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君が市長だ! 「シムシティ」好きにもオススメの都市計画ボードゲーム「シティビルダー 完全日本語版」レビューを掲載
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印刷2014/01/20 12:19

レビュー

君が市長だ! 「シムシティ」好きにもオススメの都市計画ボードゲーム

シティビルダー 完全日本語版

Text by 朱鷺田祐介

画像集#002のサムネイル/君が市長だ! 「シムシティ」好きにもオススメの都市計画ボードゲーム「シティビルダー 完全日本語版」レビューを掲載
 アークライトの「シティビルダー 完全日本語版(Suburbia)」(以下,シティビルダー)は,プレイヤーが市長となって街に施設を建設し,100万人の大都市を目指すという,「シムシティ」にも似た都市計画ボードゲームだ。
 デザインを手がけたのは,「究極の人狼」などで知られるTed Alspach氏で,2012年にBezier Gamesより発売されて以来,欧米を中心に大人気となり,類似作品が続々と発売されているタイトルでもある。今回はその人気の秘密に迫ってみたい。

「シティビルダー 完全日本語版(Suburbia)」
デザイナー:Ted Alspach/価格:4620円(税込)/プレイ人数:1〜4人/プレイ時間:60〜90分
画像集#001のサムネイル/君が市長だ! 「シムシティ」好きにもオススメの都市計画ボードゲーム「シティビルダー 完全日本語版」レビューを掲載

「シティビルダー 完全日本語版(Suburbia)」公式サイト



タイルによる都市計画で,街の人口増加を目指せ


 本作の目的は非常に分かりやすく,六角のタイルに描かれた「コンビニエンスストア」「公園」「住宅」「工場」「高速道路」などの施設を並べながら,市長である自分の収入と評判を高め,ひたすら街の人口を増していくというもの。ゲームの流れも明快で,各プレイヤーは自分のターンに以下の手順を繰り返しながら,ゲームを進めていく。

  1. 「不動産市場」からタイルを1枚購入し,自分の街に配置する。
  2. 配置したタイルによって,自分の「収入」と「評判」が上下する。
  3. 「収入」に従って自己資金が増減する。
  4. 「評判」によって街の「人口」が増減する。
  5. 空きができた「不動産市場」に,新たなタイルを補充する。

 このサイクルをまわしながら各人が街を拡大していき,ゲーム終了時にもっとも人口が多かったプレイヤーが勝利となる。ただし,市長が思うがまま,自由に街を拡大できると思ったら大間違いだ。実際の都市計画がそうであるように,さまざまな障害が待ち受けている。

「シティビルダー」でできた街の一例。プレイヤー1人につき1つの街を作る
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 まずタイルの購入から見ていこう。
 タイルを配置するためには,まずそれを不動産市場から購入しなくてはならない。不動産市場には常時7枚のタイルが並べられており,この中から好きなものを選べば良いのだが,左のものほど追加コストがかかり,値上がりが発生する仕組みになっている。

写真下の7枚のタイルが不動産市場。左のものほど価格に追加コストが課され,価格が高騰している。タイルが売れて空きが出来た場合は,そこから左側のタイルが一つずつ右にズレ,一番左に山札から1枚が補充される
画像集#004のサムネイル/君が市長だ! 「シムシティ」好きにもオススメの都市計画ボードゲーム「シティビルダー 完全日本語版」レビューを掲載

 タイルには「商業」「居住」「産業」「公共」の4種類があり,それぞれ色分けがなされている。
 「商業」を示す青色のタイルは,オフィスやレストランなどの商業施設のことで,街の重要な収入源となる。
 緑の「居住」タイルはいわゆる住宅地で,これを増やすことは人口の増加に直結する。
 黄色の「産業」タイルには,工場や高速道路,空港といったものがあって,「商業」と同じく街の収入源となってくれるだろう。ただし,「居住」タイルなどとは相性が悪く,隣り合うように置いてしまうと,クレームが出て市長の評判が下がってしまうことになる。
 最後の灰色は「公共」タイルで,公園,役所,学校など,住民の生活環境を改善することで,「産業」とは逆に評判を上げる効果を持っている。

