3年近くかけており,これまでの作業を振り返ると感慨深いです。先日開催したCM発表会も盛り上がり,いよいよ日本で正式サービスが迎えられるんだなと実感しています。

4Gamer:
 キムさんには,これまで何度も直接話を伺っているのですが,改めまして。正式サービスを迎えるにあたり,本作の面白さを未経験者向けに紹介すると,どういう内容になりますか?

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NDOORS 常務取締役員 キム・テゴン氏
キム氏:
 本作ならではの魅力は,大きく分けて二つ挙げられます。
 一つは,ゲームを通じて“三国志演義”のストーリーを追体験できることです。三国志演義を楽しむための手段というと,小説を思い浮かべる人が多いと思いますが,本作は“ゲーム”であり,そのメリットを最大限に生かした作りになっています。しかも本作の「ストーリーの追体験」は,生半可なものではありません。ほぼ同じように進行していきます。
 プレイヤーは,三国志に登場する英傑らと共にゲームの中で戦い,本を読むだけでは得られなかった経験と感動が得られるんです。

4Gamer:
 昔の三国志ファンは,小説や例えばマンガをきっかけにこの世界にのめり込んでいった人が多いと思います。でも最近の若い人は,最初にどうやってこの世界に触れているのかな? と感じることはあります。

キム氏:
 例えばゲームなどで三国志のテーマを使っていても,その膨大なストーリーや英傑らが織り成す感動を伝えきれていない作品もありますよね。本作は,三国志演義に対して真正面から取り組んでおり,未経験者が三国志の世界を新たに知ってもらうときの,ちょうど良いきっかけにもなると思います。

4Gamer:
 「若い人でも楽しみやすい」という意味では,スマートフォンに対応しているのも本作の大きな特徴ですね。

キム氏:
 はい。本作ならではのもう一つの大きな魅力は,いまおっしゃったように,PCと同じコンテンツを,スマートフォンやタブレットでも楽しめる“クロスプラットフォーム対応”です。一般的にスマートフォン向けのアプリケーションは,PCと比較してダウングレードされてしまいがちですが,本作はどのプラットフォームで遊んでも,100%同じコンテンツが楽しめます。

4Gamer:
 現在のスマートフォン用ゲームは,どちらかというとまだまだカジュアル寄りの作品の人気が高いように思えます。そういった中,本作の勝算はどのあたりにあると思っていますか。

キム氏:
 おっしゃる通り,韓国のモバイルソーシャルゲームにしても,ライトゲームの人気が高いです。でも,最初にそれらに触れて満足した人が,次第にボリュームのあるゲームを求める動きが少しずつ見えてきているのもまた事実です。もう少し時間が経つと,より本格的なゲームを求めるニーズも確実に出てくるはずです。そのときのために,先手を打ったのが本作というわけです。


日本のゲームファンは,キャラクターへの愛着が強い。

「そこを強化する方向でアップデートを考えています」


4Gamer:
 実際にクロスプラットフォームの開発を振り返って,感想はいかがですか。

キム氏:
 きっと大変なんだろうなぁ……と覚悟はしていましたが,実際はその想像を遥かに上回っていました(笑)。各プラットフォームによって,OSや入出力のインタフェース,さらにはレーティングなど多くの環境が異なります。そういった環境の違いをうまく埋めてデータを連動させるのは,とても困難な作業でした。仮に,当時と同じ挑戦を最初から再びやれと言われたら,ちょっと躊躇するでしょうね。

4Gamer:
 しかしそれだけに,実現できた今は大きなものを得ているのでは。

キム氏:
 はい。本作の開発を通じて,NDOORSはマルチプラットフォーム開発に関して随一のノウハウを得られました。今後このノウハウを生かし,NDOORSならではといえるゲーム開発に取り組んでいきたいですね。

4Gamer:
 日本では既にクローズドβテストが行なわれましたが,そのときのプレイヤーからの反響はいかがでした?

キム氏:
 反響が良かったのは,ストーリーやグラフィックスといった,三国志演義の各要素をきちんと再現していることです。三国志演義はスケールが非常に大きい作品なので,ゲーム化するにあたって「きちんと再現」するのは,口で言うほど簡単なことではありません。妥協をせずに作りこんでいた本作は,熱心な三国志ファンからの評価が高かったと思います。

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4Gamer:
 比較的マイナーな武将や文官も多く登場していますよね。私も知らない人物を目にして,誰だろうと思いネットで調べたりして,改めて勉強させられている気がします。

キム氏:
 「三国志を抱く」というタイトル名には,三国志演義のストーリーをまんべんなく網羅したいという想いを込めているんです。三国志演義の各要素を,ここまできちんと反映させたゲームは,今後10年以内には登場しないかもしれません。そう思えるくらい,力を入れて開発していますよ。

4Gamer:
 なるほど。
 では逆に,CBTを通じて今後の課題は表れてきましたか?

