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[CEDEC 2011]企画と開発からひもとく「忍者ロワイヤル」の作り方。DeNAが目指すソーシャルゲームの進化とは
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印刷2011/09/08 00:00

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[CEDEC 2011]企画と開発からひもとく「忍者ロワイヤル」の作り方。DeNAが目指すソーシャルゲームの進化とは

 「CEDEC 2011」の初日,2011年9月6日に行われた講演「忍者ロワイヤルの今までと今後」を紹介しよう。
 「忍者ロワイヤル」とは,その名前でピンとくる人もいると思うが「怪盗ロワイヤル」と同じくディー・エヌ・エー(以下,DeNA)が開発・運営している“スマートフォン向け”のソーシャルゲーム。講演を行ったのは,DeNAの徳丸祥之助氏佐藤大悟氏。それぞれ企画と開発で,本作に深く関わりのある人物だ。忍者ロワイヤルの誕生から現在,そして今後の展開までを,企画者と開発者という2つの視点からひもときながら,ソーシャルゲーム制作のノウハウをシェアしよう,というのが当セッションの趣旨である。

忍者ロワイヤルには,敵を倒して経験値やお宝などを入手できるミッションと,ほかのプレイヤーと宝を取り合うユーザーバトルという2つのモードがある。これを繰り返して宝のコンプリートを目指すのがゲームの目的だ
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「ディー・エヌ・エー」コーポレートサイト



怪盗から忍者へ。スマートフォン版「ロワイヤル」で何が変わったか


DeNA ソーシャルゲーム事業本部 ソーシャルゲーム統括部スマフォSG部 SP企画グループ 徳丸祥之助氏
画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2011]企画と開発からひもとく「忍者ロワイヤル」の作り方。DeNAが目指すソーシャルゲームの進化とは
 最初に登壇したのは,忍者ロワイヤルのプロジェクトリーダーである徳丸祥之助氏で,まず企画者視点での話からセッションはスタートした。忍者ロワイヤルは,フィーチャーフォン向けだった怪盗ロワイヤルをベースに,スマートフォン(Android/iOS)向けに開発された初の「ロワイヤル」シリーズである。タイトルどおり,そのモチーフも怪盗から忍者に置きかえられている。

 テーマがなぜ”忍者”になったのかについては,ロワイヤルシリーズとの親和性の高さが挙げられた。確かにバトルとミッションが中心のロワイヤルシリーズなら,テーマを忍者にしてもあまり違和感はない。それに忍者ならば,海外展開にも向いたテーマといえ,そこも重要であったようだ。


■「忍者ロワイヤル」の開発経緯

  • 2010年10月〜 テーマ決定・企画検討
  • 忍者をテーマにロワイヤル系のゲームを作ることに決定し,その詳細を詰めていく段階
  • 2010年11月〜 開発着手
  • スマートフォンでどういったことができるのか,試しながら開発を進めていく
  • 2011年5月12日 Android版リリース
  • 6月上旬までは,5月12日のリリースに間に合わなかった機能を1週間サイクルで投入。課金機能も整備
    6月中旬以降は,iOS対応のために,クライアントの変更無しでミッションを追加する仕組みやイベントを追加する仕組みを実装
  • 2011年8月11日 iOS版リリース

 忍者ロワイヤルと,これまでDeNAが企画検討していたフィーチャーフォン向けのソーシャルゲームとで,企画検討の仕方は基本的に変らない。これについて徳丸氏は「デバイスが変わっても,ブラウザからアプリに変わったとしても,ソーシャルゲームとして成り立たせなければならない要素は変わらない」と語った。
 一方で本作はアプリベースであり,その点については強みを活かす検討が行われたとのこと。つまり,より豊かになった「表現力」「操作性」などを使い,スマートフォンならではのユーザー体験と利便性をどう生み出していくか,という点である。

スマートフォンの”表現力”