4種類に色分けされたタイル。それぞれ「居住」「商業」「産業」「公共」を表している
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 これらのタイルを駆使して街の規模を拡大していくわけだが,資金が少ない序盤では,不動産市場のタイルが高すぎて買えない場合もあるだろう。そういうときは,いつでも買える(そして安い)タイルである「工場」「住宅地」「公園」を購入して,資金を増やしていくのが良い。この3枚は汎用性が高い基本タイルなので,序盤のみならず,都市計画のひずみを修正するために,中盤以降も活躍するはずだ。

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基本タイルの「工場」「住宅地」「公園」。この3種類は各プレイヤーに初期配置として1枚ずつ与えられるほか,不動産市場の上部からいつでも購入できる
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中央の水色のタイルは「湖」タイル。不動産市場にあるタイルを裏返して使用する「湖」は,無料で購入・配置でき,一時的な収入にもなる。序盤の金欠対策にもうってつけだ

 不動産市場から購入したタイルを街に配置すると,前述のとおり,さまざまな効果が発生する。基本的には,タイルの効果によって収入が変動すれば,手番の終わりにその分だけ資金が増減し,評判が変動すれば,その分だけ人口が増減するのだが,一つのタイルは往々にして別のタイルにまで効果を及ぼすため,ゲームが進んでいくと,隣接するタイルを始め,自分の街のすべてのタイル,さらには,ほかのプレイヤーの街のタイルまでチェックする必要が出てくる。
 このあたりの采配が,街を大きくする上での鍵を握るポイントというわけだ。

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自分の収入と評判を管理する街ボード。「収入」0/「評判」1の状態からスタートすし,タイルの効果によってこれらの値は変動。ターンの終わりに「収入」に等しい額が,手持ちの資金に加算される。もちろん値がマイナスであれば,減ってしまう
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こちらは人口記録ボード。1マス進むごとに,街の人口が1万人増加する。ターンの終わりに,「評判」の値だけ人口が増えるが,「レッドライン」(人口記録ボードの赤い線)をまたぐたび,「収入」と「評判」が1下がってしまう。都市には,大きくなるにつれ維持費がかさんだりと,デメリットもある

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写真左は「工場」タイル。配置すると収入が1増える(右肩+1)のだが,公共タイルか居住タイルが隣接していると,1枚につき評判が1下がってしまう。右の「国際空港」は,各プレイヤーの街にある空港の数だけ収入や評判が増える効果を持つ。ただし騒音が出てしまうので,居住タイルの隣に建てるのは考えものだ
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配置コストを再度支払うことで置くことのできる投資マーカーは,そのタイルの効果を倍増させる効果を持つ。都市計画の鍵となるタイルを強化したり,「湖」タイルで急ぎの資金を調達したりするのに役立つが,このマーカーは1人3個までしか使えない

 こうしてゲームを進めていくと,いつしか不動産市場に「残り1ラウンド」タイルが並ぶことになる。このタイルが登場すると,次の1ターンでゲームは終了し,ゲームの勝者を決める最終決算に移ることになる。
 先にも述べたとおり,本作の目的は街の人口を増やすことなので,最終決算では各プレイヤーの人口を比較することになるのだが,その前にまず,各プレイヤーが隠し持っていた「目標タイル」によるボーナスを解決する。次に手元に残った資金5ドルごとに,1万人の人口を上乗せし,この段階で最も人口が多かった街のプレイヤーが,勝利となる。

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不動産市場に並ぶことになるタイルは,A,B,Cの三つの山札に分けられており,Aの山から順に市場に配置される。「残り1ラウンド」タイルは,Cの山に混ぜられるので,登場するのは必ずゲームの終盤となる
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「目標」タイルは,ゲーム開始時に各プレイヤーに密かに1枚ずつ配られるほか,全てのプレイヤーに共通する「目標」が,プレイヤーの数だけオープン状態で公開される。これにより街作りの方向性は,大きく左右されることになる

 なお筆者のプレイした限りでは,序盤は「収入」重視で資金を貯めながら,「人口」の増加は無理のない範囲に留めておくのがコツのようだ。最終的には「人口」を増やさなくてはならないが,「人口記録ボード」の「レッドライン」を越えることによるペナルティは,思いのほかダメージが大きい。終盤に近づくほど,高額かつ効果の大きいタイルが出てくるので(タイルの山札がA/B/Cに分かれているのはそのためだ),人口増加に励むのは,それからでも遅くはない。序盤は「収入」確保を優先し,中盤に基幹となる産業を固め,終盤で一気に「人口」増加へ走るのが,理想的な流れとなるだろう。

