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[GDC 2013]アメリカのインディーズスタジオTiger Styleが,内情を赤裸々に公開。危なっかしくもたくましい,インディーズの開発事情とは
2000年代のSmith氏は,Looking Glass Studiosで「Thief」シリーズに携わった後,Warren Spector(ウォーレン・スペクター)氏やHarvey Smith(ハーヴィ・スミス)氏らの元で,ゲームデザインに従事していたという。また氏は,Electronic Artsにおいては,スティーヴン・スピールバーグ監督の監修が発表されながらも,完成することのないまま,2010年に無期延期が発表されることになった,「LMNO」というプロジェクトに参加していた人物でもある。その後もMidway Entertainmentに入社するなど,常に大手ゲーム企業で開発を行ってきたSmith氏だったが,Midwayの倒産とともに失業してしまい,半ば行き場を失う形で,“マイクロスタジオ”などとも呼ばれることのある,小規模のゲーム開発スタジオを,Kalina氏とともに設立することになったわけだ。
このパズルアクションは,Metacriticでも93点という高評価を得ているほか,アップデートや値下げイベントのたびに今でもセールスがあるようで,iOS版のほか,AndroidやPCへの移植版も含め,現在までに75万ドルを売り上げているとSmith氏は語る。
そしてこのセッションでなにより興味深かったのは,Spiderが実際にどれだけ販売されたのか,そしてその売り上げがどのように分配されたのかを,Smith氏自身がチャートにして公開してしまったことだ。
3か月という開発期間中には,ほぼ専属で雇い入れたアーティストに加え,そのほか10人の助っ人に外注を頼んだそうで,週間あたりの労働時間は,プログラマーのKalina氏が45時間,デザイナーのSmith氏は35時間,短期雇用のアーティストは15時間として計算したという。一人当たりの時給は,平均158ドルであった。
また,このほかの助っ人達は,週末の夕方に来てコーディングやデバッグを手伝うというような形であったため,実質的には1週間で3時間程度しか働いていない人がほとんどだった。しかし四捨五入して10人すべてが最低でも週5時間の労働をしたとして計算を行った。その結果,週平均で2.5時間ほどしか働いていない人は,時給換算にして238ドルの配分になってしまった。
あまりに公平な(?)分配をしすぎたことを反省したSmith氏は,これらの経験を踏まえたうえで,2012年の第2作「Waking Mars」でシステムを変更することにした。週あたりの総利益のうち,30%をビジネス経費や預金に,40%を時給に,そして残りの30%を「仕事の質」によるボーナスにするというシステムを採用したのだ。雇用者の報酬には最大限の配慮を行いつつも,ビジネスとして存続できる体制を整えた結論が,このシステムであったのだという。
こうしてWaking MarsをリリースさせたTiger Styleだが,インディーズスタジオとして,今後はよりビジネス面を重視した開発を行っていくため,Smith氏はここ4か月ほどゲーム作り以外の会社運営に明け暮れていたという。商標の管理を積極的に行い,また会社のオーナーであることを明文化するため,法律事務所の扉を叩いたりはもちろん,これまで個人の銀行預金に入金したままだった社費を,専用口座を作って移し,経理の専門家に毎月何度か来てもらうようにするなどなど。さらにPR会社とも契約して,マーケティング戦略を練るようにもなったそうだ。
ただし,そのための作業が膨大になり過ぎて,Smith氏自身は,労働時間の20%ほどしか次回作の開発のために使えないのが不満とのこと。何もかも自分でやらなければならない,インディーズスタジオなりの苦労を,身に染みて感じている様子のSmith氏であった。
成功作品を抱えることさえできれば,報酬の面では非常に報われるインディーズゲーム開発だが,Smith氏自身,現在は健康保険に加入していないなど,まだまだ綱渡り状態は続く。ただ,こうして語られる体験談や具体的な数値を知ることは,Tiger Styleに続かんとする,夢見る若いインディーズ開発者達にとって,非常に参考になるはずだ。筆者自身,どこか危なっかしくもたくましい,彼らインディーズデベロッパのパワーを感じたレクチャーだった。
Game Developers Conference公式サイト(英語)
- 関連タイトル:
Waking Mars
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Spider: The Secret of Bryce Manor HD
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