インタビュー
「DEAD OR ALIVE 5」にアキラとサラがゲスト参戦することになったキッカケとは? コーエーテクモ・SEGA開発陣へのインタビューを掲載
“30秒の理由”とは。VF5FSのことも聞いてみた
4Gamer:
今回は,SEGAさんも来ていただいたことですし,せっかくなので家庭用VF5FSについてのお話も聞かせてください。まず,発売後の反響はどうでしたか?
プレイヤーさんからの声は概ね好評ですし,セールスも非常に良い状況です。それともうひとつ,VFファンの方々はアイテムを非常に重要視しているという印象です。
片桐氏:
おかげさまで,たくさんの方々に本体だけでなく,アイテムパックまでお買い求めいただいています。
4Gamer:
実際,どれくらいの方がアイテムパックを買われているんでしょう。
片桐氏:
想像よりもはるか上……じゃダメですかね?(笑)
羽田氏:
正直,ビックリしました。いかにそこが重要視されているのか,改めて感じるほどです。
片桐氏:
アーケードでプレイしていただいている方々にアンケートを取ったときに,何を重視するかという問いに対して,対戦のバランスや気持ちよさの部分と同じくらい,アイテムに対して興味を示しているという結果が出ていました。なので,そのままのイメージでコンシューマでも遊んでもらえているんでしょう。
4Gamer:
そもそもパッケージではなく,ダウンロード販売を選んだ理由はなんだったのでしょう。さらに今回,本体自体が約1500円とかなり安く設定されていますよね。
片桐氏:
VF5FSの移植は,昨今海外で対戦格闘ゲームの盛り上がりを受けて,「うちにはVFがあるじゃないですか,出しましょう!」というのがきっかけなんです。
4Gamer:
確かに,海外の盛り上がりでけん引されている印象を受けます。
片桐氏:
じゃあ海外で出そうというときに,海外でパッケージを発売すると結構なカロリーがかかることもあって,むしろ,オンライン対戦で世界中の人と対戦できる時代になったんだから,ダウンロード販売にして,ある程度価格を抑え,いろいろな人に売るべきだという話になりました。そのときは具体的な価格も考えておらず,まあパッケージよりはちょっと安くなるのかな,程度で考えていたんですが,海外担当から「価格は約15米ドルで」と言われて。えーと,日本円で言うと約1500円か,1500円!? と(笑)
(一同笑)
4Gamer:
今回の移植に関しては,海外主導だったわけですね。売り上げ自体も海外販売を見込んだものだったんですか。
片桐氏:
そうですね。そもそもダウンロード販売の場合,日本と海外では圧倒的に規模が違うので,単純な売り上げ数で言えば海外がの方が多くなるんです。
4Gamer:
では,海外での評判はいかがでしょう?
片桐氏:
すべての情報が届いているわけではありませんが,聞く限りでは海外からもご好評をいただいているようです。発売前にもイベントを行って,かなり盛り上がったという話も聞いています。
4Gamer:
なるほど。ところで,これは非常に個人的な質問なんですが……ルームマッチの仕様で,あの30秒のウェイトタイム(※)には何か理由があるのでしょうか?
(※ルームマッチは対戦が始まるまでに30秒間の待ち時間が発生する)
片桐氏:
まずVFというゲームは,よく「フレームゲー」と表現されますよね。
4Gamer:
はい。早い展開の中でお互いのフレーム状況を足し引きして,その状況に即した技を出していくという攻防の中に面白さが詰まっていると感じます。
片桐氏:
オンラインでその駆け引きを楽しむために何が一番重要かと言うと,やっぱりトラフィックの安定です。そこで,ゲームにトラフィックのすべてを使いたい。なので,今できないこととして,まず対戦中にそのルームに参加できなくなっています。
4Gamer:
そうですね,対戦が始まるとルームが閉じられるという点も気になっていました。
片桐氏:
これは途中参加を可能にすると,対戦しているプレイヤーのトラフィックにも影響が出てしまうので,それを排除しているわけです。では,どのタイミングでルームに入るの? というところで,先ほどおっしゃった30秒のウェイトタイムが設けられているんです。
4Gamer:
なるほど。
片桐氏:
通信にはどうしてもラグが生じますが,その不安定さを少しでも抑えたほうがプレイヤーにとっては有意義だろう,ということで,今回この仕様としました。
4Gamer:
何よりも,通信環境を安定させることに重きを置いた結果だったわけですね。
片桐氏:
ストレートな考え方ですが,VFとしてフレーム単位の攻防が楽しめる究極を目指すべきということです。
4Gamer:
なるほど,分かりました。あと,VFファンのすべてが気にしていることだと思うのですが,VF6など次回作の予定はあるのでしょうか?
