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アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2012春」レポート。オリジナルデザインの国内タイトルも続々登場
3月4日に大阪で行われた「ゲームマーケット2012大阪」に続き,会場を再び東京に移しての開催となった今回は,過去最大規模となる191ブースの出展と3700名の参加者を集め大盛況となった。これはボードゲーム/カードゲームの即売会として国内最大であるのはもちろん,アジアでも最大級のイベントといって過言ではない。
主な出展者は,アークライトやホビージャパンといった国内アナログゲームの主要メーカーから,輸入ショップ,同人サークルまでさまざまで,開始1時間で売り切れとなるほどの人気を集めるブースも多かった。また参加者にはアナログゲームファンはもちろん,家族連れの姿もみられ,アナログゲームファンの層の幅広さがうかがえた。
本稿ではそんな会場の模様を,写真と共にレポートしていこう。
「ゲームマーケット」公式サイト
新作を求め,3700人ものアナログゲームファンが集結
ゲームマーケットは,出展者達が持ち込んだアナログゲームをその場で購入できる即売会イベントではあるが,同人誌などのそれとは趣が異なる部分もある。それは会場に試遊テーブルが多数設置されており,販売されているゲームを,購入前に遊んでみることができるという点だ。大手メーカーが軒を連ねた5階では,各ブース前に試遊卓が用意され,気になるゲームの試遊に興じる参加者達の姿を見ることができた。
その中からとくに気になったブースをピックアップして紹介していこう。
■アークライトブース
本イベントの主催者でもある大手メーカー,アークライトのブースでは,クトゥルフ神話をテーマにした「エルダーサイン 完全日本語版」や,ドイツ出身の有名ゲームデザイナー,Reiner Knizia(以下,ライナー・クニツィア)氏のデザインによるボードゲーム「キングダム」,ドラフト型の双六ゲーム「ロスト・テンプル」などの新製品が販売されていた。
エルダーサイン | |
キングダム |
ロスト・テンプル |
さらに人気のデッキ構築型カードゲーム「サンダーストーン」では,最新拡張セットである「竜の尖塔」のデモ展示が行われ,ファン達の注目を集めていた。その場にいた,同作のデベロッパ,AEGのCEO,John Zinser(ジョン・ジンサー)氏と,リードデベロッパーのMark Wootton(マーク・ウットン)氏にお話しをうかがえたので,以下に掲載しよう。
●「サンダーストーン」開発元AEG ミニ・インタビュー
4Gamer:
AEG CEOのジョン・ジンサー氏(左)と,リードデベロッパーのマーク・ウットン氏(右)
今回「竜の尖塔」が日本語化されましたが,同作の見どころを教えてください。
ジンサー氏:
「竜の尖塔」は拡張セットだけど,それだけでも遊べる独立型のセットなんだ。新しい基本セットとして遊んでもらってもいいし,今までのカードと混ぜても遊ぶことができる。
ウットン氏:
それに今までのものと比べ,コンポーネントもグレードアップしている。例えば「環境設定」のカードを加え,スターティング・カードの絵柄も変えたんだ。ルールもプレイアビリティを重視して,よりカッチリしたものに仕上げたから,新しいプレイヤーの入門にも最適なセットになってるはずだよ。
4Gamer:
サンダーストーンの今後の展開について教えてください。
ジンサー氏:
ここまでのシリーズで色々学んだので,今後の展開には工夫を加えようと思っている。その成果として発表したのが,先日アメリカで発売した「Thunderstone Advance Towers of Ruin」なんだ。Thunderstoneとは別の世界を舞台にしているんだけど,もちろん今までのセットと混ぜて遊べる。売り上げはとても好調で,初刷を完売して,現在増刷中だよ。
4Gamer:
「Thunderstone Advance Towers of Ruin」の特徴は?
