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人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー
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印刷2014/04/28 00:00

インタビュー

人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

携帯アプリ版「FF外伝」では,当時の自分ともう一度向き合いたかった


小山田氏:
 こうして,あらためて石井さんの言葉を聞くと,本当に勉強になります。新しい「聖剣伝説」シリーズでも,そういった表現を目指したいですし,ぜひ石井さんにも見ていただきたいです。

石井氏:
 小山田君には本当に「そこまで好きになってくれてありがとう」という気持ちですね。そして小山田君が腹を括って作った「聖剣伝説RoM」が,実際にプレイヤーさんに喜ばれている。それはうれしいことですし,感謝もしています。
 これだけ「聖剣伝説」に愛を注いでくれるのですから,なるべくしてプロデューサーになっているのでしょう。また「聖剣伝説RoM」の評判に浮かれることなく,次に向けて考え始めているところを見ても,小山田君を推薦してよかったと思います。

画像集#019のサムネイル/人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

4Gamer:
 石井さんが小山田さんから携帯アプリ版「FF外伝」の企画を初めて聞いたとき,どう思われましたか?

石井氏:
 「新約 聖剣伝説」が「FF外伝」とは少し違う内容でしたからね。「FF外伝」のファンは,あのときの感動をカラーで味わいたいと思っていた……と言うより,小山田君自身が味わいたかったんだろうと思いました。自分も,自分で遊びたくなるゲームを作りたいですから。「FF外伝」のときは,これで会社を辞めてもいいとさえ考えていたんです。

4Gamer:
 そこまで想いを込めていたと。

石井氏:
 その一方で,もう少しスクウェアに残ってゲームを作ってもいいかなと思えたのも,「FF外伝」を作り,さまざまな人達が最後まで遊んでくれたからでした。たとえば,社内でモニターをやってくれたゲーム初心者の女性からは,エンディングで泣いてしまったという感想をもらいましたし。
 そういう意味では,小山田君の話を聞いて,「FF外伝」をそのままの形で遊んでみたい,あのときの自分と向きあってみたいとも思いましたね。プレイすることで,あのときなぜ自分がこうしたのかというところを理解できるんじゃないかと。

4Gamer:
 なるほど。クリエイターの皆さんは,そういう気持ちを抱くものなんでしょうか。

石井氏:
 おそらくですが,自分で作ったゲームをそういう目線で遊ぶ人はあまりいないと思います。自分もやってみたくなるのは「FF外伝」だけです。
 何しろ「FF外伝」のときは自分の作業量が多かったですからね。ワールドマップを方眼紙に描き,それを切り貼りして不都合がないか確認したり,ドット絵も自分で手直ししたり。あのときの自分の熱量やエネルギーに触れてみたい……というか,あのときの自分に会いたいというのが近いかもしれません。

4Gamer:
 石井さんのクリエイターとしての原点の一つが,「FF外伝」であると。

石井氏:
 初めてイメージを統一できたタイトルということも大きいですね。当時の「FF」シリーズは,天野喜孝さんにイメージイラストをお願いしていましたが,ゲームの中は別のイメージでしたから。

4Gamer:
 今振り返ると,「FF外伝」のスタッフには,イトケンさんや北瀬佳範さんといった,のちのスクウェア・エニックスに欠かせない人材が名前を連ねていますが,全員,石井さんが選出したんですか?

石井氏:
 いえ,基本的には坂口さんが,新人の中から「これくらいいれば大丈夫だろう」と選出したんです。新人じゃなかったのは,自分と渋谷さん(渋谷員子氏)だけ。ただ,振り返ってみると,必然だったんじゃないかなと思います。一緒にやるべくしてやったという,人の縁のようなものは感じますね。
 自分の中では,なぜあのタイミングで「FF」を作ったのか,なぜ「聖剣伝説」を作り,マナや精霊を出すようになったのかといったことも,すべて線でつながっています。

4Gamer:
 そのつながりについて教えてもらえますか。

石井氏:
 たとえば精霊や属性といった発想は,人間の自然に対する感謝や畏敬の念が薄れている,というのを無意識の中で感じ取っていたからこそ,生まれたのだと思っているんです。そして,ゲーム中に入れた「精霊のおかげで自然の恵みが受けられる」という設定は,周囲からの無償の愛による支えがあるからこそ,自分がさまざまなことを経験できる,ということと同じ構図ではないかと。

