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[CEDEC 2012]オンラインゲームではコミュニティの形成がいかに大切か。DropWave本城嘉太郎氏が「ファンタジーアース ゼロ」を取りあげて詳しく紹介
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印刷2012/08/22 15:52

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[CEDEC 2012]オンラインゲームではコミュニティの形成がいかに大切か。DropWave本城嘉太郎氏が「ファンタジーアース ゼロ」を取りあげて詳しく紹介

 CEDEC 2012の会期2日めとなる2012年8月21日,ショートセッション「オンラインゲーム時代における,ゲーム内コミュニケーション設計の基礎知識」が行われた。講師は,オンラインゲームの制作・運営を行うDropWaveの代表取締役 本城嘉太郎氏である。

DropWave代表取締役 本城嘉太郎氏。本城氏はコンシューマ機向けゲームのプログラマーを経て,2005年にDropWaveを設立。ブラウザゲームやソーシャルゲームの開発・運営経験が豊富だという
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 本城氏によれば,コンシューマゲーム系の開発者の多くは,オンラインゲームの開発経験が乏しいのが実情だという。そういった人達は,オンラインゲームのクオリティを大きく左右する「コミュニティ」に関しても,その重要性をうまく理解できていなかったり,あるいは理解できているつもりでも,開発タイトルに取り入れられなかったりするそうだ。最初からオンラインゲームとして開発されているのにコミュニケーション要素が希薄で,プレイして“なんとなくオフラインゲームっぽい”印象を受けるタイトルは珍しくない,と本城氏は指摘する。

 「コミュニティの大切さ」は,それこそオンラインゲームの黎明期から語られているテーマであり,普段からオンラインゲームを遊ぶ人ならば,肌で理解していることかもしれない。実際,セッション内容に特別目新しいといったものを見ることはなかったが,今回は,特定のタイトルを例にして具体的に語るという分かりやすい形となっていたため,冒頭で語られた「オンラインゲームそのものに親しんでいない開発者」にとっては有意義な内容となっただろう。

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オンラインゲームにおけるコミュニティの理想形は“大人の部活動”


 オンラインゲームは数か月以上,ときには数年単位という長期間のプレイが前提とされる。そこで,長期間プレイするために必要不可欠な要素を,本城氏は3つ挙げた。

1.ゲーム内容が定期的に更新されているか
2.ゲーム内に友達と呼べる存在がいるか
3.ゲーム内に資産と呼べるものが形成できているか


 セッションのテーマである「コミュニティ」は,2番めの「ゲーム内に友達と呼べる存在がいるか」を指している。

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 例えば「友達がいるからログインしたい」「あの人に恩返ししたい」「アイツに負けたくない」「正直ゲームには飽きてるけど,仲間がいるから」などといったように,コミュニティを実感する瞬間に,プレイに対するモチベーションが向上する。この感情を――オンラインゲーム未経験者を含む――セッションの受講者に伝えるべく,本城氏は「学生時代の“部活動”を思い出してほしい」と呼びかける。そして「オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の目標は“大人の部活動”です」と,ユニークな表現で説明した。

 とはいえ,オフライン用のゲームに掲示板やチャットなどのコミュニケーションツールを取り入れるだけでは,“大人の部活動”は実現できない。ゲームシステム内に,コミュニティ形成を促進する要素を,自然な形で取り入れることが大切なのである。

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「ファンタジーアース ゼロ」のコミュニティが優れている6つのポイント


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 続いて本城氏は,コミュニティ設計が巧みなオンラインゲームの代表例として,「ファンタジーアース ゼロ」(以下,FEZ)を紹介。

 ざっくり説明すると,FEZは50人vs.50人によるPvPをメインコンテンツに据えたオンラインRPGである。プレイヤーは,ゲーム内に用意された5つの国家のいずれかに兵士として所属し,自国のために戦い抜いていく。あたかも,リアルタイムストラテジー(RTS)のいちユニットに扮するかのように大規模PvPに挑む興奮は,少なくとも正式サービスの始まった2006年時点ではなかなか味わえないものであった。

 そんなFEZのコミュニティ形成がいかに優れているか,本城氏は大きく6つに分けて分析した。なお,以下の分析は本城氏個人によるものであり,開発・運営元のゲームポットやスクウェア・エニックスとは無関係であることを前置きしておく。


【FEZのコミュニティがスゴイところ:その1】
「ゲームの開始直後からコミュニティが成立している」

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 メインコンテンツが国家間戦争となっているFEZでは,キャラクターメイクの段階で,全部で5つの“国家”の中からいずれかを選んで所属する。つまり,国家という,あらかじめ用意されたコミュニティに参加することで,同じ目的を持った仲間が最初から大勢いるというわけだ。

