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忍者とゾンビ,宇宙人と恐竜がタッグを組んでの大乱闘。自分だけの“秘密結社”で戦うデッキ構築型カードゲーム「スマッシュアップ」レビュー
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印刷2013/10/26 00:00

レビュー

陣営の相性が勝利へのカギ。手軽にプレイできるデッキ構築型カードゲーム

スマッシュアップ 完全日本語版

Text by 朱鷺田祐介

 現在販売中のカードゲーム「スマッシュアップ 完全日本語版」(以下,スマッシュアップ)のレビューをお届けけする。
 本作は,「サンダーストーン」などのデッキ構築型カードゲームで有名なAEGの新作で,ヒーローものを思わせる世界を舞台に,さまざまな特徴を持った陣営が大暴れするいう内容。同社がこれまでのノウハウを生かし,痛快で分かりやすいカードゲームを目指して作られたという触れ込みになっている。
 デッキ構築型カードゲームをとことんシンプルにしたらこうなった,と表現したくなる作品だ。

「スマッシュアップ 完全日本語版」
発売:アークライトゲームズ / デザイナー:ポール・ピータースン(AEG) / 翻訳:健部伸明 / プレイ人数:2〜4名 / プレイ時間:45分 / 価格:3360円(税込)
画像集#015のサムネイル/忍者とゾンビ,宇宙人と恐竜がタッグを組んでの大乱闘。自分だけの“秘密結社”で戦うデッキ構築型カードゲーム「スマッシュアップ」レビュー

「スマッシュアップ 完全日本語版」公式サイト



自分だけの「秘密結社」を作り出せ!


 ゲームの目的は「世界征服」。各プレイヤーは「秘密結社」のボスとなり,世界各地の秘密基地を攻撃し,制圧していくことで勝利を目指す。
 まずプレイヤーは,8つの陣営の中から2つを組み合わせて自分だけの秘密結社を作る。よって参加人数は2人から4人までだ。登場する勢力は,「忍者」「海賊」「ゾンビ」「宇宙人」「妖精」「魔術師」「恐竜」「ロボット」の8種類で,それぞれが1つのデッキとなっている。

 プレイの準備は,2陣営のデッキをシャッフルし,手札として5枚ドローするだけ。各陣営デッキは(一部の陣営を除き)「アクション・カード」10枚と「戦闘員カード」10枚の計20枚からなっているので,各プレイヤーは40枚のカードで遊ぶことになる。
 ルールも簡単で,自分の手番が来たら,手札の中から「アクション・カード」1枚か「戦闘員カード」1枚,または両方1枚ずつを使用するだけだ。終わったらデッキから2枚カードを引いて次の人へ。手札は最高10枚まで持てる。

「アクション・カード」と「戦闘員カード」
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 戦闘員カードを使用する場合は,プレイヤー人数+1の枚数だけ場に並べられた「秘密基地カード」のどれに攻撃参加させるかを指定する。使用したカードに効果(指示)がある場合(アクション・カードには必ず何かしら書いてある)は,それに従い処理していく。
 攻撃に参加している全戦闘員の戦闘力の合計が,秘密基地の耐久力以上になった時点で,その秘密基地は陥落だ。攻撃に参加したプレイヤーは投入した戦闘力の多い順に,それぞれ1〜3位の「VP」(勝利点)をもらえる。誰かのVPが最初に15点以上になった時点でゲームが終了し,そのプレイヤーが勝者となる。

秘密基地カード。左上にある数字が耐久力で,大きく書かれた数字は左から1位,2位,3位のVP(勝利点)となっている
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 基本となるルールは単純なのだが,本作のキモは陣営の組み合わせにある。陣営ごとにさまざまな特徴を持ったカードの使い方やデッキの組み合わせで幅広い戦術が生み出せるのだ。また,「ゾンビ海賊」とか,「ロボット忍者」「宇宙妖精」など,名前だけで気分が高まるところもちょっと嬉しい。そんな各陣営の特徴を以下で説明しよう。