4Gamer:
 自分が大切にしたいと思ったことが投影されているんですね。

石井氏:
 別に,宗教じゃないですよ。ただ,そういった周囲への感謝の気持ちを忘れちゃまずいとは思いますよね。
 そんな感じで,無意識にゲーム作りへ取り入れていたことについては,あとから自分でも「なるほど」と思います。

画像集#030のサムネイル/人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

4Gamer:
 お話を聞くほど,石井さんにとっての「FF外伝」は重要な存在ということが分かってきました。

石井氏:
 やっぱり「FF外伝」は自分の中で特別ですね。「FF」と,以降の「聖剣伝説」シリーズとの端境にあったのが「FF外伝」だったんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 「FF外伝」で「FF」の流れを汲んでいる部分というと,キャラやチョコボ,魔法体系がありますけれども。

石井氏:
 あとは透明な世界観ですよね。「FF」では,白い山脈を描きましたが,あれはより透明感を表現したかったからです。「FF外伝」でも白黒表示の中で岩壁を白っぽく表現したのは,同じ理由でした。

小山田氏:
 フィーチャーフォン版でカラーになるときも,すごくこだわっていましたよね。最初は岩壁をグレーに塗っていたんですが,「初期『FF』シリーズのように白い石灰質のイメージで」と石井さんが修正されたのを覚えています。

石井氏:
 岩は大地のエネルギーが凝縮し,結晶化したものというイメージがありますから,そこはきちんとクリスタルによる地脈を表現したいと。
 当時のファミコンでは,あまりパレット数が使えなかったんですが,白地に黒を置くとブラウン管のにじみでピンクや黄色,水色なんかがちょっと出て色が増えるんですよ。それをうまく使うために黒の配置を研究したりもしました。スクロールするとにじみの色が変わってしまうのですが,それはそれでいいかなと。

4Gamer:
 デザイナー出身ならではのこだわりですね。

石井氏:
 いや,実を言うと,自分はもともと企画としてスクウェアに入社したんですが,自分で描いたドットキャラを坂口さんに見せたら採用されたという経緯があるんです。

4Gamer:
 それはまったく知りませんでした。失礼しました。どのようなキャラを描かれたのですか。

石井氏:
 当時のドット絵のキャラは表情が分からないものが一般的だったんですが,それが嫌で,顔と目を大きくしました。またバリエーションは限られますが,武器を変えられて,アニメーションもしてと。
 その中で一番こだわったのは,膝をつくポーズでしたね。キャラを助けてあげたくなるのは,ダメージポーズよりも,膝をついたポーズだと思ったんですよ。そうやって,ある意味趣味的にデザインからドット打ちまでやったのは,「FFIII」の全ジョブが最後です。

4Gamer:
 趣味……で,全部やったんですか?

石井氏:
 今では当たり前になっている,ジョブごとの魔法以外のアビリティの提案をした後に,各ジョブの設定を自分の中で細部までイメージして、全キャラのデザインとドット打ちをしました。導師の猫耳風のフードが可愛いので,バンザイのポーズも猫っぽくつま先立ちにしたり。ああいったことを一つ一つ調整して作っていました。当時のファミコンやゲームボーイの制限だらけの中で工夫し,何とかイメージどおりのものを表現したいともがいていましたね。その結果,こだわるべき部分や削るべき部分の判断が,自分でできるようになったんじゃないでしょうか。あれはいい修業時代でしたね。


同じ価値観を持つ人が増えれば,「聖剣伝説」の世界も広がっていく


4Gamer:
 「聖剣伝説」シリーズは,これまで基本的にコンシューマ機で展開されてきましたね。石井さんは「聖剣伝説RoM」がスマートフォン向けだと聞いたとき,どう思いましたか?