画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2011]企画と開発からひもとく「忍者ロワイヤル」の作り方。DeNAが目指すソーシャルゲームの進化とは
 フィーチャーフォンに比べて1画面の表現力が向上し,操作方法も大きく変化したスマートフォン。しかし徳丸氏は「ここでいう表現力とは,単なるUIのことではない」と語る。例えば自分のルームに入室したときに表示されるバトル結果は,よりグラフィカルな表示となった。宝の防衛に成功したときは,敵プレイヤーを跳ね返したような演出,防衛に失敗したときは敵プレイヤーが宝を奪っていく演出が加えられ,これによってプレイヤーの感情をより刺激する。
 その結果……かどうかは分からないが,本作では武器より防具のほうが売れやすいという,ほかのロワイヤルシリーズにはない特徴が見られるのだそうだ。もちろん演出の効果だけでなく,バトルの回復時間が長いことなども影響していると思われるが,ひとつの興味深い事実ではあるだろう。


スマートフォンの”操作性”


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 忍者ロワイヤルには,ネイティブアプリという環境を活かし,ブラウザベースでは実現が難しかったタップ&スラッシュ操作によるライトなアクション性が組み込まれている。バトルの結果は基本的に従来どおりとなっており,キャラクターの能力値に依存するものの,アクション性を加えたことで,ユーザーバトルを実行するプレイヤーの割合は,ほかのロワイヤルシリーズよりも高くなっているとのこと。

 一方タップし続けるという“単純作業”になりがちなミッションに変化をつけるため,「スペシャルミッション」というミニゲームも導入されている。これについては面白いという好評がある一方で,「難しい」「プレイする際に場所を選ぶ」「イベント中は邪魔」といった意見もあるようで,現状では賛否両論なのだそうだ。今後はスペシャルミッションを極力簡単な内容にし,報酬を増やす,スペシャルミッション開始前にスキップを可能にする,といった改善を予定しているとのこと。現状の制約からくるプレイヤーのストレスを軽減し,報酬の増加でプレイする意味を作りだそう,という方向性だ。


通信”の最適化とラグへの工夫


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 通信が発生した際に起きるタイムラグは,本作に限らずプレイヤーにストレスを感じさせる大きなポイントだ。これに対処するためには,通信が発生する回数を極力減らすようにしたり,通信が発生した場合に“通信中”である旨を画面に表示したり,といった手法が一般的な対処といえる。
 忍者ロワイヤルでは,これらの一般的な対処に加え,例えばミッションのスロットが回っている状態での通信は,その間ずっとスロットが回り続けるといった形で,プレイヤーに通信中であることを“気づかせない”工夫が行われる。こういったことも,ブラウザベースからアプリベースになったことで実現できた仕組みなのだとか。

 アプリであることの特性を活かした例については以上だが,最近追加が行われたミッションスロットの機能についても,いくつかコンセプトが語られた。
 ミッションに関しては,同社では2つの課題があるという認識だそうで,1つは「ミッションの作業化の防止」,そしてもう1つが「ミッションに関するソーシャル性の不足」であるという。

 作業化の防止については「ミッションスロットの出目のバリエーションを増やす」「作業感を減らすため,プレイヤーにとって嬉しい出目を追加する」といった対策を考えているそうで,プレイヤーが飽きない仕組み作りを今後も継続していくとのこと。
 一方,ミッションのソーシャル性については「ミッション中,ほかのプレイヤーと遭遇するような仕組み」を設け,遭遇した相手に挨拶ができたり,仲間の申請が行える仕様を用意したそうだ。

 さらに既存の仲間と双方向にやりとりできる仕組みとして,ほかのプレイヤーの襲撃とリベンジ依頼というシステムも用意されている。

 忍者ロワイヤルは完成されたアプリではないと語る徳丸氏。「今後もソーシャルゲームとしての機能検討を行い,アプリとしての特性を活かした機能を盛り込み,プレイヤーの満足度を高めて行きたい」との言葉で,説明を締めくくった。

通常課金アイテムにしかないバトル回数の回復剤を,このシステムを通じて入手できる。プレイヤーにとっては嬉しいシステムだ
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スマートフォン版ロワイヤルに活用されたゲームエンジン“ngCore”