ジンサー氏:
色々変化を加えたんだけど,一番大きいのは戦闘のルールを明確化したこと。戦闘を「戦闘」と「アフターマス」に分けて,今まであった分かりにくい点がクリアになっている。それからスターティング・カードをやや強くしたので,ゲームが回転しやすくなっているんだ。
4Gamer:
ずっと疑問だったのですが,ジンサーさんはロサンゼルスにお住まいで,ウットンさんはイギリスにお住まいですよね。一つの会社でありながら,ずいぶん離れた場所で作業されているようなのですが,開発はどうやって行われているのでしょうか。
ジンサー氏:
AEGが出版していたTCG「Legend of the Five Rings」のイギリス・チャンピオンだったマークをスカウトしたんだ。開発の打ち合わせは,Skypeと電子メールで行っているよ。
ウットン氏:
僕がアイデアをまとめて,デベロップ段階になったら,ネットを経由して世界中にいるテストプレイヤーに協力してもらうのさ。
4Gamer:
なるほど。本日はお忙しいところ,ありがとうございました。
■グループSNEブース
「ゲームマーケット2012大阪」では多数の新タイトルを出展し,大活躍だったグループSNEのブース。今回はカードゲーム「テキサスゾンビーズ」と,ボードゲーム「マーメイドレイン」を引っさげての出展となった。そのほか現在開発中のさまざまなゲームのデモプレイが行われていた。
ブースに陣取る安田 均氏 |
テキサスゾンビーズ |
デモブースで遊ばれていた推理ゲーム |
■ゲームストア「バネスト」ブース
新作を求めるお客さんで,終始人だかりができていた,海外輸入ゲームの専門店バネストのブース。尽きないお客に忙しく対応していた中野将之店長によれば,今回のオススメはカードゲーム「MOBBING - Reine Chefsache !」とのこと。「会社の内部でうまーく実績を作る素敵なゲーム」らしい。
そのほかデモプレイ卓では,「Dungeon Fighter」などさまざまな海外ゲームが紹介されていた。
■ジャイアントホビーブース
オリジナルフィギュアを使ったミニチュアボードゲーム「サイクロプス」を展開中のジャイアントホビー。ミニチュアボードゲームというと,どうしても「ウォーハンマー」が浮かんでしまうが,本作はよりシンプルな作りで遊びやすくなっているとのこと。マップのランダム要素やカード式のコマンド選択,またゲーム目標の明確化などがほどこされ,ウォーハンマーとはかなり違うプレイフィールが楽しめる。
■オインクゲームズブース
オインクゲームズブースでは,ライナー・クニツィアの傑作カードゲーム「ペンギンパーティ」を日本向けにリメイクした「さるやま」が登場。ペンギンパーティは筆者も遊んだことがあるが,とてもシンプルで遊びやすいカードゲームだ。
そのほか「エセ芸術家、ニューヨークに行く」「藪の中」など,多数のオリジナル作品が展開されていた。メインデザイナーの佐々木 隼氏は,「お茶菓子になるようなゲームをみんなに届けたい」と語っていた。
■海外からの出展も
前回に引き続き,海外からもいくつかの企業が参加。台湾のスワンパナシア,韓国のウェンズデーゲームス(旧ヴィジョナリー),Gembloなどがブースを構えていた。また4階の一般ブースには,ゲームサークル「Moaideas Game Design」が参加。
Moaideas Game Designの「Pyramid Raiders」 |
Gemblo代表のジャスティン・オー氏。韓国のボードゲーム産業協会議長を務めている。手に持っているのは新作「Gem Stone」 |
■そのほかの注目出展
そのほか5階の大型ブースから,注目の出展を写真で紹介していこう。
輸入・翻訳ゲームの大手,ホビージャパンブース。新作「ディクシット・ジンクス」などの発売で,ブースには終始人だかりができていた。試遊テーブルも新作で大賑わいだ |
ホビージャパンブースから「Pictomania」。よく似た言葉を絵でかき分けるイラストゲームだ |
富士見書房では,グループSNE制作のカードゲーム「シルク・ドゥ・モンスター」を出展。こちらはブシロードから7月末の発売が決定したとのこと |
ジーピーブースでは「カタンの開拓者たち 航海者版」が発売中 |
ドロッセルマイヤーズのブースにあった,俳句をひねるカードゲーム「Hyke」。パッケージが和風で実におしゃれ |
実力派メーカーTANSANFABRIKからは,嘘つきカードゲーム「FABFIB(ファブフィブ)」が発売中 |
熱気むんむんの一般ブース
今回より使用フロアが半フロア増えたゲームマーケット。一般ブースとフリープレイエリアの階が分けられたことで,一般ブースはより広大になっている(6階の半フロアがまるまるフリープレイエリアに)。広くなったスペースには,前回を上回る数のサークルが軒を連ね,自作を販売していた。
