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[GDC 2015]Intel,Raptrベースのゲームプレイ環境支援ツールを発表。デスクトップ版Broadwellに関する情報も少し明らかに
Intelは昨年のGame Developers Conference 2014でも報道関係者を集めて大がかりな説明会を開催していたので,それに続くものとなる。昨年同様,大小さまざまなトピックが語られているが,しっかり新情報も盛り込まれていたので,今回はそのなかからいくつか,4Gamer読者に関係深そうなものをピックアップして紹介してみたい。
Intel版「Gaming Evolved powered by Raptr」が提供開始に
Intel製のグラフィックス機能統合型CPUを使ってPCゲームをプレイしている読者にとって最大のトピックとなるのが,IntelとRaptrの提携についての発表だろう。
日本の単体GPU市場ではGeForceのシェアが9割近いので,「GeForce Experience」に似ていると思った人が多いかもしれないが,Raptr自体は歴史のあるツールだ。
さて,そんなRaptrだが,先にAMDとの提携を果たした。Radeonユーザーであれば,最近のCatalystドライバスイートに,「Gaming Evolved powered by Raptr」(以下,Gaming Evolved)というツールが含まれるのを体験的に知っていると思うが,あのGaming Evolvedの根幹はRaptrの技術によるものである。
Raptrの公式Webサイト。すでにIntel CPU向けバージョンもダウンロード可能となっていた |
Dennis Fong氏(CEO,Raptr) |
そう,Intelのグラフィックス機能統合型CPU向けRaptrが,「Raptr for Intel」として公開されることになったのだ。
説明会には,RaptrのCEOであるDennis Fong氏が登場し,Raptr for Intelの概要を明らかにした。
それによると,RaptrとIntelは緊密に協力してツールの開発を進めており,当初はIntelのラボ「Intel Test Lab.」で得られている性能データを基にして,300タイトル以上に向けたグラフィックス最適化設定を用意してあるという。今後は,Raptr for Intelをインストールしたユーザーの設定をクラウドで集積し,それを基に,対応タイトルを増やしていくといった取り組みも併用していくとのことだ。
また,ゲームプレイの録画や,Twitchでの生配信では,Raptrのビデオエンコード機能がIntel製CPUに統合されたビデオプロセッサ「Quick Sync Video」(以下,QSV)を活用する。Fong氏は「ゲーム用キャプチャツールとしてよく知られた『Fraps』はQSVに対応していないため負荷が高く,最大で40%もゲーム中のフレームレートが下がってしまう。その点,我々のツールであれば,(エンコード処理に)QSVを活用するため,その負荷はFraps比で半分以下だ」と,Raptr for Intelの有用性を語っていた。
その他,自動的に最新のドライバのリリースを通知してインストールを推奨する機能なども盛り込まれるという。
「そうは言っても,Intelの統合型グラフィックス機能を使っているゲーマーがどれだけいるのか」と疑問に思う読者もいるだろう。Baker氏によれば,Intelの統合型グラフィックス機能を使ってゲームをプレイするゲーマーの数は年々増えており,Steamの調査では,2014年末の時点で19.2%に達したとのことだ。またUnity Technologiesの調査では,Unity対応ゲーム利用者の実に38.4%が使っているというデータも得られているそうだ。
Fong氏も「Raptr for Intelを使えば,全世界4億台ものPCのゲーム性能が向上する。ゲームデベロッパにとっても非常にいい機会が提供できると思っている」と語っていた。
気になる人は,一度RaptrのWebサイトからRaptr for Intelをダウンロードし,導入してみるといいだろう。利用は基本的に無料だ。
Raptr公式Webサイト
ゲーム開発者向けの新サポートプログラムもスタート
Achievement Unlockedという名前だけだと即座にイメージがわかないと思うが,これは,グラフィックス機能統合型CPUを活用したいゲーム開発者に向けた情報交換用フォーラムや,Intelによる技術サポート,ゲーム開発に役立つ開発ツールの提供といったものを集約したサポートプログラムである。開発者向けに情報を提供するWebページは以前からあったが,ゲーム開発者に向けて,それの特化版が誕生したという理解でいいだろう。
Achievement Unlockedの公式Webページはすでにオープンしているので,興味があればチェックしてみてほしい。
Achievement Unlocked 公式Webページ
説明会ではほかにも,Atomプロセッサを搭載するAndroid端末を対象とした,Electronic ArtsやUbisoft Entertainment(以下,Ubisoft)との提携も発表された。Atom搭載のAndroidタブレットやスマートフォンも増えてきたので,大手パブリッシャと組んでゲームの対応や最適化を進めてもらおうということだろう。
Intelがゲーム分野で積極的な取り組みを見せていることが,このような提携からも窺えるのではないだろうか。
デスクトップ向けBroadwellの情報がちょっとだけ明らかに
最後に取り上げるのは,開発コードネーム「Broadwell」こと第5世代Coreプロセッサのデスクトップ版に関する新情報だ。
ノートPC向けの「Broadwell-U」が2015年1月に発表されたのは記憶に新しいところだが,デスクトップPCや高性能(≒ゲーム用)ノートPC向けの「Broadwell-H」は,2015年中頃の投入予定という情報しか明らかになっていない。
そんなBroadwell-Hの情報が,ほんの少しではあるが本イベントで明らかにされた。Silva氏によると,Broadwell-HではCPUコアの動作クロックやコア電圧の倍率ロックが解除されたTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)65W版のモデルが登場するとのことだ。
現行の第4世代Coreプロセッサでは,プロセッサナンバー末尾に「K」のついた倍率ロックフリー仕様の「Core i7-4770K」や「Core i7-4790K」といった製品が販売されているが,Broadwell-Hでも同様の製品が――同じような「K」型番になるかどうかはともかく――より低いTDPで出てくるというわけだ。
また,倍率ロックフリー仕様のBroadwell-Hには,IntelのiGPUとしては最も高スペックな「Iris Pro Graphics」が搭載されるということも明らかにされた。2015年中頃に登場する製品の実力に期待したい。
GDC公式Webサイト
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