 たとえばほかタイトルでも,ゲームの序盤で「ギルド」のようなコミュニティに参加しやすいシステムを導入すれば,コミュニティ形成に一役買うのでは,と本城氏は分析しているようだ。

【FEZのコミュニティがスゴイところ:その2】
「コミュニティの目的と完全に一致している」

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 一般的なオンラインRPGにおけるコミュニティ(ギルド)の目的は,これといってとくに用意されていないことが多い。ギルドはゲームの目的とは直接関係はなく,極端な話,ギルドに参加しなくても問題なく進められるゲームがほとんどだ。

 ところがFEZの場合,ゲームの目的は国家間戦争に勝利することで,これは所属するコミュニティ(国家)にとってもまったく同じだ。FEZの凄いところは,ゲームを進めているだけで自動的に国家に貢献することとなり,ほかのプレイヤーとの連帯感が生まれるという部分である。コミュニティが一層強化されるのは想像に難くないだろう。

【FEZのコミュニティがスゴイところ:その3】
「リアルタイムでの協力プレイが必要不可欠」

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 FEZの戦いで勝利を掴むには,自軍のプレイヤーとの協力が欠かせない。本城氏の言葉を借りると“50人で戦うサッカー”のようなもので,プレイ中はチャットによる作戦会議や戦術の相談がひっきりなしに行なわれる。同じ目的に向かって努力する仲間との間で,連帯感が生まれるのはごく自然なことだろう。

 一方,“協力プレイ”を実装したタイトルの悪い例として,本城氏は「Diablo III」PC / Macintosh)を挙げた。遊んでいる人はご存知のとおり,Diablo IIIではマルチプレイで一緒になった仲間に対して,会話はおろか挨拶もせず,ただひたすらステージを突き進んでいく(ことが多い)。協力プレイの必然性も少なく,これではコミュニティはなかなか形成されないだろう。

【FEZのコミュニティがスゴイところ:その4】
「ベテランが初心者の面倒を見る動機がある」

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 戦争で勝利し続けるには,自分だけでなく,国家全体が強くなければならない。そのためには初心者プレイヤーの育成も不可欠だ。この点においてもFEZでは,ベテランが初心者にノウハウを教えたり,アイテムを融通したりといった文化が形成されている。もちろん,こういったサポートを受ける人にとっても嬉しいだろうし,いつの日か,自分も初心者プレイヤーに対して同じことをしてあげたい,と感じる人もいるはずだ。

 本城氏によると,こういったFEZの結束感のようなものは,ほかのタイトルでは真似できない域に達しているとのこと。とはいえ,ほかのタイトルでも,「仲間と共に目標を達成する」「初心者をサポートすることでインセンティブを得られる」といった形で応用はできるとのことだ。

【FEZのコミュニティがスゴイところ:その5】
「コミュニティに対して,共通の話題を常に提供」

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 FEZにおける全プレイヤーの目的は「戦争に勝利すること」と,非常にシンプルである。シンプルとはいっても膨大なノウハウがあるのだが,それらの大半はFEZプレイヤーであれば誰でも興味が持てる。掲示板などでは,ベテラン/初心者に関係なく,皆が一緒になって盛りあがっているのだ。
 ほかのタイトルでも,ギルドの目標をシンプルに定義したり,ベテランと初心者の双方が共通の話題に参加できれば,コミュニティは強化されるだろう。

【FEZのコミュニティがスゴイところ:その6】
「初心者でも貢献できる仕組みがある」

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 サービスが長くなればなるほど,ベテランと初心者の溝を埋めることは難しい。例えば稼働からある程度時間の経ったアーケード対戦格闘ゲームの場合,初心者は対戦台でコテンパンにされてしまう。RTSでも,何度も対戦プレイに参加して“負けて覚える”のが当たり前の世界だ。

 その点FEZでは,初心者プレイヤーは「クリスタルを堀る」ことで,戦わなくても自軍に貢献することができる。また戦闘においても,クリスタルを集めて“召喚獣”を呼び出すことで比較的お手軽に活躍できる。初心者が国家に貢献しながらステップアップできる環境が整えられているわけだ。


 結果的にFEZをべた褒めする形になってしまっているが,本城氏が語るFEZにおけるコミュニティ形成システムの良さは,個人的に頷ける部分が多かった。もし,FEZにおける“大人の部活動”に興味があれば,ゲームに触れて直接確かめてみても損はないだろう。

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DropWabeコーポレートサイト


「CEDEC 2012」公式サイト

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    ファンタジーアース ゼロ

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