レビュー
定格で最大2GHz動作を実現。GIGABYTEのフラグシップGTX 1080カードはどれだけ速いのか
GIGABYTE GV-N1080XTREME GAMING-8GD-PP
4Gamerが2か月前に評価したG1 Gamingの「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)搭載グラフィックスカード「GV-N1080G1 GAMING-8GD」は,際だった速さこそないものの,静音性を重視するなら選択肢になる1枚だったわけだが,今回4Gamerでは,Xtreme Gamingシリーズに属するGTX 1080搭載カード「GV-N1080XTREME GAMING-8GD-PP」(以下,GV-N1080XTREME GAMING)も入手することができた。
上位モデルということで,その性能には期待が高まるわけだが,GTX 1080で最高性能を求めるゲーマーにとって,至高の1枚となるのかどうか。検証結果をお伝えしたい。
SLI HB Bridgeが標準で付属し,VR HMDとの接続にも配慮
GV-N1080XTREME GAMINGの製品名には「PP」という接尾文字列があるのだが,これは「Premium Pack」(プレミアムパック)の意味だ。では,何がプレミアムなのかというと,2つのオプション品「SLI HB Bridge」と「Extreme VR Link」が付属するところというのが,その答えとなる。
もう1つのExtreme VR Linkだが,これは簡単に言えば,GV-N1080XTREME GAMINGが持つHDMIインタフェースを,PCケース側の5インチベイもしくはブラケット部へ引き出し,ついでにUSB 3.0 Type-Aポートも引き出すことで,現行世代のVR(Virtual Reality,仮想現実対応)ヘッドマウントディスプレイを使いやすくしようというものだ。
外部出力インタフェース部。写真だとちょっと分かりにくいかもしれないが,左から2つ分のDisplayPort周りには“囲い”があり,そこには「DP2 & 3 OR VR HDMI」という説明書きがある |
Extreme VR Linkとは別にブラケットも付属しているため,2系統のHDMIはPC後方から出すこともできる |
ではどのように,2系統のHDMIをExtreme VR Linkへ引き回しているのかというと,GV-N1080XTREME GAMINGは,カードの後方側に,HDMIのType Aポートを2系統持っているのだ。GV-N1080XTREME GAMINGにおいて,外部出力インタフェース側にある2つめと3つめのDisplayPortは,これらカード後方側HDMIポートと排他になっており,ユーザーは,どちらを使うか選択できるようになっている。
特殊デザインの大型クーラー「WINDFORCE STACK 3X」は一見の価値あり
カード長は実測で約290mm(※突起部除く)だが,基板自体は同268mmなので,22mmほどGPUクーラーがカード後方にはみ出ている。マザーボードに差したときの垂直方向に,ブラケットから25mmほどはみ出ているうえ,クーラーも3スロット仕様ということも手伝って,そのシルエットはかなり大きめだ。
ただ,8ピン
カードは堂々(?)の3スロット仕様。側面側から見ると,前後中央部分が盛り上がっているのが分かる |
カード後方の電源コネクタ部に寄ったところ。ここは一段凹んだ形での実装となっていた |
GIGABYTEが「Stack Fans」と呼ぶこの構造では,一般的な「WINDFORCE 3X」クーラーの92mm角ファンよりも大口径のファンを搭載することで空気の流量を稼ぎ,さらに,ファンを重ねることで「ファンのエアフローが届かない部分」を減らしている。また,上段2基のファンでは従来のWINDFORCE 3Xクーラーと同形状のファン「Blade Fan」を採用する一方,逆回転する中央のファンでは吸気量を増やすためのファンブレードデザインを行っている。結果,80mm角相当のファンを3基並べたクーラーと比べて,冷却性能は10%向上したという。
さらに,カード側面のGIGABYTEロゴと,ファンが止まった時に光る「FAN STOP」表示部に埋め込まれたLEDイルミネーションの光り方や明るさも,XTREME GAMING ENGINEから設定可能だ。光り方には,常時点灯/常時消灯のほか,ゆっくり明滅する「BREATHING」や,速いテンポで明滅する「FLASHING」,2回の明滅を繰り返す「DUAL FLASHING」があり,速度は指定することも可能……というのは,GV-N1080G1 GAMING-8GDと変わっていない。
まずは新作であるWINDFORCE STACK 3Xクーラーからだが,分解して分かるのは,GPUはグリス,メモリチップは熱伝導シート経由で銅製ベースと接続し,そこから,8mm径が5本,6mm径が1本のヒートパイプで,合計2か所あるヒートスプレッダブロックへ熱を運ぶ仕様になっていること。
ヒートパイプは,熱伝導効率を引き上げてある「Composite Heatpipe」(コンポジットヒートパイプ,関連記事)仕様になっている。
銅製ベースを挟んでGPUの反対側に来る部分のヒートシンクは,エアフローを整えるための傾斜が付いた「Triangle Cool」技術に基づくもの。また,フィンはフィンで,それぞれ「く」の字型に折れ曲がった「Angular Fin」デザインになっており,こちらもエアフローの整流効果をもたらしている。結果として,従来型の直線的な放熱フィンデザインと比べて,冷却性能は4%向上しているとのことだった。
採用する部材はGIGABYTE独自の品質規格「Ultra Durable VGA」準拠で,とくにGV-N1080XTREME GAMINGでは,チョークコイルやコンデンサには「GeForce GTX TITAN X」と同じものを採用しているという。さらに,基板自体に対しても,航空宇宙グレードの通気性コーティングを行うことで,長期間の利用においても,湿気や埃,腐食から基板を保護できるようにしているというのも(見ただけでは分からないが)ポイントと言えるだろう。
