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最新作「零〜濡鴉ノ巫女〜」に加え,さまざまなメディアミックス展開が明らかにされた「『零』シリーズ最新作/『零』メディアミックス発表会」をレポート
零シリーズは,霊を写し出すカメラ「射影機」を使って霊と戦うホラーアドベンチャー。最新作となる「零〜濡鴉ノ巫女〜」が,2014年9月27日にWii U用ソフトとして発売されることはすでにお伝えしたが,本イベントではそのほかに,さまざまなメディアミックス展開も明らかにされたので,本稿でその模様を詳しく紹介しよう。
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「零〜濡鴉ノ巫女〜」公式サイト
イベントの冒頭では,コーエーテクモゲームスの襟川恵子会長,任天堂の宮本 茂専務,今回コミック版零の原作者に起用された,マンガボックス編集長の樹林 伸氏が登壇して挨拶を述べた。
襟川会長はこの最新作の発表に合わせる形でハリウッド映画まで巻き込んだ大型のメディアミックス展開が実現したのは,任天堂の岩田 聡社長に「零」を気に入ってもらったおかげだとコメント。さらに,個性あふれるクリエイターが,零の展開に力を貸してくれたことに感謝の意を表した。
続いて登壇した宮本氏は,開口一番「岩田は元気です」と,先日胆管腫瘍切除の手術を受けた岩田氏の近況を報告。そしてWii U GamePadがどのように使われるかをPRしている今,それをカメラに見立ててプレイする零の最新作は,Wii Uでしか体験できないタイトルであり,大いに楽しみにしていると語った。
最後に挨拶をした樹林氏は,原作を依頼された直後,実際にゲームをプレイして大いにはまったというエピソードを披露した後,自らが編集長をつとめるマンガ配信アプリ「マンガボックス」で,「零〜影巫女〜」の連載が決定したことを明らかにした。作画にはhakus氏があたり,樹林氏は「金田一少年の事件簿」など,主にミステリー作品を書くときに使う「天樹征丸」のペンネームで執筆するという。紙ではできない試みも活用しながら連載していくとのことだ。
続いてコーエーテクモゲームスの開発プロデューサーである菊地啓介氏より「零〜濡鴉ノ巫女〜」が発表された。タイトルにある「濡鴉」は,黒が光を反射し紫や緑にしっとり輝く漆黒のことで,本作のキーカラーにもなっている。濡鴉は濡れ羽色とも呼ばれ,日本女性の美しい黒髪を形容するときにも用いられるのだが,菊地氏によれば濡鴉の巫女は本作の恐怖の象徴であり,プレイヤーはその謎を追うことになるとのこと。
「想像力に訴えかける怖さ」が共通のコンセプトとなっている零シリーズの最新作である本作では「Wii Uで体感する濡れる恐怖」がテーマになっている。
その舞台となるのは,頂上に大きな湖のある霊山「日上山(ひかみやま)」。自ら死を選んだ者が訪れる“死の山”と呼ばれ,その山に入れるのは,現世(うつしよ)と隠世(かくりよ)の境が曖昧になる「逢魔ガ時(おうまがとき)」だけ,という設定だ。
プレイヤーはこの水があふれる日上山を探索し,謎を解いていくこととなる。これまでのシリーズでは日本家屋など,屋内でのシーンが多かったが,本作ではオープンエリアの心霊スポットで恐怖を体験するシーンもあるとのこと。
主人公の不来方夕莉(こずかた ゆうり)は,人や物を向こうの世界から戻す力「影見(かげみ)」を持った少女で,神隠しにあった人を捜索する依頼を受けて,この日上山を訪れる。彼女には「物に触れるとその秘密を見られる」という能力があり,それによって孤独に苛まれ,死を覚悟した過去もあるとのこと。そんな彼女がどのような活躍をするのかも,見どころの一つとなるだろう。
そして,シリーズ最大の特徴である「射影機」を使った怨霊とのバトルは,Wii U GamePadを傾けたり回したりして怨霊を撮影するという操作になるとのこと。かなりの臨場感が味わえそうだ。
