インタビュー
今後のUnreal Engineはどうなっていくのか? Epic Gamesのゼネラルマネージャに聞く,UEが目指す進化とは[GDC 2026]
Clifford氏はUnreal Engine(以下,UE)のゼネラルマネージャを担当しており,UE自体の各プラットフォーム向けの最適化や機能強化の方針の策定を司る。また,Megalightsの開発にも携わったとされる。
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Unreal Engineの世代番号が,プレステ世代番号とシンクロしているのはなぜ?
4Gamer:
そろそろ次世代機の噂が漏れ広まってきていますね。
たしかPS2がリリースされたあと,UE2がPS2に対応しました。UE3のときは,PS3やXbox 360が登場する前の2004年あたりから,大々的にそれらへの対応がアピールされていました。
?そして,UE4はPS4/Xbox One,UE5はPS5/Xbox Sereis X|Sの登場のタイミングでお披露目となりました。
だとすると,PS6の噂が流れ始めていることから,UE6を期待してしまいます。
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なるほど。面白い視点ですね(笑)。実は,私がEpic Gamesに入社したのは2021年ですから,それよりも前のことについて言及はできないんですよ。
私の個人的な考えでは,UEのナンバリングが,PSのナンバリングに同調して見えるのは,ただの偶然です。だいたい,UE5の正式リリースは2022年4月ですから,PS5の発売後でした。
4Gamer:
でも,PS5の発売日の半年ほど前に「The Vally of Nanite」を「PS5の実機映像である」というキャプション付きで公開していたじゃないですか。あれは,みんな覚えていますよ(笑)。
では,質問を変えて,今後のUEの進化方針を教えてください。
Clifford氏:
UE5.8までのUnreal Engine開発について,皆さんは,グラフィックス表現の新たなブレークスルーのほうに目が行きがちだと思います。
しかし,我々は,大規模なオープンワールドゲーム,世界を60fpsで提供するためにエンジンコードの最適化や,携帯端末などの非力なプラットフォームでの性能向上のための最適化に注力してきました。
いうなれば,UE5を,ハイエンド級プラットフォーム以外で,安心して使えるようにするための努力を続けてきたという自負があります。
UE5にとって,携帯端末や,スペックのそれほど高くないゲームプラットフォームも,いまや,我々の「ファーストクラスプラットフォーム」という位置づけなんです。
筆者補足:
GDC公式サイトでは,2026年時点のGDC事務局によるゲームエンジンシェア率の調査結果として,UEが42%,Unityが30%,独自エンジンが19%というデータが出ている。
「ゲームエンジンのシェア」の動向の分析は単純に行えるものではないが,ハイエンドゲーム専用のエンジンのままでは,UE優勢の結果にはならないはずなので,Clifford氏のいう「携帯端末もUEのファーストクラスプラットフォームにする」取り組みが,功を奏したのかもしれない。
ちなみに,過去のGDC事務局の調査データでは,2024年はUnity 33% / Unreal Engine 33%,2025年もUnity 32% / Unreal 32%で横並びだった。
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ここ最近のUE5では,プロシージャルコンテンツ生成(PCG)に力を入れています。ゲーム世界をすべて手作業で構築するのは,小規模開発スタジオにとっては困難なことですから。
我々はこれまでに,UE5でのPCG環境の提供の一環として「Electric Dreams」や「Cassini Sample」を提供してきました。今後も,このPCG環境支援に関しては,大型のアップデートが予定されています。
それと,やはりパフォーマンスの改善は,とても重要だと考えているため,常に取り組んでいます。機能の追加よりも,既存機能の高速化に注力しているといってもいいほどです。
携帯端末向けに関しては,新しいライティングシステムの提供も予定しています。
4Gamer:
MetaHumans関係はどうですか。
Clifford氏:
ご存じの人も多いと思いますが,2026年2月に,我々Epic Gamesは,Meshcapadeを買収しました。Meshcapadeは,ドイツのAI技術系ベンチャー企業で,我々は彼らが開発した「SMPL」(Skinned Multi-Person Linear Model)に着目しました。
筆者補足:
SMPLは,統計的な3D人体運動モデル。わずかなパラメータ(身長,体重,性別,ポーズなど)で,解剖学的に正しい,人体の変形や動きを出力するものだ。
いわゆるAIベースのフルボディIK(FBIK)なのか,と連想されがちだが,少し違う。ボーン自体はポーズの確定に用いるが,人体変形は統計学的な分析を元にしている。
また,人種パラメータ,肥満度といった多様なパラメータを設定することで,統計学に基づいた,その人物の体の形状(3Dモデル)も出力できるとされる。身体モデリングが自動で行えるといってもいいだろう。
つまり,身長175cm,体重80kgの男性が,こんなポーズをとったら,のポーズ指定にはボーンを使うが,SMPLでは,最終的なボディ形状の出力はボーンスキニングで行われず,頂点の変移データを返すのだ。
たとえば腹が出ている人体であれば,前屈みでは,腹がぽっこり出っぱったり,女性の膨らんだ胸なども,ポーズが指定されれば,それぞれの位置がずれたり,部分的に潰れたような形状変化をするかもしれないわけだが,SMPLではその結果が,3D頂点データとして返ってくる。
統計学的な算段で得られた頂点変移データとして出力されると何が嬉しいのだろうか。前述したぽっこりお腹や女性の胸形状……といった分かりやすい身体形状だけでなく,筋肉が集まってできるシワや力こぶ,厚くなったり薄くなったりする筋肉繊維の動きまで,出力されるところが強いのだ。
Clifford氏:
彼らのSMPL技術は驚くべきものですが,注目したいのはスマートフォンで撮影した被写体の動きから,マーカーレスでフルボディキャプチャが行えるようにしたAI技術(≒コンピュータビジョン技術)もすごいものです。
なお,彼らの技術は,UE5のMetaHumansに完全に統合されました。これにより,MetaHumansベースのリアルなキャラクターが,実際の人間に極めて近い動きを行えるようになりました。
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4Gamer:
それはすごいことですね。
そういえば,Megalightsの開発に携わっていたそうですが,あれはハードウェアレイトレーシング機能の斬新な使い方だと思いました。
著者補足:
Megalightsについては,以下の関連記事を参照してほしい。
最新技術を取り入れ,ゲーム開発者の声に応えてきた「Unreal Engine 5」の歴史と注目の機能[GDC 2026]
ゲームエンジンの代表格である「Unreal Engine 5」が,これまでどう進化してきたのかをまとめたセッションが,GDC 2026で公開となった。Epic GamesでUE5のエバンジェリストを務める講演者が挙げた,UE5の進化と注目すべき機能とは何かが,これを読めば分かる。
Clifford氏:
初公開時は,まだ技術デモといったところでしたが,完成版の提供への準備は進んでいます。主要パートナー…具体的にはNVIDIA,Qualcomm,AMD,Arm,Intelなどですね。彼らとの綿密な連携を行って,Megalightsの互換性の担保を目指しています。
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4Gamer:
UE6にむけて,今後のUnreal Engineの進化の方向性はどうなのでしょうか。
Clifford氏:
先ほども少し触れましたが,今後の数年間は,主要なグラフィックス技術の革新ではなく,メモリ使用量とパフォーマンスの観点から既存のグラフィックス技術を最適化することに重点を置いていきます。
4Gamer:
AI技術関連のUEへの統合はどうですか。競合のUnityは生成系AI技術の導入に意欲的です。
Clifford氏:
そうですね。我々も,生成系AI技術のUEへの導入については研究開発を進めています。たとえば,3Dモデルの生成を生成系AIで行う機能とかですね。ただ,まだ,その品質は満足できるものではないです。
ほかには,ゲーム開発パラダイムをプロンプトベースで行うことなども研究中です。開発者がプロンプトを活用して,ゲームに必要なアセット群の制作,シーン設計,ワールドデザインを作成できるようにする仕組みですね。
あまり詳しいことは話せる段階ではないですが,おそらく,UE6のエンジンワークフローには,なんらかの生成系AI技術を統合させることができるとは思っています。
4Gamer:
やっぱりUE6は,PS6の登場前にお披露目するんですか?
Clifford氏:
ですから,UEのナンバリングの一致は偶然ですって(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。ありがとうございます。
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