企画記事
あの鈴木銀一郎氏がついに提督デビュー。本当に今からでも遅くない,80歳ぐらいからの「艦これ」のススメ
そんな「艦これ」だが,いざ始めてみようかと思うと,なかなか腰が重い部分があるのも事実だ。
そもそも,「艦これ」のプレイを開始するには抽選に応募する必要がある(詳しくは後述)。これだけでも一手間だが,ネットの情報も膨大になってきており,「興味はあるけど大変そうだなあ」という気持ちが沸き上がってくるのは否定できない。
だが,昔から「案ずるより産むが易し」とも言う。そこで今回は,日本のウォーゲームといえばこの人,鈴木銀一郎氏に,「艦これ」提督デビューをしてもらうことにした。ある意味,かなり特殊な事例に属するような気がしないでもないが,これから艦これを始めてみたいという人の指針になれば幸いだ。
「艦隊これくしょん -艦これ-」公式サイト(角川ゲームス)
「艦隊これくしょん -艦これ-」公式サイト(DMM.com)
ところで,「艦これ」ってどんなゲームなの?
「艦これ」の世界では,プレイヤーは深海棲艦と戦う艦隊を率いる提督として,艦隊を建造し,装備を整え,補給路を確保し,そして敵が跋扈する海域を突破していくことになる。
特徴的なのは,「艦これ」世界における艦船は,基本的に旧日本海軍の艦艇(一部海外艦や陸軍艦艇などもあり)だが,その姿はすべて艦娘(「かんむす」と発音する)と呼ばれる女の子であることだ。空母から駆逐艦,潜水艦まで,1艦1人というアンバイだが,しかしこれ,多くの言語において船は女性名詞なので,さほど不思議なことではない。ないのである。
ゲームはブラウザ上で動く,つまりブラウザゲームなのだが,Flashを使っているため,最新のFlashが再生できないブラウザではプレイできない(iOSやAndroidのブラウザでは基本的にプレイできないほか,Flashのアップデートが適用できないくらい古いOSを使っている場合もプレイ不可能だ)。
当然ながら,操作はマウスだけで可能で,キーボードがなくても大丈夫だ。というか,キーボードショートカットを設定することはできない。プレイヤーは艦隊および艦娘のマネジメントと兵站管理,そして出撃などの各種戦闘を行うことになる。
かように,いろいろと優しい雰囲気のゲームなのだが,その一方で,強烈にシビアな要素もある。
その最たる要素が,「轟沈」だ。
戦闘中,HPがゼロ以下になった艦娘は沈んでしまい,そのデータは削除される。もちろん二度とその艦娘が手に入らないわけではないが,RPG的な成長要素のあるゲームなので,長い時間をかけて育ててきた,そして相応に愛着のある艦娘が失われる衝撃は大きい。ショックのあまり,食事も喉を通らなくなった提督も少なくない。いや,筆者のことじゃないけど。
とはいえ戦闘中,むやみやたらに艦娘が沈みまくることはなく,艦娘が轟沈する条件はほぼ明らかになっている。要点をまとめれば「沈むのは,一定以上のダメージを負った状況において,提督(プレイヤー)が戦闘継続を命じた場合のみ」だ。
つまり,出会い頭の即死はない,と言うより,艦娘が沈むときは100%,提督の自己責任である。
以上,ゲームの概略を簡単にまとめたところで,ではいよいよ銀一郎提督の艦これ奮闘記をお伝えしたい。
銀一郎提督,着任
現状,「艦これ」は抽選制で着任できるようになっており,この抽選に挑むためには,まずはDMM.comのアカウントを取らねばならない。当然ながら,DMM.comのアカウントは,いつでも無料で取得できる。
DMM.comのアカウントを取ったら,次は新規着任サーバ開放日時を確認しよう。抽選時間は毎日異なっているが,艦これ公式Twitterアカウントで毎日アナウンスされている。開始時刻は,基本的には夕方以降だ。
この抽選にあたっては,いくつか準備しておいたほうがいいことがある。
まずは,ブラウザのキャッシュをクリアしておくこと。抽選に漏れた場合も,次に応募する前にキャッシュはクリアしておいたほうが良い。もう1つは,キャッシュの割り当て領域を大きめ(1024MBなど)に設定しておくことだ。
抽選と聞くと,もうそれだけで当選しそうにない印象を受ける人もいるかもしれないが,現状ではサーバ開放時間にスタンバイすればその日じゅうの抽選に漏れることは,ほとんどないようだ。だいたいの場合は,着任を希望したその日のうちにプレイが可能になる模様です。
万が一漏れたとしても,先輩提督方の様子だと,そう遠くないうちに着任は可能だ。あきらめずにチャレンジしてみよう。
ともあれ4Gamer編集部の事務方によって着任までは完遂させておいたので,銀一郎提督には即座にゲーム本体に入ってもらおう。
さて,ゲームが始まると,まずはチュートリアルだ。
……が,艦これのチュートリアルは,実に簡素。改めて見直しても,恐ろしく簡素。とりあえずチュートリアルに従って銀一郎提督,新規艦の発注をしたあとで,駆逐艦2隻による艦隊を編成,最初の海域に出撃する。初戦をあっさり勝利し,さて,先に進むべきや否や?