石井氏:
 正直,タッチ操作にはあまり向いていないかもとは思いました。しかし実際にサクサク動いているのを見て,考え直しましたね。スマホ市場の中で,こういうゲームがあるという立場を担うタイトルとして,十分な存在だと感じました。
 ただ,やっぱり個人的にはコントローラの十字キーとボタンのほうが感情移入しやすいかもしれないという感覚はあります。ボタンを押すという感覚というのは,ただ押しているだけじゃない,特別な何かがありますよね。

画像集#021のサムネイル/人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

4Gamer:
 石井さんが「聖剣伝説RoM」を遊んでみた感想をぜひお願いします。

石井氏:
 実はまだしっかりと遊べてないんですよ。自分はAndroid端末なので(笑)。だから,早くAndroid版を出せといつも小山田君に言っています。

小山田氏:
 もう社内では,Android版も動いています。2014年夏にはリリース予定ですから,もう少し待ってください。

石井氏:
 「聖剣伝説」を愛している人が作った新作が,どんなものになっているのか,楽しみですよね。また小山田君は,ファンが喜んでくれる「聖剣伝説」を作りたいと常々言っているのですが,自分としてもそこは気になるところです。
 あとは,自分がいない「聖剣伝説」がどうなるのかを見られるのもいい経験ですね。

4Gamer:
 今のゲーム業界は,ファミコン初期から活躍されているベテランクリエイターが,今なお第一線でシリーズ作を作り続けている状況がありますよね。一方で「聖剣伝説」シリーズは,石井さんから小山田さんに引き継がれました。シリーズの生みの親として,石井さんは,どんな気持ちなんでしょう?

石井氏:
 自分がスクウェア・エニックスを辞めたとき,一番気にしたのは,もうファンの皆さんがラビとかに会えなくなるんじゃないかということだったんですよ。だから,また皆がラビに会える状況が生まれることの方がうれしかったですね。
 そういう意味では,チョコボを手放したときに近いかな。自分の子どもや,自分が作ったキャラクターを他人に託して,たまにどうなったか覗いてみる感じですね。

4Gamer:
 まったく不安はなかったんでしょうか。

石井氏:
 自分がいないから不安というような発想はありません。ただ繰り返しになりますけれど,最後に誰のフィルターを通したか,誰のカメラで見たかで細かな差は生じます。だけど,結果として,作っている人達の聖剣伝説に対する愛が感じられて,プレイヤーさんが「遊んでみて楽しかった」「また次もやってみたい」と言ってくだされば,それが一番です。

4Gamer:
 思い入れがあるという話を聞いていたので,そういう答えが返ってくるとは少々以外でした。

石井氏:
 実際,「聖剣伝説DS CHILDREN of MANA」や「聖剣伝説 HEROES of MANA」では,「聖剣伝説」の土壌を育てるという狙いで外注のチームを使いましたが,今回の「聖剣伝説RoM」も,同じような感じで見ています。「ドラゴンクエスト」に「ドラクエモンスターズ」シリーズがあるように,世界観が同じで違う遊びを楽しめる土壌を,「聖剣伝説」でも作りたいと考えていたんですよ。ナンバリングのアクションRPGから入った人も,外伝での別の遊びが好きという人も,同じ「聖剣伝説」の世界が好きという価値観を持つ人が増えれば,それだけ世界も広がっていきますからね。

4Gamer:
 なるほど。「聖剣伝説RoM」も,そうした可能性の広がりの一つであると。では,そうやってシリーズが続いてきた中で,石井さんがとくに印象に残っていることを教えてください。

石井氏:
 田中さんと一緒にやった「聖剣伝説2」のときは,マルチプレイでアクションRPGを遊ぶというチャレンジをしましたが,親子や兄弟で協力できて,しかも一緒にストーリーを楽しめたことが記憶に残っているという感想をいただくんです。これは本当にうれしいですね。家族とはいえ,年月が経てば,どうしても一緒にいる時間は少なくなります。その中で一緒に「聖剣伝説2」を遊んだ記憶を大事にしてくださっているのですから。

4Gamer:
 やはりプレイヤーからの声というのは記憶に残るものなんですね。

石井氏:
 実は,オンラインゲームの「FFXI」を作ろうと思ったのも,根底の部分は同じなんですよね。オンラインゲームでは,全然知らない人同士が,お互いを思いやりながら目標を達成した喜びを分かち合えますから。自分がゲームを通じて本当に伝えたかったのはそこなんだよな,と気づいたとき,あらためて「聖剣伝説2」のマルチプレイが持っていた意味を思い知らされました。自分では単なる過去作の一つと思っていましたから。

小山田氏:
 「聖剣伝説RoM」でも,石井さんが「マルチプレイできないかな」とおっしゃったので,レイドバトルという形で再現しています。

画像集#022のサムネイル/人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

石井氏:
 自分自身,アーケードゲームのマルチプレイが好きだったんですが,それは一緒に遊ぶ人が変わると,プレイの内容も変わるからなんです。ボードゲームもそうですよね。たとえば「人生ゲーム」なんて,人によって全然遊び方が違う。自分の中には,誰と遊ぶかで遊び方が変わるものこそがゲームという意識があるんですよ。