キム氏:
 もっと,登場する武将の個性を際立たせてほしい,という要望が多かったです。とくに日本のゲームファンは,キャラクターに対する愛着が強いので,納得のいく意見ですね。
 ですので,たとえば有名武将に関して固有のアクティブスキルや専用武器,そしてサブシナリオを追加するなど,プレイヤーがより愛着を感じてもらえるためのアップデートを計画していきます。


ゲーム内の英傑は,死んでも再登場する

「死」に対する解釈をちょっとヒネってみました


4Gamer:
 個人的にCBTをプレイしていてとくに印象に残ったのが,ストーリーの途中で死亡してしまう英傑の扱いです。彼らの中には,死亡した後に再登場して,プレイヤーの傘下に加わるケースがあるんですよね。

キム氏:
 三国志演義という原作をベースにしている以上,ストーリーを進めるにつれて英傑が次々と死んでいくのは避けられません。しかし本作はゲームですし,何とか落としどころを見つけて,彼らと行動を共にできたらいいな……という想いがありました。
 そこで,一部の武将に対して死亡後に“番外編”ともいうべきストーリーを用意し,これを通じてプレイヤーの傘下に加われるようにしたんです。

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NDOORS 三国志を抱く
開発チーム長 ノ・ウンジョン氏
ノ・ウンジョン氏:
 少しネタバレになっていまいますが,初めて知る人のために,番外編ストーリーの実例を説明しましょう。
 ゲームの序盤で,プレイヤーは劉備らと共に“黄巾党”を滅ぼし,党の中心人物である張角,張梁,張宝の3名は死亡します。ですが,それがひと段落した後,張角の若い頃にスポットを当てた,番外編ストーリーが始まるんです。
 その番外編では,張角は太平道を興すものの,その向かう先は武装隆起ではなく,民のための有効活用です。そして改心した張角が,道中で出逢った劉備に感銘を受け,傘下に加わる……というあらすじです。

4Gamer:
 むろんそういったストーリーはNDOORSの創作になるわけですが,取って付けたような感じがあまりしなかったんですよね。違和感がないといいますか,いわゆる「if物」の作品を読むような感じで楽しめました。

ノ・ウンジョン氏:
 番外編ストーリーは,完全にゼロからの創作というわけではないんです。三国志演義の小説を熟読すると,英傑のバックボーンについて,僅かに言及している箇所が見つかるんですよ。そこから想像を膨らませていって,番外編ストーリーを作り上げていきました。開発チーム内で,ああだこうだと意見を交わしながら楽しく作業できた部分ですね。

4Gamer:
 いずれ,敵味方の英傑がどんどん死亡していくわけですが,彼らにどのような番外編ストーリーが用意されているか,思わず確かめたくなりますね。

キム氏:
 ゲームの序盤だとそのほか,霊帝に寵愛された“何皇后”と,その兄である“何進”の番外編ストーリーがユニークです。この2人は庶民出身で,官位を急速に登りつめていった人物ですが,そのときの裏話にスポットが当てられています。
 こういった風に,名の知れた英傑に関しては,なんらかの形で番外編ストーリーを用意しているので,三国志ファンの方もぜひ注目してください。


三国志演義のストーリーを完全網羅

「晋」が天下を統一するまでを描くのが本作のウリ


4Gamer:
 現在は,三国志演義のストーリーがどれくらいの範囲まで実装されているんでしょうか。

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画像集#009のサムネイル/三国志演義のストーリーを,PCでもスマホでもタブレットでも――“あの世界”を余すところなく追体験できるシミュレーションMMORPG「三国志を抱く」が,まもなく正式サービス開始
キム氏:
 ストーリーは第1幕〜第10幕までに大別されていて,正式サービス前後のタイミングで第2幕を実装します。第1幕の範囲は,董卓が死ぬまで。そして第2幕は呂布が死ぬまでです。
 今後は大型アップデートを通じて,“幕”単位でストーリーを追加実装していきます。社内での開発作業は第3幕まで終えていて,これは袁紹が死ぬまでですね。

4Gamer:
 前半のクライマックスの一つである“官渡の戦い”は,第3幕のアップデートで実装されるわけですね。ところで本作のストーリーは,最終的にどこまで実装する予定なんでしょうか。

キム氏:
 羅貫中が手がけた「三国志演義」の,最後の最後までやりますよ。

4Gamer:
 それはつまり,魏も呉も蜀も滅亡し,“晋”が天下を統一するまでですか?

キム氏:
 はい。第8幕〜9幕の頃には,劉備や曹操らを代表とした三国時代のお馴染みの英傑は,大半が退場しているでしょうね。

4Gamer:
 なるほど。正直なところ,劉備が死んだ後のストーリーって,一般的にはそれほど人気が高くないような気もするのですが。

キム氏:
 個人的にもそう思いますが,本作の基本コンセプトは三国志演義を網羅することですので。それに本作は,たとえストーリー上は死亡していても,番外編クエストを通じてプレイヤーと共に生き続けられるので,また印象は違ってくるかなと思います。
 ストーリーの中で,年代的・地理的にいるはずのない英傑を参加させてイメージを膨らませるという遊び方は,本作ならではでしょう。

4Gamer:
 「赤壁の戦い」のとき,もしそこに孫堅がいたら,とか。

キム氏:
 ただ,それと並行して別のプランも検討しています。本作のストーリーは基本的に劉備視点で描かれていますが,たとえば「曹操の視点で描く“三国志を抱く”」って,どう思います?