「どうしてこんな街に?」その1。自分の「目標」タイルが「誰よりも資金が多いこと」だったので,「食肉工場」と「民間空港」から産業系を伸ばそうとしたが,「食肉工場」に必須の「レストラン」が思うように増えず,収入が伸びない。隣接地も使いずらく,やむなく「空港」を買いまくって収入を高めたが,そのお金で「カジノ」を建てたこともあって「評判」がガタ落ちに。遅まきながら,「スタジアム」を建設し,住宅地で囲んで「評判」を伸ばしたものの,どうにも人口には結びつかなかった
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「レッドライン」対策としては,収入面をカバーする「カジノ」や,「評判」を上げる「広告代理店」が効果的。だが,これらの施設はその分高価である。市場に出てきた場合は,優先して購入したいところだが,手が出ない場合は「湖」タイルにして他のプレイヤーの手に渡らないようにするのも戦略だ
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街づくりは楽しいぞ


 「シティビルダー」の特徴は,まず第一に非常に分かりやすいゲームであることが挙げられるだろう。さまざまな街の施設の効果は,最終的に「人口」をめぐる競争に一本化されるので,何をすればいいのかが理解しやすく,初心者にもとっつきやすい。
 また「カタンの開拓者」を始めとする旧来の街作りゲームが,「地形をヘックス(六角形)タイルとし,その上に木のコマなどで街を作る」ものだったのに対し,本作ではタイルそのものを建物としたことで,プレイアビリティの大幅な向上に成功している。そう聞くと単純な仕掛けのようにも思えるが,タイル自体を建物として扱うゲームは,筆者が知る限りこれまでは存在しておらず,ここが本作のキモとなっている。

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 本作が欧米で人気を博した理由も,恐らくこのプレイアビリティの高さゆえのことだろう。とくに近年は,いわゆるワーカープレイスメント系(各プレイヤーが手元のワーカーコマを盤面に配置することで,行動を選択するタイプのゲーム)の“重たい”ゲームが流行していたこともあり,そこに登場した本作の“軽さ”が,ボードゲーマー達のニーズにマッチしていたのではないだろうか。
 とはいえ,本作が単純なゲームかというと,そういうわけでもない。タイル1枚が街の状況を大きく揺るがし,その配置に頭を悩ませるのがまた,もどかしくも面白い。ボードゲームとしてうまく簡略化されているにも関わらず,できあがった街を俯瞰すると,苦悩の跡が見られるところが,いかにも都市計画っぽくて,これまた楽しいのだ。

「どうしてこんな街に?」その2。「コンビニ」「臨海不動産業」「土地管理組合」「高級レストラン」と小銭を稼げて序盤は順調だったが,資金繰りに失敗し,しかたなく「湖」に投資することで日銭を稼ぐハメに。なんとか持ち直しはしたが,終盤は「住宅地」のタイルがなかなか出てこず,人口が伸び悩む。やむなく公共施設系で評判を上げにかかったが,そもそも「中学校」や「高等学校」は,「住宅地」がなければ人口増加にはつながらないのだった
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 あえて欠点を挙げるとすれば,プレイに広めの机が必要なことと,初回プレイ時の準備に,やや時間がかかること。あとは1枚のタイル効果が広範に及ぶため,慣れていないと状況を把握するのが大変,といったところが考えられる。そうはいっても,都市計画をモチーフとする以上,これはどうしたって仕方がない。むしろそこが面白いゲームなのだから,がんばって慣れていただくほかないだろう。
 価格のわりに中身も豪華で,何度も繰り返し遊べる傑作都市計画ゲーム。興味のある人には,ぜひ一度プレイしていただきたいタイトルである。

コマと初期タイル,初期所持金をまとめたパックを作れるよう,本作には多くの袋も同梱されている。地味ではあるが,実にありがたい配慮だ
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 ちなみに本作には,ソロプレイ用のルールも2つ用意されている。その一方が,デール君というダミープレイヤーを動かしつつ遊ぶというものなのだが,これがなかなか強敵で面白い。決められたルールで動くだけのデール君なのだが,タイル購入に優遇があるために,高価なタイルをバンバンかっさらっていってしまう。ゲームに慣れるためにも,まずはデール君を倒すところからはじめてみても,いいのではないだろうか。

「シティビルダー 完全日本語版(Suburbia)」公式サイト

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