4Gamer:
 確かに,同じゲームなのに,メンバーによって遊び方がガラッと変わりますよね。

小山田氏:
 広い意味では,今のソーシャルゲームに通ずる部分もありますよね。「聖剣伝説2」を知らない若い世代に,お互いが顔を合わせて遊べる「モンスターストライク」や携帯ゲーム機向けの「モンスターハンター」が人気なのも同じ理由でしょう。

石井氏:
 やっぱり,お互いの表情を見ながら遊べるのがいいんですよね。ボードゲームで一番面白かったのは,相手を負かしたときの表情の変化ですから(笑)。
 ゲームに限らず,メールや電話だけではうまくいかなくとも,お互い顔を合わせてきちんと話せばスムーズに事が運ぶ,というケースはたくさんありますし,やはり人と人とのコミュニケーションは,対面が基本なのかなとは思いますよね。オンラインゲームを作ってる者がこう言うのもなんですけれど。


2016年の「聖剣伝説」25周年に向けて,あらためてシリーズを考える


小山田氏:
 石井さんは「聖剣伝説」シリーズでも,「FFXI」でも,とにかく考えることが大きいですし,よくこんなアイデアが出てきたなと思うことがたくさんあります。「聖剣伝説2」でも,マルチプレイだけじゃなく,熟練度に応じて絵が変わっていくという要素も,おそらくあれが初めてですよね。

石井氏:
 ああ,そうなのか。それは今初めて気づいた。きっと,ほかの人とは違うことをやろうとする天邪鬼が功を奏しているんでしょうね。

小山田氏:
 フィーチャーフォン版の移植作業でも,特殊な仕様を再現するために,めちゃくちゃ時間が掛かったんです。たとえば「聖剣伝説2」では「イビルゲート」を使うと,数百分の1の確率で「シャドウゼロ」が走ってくる演出がありますよね。あの発生条件が全然特定できなかったんですよ。

石井氏:
 あれは,ただの確率じゃなかったっけ?

小山田氏:
 それが違ってたんです。そもそも,その演出があることを知っているスタッフも少なくて,「何か発生したんですけどバグでしょうか?」という問い合わせもありましたね。そんなケースがたくさんありました。

石井氏:
 自分で「聖剣伝説」シリーズを作っていた当時はいろいろやりたいことがあって,それでも容量などの関係で入れられなくて,ことごとく削らざるを得なかったんですよね。だから,最初に考えたことの4割も入ればいいほうだなと思っていました。

小山田氏:
 そう言えば,「FF外伝」を移植するとき,データの中に「シャドウナイト」の仮面版と人間の顔版があって,「こんなものも仕込んでいたんだ!」と驚きました。

4Gamer:
 ひょっとすると,シャドウナイトが仮面を取るストーリーも考えていたわけですか。

石井氏:
 そうです。何だか懐かしいな。あの頃は若かった(笑)。それと同時に思い出すのは昨年亡くなったイラストレーターの磯野さんですね。毎回パッケージイラストをお願いしてきただけにすごくショックでした。実際,磯野さんのパッケージイラストは,色と質感,絵から感じる自然のエネルギーで作品全体を高めてくれたと感じます。
 あのパッケージから得られるイメージを持って遊んでもらえるということが,本当に底上げになっていました。今思うと,磯野さんのイラストがなければダメだったんじゃないかな。

小山田氏:
 本当ですね。「聖剣伝説RoM」チームでも,「いいゲームを作らなければならない」という気持ちがいっそう高まりました。キービジュアル担当の大楽も,磯野さんの個展に行って「自分の書き込みでは全然足りない」と感じたようで,ギリギリまで手直ししていたんです。

石井氏:
 (壁にあるポスターを見ながら)この絵は,いいバランスでまとまっているよね。磯野さんの描いた「聖剣伝説2」のようでもあり,「3」のようでもあり。

画像集#023のサムネイル/人のフィルターがゲームを形作る。「聖剣伝説 RISE of MANA」プロデューサーの小山田 将氏とシリーズ生みの親である石井浩一氏へのインタビュー

小山田氏:
 その磯野さんの個展にも,「聖剣伝説」のファンがたくさんいらっしゃっていました。

石井氏:
 ああ,磯野さんも生前,個展に「聖剣伝説」のファンが来てくれるのが本当に嬉しいんだよねとおっしゃってた。磯野さんがそう言ってくれたのも,「聖剣伝説」シリーズをやっていてよかったと思うことの一つですね。
 ……しかし,こうやって自分が「聖剣伝説」の取材を受けることも,もうないと思っていたから不思議なんですよね。ちなみに「聖剣伝説RoM」の社内での評判はどうなの?

