ニュース
当初の計画よりもスペックが大きく低下したX79チップセット。IntelのPCI Express 3.0対応計画も流動的に
そこで分かってきたのは,噂されていたとおり,X79が計画当初よりもスペックダウンしていることだ。今回はその点をまとめてみたいと思う。
SATA 6Gbps対応は2ポートに
8 DIMM構成は制限あり
1つはっきりさせておくと,10月下旬時点でマザーボードベンダー各社が公開しているのはX79マザーボードの写真程度である。詳細なスペックの情報開示は行われていない。
ただ,5月末のCOMPUTEX TAIPEI 2011(以下,COMPUTEX 2011)や,9月中旬のIntel Developer Forum 2011 San Francisco(以下,IDF 2011 SF)で参考出品されていたマザーボードと比較すると,製品版マザーボードには,明らかな違いがある。それは,Serial ATA(以下,SATA)周りのデザインだ。
「Patsburg」(パッツバーグ)の開発コードネームで知られるX79は,当初,SATA 6Gbpsを10ポートサポートし,CPUとチップセット間の帯域幅を拡張するため,従来のDMI 2.0に加えて,PCI Express(以下,PCIe) 2.0 x4でも接続される計画となっていた。しかし,今回公開されているマザーボードを見る限り,チップセットレベルだとSATAのサポートは6ポートに留まり,しかもSATA 6Gbpsはそのうち2ポートしかないようである。
COMPUTEX 2011の時点で,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGA-BYTE)やECSなどが公開していたマザーボードからは,X79がSATA 6Gbpsを10ポート持つことがうかがえた。しかし,IDF 2011 SFの時点になるとGIGA-BYTEのX79マザーボードがチップセットレベルで対応するSATA 6Gbpsポート数は6になり,ついに製品版では2ポートに削られてしまったのだ。
別のマザーボード開発者によれば,この変更は,CPUとX79チップセット間のPCIe接続に問題があり,SATA 6Gbpsポートを多く用意できるだけの帯域幅が確保できなくなったことによるもの。同関係者いわく「Intelは『チップセットのリビジョン変更で,将来的にSATA 6Gbpsを最大6ポートサポートできるようになる』とマザーボードベンダーに通達しているが,その時期は未定」とのことだった。
ただ,「Intel X58 Expressプラットフォームでも,3chメモリインターフェースの性能を引き出すのに一定の時間を必要としたように,4chインターフェースも,BIOSアップデートなどで性能が向上してくるだろうと期待している」と,楽観的に捉えるメモリベンダー関係者も存在している。
また,マザーボードの写真だけでは分からない情報として,少なくともSandy Bridge-Eの初期モデルが,計画当初のPCIe 3.0対応を見送り,PCIe 2.0サポートに留まることも,主要マザーボードベンダーのほとんどが認めている。
Intelは,LGA2011プラットフォーム向けのIvy Bridge-Eを2013年半ばに市場投入する計画を持っていたが,現在では,2012年第4四半期に前倒しするとも伝えられている。なので,デスクトップPCにおけるPCIe 3.0の対応はそこでもいいという判断が働いた可能性があるというわけだ。
現時点の計画だと,IntelはIvy Bridge-EでもX79プラットフォームを継続して利用する意向。主要マザーボードベンダーがX79マザーボードを「PCIe 3.0 Ready」と謳っているのは,Ivy Bridge-Eを睨んでのものだというのが,有力な説である。
なお,マザーボードベンダー関係者などの話を総合して,最終的なIntel X79プラットフォームの仕様をまとめたものが下の表で,これを見ると,X79が当初の計画からどれだけ後退したか一目で分かる。
ちなみに,Intelが持っていた当初の計画だと,Sandy Bridge-Eには8コア版も計画されており,実際,Sandy Bridge-EベースのXeonには8コアモデルも用意される。ただ,NehalemベースのCore i7 Extreme Editionで6コアモデルが追加されたように,将来的に8コア版が登場する可能性は残されているようだ。
PCIe 3.0はどうなる?
GPUはSouthern IslandとGK104待ちか
LGA2011プラットフォームにおけるPCIe 3.0対応の先送りを受け,2012年第1四半期末の市場投入が計画されている次期LGA1155 CPU「Ivy Bridge」(アイヴィブリッジ,開発コードネーム)におけるPCIe 3.0の対応についても見直しがかかる可能性が出てきたと,複数のOEM関係者が指摘している。
あるマザーボードベンダー関係者は筆者に対し,「Ivy BridgeのPCIe 3.0対応の検証はようやくスタートした。しかし,互換性問題がいくつか生じており,Intel側も,PCIe 3.0対応に関して,ややトーンダウンしている印象を受ける」と述べていたりする。
別の業界関係者によれば,PCIe 3.0の策定において,GPUメーカーと,Intelなどほかのメンバーとの間で,電源規格の拡張をめぐる対立があったという。同関係者によれば,GPUメーカー側は,PCIe 3.0において,275Wと350Wの電源規格を盛り込むことを主張したが,他の主要メンバーは,「電源規格は付帯条項に過ぎない」として,拡張をPCIe 4.0世代まで先送りすることを通達したとのだそうだ。
そのためGPUメーカーは,PCIe 3.0への対応をキャンセルし,PCIe 4.0へ移行するという強攻策すら一時期検討していたとされ,「それこそが,グラフィックスカードのPCIe 3.0対応が遅れ,いきおいマザーボードでのテスト開始が遅れた大きな要因の1つ」と分析する関係者も存在するほどである。
以下,GPU名はいずれも開発コードネームとなるが,グラフィックスカードベンダー関係者によると,AMDは2012年第1四半期中に次世代GPUファミリー「Southern Islands」(サザンアイランド)のPCIe 3.0対応版を市場投入予定とのこと。対するNVIDIAは同第2四半期に,「Kepler」(ケプラー)世代の「GK104」でPCIe 3.0移行を開始する計画だと言われている。ここ数年におけるNVIDIAの製品ロードマップからすると最初は“GK100”では? と思う人もいるだろうが,これは現在,NVIDIAの製品ロードマップに「GK100」が存在せず,デュアルGPUソリューションと思われる「GK110」がフラグシップに位置づけられているためのようだ。
いずれにせよ,「このスケジュールも,Ivy BridgeのPCIe 3.0対応が遅れれば,大幅にずれ込む可能性がある」(同関係者)。依然として流動的な状況にあるというわけである。せめてIvy Bridgeプラットフォームは,当初の予定どおり,フルスペックで市場投入されてくれるといいのだが。
- 関連タイトル:
Intel 7
- 関連タイトル:
Core i7(Sandy Bridge-E)
- 関連タイトル:
Ivy Bridge-E(開発コードネーム)
- 関連タイトル:
Radeon HD 7900
- 関連タイトル:
GeForce GTX 600
- この記事のURL:
キーワード
(C)2011 Advanced Micro Devices, Inc.