宇宙人+忍者で「宇宙忍者」爆誕!
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8つの陣営

●宇宙人
彼らは物事を混乱させながら,着実に地球を侵略していく。戦闘員を手札に戻したり,秘密基地を入れ替えたりできる。そのうえ,直接VP(勝利点)を獲得できる「侵略員」まで有している。

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●恐竜
とんでもなくデカイ。戦闘力を増やすことにかけてはピカイチだ。とくに数が増えると強くなる「決戦ラプトル」はかなりやっかいな戦闘員だ。

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●忍者
忍者は音もなく忍び寄り,敵を殺す。そのうえ,最後の最後でスルリと忍び込んできてVPをかっさらっていくのも得意だ。

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●海賊
海の荒くれ者で,お宝を奪い取って素早く逃げ出すのが得意。VPの分配後に,別の秘密基地へ移動できる「一等航海士」はなかなか便利な存在だ(秘密基地が陥落した場合,そこにいた戦闘員は通常,捨て札になってしまう)。

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●ロボット
人類に対して反乱を起こしたロボット軍団。ちびメカを大量生産できるが,こいつらは雑魚ばかりだと思わないほうがいい。ちびメカでも集まれば強力になるし,なかにはデカくて面倒な巨大ロボもいるのだ。

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●妖精
不思議な力を使う妖精達は,物を盗んだり,他人を幻惑したりして邪魔することに長けている。なかなかにトリッキーな陣営だ。

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●魔術師
魔法で時間や現象を操って,多数のアクションを獲得し,大勢の戦闘員を召喚する。ほかの陣営と比べて,TCGのような動きをするのがいかにも魔術師らしい。コンボ(カードの組み合わせによる相乗効果)要素を楽しみたいならおオススメだ。

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●ゾンビ
やつらはしつこい。とにかくしぶとい。戦闘員を墓場送りにしても,どんどん戻ってくる。捨て札をまるで手札のように活用できるのが便利だ。

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 さて,この8陣営をどう組み合わせかが本作のキモだと前述したが,その具体的な例を挙げて説明しよう。

 例えば,デッキから同名のカードを何枚でも選んで,捨て山に移せるゾンビ陣営のアクション・カード「ウィンドウ・ショッピング」は,自動的に捨て山から場に出てくる戦闘員「しつこいZ」と組み合わせると,毎回プレイできる戦闘員カードを倍増できるし,デッキが圧縮できるので,戦闘員をばらまく「ゾンビー君主」の出現を早めることができる。手札を引き直し,もう1回アクションカードを使用できる効果を持つ,魔法使い陣営の「変化の風」を組み合わせれば,デッキの回転率も上がるだろう。

 宇宙人陣営にある「戦闘員」を手札に戻す効果は,使用された時,副次的な効果を持つ戦闘員と相性がいい。例えば,場にいる戦闘員1体をそのプレイヤーの手札に戻し,さらに追加で戦闘員をプレイできるアクションカード「誘拐」は,通常,敵の戦力を場から排除して自軍を強化するためのカードであるが,使用された場合の効果を持つ自陣営の戦闘員の能力を二度使いするためにも使える。使用されると1VPをもたらす「侵略員」と組み合わせてポイントを稼いでもいいし,他の戦闘員を倒せる忍者陣営の「虎爪の刺客」のようなカードと組み合わせても面白い。

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 ロボット陣営にいる「ちびメカ」は,戦闘力1の小さな戦闘員であるが,たくさん出すと強くなる。「ちびメカ修理屋」は,あなたの全「ちびメカ」に+1の修正を与えるが,あなたの戦闘員をすべて「ちびメカ」とみなし,他の「ちびメカ」1体ごとに+1を得る「ちびメカ隊長」と一緒に場に出ていると,状況が一変する。貧弱な〈ちびメカ〉たちが+1を得るだけでなく,巨大な「恐竜」たちさえ「ちびメカ」扱いされて強化されてしまうし,VP計算の際にするりと追加で出現する忍者の戦闘力まで増大し,一発逆転で高いVPをかっさらわれてしまう羽目になるのだ。

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 以上のように,陣営の組み合わせでさまざまな戦術が生まれるわけだが,強い戦術だけでは勝てない。ほかのプレイヤーとの駆け引きも重要だ。