DeNA ソーシャルゲーム事業本部 ソーシャルゲーム統括部スマフォSG部 SPシステム第一グループ 佐藤大悟氏
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 徳丸氏と入れ替わりで登壇した佐藤大悟氏は,まず冒頭で忍者ロワイヤルのデモプレイを披露。その後で,開発者視点の開発秘話や,専門用語を交えた実戦的な開発技術について披露してくれた。

 ここで主に説明が行われたのは,同社のゲームエンジン「ngCore」についての詳細である。ngCoreとは,iOS/Androidのアプリケーション開発用に特化したゲーム開発エンジンで,DeNAがngmocoを子会社化することで取得した技術である。スマートフォン版mobageでも採用が予定されていて,ワンソースでAndroidとiOSに両対応できることや,ソーシャルゲームに必要な機能が揃っていることなどが特徴とのこと。佐藤氏いわく,少なくともHTML5が本格的に普及するまでは,かなり有用らしい。


デモプレイの様子と忍者ロワイヤルのゲーム画面
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 DeNAとしては,昨年子会社であるMiniNationが英語圏向けのiPhoneアプリをリリースした実績こそあるものの,ngCoreを使ったネイティブなスマートフォンアプリとしては,忍者ロワイヤルが初のタイトルである。ここで話は開発の苦労話へ移り,開発チームが一番苦労した,「画像リソースの軽量化」について説明が行われた。
 リッチなアプリ開発の場合,画像リソースはどうしても膨らみがちで,忍者ロワイヤルの場合,当初は画像ファイルだけで,Android版が38MB,iOS版は23MBという容量を占めていたそうだ。とりわけiOS版については,Appストアで(3G回線で)落とせるアプリのサイズ上限が20MBであることは致命的だったとのこと。開発ではアプリの総サイズを20MB以下にするため,下記の3つの作業が行われた。

  • スプライトシート化(TexturePacker) → -40%
  • インデックスカラー化(Optpix) → -50%
  • 最適化(ImageOptim) → -15%

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 スプライトシート化はAndroid版限定の処理で,細かい画像を1枚のシートにまとめることで,容量を軽くする,というもの。なおDeNAには「できるだけ多くの端末に対応する」という基本方針があるため,古いデバイスにも適応できるような処理も盛り込まれているそうだ。

 こうした作業により,ファイルサイズはAndroid版が38MBから10MB,iOS版が23MBから同じく10MBまでの軽量化に成功。もしこれらの方法でもファイルサイズが小さくできないようなら,画像や音声をサーバー側に持たせるなどの方策を考えるべきだと,佐藤氏は補足していた。

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 最後は忍者ロワイヤルの改善点について,佐藤氏の考えが述べられた。

 まずは,縦持ちにも対応するべきだった,ということ。これは「電車で吊革に捕まりながら遊びたい」「横持ちは(ゲームをしていることが瞭然すぎて大人のプライド的に)恥ずかしい」「両手が塞がることで心理的負担が高い」「マルチタスクの邪魔になる」といった要望からの理由とのことである。
 次に,スペシャルミッションが飽きやすい点。通常バトルが好きなときに楽しめるアクションなのに対し,スペシャルミッションは半強制的に発生するアクション要素であることが問題である。ここは先の徳丸氏と同様,報酬や発生頻度,長さ,スキップ機能などで調整していく方針が改めて語られた。

 佐藤氏はソーシャルゲームの開発について,プレイヤーの顔が見えにくいことや,スピード感ゆえに泥臭い側面があるなど,「ゲーム好き」にとっては悩み多き場であることを正直に述べつつ,それでも「ソーシャルゲームが進化しないことはあり得ない」と結び,セッションを締めくった。

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 ロワイヤルシリーズの長所を受け継ぎつつ,スマートフォンの長所を活かしたリッチなタイトルを目指す「忍者ロワイヤル」。だが少なくとも,今回登壇した徳丸氏,佐藤氏ともに,現状の「忍者ロワイヤル」に改善の余地があることを認めており,まだまだ進化する余地を感じているようである。その進化の先にあるソーシャルゲームが,一体どのようなものになるのか。筆者も「ゲーム好き」の1人として,徳丸氏や佐藤氏,そしてDeNAが描く今後のソーシャルゲームの未来に期待したいところだ。

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