■「ドミニオン」世界チャンピオンが監修の攻略本「ドミニオン マニアックス」
ホビージャパンから発売されている人気カードゲーム「ドミニオン」の攻略本「ドミニオン マニアックス」を販売していたドミニオン木曜会ブース。昨年度の世界チャンピオン,ルネ氏が監修を務めていることもあってか,なんと開始からわずか20分で完売してしまったという。
ブースにいたルネ氏にお話をうかがってみると,世界大会は周囲が欧米圏の人ばかりだったので,かなり緊張したとのことだ。今年の日本選手権にもルネ氏は参戦するそうなので,ドミニオンプレイヤーは打倒ルネ氏を目指して今から腕を磨いておこう。
■台頭する若い力
そんな中,日本から海外に紹介されるタイトルも少しづつ増えてきている。日本のアナログゲームをヨーロッパ向けに発売しているフランスのMoonstar Gamesでは,川上 亮氏の「テキサスゾンビーズ」(「キャット&チョコレート」のゾンビ版)やオインクゲームズの推理ゲーム「薮の中」,TANSANFABRIKの変形カルタ「ヒットマンガ」などを欧米市場向けに展開。その担当者が今回のゲームマーケットにも視察に訪れていた。
話を聞いたMoonstar Gamesの担当者によれば,ゲームマーケットが回を追うごとに規模を拡大するのを見て,日本でもアナログゲームファンが着実に増えていることを実感しているとのこと。また今回見つけた注目タイトルについてうかがったところ,篠原遊戯重工の「うそつきばかり」の発想に興味を惹かれたという。「いわゆる“ジャパネスク”ではない,日本らしい繊細さが感じられる作品」を求めているそうだ。
ゼロハウス 「ヤジルス」 |
Dream Board Games「イスペリアストーリー」 |
ピグフォン「未確認TV CRYPTIDS TV2」 |
こげこげ堂本舗 「すしドラ」 |
P&A 「Line-Game」 |
トロヴィ工房「EXITなう」 |
エリゴス「つかいま!」 |
グランディング 「街コロ」「ひつじがいっぴき」 |
77spiele「ファラオの帰還」 |
十式ゲームワークス「れんけつ!」 |
ようこそ人狼の館へ「人狼」 |
ひとあそかい 3Dすごろく「奪還! ディロップ城」 |
教育カードゲーム研究所 「算数少女かるく」 |
コミュニケーションの場としてのゲームマーケット
会場でお話をうかがったアークライトのゲームマーケット運営責任者 山上新介氏によれば,今回の全出展者のうち,新規出展は50近いという。その好調の要因としては,春秋の2回開催になったことで訪れてくれる人も多くなり,それに伴って定期的に出展しようという人が増えたこと,またパッケージデザインやイラスト,印刷のクオリティなどが底上げされたことで手に取られやすくなり,とく制作が比較的簡単なカードゲームジャンルの出展が目立つことなどが理由として挙げられていた。
ただし,単に作れば売れるというわけではなく,事前の告知や買いやすい価格の設定,手に取ってもらうことを意識したデザインなど,売るための工夫が必要になってきているという。また実際に遊んでみなければ分からない,ということで,試遊卓の申し込みも急増しているとのことだ。
山上氏「アナログゲームはコミュニケーションのゲームです。ぜひ,来て,見て,遊んでいただければと思います。実際に触れて遊ぶ場所もたくさんありますので,一人でも友達と一緒でも楽しめます。次回開催は秋になりますので,ぜひお越しください」
次回のゲームマーケットは,2012年11月18日に開催予定の「ゲームマーケット2012秋」のほか,2013年3月10日には「ゲームマーケット2013大阪」の開催も予定されている。とくに「ゲームマーケット2013大阪」では,前回の反省をうけ,会場を2フロアに拡大しての開催になるとのこと。この記事で興味を持った人は,ぜひ最寄りの開催地で行われるゲームマーケットに足を運んでみよう。
(おまけ)ゲームマーケットの風景
会場で見かけたボードゲーム界の長老,鈴木銀一郎氏。今年もお元気なお姿 |
「バトルスピリッツ」のディレクター,ORGの中澤光博氏も久しぶりに来場 |
アナログゲーム好きで知られる大川興業の阿曽山大噴火さん。「2年ほど前,知人の結婚祝いを買いに『すごろくや』さんへ行ったのが始まり。以来,色々遊んでいます」 |
クトゥルフ研究家にしてシャーロキアンの森瀬 繚さんの戦利品。「何を買った?」という質問に答えて見せてくれたのは,やはりシャーロック・ホームズとクトゥルフのカードゲームだった |
「ゲームマーケット」公式サイト
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