 秘密基地は,基本的に1人だけで陥落させるのは難しく,何人かのプレイヤーが協力して攻撃することになる。秘密基地が陥落した際,基本的には攻撃に貢献すればしただけ獲得できるVPも多くなるので,ほかの陣営の様子をうかがいつつ,戦闘力が多くなるように画策し合う。しかし,忍者や海賊のように横からオイシイところを持っていける連中もいるので,油断は禁物だ。

秘密基地が陥落したときに使用でき,陣営の戦闘力をプラスできるシノビのような戦闘員もいる
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 また基本的には順位が高いほどVPも多くなるが,中にはVPが逆転している秘密基地もある。陥落時に厄介な効果が発生する場合もあるので,陥落の一歩手前でにらみ合いが起こることもある。そういった駆け引きが面白いのだ。ときには互いに点数を分け合ったり,協力して上位のプレイヤーを叩いたりといった共闘も重要になってくる。


遊びやすいデッキ・シャッフル・ゲーム


 「スマッシュアップ」は,「ドミニオン」を代表とするデッキ構築型カードゲームから,マニアックになりがちな要素をざっくりと切り落とし,ヒーロー漫画系のバトルロワイヤルに落とし込んだ快作である。脈絡もなく多彩な陣営が入り乱れる,ジョーク交じりのデザインだが,それが逆にとっつきやすさを生んでいる。

 プレイ時間は1時間弱となっているが,ルール説明はほとんどいらないし,慣れてしまえば30分ほどで1ゲーム遊べるだろう。
 ゲームデザインとしても,陣営デッキの組み合わせや秘密基地の出具合でゲームのバリエーションが広がり,繰り返し遊べる楽しさがある。デッキによって,力押ししたり,横取り主体の戦術をとったりできるし,各陣営の個性を示す簡単なコンボもある。例えば宇宙人デッキで,プレイするごとに1VPを得られる「侵略員」と,これを回収するカードのコンボなどは分かりやすい例だろう。

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 忍者の滑り込み,海賊の逃走能力,恐竜の問答無用な戦闘力の大きさは強力だが,完全にゲームのバランスを壊すほどではないと感じた。ただし,最初のデッキ構築時に弱めの2陣営を組み合わせてしまうと苦しい戦いになるので,最初に各カードをよく読んでおきたい。「初心者向けに,見本となる組み合わせ例が欲しい」との声もあるが,見本を提示することで選択が固まってしまう恐れもあるので,自分の体験を通じて見極めていくのがベストではないかと感じた。

 初心者と経験者が対戦する場合,最初のデッキ選択時点で優劣が生まれてしまうこともあるが,共闘や裏切りが前提のゲームシステムなので,1位の強いプレイヤーをみんなで包囲すれば対応できる。このあたりはマルチプレイ・ボードゲームでよくある駆け引きの妙といえよう。

 本作のデッキは非常にざっくりとした仕組みなので,ドミニオンのような超コンボや瞬殺速攻などを狙えるようにはできていない。あくまでも,ライトなルールでバトルロワイヤルを楽しむゲームだ。本作を遊んでみて,さらなるカード戦術をがっつりと楽しみたいと思ったなら,本格的なTCGやデッキ構築型ゲームをプレイしてみるといいだろう。

 今後の期待としては,やはり陣営の増加だろう。
 アメリカではすでに,拡張版である「Awesome Level 9000」「The Obligatory Cthulhu Set」が発売済みで,前者はこれはスチームパンクやホラーワールドを扱ったもの,後者はクトゥルフ神話を題材にしたものとなっている。

 これらを導入すれば植物(「リトル・ショップ・オブ・ホラー」のオードリーのようなキャラクターたち),スチームパンク北の熊王国(すごくロシアっぽい!),ゴースト(英国風)と,ミスカトニック大学クトゥルフの信徒深き者神話生物(ミ=ゴや古の者)の計8デッキが追加され,さらなるブッとんだ戦いが展開されることとなる。日本語版の販売元・アークライトによれば,いずれも販売を「検討中」とのことなので,大いに期待したいところだ。

拡張版「Awesome Level 9000」と「The Obligatory Cthulhu Set」(共に海外版)
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