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新作MMORPG「ECHO OF SOUL(EOS)」発表会開催。あえて“次世代”を狙わないそのゲームの意図するものはなにか
EOSは,「MMORPGが持つ本来の楽しさを追求し,4年の歳月をかけて開発された正統派ファンタジーMMORPG」であるという。すでにハンゲームによる日本サービスは発表されており,ティザーサイトも開設されているが,会場ではゲームの未発表情報が公開された。
キム氏は2009年にNviusを設立し,4年間,100人の開発メンバーとともにEOSを開発してきたとのこと。2013年に韓国でサービスを開始し,2014年には中国とタイでのサービスも始まり,現在世界で300万人がEOSをプレイしているいう。とくにタイでは,2014年度最高のMMORPGだと表彰されていると,現状を説明した。4年間の開発期間と1年半の運営経験を経て,万全の体制で日本でサービスを開始するというわけだ。
さらにキム氏は,本作の開発における3つの戦略を紹介した。
まずはグラフィックスについてだ。Nviusが設立された2009年には,素晴らしいグラフィックスを持ったMMORPGがたくさん登場していた。しかし,それらはコンテンツ不足になったり,老朽化したシステムしか持たないタイトルばかりだったという。高スペックPCが求められたり,開発費が高くてコンテンツ開発が滞るような状況も出ていた。
そこで,Nviusではグラフィックスのレベルを少し下げてでも,多くの人にたくさんのコンテンツを楽しんでもらえるようにしたいと考えたという。
次に,モバイルとの連携だ。2009年当時ではまだiPhoneなどはさほど普及していなかったのだが,すでにPCだけでゲームをする時代ではなくなっていると感じていたそうだ。そこでモバイル端末でも連動して楽しめるコンテンツを前提にしていたという。その後,iPhoneの新機種やAndroidが出てきて流れが加速されたようだが,その当時の決定を誇らしく思うとキム氏は語っていた。
3つめに語られたのが,ダンジョンの戦略性だ。さまざまなゲームでインスタンスダンジョンが導入されているが,多彩な攻略法を持つダンジョンを豊富に揃えているのはWoW以降登場していないというのがキム氏らの見解のようだ。そして,EOSではそこに開発を集中したという。すでに韓国産MMORPGのなかではインスタンスダンジョン数で最多の部類になっているとのこと。
キム氏は,最後に日本向けてのアピールで,フィールドでのPKはできないなど,他人に迷惑をかけにくい設計になっていることや,ヒーラーなしでパーティプレイができるバランスで,「ヒーラー待ち」といった状況が発生しないようにしているなどの特徴を紹介した。同時に,NHNからの情報をもとに日本向けにコンテンツの追加や調整を進めているという。
EOSとはどういうゲームなのか
- グラフィックスが古い
- 棒立ち戦闘,クリックゲー疑惑
- スズキ
だそうだ。ちなみに,鈴木氏はNHNがゲームオンにTERAをサービス移管した当時の日本プロデューサーでもあるので,名前に見覚えのある人もいるだろう。
グラフィックスレベルが高く,新しい戦闘システムのタイトルがあるなか(さほど数はない気はするが),このままではダメじゃないかというのが第1の懸念だ。それに対して,鈴木氏は明確に否定した。
まず,簡単・親切な戦闘システムであること。基本的に,ターゲット式のオーソドックスな戦闘システムであり,難しい操作は必要ない。
例で挙げられたシーンでは,超音波攻撃がきますよというゲージが減りつつ,画面に「遮断スキルを使用してください」といったメッセージが表示されていることが分かる。なんとなくQTE(Quick Timer Event:時間内に適切に反応しろ系のイベント)ぽい雰囲気もあるが,ボスなどの特殊攻撃でも攻撃範囲が明示されるので,それを見て避ければよいわけだ。逆に言えば,適切に反応し,敵の攻撃は避けなければならない。棒立ちでクリックしているだけではダメなゲームということでもある。
そのほか,低レベル帯のインスタンスダンジョンの充実,高スペックPCは不要であること,1500以上のクエストや40以上のインスタンスダンジョンといった充実したコンテンツ,モバイルアプリとの連動など,一連の特徴を解説したうえで,「グラフィックスレベルを抑えて,奇抜なシステムは導入されていないこと」のメリットを挙げていた。