メーカー保証の範囲内で3パターンの動作設定を選択可能。ブースト最大クロックは2GHz超に
最近のGIGABYTE製グラフィックスカードでは,メーカー保証付きで動作クロック設定を変更できることが珍しくないが,その機能はGV-N1080XTREME GAMINGにもあって,前出のXTREME GAMING ENGINEから,「OC MODE」「GAMING MODE」「ECO MODE」を選択して利用できるようになっている。
その動作クロック設定は以下のとおりだ。
- OC MODE:コア1784MHz,ブースト1936MHz,メモリ10400MHz相当
- GAMING MODE:コア1759MHz,ブースト1898MHz,メモリ10206MHz相当
- ECO MODE:コア1607MHz,ブースト1746MHz,メモリ10206MHz相当
工場出荷時設定となるGAMING MODEでは,GTX 1080のリファレンスクロックであるベース1607MHz,ブースト1733MHz,メモリ10010MHz相当と比べて,GPUコアクロックで9〜10%程度高くなり,メモリクロックも約2%高い。OC MODEはそこからさらに,ベースクロックが25MHz,ブーストクロックが38MHz,メモリクロックが194MHz相当高い設定だ。
一方のECO MODEは,GPUクロックこそリファレンスどおりながら,メモリクロックはGAMING MODEと同じである。
ちなみに,後述するテスト環境でXTREME GAMING ENGINEのバージョン1.07からGPUクロックの変化を見てみたところ,ブースト最大クロックは順に2012MHz,2000MHz,1835MHzだった。OC MODEとGAMING MODEの2条件で2GHz超級の動作クロックを実現したのは目を引くところだろう。
なお,XTREME GAMING ENGINEの「ADVANCED SETTING」を用いれば,細かいクロックや電圧の変更も可能ではある。ただし,ADVANCED SETTINGの項目はいずれもメーカー保証外のオーバークロック設定となる。これらを利用することによりカードが壊れても自己責任となるので,この点はくれぐれもご注意を。
ADVANCED SETTINGの詳細はGV-N1080G1 GAMING-8GDのレビュー記事を参照してほしいが,「ADVANCE OC」から「BASIC SETTING」を選択した場合,コアクロックは−200〜+848MHzの範囲を1MHz刻みで設定可能だ。また,「LINEAR SETTING」で指定できるクロックは1MHz刻みで191MHzから2486MHzとなっていた。
なお,メモリクロックは1MHz刻みで−2000〜+2000MHzに変更できるようになっていたが,これは,“GDDR5X換算”のクロック表記になったという理解でいいようだ(※GV-N1080G1 GAMING-8GDのレビュー記事で用いたときのバージョン1.01だと,−1000〜+1000MHzという設定範囲だった)。
3つの動作モードそれぞれでテストを実施
GTX 1080 Founders Editionとの違いを確認する
テスト環境だが,今回,比較対象にはGTX 1080のFounders Editionを用意。主役であるGV-N1080XTREME GAMINGの側では3つの動作モードすべてを用い,Founders Editionと比べてどの程度高い性能を期待できるのかを確認することとなる。
なお,グラフ中に限り,3つの動作モードは「1080XTREME(OC)」「1080XTREME(GAMING)」「1080XTREME(ECO)」と表記して区別する。
テストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時点における公式最新版となる「GeForce 372.54 Driver」。それ以外のテスト環境は表のとおりだ。
テスト方法は基本的に,4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。ただし今回は「3DMark」(Version 2.1.2973)の「Time Spy」のテストも追加した。テスト方法はレギュレーションで規定しているFire Strikeと同じで,2回実行し,総合スコアが高いほうを採用する。
テスト解像度は,GTX 1080がハイエンド市場向けということで,2560
また,CPUの自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって異なる挙動を示す可能性を無視できないため,同機能をマザーボードのUEFIから無効化してある点は,いつもと同じようにお断りしておきたい。
クロックアップの効果はある一方で,上位2モードの設定に大きな違いはない
順にスコアを見ていこう。グラフ1は3DMarkのDirectX 11版テストであるFire Strikeの結果をまとめたものだが,OC MODEで動作するGV-N1080XTREME GAMINGのスコアは,対GTX 1080で6〜8%程度高い。GAMING MODEだとこれが4〜6%程度に縮まり,ECO MODEになると,違いはわずかに約1%である。
最大でも約8%というスコア差をどう判断するかはともかく,OC MODEとGAMING MODEが,ECO MODEとは区別された,より高い性能を狙ったものであることは感じ取れるだろう。
続いてグラフ2は同じ3DMarkからDirectX 12版テストとなるTime Spyの結果だ。
ここで注目したいのは,GV-N1080XTREME GAMINGのOC MODEとGAMING MODEでスコアはほとんど同じであることと,そこから離れて,ECO MODEとGTX 1080が近いスコアで並んでいること。要するに,Fire Strikeと傾向自体は同じわけである。
いま述べた「傾向」は,グラフ3,4の「Far Cry Primal」でもそうは変わらない。GV-N1080XTREME GAMINGのOC MODEとGAMING MODEはほぼ同じスコアを示したうえで,GTX 1080に対して4〜7%程度高いスコアに落ち着いている。
