インタビュー
「薄い・速い・静か」を実現するゲーマー向けノートPC設計技術「Max-Q」について,NVIDIAから追加で話を聞いてきた
Max-Q自体は,COMPUTEX TAIPEI 2017に合わせて発表されたもので(関連記事),4Gamerでは現地取材に基づく西川善司氏の解説記事も掲載済みだ。説明会の内容も記事のそれを超えるものではなかった。
ただ,説明会終了後の囲み取材において,国内説明会のために来日したNVIDIAのJeff Yen(ジェフ・イェン)氏に追加の質問を行うことができたため,今回はその内容をお届けしてみたいと思う。
なお,囲み取材ということもあり,筆者以外による質問も混じっているが,そこは区別しないので,その点はご了承を。また,一部,囲み取材後に追加で氏へ確認した内容によってアップデートした受け答えも含んでいる。
NVIDIAのテクニカルマーケティングディレクターに聞くMax-Q
――Max-Qと非Max-Qで,「薄さ」という目に見える部分以外の違いはどこにあるのか。
ドライバソフトウェアは同じだ。逆に,ファームウェア(≒UEFI)は(Max-Qか非Max-Qかを問わず)すべてのノートPCで異なっている。
率直に言えば,違いは「GPUの周辺部」にある。周辺回路が高品質になって,それこそコンデンサの“鳴き”のようなものは生じない。Max-Qでは,そういうところのグレードが上がっている。
――Max-Qにおいてはどのように「GPUの最大効率」を判断しているのか?
Jeff Yen氏:
デザインの話か製品の話かで答えは異なる。
デザインのところでは,パートナーと協力して,(性能と消費電力の関係をグラフ化した)曲線から,最大の効率が得られるポイント(※西川善司氏による解説記事で言うところの「消費電力と発熱を最小限にしつつ,その中で最大の性能を引き出せる設定ポイント」)を探すことになる。デザインにおいてはここが最も重要だ。
もちろん(ノートPC向けの)シリコンなので,温度が85℃に達した場合はクロックを下げて,(熱から)製品を守るようにはなっているが,エンドユーザーの立場からすると,Max-Qか非Max-Qかで,(挙動)の違いはない。Max-Q採用ノートPCは薄く静かだが,ユーザー体験は非Max-QのノートPCとの間で共通だ。
――念のため確認させてほしい。通常のGeForceだと,電圧設定とクロック設定がテーブル上にあるわけだが,それをベンダーごと,ノートPCごとにMax-Qへ最適化する方向で再設計しているということか。
Jeff Yen氏:
だいたいそんな感じ(pretty much)。
我々は,「我々(の製品が持つ,消費電力と性能バランス)の曲線」がどこにあるかは分かっている。それを基にした筐体設計はパートナーに任されているわけだが,「ではそれがきちんとマッチングし,きちんと動作するか」は,我々とパートナーとの間でしっかりと議論する必要がある。
――Max-Qでは薄型ノートPCのデザインという追加コストがかかるわけだが,そのコストは誰が持っているのか。
そもそも,一見同じように見えるこれまでのゲーマー向けノートPCでも,すべて常に新しいアイデアに基づいている。その意味で「デザイン」のコストはMax-Qでも非Max-Qでも同じだ。
もちろん,回路が高品質になっている以上,少し高コストかもしれないが,それが即座に販売価格へ転嫁されるかと言えば,そうはならないと我々は考えている。
――とはいえ,COMPUTEX TAIPEI 2017の会場でも確認したが,Max-Qなゲーマー向けノートPCが搭載するGPUのデバイスID(≒製品名)は,通常のゲーマー向けノートPCが搭載するGPUのそれとは異なっていた。NVIDIAとして両者の間に何らかの「区別」を行っていることは間違いない。そして区別されるのであれば,NVIDIAからOEMへ販売するときの価格も異なるのではないかと思うのだが。
確かに,Max-Q採用ノートPCのGPUでは「with Max-Q Design」と付く。
ここでまずお断りしたいのは,私は最終的なOEMへの出荷価格を知る立場にないということだ。そのうえでお話しすると,あなたの言っていることが正しいといいなあと思っている。うちの利益が多くなるからね(笑)。
同じシリコンでも違うデバイスIDである以上,料金も違う……というのは確かに「通る」話だ。また私達にとってもハッピーだが(笑),そうなるとは限らないのがビジネスの常だとも思う。まとめると,「分からない」。
――対応GPUについてだが,台湾でGaurav Agarwal(ガラフ・アガーワル)氏は,「GeForce GTX 1060 6GB」と「GeForce GTX 1060 3GB」もMax-Qをサポートすると言っていたが(関連記事),これらはどうなるのか。
Jeff Yen氏:
未発表の製品については答えられないが,Gauravがそう言っていたのだとすれば,彼は「出てくることもあり得る」というニュアンスで語ったのだと思う。
逆に質問させてほしい。それは本当に意味があると思うか? すでにGTX 1080で厚さ18mmの筐体を実現できているわけだよ?
――GTX 1060シリーズでMax-Qを使えば,重さ3ポンド(約1.36kg)以下のゲーマー向けノートPCを実現できると思う。
Jeff Yen氏:
「未発表の製品については答えられない」が,ただ,あなたの言っているような製品が出てくるのだとすれば,確かにそれは相当にクールだね。
――WhisperModeについても聞かせてほしい。(説明会で)すべてのGeForce GTXノートPCで利用できると説明があったが。
「すべてのGeForce GTXノートPC」で使える。だが,最も重要なのは,Max-QのノートPCで利用できるということだ。たとえばASUSTeK Computerが開発した「ROG Zephyrus」の場合,動作音は通常モードだと39dBだが,WhisperModeを有効化することにより,26dBにまで下げることができる。
「なら,すべてのGeForce GTXノートPCで26dBを担保できるか?」と言えば,そういう話ではない点に注意してほしい。
――メーカーのノートPCだと,メーカーが独自にサイレントモードなどを持っていることが多いが,それらとMax-QやWhisperModeの併用は可能か。
Jeff Yen氏:
Max-Qに関して言えば「分からない」。その「サイレントモード」が何をやっているか次第だ。モニタリング機能が温度やファン回転数を追うような場合,それと競合する可能性はある。
――WhisperModeはGeForce Experienceの機能を使って,ゲーム側のグラフィックス設定を変更するものなので,メーカー独自の「サイレントモード」と競合はしないという理解だが,それで正しい?
Jeff Yen氏:
そのとおり。WhisperModeは競合しない。競合する恐れがあるのはあくまでもMax-Qのほうだ。
[COMPUTEX]西川善司の3DGE:GTX 1080搭載ノートPCの厚みを20mm未満にできる技術「Max-Q」とは一体なんぞや?
NVIDIAのMax-Q Design 公式Webページ(英語)
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GeForce GTX 10
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