曰く,
- 低スペックPCでも快適に動作するグラフィックスなのでプレイヤー数の母数拡大が期待できること,グラフィックス制作コストがアップデートを圧迫しない
- 簡単な戦闘システムもプレイヤー母数の拡大に寄与し,かといって棒立ちでは成り立たないバランスが取られている
などだ。
エンジンが古いとはいえ,Unreal Engine 2.5を駆使したグラフィックスは,ごく一部のハイエンドグラフィックスを使ったもの以外には引けをとらないレベルのものであり,それでいてノートPCでも楽しめる。
これらをまとめて鈴木氏は,EOSの美点を「ちょうどよさ」という単語で表していた。ハイエンドに走ることで失われていたさまざまものを,最適なところでまとめた結果がEOSだというわけだ。
EOSのプレイヤークラスは5種類
続いて,EOSの新情報としてクラスに関する解説が鈴木氏から行われた。
紹介されたクラスは5種類で,
- ウォーリア
- ローグ
- ガーディアン
- ソーサレス
- アーチャー
といったものとなる。
レベル10になると,クラスごとに2種類の「特性」を取得するという。ウォーリアであれば,近距離戦闘に向いた「狂乱」と防御役の「守護」,ローグでは連続攻撃に特化した「強襲」と状態異常などを引き起こす「毒」,ガーディアンでは攻撃寄りの「嵐」とサブタンク的な位置づけの「大地」でどちらもサポート的な側面も持っている。魔法使いのソーサレスでは「火炎」と「氷結」という文字通りの属性の2種類,アーチャーでは純粋な遠距離攻撃職としての「射撃」と音楽によってサポートを行う「旋律」という特性を持つようになる。
これらの特性は,2つのクラスに分岐するという意味ではなく,どちらかに切り替えることでスキルツリーを使い分けるような実装となっている。パーティ構成などによって,今日はタンクではなくて攻撃特化にしようとか,敵対するモンスターによって,ここは氷属性で行くぞといった選択ができるわけだ。
発表会場でのスライドを見る限り,特性は2種類に限定されるわけではないようだ。増えている状態のものも確認できたので,サービス後に追加されていくのだと思われる。
そして,専属のヒーラークラスが用意されていないこともEOSの特徴となっている。多くのMMORPGではヒーラーに依存する部分が大きく,前述のようにパーティ募集でヒーラー待ちが発生して出かけられないといった事態もまま発生しがちである。EOSでは,ヒーラーなしの状態で狩りに出られるようにバランス調整が行われているのだそうだ。
EOSの重大要素「ソウル」とは
ゲームタイトルにも入っている「ソウル(Soul)」についての紹介も行われた。ソウルはこの世界での万物の根源をなすものである。狩りで入手した「混沌のソウル」は,プレイヤーが浄化することで「希望」「勇気」「純粋」「安息」という4種類のソウルを得ることができる。
なお,プレイヤーが単独で浄化を行う場合,混沌のソウル2個でいずれかのソウル1個に変換されるが,誰かと「相互浄化」を行う場合には,倍の効率で浄化されたソウルを入手できるとのこと。
これらのソウルを消費して行うのが「ソウルスキル」で,浄化されたそれぞれのソウルごとのバフがかかるようだ。さらに,各クラスが持つ究極スキル(これ自体もいくつかの候補から選択が必要で,キャラクタービルド要素となっているようだ)にソウルを重ねて強化するといった用途もあるほか,生産などでも幅広くソウルは使われるとのこと。
日本サービスのスケジュールは
気になる日本サービスについての話も出てきた。すでにサービスされている韓国では,かなり速い開発ということで評判がよいらしいのだが,日本サービスではローカライズの分だけどうしても遅れが出てしまうという問題が挙げられ,日本でのフィードバックをより早く反映するために,一般的なCBTに先駆けてフォーカスグループテスト(かなり限定的なCBT)が開催されることが発表された。これは日本全国のネットカフェなどで行われるという。具体的な日程については今後の発表を待ちたいが,5月の週末に,北海道,東京,愛知,大阪,福岡で開催予定だそうだ。
そのほか,正式サービス前には,半年分のアップデート予定をあらかじめ発表することも予告されている。
