レビュー
欲と色にまみれた監獄城での暮らしを体験
ヴァルハラナイツ3
先日4Gamerに掲載したインタビューではしもと氏は,近年では少なくなったハードなRPGとして本作を制作したと語っている。それだけでなく,CEROレーティングをD(17歳以上推奨)とし,「歓楽街」の女性スタッフ「キャスト」とのやりとりを盛り込むなど,随所に大人向けの要素が盛り込まれている。
今回は,本作のほぼ完成バージョンを実際にプレイして,アクションRPGとしての完成度や,キャスト達と一体どんなお楽しみが繰り広げられるかといった,気になるポイントをチェックしてみた。
「ヴァルハラナイツ3」公式サイト
夢のような監獄城での生活
プレイヤーの分身となる主人公は,この監獄城に反逆罪で収監された囚人の1人(というのは仮の姿で,その正体はある任務を受けた本国の密偵)として登場する。プロローグ後のキャラクターメイキングでは,種族や性別,容姿,職業などを選択でき,さらには姓と名や仲間からの呼び名,性格までも決められるなど,なかなか凝った仕様だ。
すべてを決定すると,ここから夢のような(!?)監獄城での生活が始まる。監獄という名が付けられてはいるが,ここに牢獄などはなく,囚人達が生活するためのさまざまな施設が存在する。つまり,“一つの街として機能している城”といったところだ。
主人公はここで多くの囚人達と出会い,メインストーリーに絡む「指令」と,報酬を得られる「依頼」の2種類のクエストを請け負いながら,物語を進めていくこととなる。
筆者は今回,ヴァルハラナイツシリーズを初めてプレイしたのだが,前作からストーリーなどのつながりはなく,ゲーム中に表示されるチュートリアル的な説明さえしっかり読めば,世界観やゲームシステムを理解できた。これまでのシリーズを気にすることもなく,ゲームに入っていくことができる。
物語の拠点となる監獄城は,これぞ城塞という雰囲気で,内装などもかなりいい感じに作られている。レンガ造りの壁や石畳が続く城の中に,煌々とピンク色のネオンが光っている階層が,本作のプロモーションなどでも話題となっていた,「歓楽街」と呼ばれる城のメインフロアである。
ここには,いわゆるRPGにおけるアイテムショップや,仲間を集うギルドなどが存在するのだが,それぞれの施設にはキャストの女の子達が働いていて,施設使用時には彼女達に話しかける必要があるのだ。
ここで驚いたのは,彼女達と話すにはまず「指名料」を支払わなければならないということ。筆者はてっきり,彼女達と楽しむ「その手の店」があるものだとばかり思っていたので,序盤の知識と所持金が少ない段階で店に入って,指名料を払いつつも何もせず(できず?)に出てきてしまうという,うっかりミスをやらかしてしまった。
そんなキャストとのコミュニケーションについては,本記事の後半で紹介するのでしばしご辛抱を。
序盤の貧乏囚人にも優しいのが,「最下層」と呼ばれる地下の街だ。こちらは荒ぶる囚人達が集うスラム街なのだが,物語を進めるうえで必要な商業施設などもそろっており,歓楽街と比べると品揃えは劣るものの,指名料も必要ない。
余計なお金がかからない最下層と,指名料を払うだけの品揃えとお楽しみのある歓楽街は,ともに序盤から行き来することができ,どちらの施設を使うかはプレイヤーの自由だ。
そんな監獄城では,「ファミリー」と呼ばれる複数の組織が勢力抗争をしているという設定もなかなか面白く,城の住人や主人公が請け負うクエストなどにもこれが反映されている。歓楽街といい抗争といい,新宿のあの街が舞台ならいざ知らず,剣と魔法の世界にそんな世界観が存在するRPGは,これまであまり見たことがない。
登場人物も,そんな世界設定にマッチした個性的なキャラクターが多く,物語を楽しむうえでのいい隠し味になっていた。例えば,主人公と同じ目的で収監された囚人の一人であり,行動を共にすることになるカルロスは,軽妙で人なつっこくて女好きというキャラクターで,寡黙な主人公をうまく引き立てている。「主人公は言葉を話さず,脇役が引き立てる」という,RPG黄金時代の鉄則に則った仕様にも,オールドゲーマーとしては好感が持てた。
人対人のバトルが多く展開される
本作の売りの一つであるバトルは,アクション主体で展開する。敵との遭遇はシンボルエンカウントで,フィールド上の敵キャラに接触すると,クラン(パーティ)のメンバーが設定した陣形の位置に出現し,バトルがスタートする。
このとき,敵がモンスターかクランかで,バトルスタート時の様子が少し異なっている。モンスターは周囲にいる全員が戦う対象だが,クランが敵の場合はこちらと同じく,接触時に陣形を組んで全員が出現するため,接触するまで相手が何人組なのかは分からないのだ。また,スキルやブースト(後述)なども使ってくるため,より手ごわい敵と考えていいだろう。
バトルはリアルタイム制で,画面に映っている操作キャラクターを左スティックで動かし,ボタンで攻撃を繰り出して敵にダメージを与えられる。取得しているスキル(魔法や特殊攻撃などの職業別の能力)は,方向キーの「コマンドスロット」に割り当てることで使用できる。
操作キャラクター以外のメンバーはオートで戦うが,プレイヤーは同じくコマンドスロットに割り当てた「サブアクション」のコマンドで,彼らに大まかな指示もできる。ただし細かな指示はできないので,別のキャラクターに特定の行動をとらせたいときは,SELECTボタンで操作キャラクターを切り替えて,自分でそのキャラクターを動かしても良いだろう。