「中破とかしてなかったら,沈まないんでしょう?」
話を聞いてみると,なんでも2013年の末頃から,銀一郎提督の周囲でも「艦これ」が盛り上がって,さんざん話を聞いたり聞かされたりしたという。試しにプレイしてみようと思ったものの,しかしこのときは,とてもログインできる状況ではなかったため,あきらめたそうだ。
それにしても,プレイしていないのに「艦娘が沈む条件」に興味を持ち,その条件を聞き出している(しかも覚えている)というあたり,ゲームデザイナーの業というべきだろう。
羅針盤ルーレットによって,艦隊は北に進路を取った。ちなみに「艦これ」では,艦隊がマップ上をどう移動するかについては,ほとんど関与できない。一部,艦隊をどう編成するかによって航路が固定されたり,偏ったりはするが,少なからぬ分岐点は「ランダム」で進行方向が決まる。
北航路は,残念ながらボスが出現しないルートだ。とはいえ,たとえ最初のボスではあっても,始めたばかりの2隻だけの艦隊では,かなり厳しい戦いになるのは間違いないところ。まずはラッキーだったかもしれない。
北に進んだ先でも,大きな損害を受けることなく勝利。銀一郎提督,最初の出撃を白星で飾った。
押し寄せる個性豊かな艦娘,そして罵倒系駆逐艦まで!
初戦から港に戻った銀一郎提督,若干損傷した艦娘を修理に回し,艦隊の補給を行う。
なお,「やはり」と言うべきかなんと言うか,艦隊補給の際の「どの艦娘に補給するか」を選択するにあたって「艦隊の艦娘を一括選択するボタン」には気づかなかったようだ。
時折,練達の提督の中にも「そんな機能があったの?」と驚く人がいるので,念のため補足しておこう。
補給画面では,各艦娘の横に,チェックボックスが並んでいる。個別の艦娘を選択する場合は,このチェックボックスをチェックして,補給を実行する。
この選択を,一度に全部行いたい場合,並んでいるチェックボックスの一番上,艦隊の番号が示されている旗アイコンの横にあるチェックボックスをクリックすれば,一括で選択できる。
それはそうと,さっきから「満潮」に「霞」と,提督を罵倒する系の艦娘の引きがいいのだが,気のせいですかね。銀一郎提督,罵倒に苦笑しつつも,着々と艦隊を編成していく。
5隻が揃ったところで,最初の海域のボスも撃破。艦隊にさしたる被害もなく,順調な進行といえるだろう。
そして6隻の艦娘が揃ったところで,いよいよ演習に出撃だ。
演習は,艦これ唯一の「ほかのプレイヤーとの交流」要素になる。といっても,やることは俗にいうPvPで,ほかのプレイヤーの主力艦隊と戦うわけだ。あくまで演習なので艦娘が沈むことはないし,受けたダメージは戦闘後に即座に完全回復する――ただし,弾薬と燃料は消費する。燃料は分かるが,弾薬はなんで減るのかしら?