羽田氏:
それは,何か言えるタイミングがあればいの一番にお伝えしたいのですが,いまはまだ何も言えない状況です。
とはいえ,例えば「VF6」という言い方をされるものであるならば,ナンバリングが上がるに相応しい何かが必ず用意されているものになると思います。
片桐氏:
VF5の制作が終わったあとも,6はどうしようかと常に考えています。ただ,それが出るか出ないかというのは,さまざまな条件が合致して初めて分かることなので,そこは僕も出したいと願っていますし,皆さんにも願っていてほしいですね。
早矢仕氏:
我々もDOA4からDOA5にこれだけの時間がかかりましたし,ナンバリングの重みに関してはとても共感できます。
羽田氏:
VF5も長いですからね,もう6年ぐらい。
片桐氏:
ビックリするくらい長いんです。皆さんにもこれまで付いてきていただいて,この場を借りてお礼を言いたいです。一つのゲームをやり続けていただけるというのは,開発者冥利に尽きます。
世界規模で盛り上がる格闘ゲーム
海外産のすごい格闘ゲームが登場する可能性も!?
4Gamer:
では,格闘ゲーム全体の現状に関するお話も教えてください。この夏,格闘ゲームと呼ばれるタイトルがかなり出ますが,この状況は格闘ゲームの開発者としてどう感じていますか。また,昨今の賞金付きの大会であったり,プロゲーマーと呼ばれるプレイヤーが現れてきているという現状を,どうお考えでしょうか。
片桐氏:
単純に嬉しいですね。ライバルという見方もあるんですけども,格闘ゲームを一緒に盛り上げている仲間でもあって,みんなすごく頑張っている。それにプレイヤーさんが応えてくれて,盛り上がってもらえたら嬉しいですね。
早矢仕氏:
ほかのジャンルからも,そのジャンル自体が盛り上がらないとどうにもならないという話をよく聞きますから。
片桐氏:
盛り上がっている中で初めて競うということが成立すると思うんですよね。それは会社間でもそうですし,プレイヤー側がゲームを楽しむ上でもそうなんじゃないかと思います。
新堀氏:
今の状態は,いち格闘ゲームファンとしてすごく嬉しいですね。私も学生時代は選手側で,e-sports化を目指して業界に入ってきて,それでDOAのオンライン周りをやらせていただいた人間なんです。今は日本にもプロゲーマーがいて,海外と同じように大会が盛んに行われているという状況になってきました。我々はそこにDOAでチャレンジできる可能性を感じていて,良い未来を作れたらいいなと思っています。
4Gamer:
プロゲーマーに関しては,VFの元鉄人でもある羽田さん(※新宿ジャッキーというとご存じの方も多いのではないだろうか)にも,ぜひお話をうかがいたいです。
羽田氏:
僕ですか?(笑) 僕らのころは完全に個人でしたけど,いまは事務所に所属していたりするじゃないですか,それが本当にプロっぽくなったと思います。現状は芸能プロダクションの延長だと思いますので,SEGAとしてすぐに同様の契約やサポートをするのは難しいと思います。でも,こういう状況を受けて社内でも話はよく見聞きしますよ。
4Gamer:
それはSEGAが選手の支援をしていく,というような?