小山田氏:
 ビックリするくらい好評です。スマホでアクションRPGを作ることについては,皆,関心があったみたいで,いろんな開発部署の人達から話しかけられますね。「アレよりいいものを作らないと」という,いい意味でのライバル視もされているようなので,本当にありがたいです。

石井氏:
 「聖剣伝説3」も,同じ時期の「タクティクスオウガ」に負けていられないという意識で作っていました。「タクティクスオウガ」の松野君(松野泰己氏)も,当時は「聖剣伝説3」を気にしていたと後々本人から聞いたことがあります。
 また,こうして「聖剣伝説」のようなシリーズが長く続く一方で,新しいオリジナルタイトルが柱となっていく状況になると,スクエニ内だけではなくゲーム業界全体にとっていい結果を生むんじゃないかと期待しています。

4Gamer:
 今,石井さんからゲーム業界の展望についてお話がありましたが,小山田さんが思うところをぜひ。

小山田氏:
 「時代がこうだから」ということばかりを考えていると,似たようなゲームが並ぶようになってしまうんですよね。そこで新しいものを作ると,「そこまでできるのか」と周囲も引き上げられる。ですから,大変でしょうけれど,あるラインを飛び越えるものを作り続ける力が必要なんだろうと思いますね。

4Gamer:
 「聖剣伝説RoM」の開発でも,そういったことを意識していましたか。

小山田氏:
 私自身は純粋なクリエイターではありませんから,実際の作業に関しては,きちんとできる人に任せて,それをチェックしながら「聖剣伝説」らしさをファンの視点から盛り込んでいったという感じです。ファンに望まれていることや石井さんがおっしゃることを踏まえて,それでもキービジュアルの点描や,コンポーザーの選出といったいくつかのポイントでは,私自身のわがままを入れましたけれど。

石井氏:
 ゲーム作りで一番大事なのは,ビジョンを語ることです。具体的に物を作る人達が,一緒にやりたいと思えるようなビジョンを提示できるかどうか。それがきちんとできれば,立派なクリエイターだと思います。

小山田氏:
 「聖剣伝説RoM」に関しては,「聖剣伝説2」を今の技術で再現し,かつ1人でも多くの人に遊んでもらえるよう,Free-to-Playを採用するというところをブレずにやってきたことが評価につながったんじゃないでしょうか。
 ただ,主人公のキャラクターデザインは大変でしたね。シリーズで確立されたビジュアルがあるので,なかなか決まりませんでしたが,主人公が世界とは異質な存在というところから,思い切ったデザインにしています。ここは新しい要素でありつつ,シリーズとして守りたい部分も残せたんじゃないかと,自分では考えています。

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石井氏:
 そうやって小山田君が,誰よりも「聖剣伝説」を愛しているという自分を信じられれば,これからも大丈夫じゃないかな。

4Gamer:
 それでは最後の質問となります。2016年には「聖剣伝説」シリーズも25周年を迎えますけれど,思うところをぜひお願いします。

石井氏:
 しばらく出ていなかったので,実はピンと来てないんですけどね。でも,こうして小山田君を中心にシリーズが復活したからには,いい感じで皆さんに「聖剣伝説」を楽しみにしていただける状況を作りたいですよね。

4Gamer:
 小山田さんからは,先ほど「聖剣伝説」のナンバリングタイトルのリリースも視野に入れているという話がありましたが。

小山田氏:
 そこは,ファンの皆さんが望まれる形で進めようと考えています。皆さんが納得されないようであれば,それは「聖剣伝説」ではないですし。開発過程では,石井さんから「『聖剣伝説』魂」を注入していただくようなフェーズも設けようと。
 また「聖剣伝説RoM」やそれ以降のシリーズをコンシューマの携帯機でも出してほしいというリクエストもいただいています。ご要望が多ければ,さまざまな形で展開することを検討したいです。

4Gamer:
 期待しています。本日は,長い時間,ありがとうございました。

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