戦況に応じたリアルタイムなキャラクターの切り替えは,装備武器などによって操作感覚が変わったり,バトル中の位置関係の把握が難しかったりする。そのため,その戦いで主軸になりそうなキャラクターにあらかじめ切り替えて敵に接触したり,クランに入れたばかりのレベルの低いメンバーに切り替えておいて,戦いはほかのメンバーに任せて自分は後方に退避するといった戦略も必要になるだろう。
PS VitaのSELECTボタンが位置的に少々押しにくく,さらにクランの人数が増えるほどキャラクターを頻繁に切り替えて戦うのに慣れが必要となるが,切り替えができることを意識しておくだけでも戦局はかなり違うものになってくるはず。
また,複数の職業をクランに入れておくことで,戦略だけでなく,そのときの気分でも違ったプレイ感覚を楽しめるのは面白い。
油断は禁物,常にセーブを忘れずに
プロデューサーのはしもと氏がインタビューでも明言していたとおり,本作はかなり難しい部類に入るゲームだ。キャラクターがある程度成長した状態でも,油断をしているとあっさり死んでしまう。とくに敵クランとの戦いでは,その中に1人強いリーダーがいたりすると,袋叩きにされてしまうこともしばしば。
また,少し遠くのフィールドまで足を伸ばしてみると,見た目はそれまでとあまり変わらないのに,いざ戦ってみると格段に強いモンスターが出てきたりするなど,容赦がない。
このあたりもやはり古くからのRPGを意識しているようで,ゲーム黎明期のRPGを遊んだときの懐かしくもほろ苦い思い出を蘇らせてくれた。幸いなことに,セーブはバトルやイベント中でなければ基本的にどこでもできるので,要所でセーブしておくことをオススメする。
また監獄城での生活は何かと物入りで,プレイヤーには常に経済的な問題に悩まされることになるだろう。出先で戦うためのアイテム購入や,メンバーが死んだときの蘇生のためにも資金繰りは日常的な問題で,クランにメンバーを加えるのもタダではない。
またメンバーが増えれば,その装備を固めるのも大変で,それが最大7人ともなると正直キャストにかまけている余裕はないというのが(悲しい?)現実だった。
フィールド上の敵は出現場所が限られているうえ,倒しても現金は雀の涙程度しか手に入らない。よって,資金調達は主に敵から手に入れたアイテムの売買と,ギルドで受けられるクエストに頼ることになる。序盤から受けられるクエストも複数あるため,遊びごたえがあるだけでなく,クエストをこなすことでゲーム進行にもメリハリがつくので,ギルドにはまめに立ち寄っておこう。
ギルドとは別に仲介屋も存在し,ここではある程度強いメンバーを雇うことができる。雇う値段は高いが即戦力になるキャラクターがそろっている |
バトル時の陣形はメニュー画面で変更可能。バトル中も大まかにこの陣形で戦いをくり広げる。メンバーが増えるほど重要になる要素だ |
女の子の相手も簡単ではない!
そしてお待ちかね,歓楽街でのキャストとのコミュニケーションについても触れておこう。歓楽街のショップには,それぞれキャストと呼ばれる女性店員がいて,彼女達に指名料を払うことで,施設を使えるようになる。施設では,キャストを相手に取り引きをすることになるのだが,一定量の取り引きをすると,彼女達が誘いをかけてくるのだ。
ここからはお楽しみのコミュニケーションタイムのスタート。PS Vitaのタッチスクリーンを通して彼女たちにタッチやキスをすることで,好感度を上げられるという仕組みだ。タッチやキスが成功すると,彼女達の仕草やポーズもどんどん過激になっていくので,勇気のある人以外,電車内などでのプレイ時には周囲の様子に気を配ったほうがいいだろう。
筆者も資金にある程度の余裕ができてから何度か通ってみたのだが,残念ながら一度も彼女達を満足させることができずにいる。どうやら,彼女達にはそれぞれ敏感なポイントがあるようで,ただやみくもにタッチしても,制限時間内に画面右側のゲージをいっぱいにすることはできない模様。
このあたりはやはり,足繁く通って攻略する必要があるということなのだろう。口説き落とすことができれば,クランに加入させられるというメリットもあるからなのか,本作では女の子を口説く難度も,なかなか高めに設定されているようだ。
刺激を求める大人のゲームファンへ
フィールドが広く移動に時間がかかったり,ロードがやや長めだったりと,若干荒削りな部分も見られたが,ゲームに没頭してくると,それらは意外と気にならなくなる。
難度が高く質実剛健なアクションRPG部分をざくざくと進め,それに疲れたら,歓楽街での癒しのひとときを過ごす。筆者はそんな楽しみ方をしていたが,歓楽街に立ち寄らなくてもゲームは進められるし,逆に歓楽街のキャスト全員を落として,夢のハーレムクランを作るなんて遊び方もできるかもしれない。
どちらにしても,かなり歯ごたえのある内容なので,そのあたりは覚悟しておいたほうがいいだろう。もしあなたが,「最近はぬるいゲームが多い!」とお嘆きの大人のRPGファンであるならば,ぜひオススメしたくなる刺激的な1本だ。
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