レビュー
手に汗握る冒険が手軽に楽しめるボードゲーム版「アンチャーテッド」
UNCHARTED BOARD GAME
そのアンチャーテッドに,なんとボードゲーム版があるらしい。しかも,デザイナーは日本人だというではないか。というわけで,本稿ではBandai Americaから発売されている輸入ゲーム「UNCHARTED BOARD GAME」を紹介してみよう。
「UNCHARTED BOARD GAME」公式サイト(英語)
ゲームストア・バネスト「UNCHARTED BOARD GAME」
ネイサン・ドレイクと共にいざ冒険の旅へ
本作「UNCHARTED BOARD GAME」は,原作同様トレジャーハンティングを題材としたボードゲームだ。プレイヤーは,トレジャーハンターである主人公ネイサン・ドレイク(ネイト)や,その相棒のサリバン,あるいはジャーナリストのエレナなどとなり,UNCHARTED――今だ地図に載っていない,未知の領域での冒険に挑んでいく。
ちなみに本作は,2012年に発売されたタイトルではあるが,現時点では日本語版は発売されていない,いわゆる輸入ゲームにあたる。今回レビューに使用した製品は,輸入ボードゲーム専門ショップゲームストア・バネストから入手したもので,同店による日本語マニュアルとカード貼付用の日本語シールが付属していた。原作の知識があり,かつ多少の英語力があれば英語でもプレイできなくはないが,こうした配慮は実にありがたい。
- ライフの最大値は10
- ライフ6以下で追加アクション1回
- ライフ4以下で攻撃力+2
- 赤赤赤黄黄緑緑のカードが場に出ている場合,エネミーを倒すごとにカードを1枚ドロー
といった具合だ。それぞれの意味については後述するが,ネイトの場合,標準以上のタフネスを持つだけでなく,ライフが減ってピンチになってからが本領発揮,というキャラ付けになっていることになる。いかにもハリウッド映画の主人公という感じで,原作ファンはニヤリとしてしまうポイントだろう。
豊富なアクションを駆使して財宝を目指せ
実際のプレイに移ろう。本作は,プレイヤーが順番に自分の手番を進めていくラウンド制のゲームだ。ラウンドの最初には使用済みのカードを回復させるリカバリーフェイズがあり,その次のアクションフェイズで1人ずつアクションをおこなう。全員ができることがなくなってパスするまで手番を続け,全員がパスしたら,最後に手番を終えた人が次のスタートプレイヤーとなる。
原作において,数々の困難がネイトを待ち受けていたように,財宝の探索には常に困難がつきものだ。本作における冒険は,アドベンチャーカードを束ねたデッキ(山札)という形で表される。「アドベンチャーカード」には,冒険の中で出会うエネミーと財宝が書かれており,プレイ開始時にデッキから6枚がめくられ,ボード上のアドベンチャーカードエリアに配置される。
これらの困難に対し,プレイヤー達は手札から「アクションカード」を出すことで立ち向かう。アクションカードには「ベーシックアクションカード」「ノーマルアクションカード」「ハードアクションカード」の3種類があり,まずゲームの開始前に4枚のベーシックアクションカードがプレイヤーの元に配られる。
ベーシックアクションは,誰もが行える基本的な行動を示すもので,《45ディフェンダー》《走る》《探索》《ジップワイヤー》の4種類がある。この4枚は,最初から自分のプレイエリアに配置した状態からスタートするので,プレイヤーは自分の手番のときすぐに使用することが可能だ。
ベーシックアクションカードは4種類。《45ディフェンダー》《走る》《探索》《ジップワイヤー》 |
ボードの右側にアクションデッキ,ハードアクションデッキ,アドベンチャーデッキが並び,中央に現在のアドベンチャーカードが並ぶ |
残るノーマルアクションとハードアクションカードには,ベーシックアクションよりも大きな効果を持つ行動が書かれている。これらはプレイしたカードの効果や,エネミーを倒したときなどに手札に加えられる。ゲーム開始時に,それぞれがデッキとしてボード上に配置されており,各プレイヤーはノーマルアクションデッキから3枚のカードを引き,手札としたところでゲームはスタートだ。
プレイヤーは自分の手番が回ってくると,以下の行動をとることができる。
- プレイエリアのアクションカード1枚をレスト状態(横向き)にして,カードの効果を得る。
- カードごとに決められたコスト(=捨て札)を支払い,アクションカードを手札からプレイエリアに出す。
- 任意のカードを1枚捨て札にして,そのカードの色によって決められた特殊効果を得る。
手札のカードは,まずプレイエリアに出さなければ使用できない。1回の手番では,2アクションまで可能なので,手札からまずプレイエリアに出し,それから使用することも可能だが,この場合はこれだけで自分の手番は終わってしまう。
カードの効果には,エネミーを攻撃するものや財宝に探索マーカーを置くもの,デッキからアクションカードを補充したり,行えるアクションを増やしたりするものなどがある。これらを駆使して効率よく行動し,勝利点を稼いでいくのだ。
全員が手番を終えると,次はエネミー側の行動――ダメージフェイズとなる。アドベンチャーカードエリアにエネミーが残っている場合,その攻撃力分のダメージが,プレイヤー全員にばら撒かれる。ダメージフェイスが終わると,アドベンチャーカードエリアの欠けた枠に,新たなアドベンチャーカードが補充され,ラウンドは終了。これをボード上にある3つのデッキ――アクションデッキ/ハードアクションデッキ/アドベンチャーデッキのいずれかがなくなるまで繰り返すのが,本作のおおまかなゲームの流れだ。
デッキが尽きると,その時点で得点計算に入り,勝利点を最も多く持っているプレイヤーの勝利。もしくは,ゲームの途中で一人だけが生き残った状態となれば,その生存者の勝利となる。
冒険に危険はつきもの。敵(エネミー)を倒すのは手っ取り早い勝利点の獲得方法だが,戦闘ばかりに走るとどんどん強力な敵が登場するように! |
エネミーカードにもさまざまな特殊能力があるので,倒す順番はよく考える必要がある。またダメージフェイズ時に,スタンド状態のカードが残っていれば,これをレストにすることでダメージを軽減できる |
徐々にヒートアップしていく冒険
以上のように,本作は敵を倒したり,財宝を獲得したりすることで得られる勝利点を,誰よりも多く集めるのが目的のゲームだが,ときにはライバルとなるプレイヤー同士で協力しなければならないこともある。強力な敵を一人で倒すことは困難だし,協力によって得られるメリットは決して少なくない。つまり,どこで裏切るかがキモのゲームといえる。例えばこんな感じに……
■とあるプレイ風景
ネイト:
俺のターン! 場に出してある《ジップワイヤー》の効果を使用。ライフ1点を支払って,カードを1枚引くぞ!