ECO MODE選択時のスコアは対GTX 1080で101〜104%程度と,3DMark比では若干開いたが,それでも,GAMING MODE選択時との違いは大きい。
グラフ5,6は「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)のテスト結果だ。ここでは,解像度2560
なお,GV-N1080G1 GAMING-8GDのテスト時とスコア傾向が異なっているのは,ARKに当たったパッチによって負荷が変わったためだ。ここまで頻繁にエンジンの動作傾向が変わるとなると,ARKは次世代レギュレーションで外すことも考える必要があるだろう。
今回,最もインパクトのある結果が出たのが,グラフ7,8の「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)だ。GV-N1080XTREME GAMINGのOC MODEはGTX 1080に対して8〜16%程度のスコア差を付け,GAMING MODEが7〜14%程度,さらにECO MODEでも4〜9%程度高いスコアを示した。
「ウルトラ」プリセットの2560
一方,グラフ9,10にスコアをまとめた「Fallout 4」のスコア傾向は,3DMarkやFar Cry Primalと似たものとなった。対GTX 1080のスコアは,OC MODEで103〜108%程度,GAMING MODEで102〜108%程度,ECO MODEで101〜103%程度だ。
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ11,12だ。
FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチでは,解像度2560
ただ,Founders Editionが解像度3840
グラフ13,14は「Project CARS」の結果だ。ここでも解像度2560
WINDFORCE STACK 3Xの冷却能力はさすがに優秀。静音性もかなり高い
GeForce GTX 10搭載カードのクロックアップモデルはFounders Editionと比べると目に見えて消費電力が高く出る傾向にあるが,GV-N1080XTREME GAMINGはどうだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみよう。
テストにあたっては,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
その結果はグラフ15のとおりで,アイドル時で比較すると,GV-N1080XTREME GAMINGのスコアはGTX 1080より若干高めだが,基板の豪華な作りの割には,違いが出ていないと見るべきだろう。
しかし,各アプリケーション実行時に目を移すと,対GTX 1080でOC MODEは24〜39W程度,GAMING MODEは21〜31W程度高く,ECO MODEですら11〜22W程度高いという結果になった。今回も,クロックアップ分の代償は支払っているわけだ。
GPUの温度も確認しておこう。ここでは,温度24℃の室内において,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「3DMark時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 1.10.0)から温度を取得することにした。
その結果がグラフ16だが,アイドル時はWINDFORCE STACK 3Xクーラーのファンが停止するためスコアが高く出るものの,高負荷時は最大でも70℃と,Founders Editionより10℃以上低いという,素晴らしい結果になった。さすがはトピックてんこ盛りの大型クーラーといったところだ。
気になる動作音は,動画ファイルを再生して確認してほしい。
これは,カードに正対する形で30cm離した地点にカメラを置き,アイドル状態で1分間放置したあと,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを4分間実行したときの様子を録画したものだ。
前述のとおり,アイドル時にはWINDFORCE STACK 3Xクーラーのファン回転はゼロなので,最初の1分間,聞こえる音はCPUクーラーや電源ユニットなどによる環境音だ。ベンチマークを起動すると,10秒後くらいからファンが回り始めるが,同時にコイル鳴きのような音も確認できる。そして,ベンチマーク開始後2分,つまりファイルの冒頭から3分経過くらいでファンの動作音もピークに達しているが,コイル鳴きの音も含めてその音量は小さい。PCケースに入れてしまえばまったく気にならないレベルと言い切ってしまってもいいだろう。
OC MODEのインパクトは薄いが,3スロット仕様のGTX 1080カードとしては有力な1枚
以上,GV-N1080XTREME GAMINGのスコアを見てきた。
先に評価したGV-N1080G1 GAMING-8GDは動作モードの設定が緩やかだったこともあり,設定変更を行うメリットをほとんど感じなかったが,今回は,工場出荷設定であるGAMING MODEで十分にクロックアップの効果を感じられる一方,OC MODEのスコアがGAMING MODE選択時と変わらないため,やはり動作モード変更のメリットは感じないという,不思議な結果となった次第である。
OCモードの設定が難しいのは分かるが,もう少し尖らせてもよかったのではないかと思う。
実勢価格が10万8000円前後(※2016年8月26日現在)と,少しずつ値を下げているGTX 1080カードの相場からするとさすがに高いのは人を選ぶと思うが,コストに見合ったものが得られるGTX 1080カードだとまとめても構わないと思う。
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GIGABYTEのGV-N1080XTREME GAMING-8GD-PP製品情報ページ
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