最後に,NHNがEOSをサービスするうえで「致命的に足りない」ものがあるとして,女性キャラをより魅力的にするためにグラビアアイドルの今野杏南さんがEOSのオープニングプロモーションプロデューサーに就任することが発表された。詳しい内容はいまひとつ分からないが,とりあえず,4月25/26日に開催されるニコニコ超会議では,水着姿の杏南さんの「さまざまな動き」が公開モーションキャプチャされるようだ。
さて,冒頭の加藤氏の言にあった「4年ぶりの単独運営MMORPG」でいう4年前のタイトルであるとか,キムCEOが2009年に登場した大作MMORPGの代表といえば「TERA The Exiled Realm of Arborea」であろうことはだいたい察しがついている人もいるだろう(CBTが2009年)。発表会では,運営と開発の双方からその名前が挙がることはなかったのだが,TERAというタイトルを介したほうがいろいろな部分が理解しやすくなるように思われる。
TERAを制作したBluehole studioは,Lineage IIのプロデューサー兼リードプログラマであったパク・ヨンヒュン氏を中心に結成された会社だ。パク氏自体はサーバープログラムの神様のような人だったようだが,主にアート系のスタッフを中心にBluehole studioを設立し,当時としては革新的だったUnreal Engine 3でのMMORPG開発に取り掛かった。
一方,NviusはLinage IIの開発チームからプログラマ系のスタッフを中心に独立した会社とのこと。後発ではあるが,ゲームエンジンとしてはLineage IIで使われているのと同じ,Unreal Engine 2.5を採用してEOSを作っている。
高度なグラフィックスと斬新なシステムと,TERAは魅力的な要素を多く備えていたのだが,その分だけ開発難度は高く,サービス開始直後にはとにかく新規コンテンツ開発が遅れに遅れていた。NHNが4年間MMORPGの運営を避けていた裏には,いわばそういった“TERAショック”のようなものもあったのではないかとも思われる。Nviusがあえて新しいシステムを使わなかったのには,(キム氏は直接名前を挙げていなかったものの),TERAを反面教師とした選択だったのではないだろうか。
リリース時期のTERAで,コンテンツ不足に苦しんだことを考えると,コンテンツ供給能力を第一に考えてNHNがタイトル選択をしたであろうことは難くない。EOSの発表会でも,先行運営がされている地域での「開発が速い」といった評判を取り上げたり,十分に慣れ親しんだ開発環境でスキルのあるプログラマ陣が十分な力を発揮していることがうかがえる発言が行われていた。
そしてTERAショック以降のタイトルで初めてNHNの眼鏡にかなったのが,元Lineage IIチームによるEOSであり,TERAの運営プロデューサーであった鈴木氏が担当するというのは,妙に因縁めいた巡りあわせではある。
念のために追記しておくと,新作タイトルがコンテンツ供給不足に陥るというのは,なにもTERAに限定したものではない。近年日本でリリースされたオンラインゲームのほぼすべてが,公開後しばらくして弾切れを起こしているのをご存じの人も多いだろう。ゲーム制作には時間がかかるが,プレイヤーのコンテンツ消費速度は,たいていの場合予想を上回る。多くのゲームは数年をかけてコンテンツを拡充していくので,コンテンツ供給能力は新作タイトルでは最も懸念される部分とも言える。
EOSでもコンテンツ消費速度が供給速度を上回わらないという保証はないものの,そうならないようにという配慮は開発・運営の双方からうかがえた。
「MMORPG本来の面白さはどういうものか?」,EOSは開発も運営も十分に検討したうえでやってきたタイトルであるように思われる。あえて次世代を狙わず,現状世代で最高のものを提供しようとする堅実な姿が両者からうかがわれた。それがどのように実現されるのか,今後のテストを楽しみにしたい。
※4/10 13:45 一部,事実関係と異なり,誤解を招く部分がありましたので修正いたしました。関係者の方にお詫びいたします。
「ECHO OF SOUL(EOS)」公式サイト
- 関連タイトル:
ECHO OF SOUL
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