エレナ:
《ジップワイヤー》じゃなくて,《走る》でもカードは引けるけど?
ネイト:
ほら,冒険だからさ!
サリバン:
いやいや,ライフを減らして早くキャラの特殊能力を使いたいだけだな。まあ,俺も同じ行動をするが。
クロエ:
もう,男って馬鹿ばっかり。
ネイト:
残り1アクションは,場に出ている《探索》カードを使って《銅の仮面》に探索マーカーを置く。マーカーを置いている限り,俺の攻撃力は+1になるんだ。
《ジップワイヤー》を使うと1点のライフを支払ってカードを1枚引くか,財宝に探索トークンを1個置ける 財宝カードは必要な探索マーカーが置かれた段階でなくなり,勝利点に変わる。だが,いくつかの財宝は場にある限り,マーカーを置いた冒険者に対して有利な効果を発揮する
クロエ:
ネイト,それはアタシが探索マーカーを置いて狙っていたお宝よ! 横取りしようっていうの?
ネイト:
いや,君が獲得したって俺は別にかまわないだが,こいつはそのまま場に置いておくのがいいと思うぜ?
サリバン:
攻撃力ボーナスがあるから,焦って獲得しないほうがいいのさ。ほら,早いのは嫌われるだろう?
エレナ:
男って最低!
またプレイが進むにつれて,より冒険がヒートアップしていく仕組みも面白い。アドベンチャーカードが「ベーシック」「ノーマル」「ハード」の3段階に分かれていて,場にはベーシックから順に出していくことになっているので,終盤になると強力なエネミーが次々と現れる。さらにデッキに1枚だけ加えることになっている「ボス」――戦車やヘリのカードは,攻撃してみないとヒットポイントが分からないなど,一筋縄では倒せない。一気に全滅の緊張感が高まり,プレイヤー同士,嫌でも協力せざる得なくなる。
ただプレイヤー側も徐々に強いアクションカードを引けるようになり,ネイトのようにライフが少ない状態で真価を発揮する特殊能力もある。後半になれば,行動に必要なアクションを簡単に増やせるので,次々とカードをドローしては使い,最大12枚のカードをずらりと並べてコンボをつなげていく様は,トレーディングカードゲームや,「ドミニオン」などのデッキ構築型カードゲームと近い趣だろう。
序盤は走ったり跳ねたりしかできないが,やがて相手を誘惑して出し抜き,切羽詰まったところで《フランシス・ドレイクの日記》に命を救われる。武器も最初はピストルしかないが,後半ではスナイパーライフルや対戦車ミサイルが飛び交い,痛快なダメージを叩き出す。 このように,ゲームが進むにつれどんどん展開が派手になっていく仕組みは,クリフハンガーな状況が連続する原作のテイストを,実にうまく再現している。
原作をボードゲームでしっかり再現。一粒で何度もおいしい秀逸なタイトル
また遊び方を変えることで,ゲームの雰囲気ががらっと変わるのも本作の長所といえる。キャラクターが強い個性を持っているので,例えばネイトだったら「ダメージをどんどんくらいながら敵に突っ込み続ける」というプレイスタイルになるし,エレナなら「じっくりと手札を充実させて最後に一気に仕掛ける」という戦術が似合う。ゲームの概要がつかめたら,登場するキャラクターを変えてプレイしてみるとかなり新鮮な気持ちで遊べるはずだ。
さらにゲームモードも,今回紹介した基本モードのほかに,プレイヤー同士の攻撃が可能になり,財宝を直接奪い合う「デスマッチ」モードと,エネミーが次々と登場するなか,タイムリミットまで生き延びる「サバイバル」モードが用意されている。
前者は得点の高いプレイヤーの足を引っ張り合うパーティーゲームっぽさが強くなり,後者は高難度のエネミーを相手に,プレイヤー達が協力して頭をひねるパズルゲームに近い遊び方になる。これ1本で何度も繰り返し遊べるという意味では,コストパフォーマンスはかなり高い。
本作における一番のネックは,現時点では日本で発売されていないことだが……これは海外から直輸入するか,もしくはバネストのような輸入ゲーム店で探してもらうしかない。ハードルは高いが,ボードゲームファンには機会があればぜひプレイしてもらいたいタイトルだ。
「UNCHARTED BOARD GAME」公式サイト(英語)
ゲームストア・バネスト「UNCHARTED BOARD GAME」
- 関連タイトル:
UNCHARTED BOARD GAME
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