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4Gamer:
 私はどちらかというと魏が好きなので,すごく興味深い話です。

キム氏:
 日本で行なったCBTの反響を見ていて,英傑に対する思い入れの強さに驚かされました。彼らの中には蜀以外の国のファンもいるでしょうし,三国志演義のメインストーリーが終わる前に,違った視点での長編ストーリーを盛り込む可能性はあります。
 現在は本編のストーリーが盛り上がっているので,実現するのは当分先の話になるとは思いますが,長い目で見て期待していてください。

4Gamer:
 ところで,当然そうだとは思いつつ聞くんですが,3G回線でも快適に遊べるものでしょうか。私は実はまだPC版しかプレイしてなくて,3G回線でのプレイフィールがよく分かっていないんです。

キム氏:
 ええ。回線速度は3Gでも十分遊べますが,常時接続が必要となります。日本では,電車などで高速で移動しているとコネクションが途切れる場合があるので,その場合にスムーズに復帰するためのチューンをする必要を感じています。
 韓国では移動中でも通信が途切れたりすることがほとんどないので,常時接続を前提に開発していた面があるのですが。


クロスプラットフォームへと移行するNDOORS

「三国志を抱く」で溜めたノウハウを,次回作に生かす


4Gamer:
 先ほどキムさんは,本作の勝算について「来るべきニーズに向けて先手を打つ」とおっしゃってました。現在のモバイルゲームマーケットを見て,キムさんはどのような印象をお持ちですか。

キム氏:
 個人的な考えですが,ライトなゲームが成功するかどうかは,事前に予測ができず,クオリティよりも運に委ねられている部分が大きいのではないかな,と思います。つまりそれは,弊社のような開発会社が本格参入するのは,リスクになるという見方もできるわけです。
 古くからゲーム開発を行っている弊社としては,これまでのノウハウを生かした,よりボリュームのある“ミドルコア”なゲーム開発で勝負したいという思いがあります。

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4Gamer:
 ライトよりも一歩上という意味では,Facebook向けに「アトランティカ S」をリリースされましたね。キムさんの言う“ミドルコア”というのは,あれくらいのボリュームを指していますか?

キム氏:
 いいえ。“ミドルコア”とは言っていますが,言葉を変えると“大作級”のゲームのことを意図しています。まだ正式発表は行っていませんが,弊社が開発している次回作は,モバイルゲームかつクロスプラットフォーム対応の大作級ゲームです。

4Gamer:
 「三国志を抱く」の開発作業は,100人体制で約3年を要したそうですが,次回作はそれよりも規模が大きくなるということでしょうか。

キム氏:
 いえ。「三国志を抱く」の開発は,前人未到かつ紆余曲折の連続でしたが,今はもっと効率的に作業を進められます。当時と比較して,人数や期間は小さくなっても,ゲームのクオリティは大作そのものですよ。

4Gamer:
 気になる話ですが,その次回作の正式発表はいつ頃を予定していますか?

キム氏:
 順調に進めば,2013年内に発表できます。そのときは,G★2013にも出展すると思いますよ。

4Gamer:
 あら,意外と早い。

キム氏:
 「三国志を抱く」の開発中にも,モバイルゲーム市場やニーズは変化し続けています。そういった状況を見据えつつ,別プロジェクトも並行して行っていますからね。それらの中には比較的小さなプロジェクトもあり,来月中には韓国でCBTを予定しています。

4Gamer:
 次回の大作タイトルもクロスプラットフォームということは,ゲームエンジンもまた,Unityを採用するんでしょうか。

キム氏:
 ええ。次回作もUnityを使っています。
 「三国志を抱く」でUnityを採用した当時は,いかにも“ミニゲーム向けの3Dエンジン”といった印象で,大作タイトルの開発環境は整えられてませんでした。Unity本社があるデンマークまで弊社のスタッフが出向くなど,二人三脚で開発を進めてきました。そういった経験を踏まえて,両社共に大きく成長できましたし,この関係をこれからも活かしつつゲーム作りに反映させたいですね。

4Gamer:
 分かりました。
 これから「三国志を抱く」正式サービスを迎えるわけですが,最後に意気込みをお願いします。

キム氏:
 弊社はこれまで,PCオンラインゲームを中心に開発してきましたが,これからはクロスプラットフォームに対応していきます。ゲーム業界を見渡してもチャレンジングな試みで,これが実際に日本でどのように受け入れられるか,今は期待と不安が入り混じった気持ちです。
 “三国志演義”と“クロスプラットフォーム”,このどちらかに興味を持った人は,ダウンロード不要で遊べますので,ぜひ気軽に遊んでみてください。よろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

――2013年5月28日収録

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