羽田氏:
具体的なことは何も言えないですが,例えばVFならスタープレイヤー(※セガ公認プレイヤー)という仕組みがあり,地方のイベントに出ていただいたりしています。その一歩先を行くのが,おそらくは現状のプロゲーマーのような形になるのではないかと思っています。
片桐氏:
VF5に関しても,最初はその一歩先として「プロレス興行」みたいなものを,コミュニティも含めて作りたいなというのがあったんです。
羽田氏:
とはいえ,そこまでスムーズにはいきませんから,現状のスタープレイヤー制度のような形に落ち着きました。でも,それだけに,さらに一歩先をやりたいなという気持ちはあります。
4Gamer:
プロゲーマーとメーカーとの関わりがどうなっていくのか,今後も注目していきたいです。ところで,VFはずっとアーケードを主体としたタイトル,一方DOAは途中から家庭用にシフトしたタイトルです。お互いがどういったプレイヤー層を重視しているのかを教えてください。
早矢仕氏:
DOAはもともと,ゲーム画面やコンセプトがカジュアル層にもコア層にも楽しめるモノとして作っています。DOA5ではさらにそれ自体がより面白いエンターテイメントになっていますから,格闘ゲームが得意じゃない人にも興味を持ってもらえるだろうと考えています。
4Gamer:
特定のプレイヤー層だけを意識しているものではないと。
新堀氏:
どっちというのはないです。どちらの層にも刺さるモノを何年もかけて探していたんです。
早矢仕氏:
一方で,コンシューマ用格闘ゲームとして,VFシリーズとはまったく違った,格闘ゲームという括りから飛び出したような方向に伸びているゲームだと思うので,これをそのままアーケードにもっていくことは難しいでしょうね。
4Gamer:
なるほど。VFはこれまでずっとアーケードでやってきただけあって,どちらかと言えばコア層向けのハードルの高いゲームになっていると思うんですが,そのあたりはどうでしょうか。
片桐氏:
制作の最初の段階では,家庭用になることは考えてはいません。アーケードゲームで遊ぶプレイヤーに響くモノを作らなければならない,というのがまず第一にあります。それをコンシューマに移植するときも,アーケードでやっている人達がなるべく納得してもらえる形を目指す。それがいまの家庭用VF5FSの形であって,それはSEGAと言うより,VFというゲームの特性だと思っています。
4Gamer:
VFシリーズとアーケードゲームは,切り離せない関係ということですか。
片桐氏:
そうですね。実際にアーケードゲームの店舗を運営されている方々に話を聞くと,次を作るとしてもVFという名前を付けるのなら,このままの姿勢を貫いてほしいという意見が多いです。
4Gamer:
もう一つ,これは格闘ゲームのインタビューでは定番の質問ではあるんですが,対戦格闘ゲームが日本でしか作られない,海外では作れないという現状について,何故だと思いますか?
片桐氏:
海外の格闘ゲームというと,「モータルコンバット」がありますよね。
4Gamer:
皆さん,まずそうおっしゃいますね。
モータルコンバットには,ムービーに入るのかなと思ったらいきなり「ラウンド1」と始まるような,日本人の感性では作れない演出があります。確かに昨今の格闘ゲームと比較すると,「この技でこんなに浮き上がるのかよ!」といったミスマッチな演出もありますが,それはどの洋ゲーでも最初はそうだったと思います。でも,いまその洋ゲーがすごいすごいと言われているのは,やっぱりそれを続けてきたからだと思うんですよ。
4Gamer:
つまり,向こうならではの感性を押し出したクオリティの高い作品が,今後出てくる可能性があるということですか。
片桐氏:
ええ。ひょっとしたら今後驚愕するような作品が登場して,いつかは「日本の格ゲー全然ダメじゃん!」と言われる日が来るかもしれない。
早矢仕氏:
昔の日本のゲームを遊んでいて,それを自分達で作りたいという人がこれから出てくる可能性もありますよね。
新堀氏:
最近,海外のPSN/XBLAでリリースされた2D格闘「Skullgirls」も,日本の格闘ゲームをやり込んでいた人達が作ったからこその作品だと思います。最近は海外でも格闘ゲームの開発に力を入れてきていますし,継続してきたものが身になってきていると感じます。我々も,このまま止まっているとヤラれる,次にいかなきゃという,いい意味での危機感を感じています。
「Skullgirls」公式サイト(英語)
(※日本語ページも用意されているが,日本での発売は未定)
4Gamer:
これまでいろいろな場所でこの事を聞いたんですが,皆さん格闘ゲームは日本にしか作れないんじゃないか,という解答が多かったので意外です。
片桐氏:
“今の”格闘ゲームなら,そうかもしれませんね。
羽田氏:
そういう言い方になりますよね,おそらく。
片桐氏:
今はもう成熟しているFPSやグランド・セフト・オートみたいな作品も,最初の頃は「こんな箱庭の,こんなチャチなものがカクカク動いたって面白いわけじゃないじゃん」って思っていたところがあると思うんですよ。けれど,それを続けてきたからこそ現在がある。格闘ゲームに関しても今は種を蒔いている段階で,そのうち大収穫する時期がくる可能性はあると思うんです。
新堀氏:
うかうかしていられないですね。
片桐氏:
コーエーテクモさんもおっしゃってましたが,同じベクトルに進んでも面白くないから別のベクトルに行く。だから,例えばモータルコンバットの「フェイタリティ」(残酷表現を使った必殺技)を見て,笑う部分もあるけどちょっと恐怖にも感じるんです。「ここに,こんなお金をかけるの?」というベクトルの違いが,新しいトレンドを生み出す可能性を持っている。それを出される前に,うちらが出さなければという危機感はすごくあります。
4Gamer:
ぜひ日本で“新しい格闘ゲーム”を,どんどん生み出し続けてほしいですね。それでは最後にDOAシリーズ,VFシリーズのファンに向けてそれぞれメッセージをお願いします。
片桐氏:
今回,DOA5にVFのキャラクターが参戦することで,VFファンの方々にも「どうなるんだろう」と思っている方が非常に多いと思います。自分が触った感じでは,VFをヘビーにやっている人達から見ても,「ありじゃない?」という操作感になっています。VFの操作感覚で動かせるキャラクターがいて,そこに対してDOAの派手な部分をどう構築するか楽しめる環境がもうすぐ来るので,そういう人達にもやっていただきたいです。それに,僕自身も非常に楽しみにしています。ぜひ一緒にネット対戦しましょう!
羽田氏:
まだ触らせていただいた部分の範囲でしか分からないですが,VFとDOAそれぞれのプレイヤーが,それぞれの視点で触って遊べる内容になっていると思います。どちらのファンでも楽しめるタイトルになるのではないでしょうか。
新堀氏:
VFのキャラクターに関して言うと違和感なく,でも新しさがあるものを目指していますので,VFをプレイされている方にもぜひ手に取っていただきたいと思います。もちろん,もともとDOAで遊んでいた人はVFのプレイヤーを迎え入れて,というか返り討ちにしてやるくらいの気持ちで遊んでください。私自身も片桐さんと一緒で,実は秘密特訓としてVF5FSを購入して練習しています(笑)。
羽田氏:
そうなんですか? ありがとうございます(笑)。
新堀氏:
ですので,DOAファンもアキラ対策,サラ対策のために,家庭用VF5FSを購入してみてはいかがでしょうか。そこで練習しておけば,DOA5でもちゃんと対策ができたり,自分で使えちゃったりと良いことがあります!
早矢仕氏:
DOA5にゲスト参戦をお願いして,そのまま作ってきたら,ちょうどタイミング良く家庭用VF5FSがリリースされました。そして,この3,4か月でたくさんの格闘ゲームが発売される予定です。我々としてはとても良いタイミングでDOA5が発売できると思っています。
さっき片桐さんも言われていましたが,いまの時代の格闘ゲームがこうやって同じ時期に立て続けに出るということは,ゲームファンの皆さんに「引力」として,「格闘ゲーム全体」に働きかけてくれると思うので,これからこの数か月がものすごく楽しみになってきました。我々も皆さんに認めてもらえるゲームに仕上げていけるよう,頑張ります。
4Gamer:
ありがとうございました。
MODEL2基板を発端としながらも,コンシューマに移行して自らの道を切り拓いてきたDEAD OR ALIVEと,アーケードという激戦区を走り抜けてきたVF。両者は辿ってきた道程こそ大きく異なるが,「格闘ゲームというジャンルにさらなる火を」という想いに変わりはない。各々の語り口から,そんな熱意が感じられるインタビューだった。
なおインタビューの直前に,E3 2012出展バージョンからさらにバージョンアップを重ね,アキラだけでなくサラも使用できるバージョンのロムを遊ばせてもらったのだが,ゲストキャラクターに関しては,すごくナチュラルに動かせ,絵も動作も完璧に馴染んでいると感じた。さらに,ヘリの飛び交うステージで試合うアキラとサラに,まったく違和感を覚えなかったことに驚きを感じたことを付け加えておこう。
「格闘エンターテイメント」という,コンシューマ用格闘ゲームの新たな地平にチャレンジするDEAD OR ARIVE 5。VFファンは言わずもがな,DOAファンもひとまずは家庭用VF5FSのランクマッチに明け暮れながら,9月27日の発売日を心待ちにしよう。
「DEAD OR ALIVE 5」公式サイト
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Akira, Sarah, Pai characters (C)SEGA.
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