最後に菊地氏は,零シリーズ最新作にして最大のボリュームとなることをアピールし,和風ホラーの集大成として期待してほしいと自信を見せた。
なお本作のメディアミックス戦略のひとつとして,この秋デビュー予定の現役高校生アーティスト,AnJuさんが作詩・作曲・歌唱するエンディングテーマ「HIGANBANA」も披露された。こちらは10月8日リリース予定で,9月24日には先行配信も予定されている。
配給会社となるKADOKAWAの代表取締役会長,角川歴彦氏と,同社代表取締役専務の井上伸一郎氏も登壇。調整が難しいゲームの発売日と映画の公開日をほぼ同時に設定し,KADOKAWAグループの総力をあげて零を盛り上げていくと宣言した。
続いてステージには本作の監督・脚本をつとめる安里麻里氏と,メインキャストの中条あやみさん,森川 葵さんが登場。本作についてのトークショーを行った。
安里監督によると,中条さん演じるアヤは,本作の主人公的な存在であり,クラスの仲間が憧れるクールビューティで,謎めいたところも秘める役柄とのこと。森川さんが演じるクラスメイトのミチは,アヤとは対照的に映画を見ているお客さんがついて行きやすいアクティブな女の子。ともに十代の少女が醸し出す,大人になる一歩手前の空気感を意識してキャスティングし,映画の見どころにもなっていると紹介した。
ゲームの零シリーズが原作ということで,その世界観である「美少女ホラー」ということを大事にしたという。主演の2人だけでなく,同級生役やエキストラまで十代の女の子たちを起用したほか,制服や美術などもその世界観に沿ったものを用意するため,原作者の大塚氏とやりとりを繰り返したとのことだ。
さらに安里監督は,少女や水など,“美しいけど怖い”ものを引き立たせるために,フィルムでの撮影やライティングにこだわったと明かした。
9月の映画公開に向けて中条さんは「ゲームをやったことのある人はもちろん,やったことのない人にも楽しめる,ほかにはないホラー映画なので,ぜひ劇場で見てほしいです」とコメント。森川さんは「すごく綺麗で素敵な映像に仕上がっていると思うので,たくさんの方に見ていただきたいです。ぜひ自分が射影機になったような目線で,たくさんある見どころを楽しんでみてください」と続け,トークは終了となった。
邦画に続いては,ハリウッドでも映画化が進行中であることが発表された。零シリーズの洋題である「FATAL FRAME(フェイタル フレーム)」がそのままタイトルとなり,製作には「バイオハザード」や「サイレントヒル」などを手掛けたサミュエル・ハディダ氏が当たっている。ハディダ氏はビデオメッセージにて「プロデューサーとして,映画とビデオゲームという2つのアートをつなぐ架け橋となりたい」とコメント。ビデオゲームの枠を超えて,誰も想像したことがない恐怖を体験できる映画を製作すると約束した。
以上でメディアミックスの紹介は終了となり,続いて襟川氏,宮本氏,菊地氏への質疑応答に。やはり最新作への質問が多く投げられ,「これまでのシリーズと比べてどこが大きく変わっているか」という質問に対して菊地氏は,シリーズ最大のボリュームとともに,Wii UのマシンスペックとWii U GamePadという2つの大きな特徴に最適化させたことを挙げた。とくに水の表現やWii U GamePadを構えて遊ぶプレイスタイルなどが,かつてない新しい体験をもたらしているという。
またこの手の作品につきものの「制作中の怪談」については,「ホラーゲームを作っているときは神経が過敏になる」と前置きしつつ,開発チームの周囲の蛍光灯が割れたり,夜12時を過ぎると奇妙な音が聞こえたりといった,不思議な体験をしたことがあるとも語った。
イベントの最後には,コーエーテクモゲームスの襟川陽一社長が挨拶。今回のような大型メディアミックス展開は同社の創業以来の初と述べ,「この梅雨明けから残暑が残る秋まで,零の背筋が凍る体験で,暑い季節を乗り越えてもらいたい」と締めくくった。
「零〜濡鴉ノ巫女〜」公式サイト
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