毎年,「そのまま製品化する予定はない」として,コンセプトマザーボードを公開するASUSTeK Computer(以下,ASUS)。2011年は,東日本大震災直後の開催ということで,変則デュアルCPUマザーボード「Danshui Bay」に「GOD BLESS JAPAN」のシルク印刷を入れてくれた同社だが(
関連記事),今年は,「Intel X79 Express」(以下,X79)チップセット搭載マザーボードに,
PCI Express 3.0接続のGPUを2基,オンボードで搭載するという「
ZEUS」を用意してきた。
ZEUS(ゼウス)。アクリル製のケースに入っており,近づいたり手を触れたりはできなかった
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リビジョン1.00TとされるZEUS。ヒートシンク上には「DUAL GEN.3 GPU」の刻印がある
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CPUソケット周辺はハイクラスのLGA2011マザーボードといった趣なのだが,異質なのは,一般的なマザーボードでPCI Expressなどの拡張スロットが置かれるところに,大きなヒートシンクが用意されているところだ。一部,グラフィックスメモリチップが覗いていたりもするが,この大きなヒートシンクの下に,2基のGPUが搭載されているのだという。
となると気になるのは「何が差さっているのか」だが,「朝からその質問ばかりだ」と笑いながら答えてくれたASUSのプロダクトマネージャー氏――顔なじみなのだが,名前が思い出せない――によると,現時点で具体的に「○●を載せる」という計画はないのだそう。まだ,GeForceによるSLIと,RadeonによるCrossFireXのどちらがより適切かを,検証している段階にあるとのことだ。
金と銀の色からなる,羽を彷彿とさせる大型のヒートシンクがGPU用。写真でその右上,CPUソケットとの間に見えるヒートシンクはGPUの電源部用だという
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GPU用ヒートシンクの“下”側,基板の縁のところには6+8ピンの補助電源コネクタが2系統用意されていた。6+8ピン仕様のPCI Express 3.0対応GPUなら「Radeon HD 7970」ということになるが,本文にあるとおり,必ずしもそういうわけではないとのこと
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搭載されるグラフィックスメモリチップはSK Hynixの6Gbps品「H5GQ2H24MFR-R0C」だった |
10ポートあるSerial ATA端子はすべて6Gbps対応。X79による2ポートを除く,残りの8ポートはハードウェアRAID対応とされる |
そもそも,ZEUSというコンセプトマザーボードは,「Thunderbolt普及後」の世界を想定して開発されたものだそうだ。
振り返ってみると,液冷機構を備える「
Pinotnoir」や,搭載部品の耐久性が高いことを謳う「
MARINE-COOL」など,ASUSのコンセプトマザーボードは,数年後の実用化を見据えた設計が行われてきた。そしてZEUSは「Thunderboltの普及によって,拡張デバイスが外付けされるようになり,
PCI Expressスロットが不要になったとき,マザーボードに何を置くのかがテーマとなっている」(同氏)のだという。
Thunderboltポートを2基搭載するI/Oインタフェース部。グラフィックス出力はDisplayPort×1,HDMI×1だ。USBはすべて3.0対応。無線LANはIEEE 802.11acとなっていた。確かに将来を見据えた仕様なのかもしれない
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GPUを2基搭載したのは,「ATXフォームファクタのマザーボードで,拡張スロットを省いたところにGPUを1基だけしか搭載しないと,基板がスカスカになってしまうから(笑)」とのことで,2基であることにそれほどの意味があるというわけではないようだが,デスクトップPC,とくに自作PCが今後どうなるのかを考えるうえでは,なかなか示唆に富んだマザーボードといえるかもしれない。
……いや,それでもキワモノ感は十分にあるのだが。