ゲーム序盤における演習の最大のメリットは,超高レベルの艦隊とノーリスクで戦えることだろう。勝てばもちろん,負けたとしても,演習に参加した艦娘は,莫大な経験値を獲得できるのだ。
銀一郎提督,迷わず最高レベルの提督にケンカを売り,案の定,空母の空襲によってほぼ一瞬で艦隊を蹴散らされたが,大量の経験値もゲットした。想像より経験値の入りが良かったのか,銀一郎提督は補給→演習を次々に繰り返し,そのたびに駆逐艦隊が壊滅する。スパルタ式である。
だがその甲斐あって,駆逐艦隊のレベルはいい感じに上昇した。旗艦「吹雪」のレベル9を筆頭に,「大潮」「初霜」がレベル4。できれば軽巡が1隻欲しいところだとか,装備がもうちょっと開発できていればとかいった思いはあるものの,次の海域にチャレンジするには十分な戦力といえるだろう。
かくして挑んだ新海域,最初の羅針盤ルーレットが,北の航路を示す。この海域のボスが待ち受けるルートだ。だが,その前に,その前哨戦たる戦いが1つある。この戦闘を,艦隊は難なく突破。「電」が小破するも,それ以外に目立った損傷はない。銀一郎提督,艦隊を前進させる。
そしていよいよ,海域のボス艦隊の出現だ。敵は軽巡洋艦と雷撃巡洋艦を含む,合計5隻の艦隊だ。
銀一郎艦隊は果敢に戦うも,軽巡洋艦級2隻を含む敵艦隊とのHP差はさすがに大きい(敵軽巡のHPは36から48,こちらの駆逐艦は16前後)。艦隊を鍛え,装備を強化すれば容易に覆せる戦力差だが,さすがにそこまでの練度には届いていなかった。昼の戦いの間に大破が2隻出て,銀一郎提督は迷わず撤退を指示した。これは,大破で夜戦に突入しても攻撃できないだけでなく,攻撃を受けると沈んでしまう可能性がゼロではないからだ。
かくして,結果は惜しくも「戦術的敗北」。今回は無理だったが,次か,その次には――という結果であったと思われる。
……というところで,予定のプレイ時間が終了した。ここまでおおむね1時間半という行程だ。
銀一郎提督,「艦これ」をかく語りき
さて,最後に銀一郎提督に,「艦これ」を実際に遊んでみた感想を聞いた。
鈴木銀一郎氏(以下,鈴木氏):
大変に,よくできたゲームだと思います。
実は,軍艦を女の子に擬人化しようというアイデアは,自分も抱いていました。そういう意味で,「艦これ」は悔しい存在だったのですが,実際に遊んでみて,とくに艦娘の声を聞いて,「もう何もかもオーケーだ」という気持ちになりましたね。
――声,ですか。
鈴木氏:
やはり「しゃべる」というのは大きいですよ。顔の違いよりも,より深く人の意識に残ります。なにより,艦娘がみんな違うことを違う声でしゃべるのは,「全員を集めてみたい」という意欲を高めます。
そもそもこのゲームは,「艦隊これくしょん -艦これ-」というタイトルですよね? そのゲームをプレイしてみたら,本当に艦娘をコレクションしたくなった。これはもう,大成功ですよ。
――「艦これ」のプロデューサーである田中謙介氏は,ウォーゲーム畑の人でもありますが(関連記事),そのことはゲームから感じますか?
感じますね(笑)。どこが,とは明確には言えませんが,その匂いのようなものが,あります。
まず,言葉の使い方がウォーゲーマーの思考ですよね。「修理」ではなく「入渠」とか,あるいは「基地」ではなく「鎮守府」であるとか。
それから,データの項目分けが,とても細やかだと感じました。艦娘のスペックシートも,非常に数字が多いですね。
「海域」という考え方も,ウォーゲーマーのセンスだと思います。海戦は,なんでもないところで偶然起こるというよりも,起こるべき場所で起こるものです。逆にいえば,「普通は海戦が起こりようのない海」は,省略してしまっても構わないんです。
海域マップの構造も,いわゆるポイント・トゥ・ポイントという,最近のウォーゲームでは一般的なマップ構造ですね。
――実際にプレイしてみて,「艦これ」は,初心者にもオススメできるゲームと言えるでしょうか?
鈴木氏:
それはもう,間違いなくオススメできます。
「艦これ」の戦闘は,最初に艦隊を編成して,戦闘前に陣形を決めたら,そこから先にプレイヤーが介入する余地がありませんよね? この,「戦闘で操作できない」というのは,とても重要なんです。
鈴木氏:
アクションに限らないんです。艦隊の1艦ずつを,細かく操ることができるという段階で,その部分のテクニックが問われてしまうわけですよ。
「艦これ」は,戦闘そのものではなく,戦闘の準備がメインになるゲーム設計になっています。これはつまり,そこにどれだけ時間を使ってもよい,ということです。
確かに,メニュー画面を見ると,選択肢の多いゲームだなと思います。ですがその選択肢の多くは,いくつかの例外を除けば,何を選んでも「より艦隊が強化される方向」に進むわけです。となれば,選択肢は多くて構わないんです。むしろそのほうが,遊んでいて楽しいでしょ。
そうやって,たくさんの選択肢を自分なりに組み合わせていって,好きなだけ時間を使って艦隊を強化していけば,いつか必ず強敵も撃破できる。これは「艦隊これくしょん -艦これ-」という,コレクションゲームの方向性として大変に正しいですし,初心者にも優しい構造ですよ。
――最後になりますが,「艦これ」を機会に,戦史や歴史に興味を持つユーザーも増えていると聞きます。一方で我々ウォーゲーマーは,「○○を通じて戦史や歴史に興味を持つ人が増える」という言葉を,これまで何度も聞いてきました。「艦これ」は,この点,どのような影響を残し得るでしょうか。
鈴木氏:
これまでがそうだったように,何らかの「とてつもない効果」を期待することは,できないと思います。
ですが,そうやって興味を持った人達のうち,いくばくかは本格的に戦史や歴史の勉強に手を出していく人も残るでしょう。それは本当にいいことだし,それだけでも意味があると思います。
――本日はどうもありがとうございました。
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