インタビュー
「零 〜濡鴉ノ巫女〜」を生み出した任天堂&コーエーテクモゲームスに,Wii Uによって実現した斬新な恐怖体験について聞いた
発売を前に,コミック化や映画化など,さまざまなメディアミックス戦略もスタートしており,これまで以上の盛り上がりを見せる。
本作の内容ついて,共同開発をするコーエーテクモゲームスと任天堂の開発陣から,直接解説してもらう機会に恵まれた。ここではその内容をまとめつつ,記事後半部分では開発陣へのインタビューをお届けしよう。
「零 〜濡鴉ノ巫女〜」公式サイト
HD化されたグラフィックスが,水に濡れる恐怖をかき立てる
零 〜濡鴉ノ巫女〜は,2008年にWiiで発売された「零 〜月蝕の仮面〜」から6年ぶり(リメイクの「零 〜眞紅の蝶〜」からは2年ぶり)となる完全新作で,リメイクなどを数えなければ通算6作目のタイトルとなる。本作と現在展開中のメディアミックス戦略において,すべてに共通するキーワードは「射影機」と「水」。主人公が女性という点も同じだ。
これまでのシリーズは日本家屋など,主に屋内を舞台としていたが,本作では山がまるごと舞台となり,主に屋外での行動が増えている。そうしたこともあってか,ゲーム全体のボリュームもシリーズで最大となっているという。また,これまでCEROレーティングCだったものがD(プロデューサーの菊地啓介氏いわく「Zに限りなく近いD」)となったことで,限りなくホラーゲームらしいショッキングなシーンや,セクシーなシーンも多く盛り込まれているそうだ。
ゲームのコンセプトは,「Wii Uで体感する濡れる恐怖」。プラットフォームがWii Uになったことで,これまで以上に臨場感のある体験ができるようになっている。その一つが映像のHD化である。零がHD化されたのは,本作が初めてで,その恩恵は敵となる霊や屋外となったフィールド,あるいは恐怖を演出する水の表現などに生かされている。
舞台となる日上山(ひかみやま)は,山頂に湖がある水に覆われた聖域で,その各所に寺院や廃屋,墓地など,プレイヤーが“怖い”と思える場所が点在し,それぞれが山道やトンネル,ケーブルカーなどでつながっている。
日上山は自殺の名所という設定で,実在する複数の心霊スポットがモチーフとなっているとのことなので,恐さを味わうための舞台としては最高のシチュエーションといえるだろう。
ちなみに本作でモチーフとなっている心霊スポットは,零シリーズを初代から手掛けてきたディレクターの柴田 誠氏が趣味と実益を兼ねて実際に訪れた場所を参考にしているそうで,その雰囲気はほかの開発陣のお墨付きだ。
ゲームはこの3人を操作してストーリーを進めていくことになるが,誰か1人を選んで進めていくのではなく,章ごとに決められたキャラクターを操作して進めるスタイルが採用された。また,各ミッションにはいくつかの目的が設定されており,ゲームの中断やクリア後の再プレイをするのが容易な仕様となっている。
これは余談だが,3人目に紹介した雛咲深羽の名字にピンときた人もいたのではないだろうか。過去のシリーズで活躍したあのキャラクターの関係者という噂もあり,古くから零を遊んでいる人にとっては気になる存在かもしれない。
放生 蓮(ほうじょうれん) |
雛咲深羽(ひなさきみう) |
先ほど本作のコンセプトが「Wii Uで体感する濡れる恐怖」ということに触れたが,現場で柴田氏が実演して見せてくれたゲーム序盤は,夕莉がいきなり水に浸かった状態で霊に追い回されるというシーンだった。本作では主人公が水に濡れるほど霊に遭遇する確率が高まるため,濡れること自体がゲーム中の恐怖につながっていくのである。
恐怖の演出は映像面だけでなく,サウンド面にもかなり力が入れられている。実はこの零シリーズ,毎回テーマ曲こそ存在するものの,ゲーム中に流れるBGMというものがほとんど存在しないのだ。
菊地氏はこの点について,「霊が登場するときに音を立てて出てくるなど,効果音によって恐怖を演出しているので,曲を流すとそれが聞こえなくなってしまう」と解説。さらに,余計な音を足すことでインフレ化してしまうことは避けたかったとも語っていた。
その一方,「ところが実は音は意外に多く使っている」と柴田氏は言う。霊が近付いてくるときの気配を表す微妙な音の表現などに,モニターのスピーカーなどからはあまり聞きとれないような周波数の音なども加えているそうだ。
ヘッドホンあるいは5.1chサラウンドを聴ける環境でプレイすることで,音によるプレイの臨場感はかなり向上しそうな気配である。
Wii U GamePadで射影機を構える操作感覚
ここからは本作のバトルのシステムについて触れよう。これまでのシリーズ同様,通常時はキャラクターの背後を斜め後方から見た客観視点で進行し,こちらに危害を加える霊と遭遇したときは,射影機(霊を撃退し封じ込める力を持つカメラ)を構えた主観視点に変わるという仕組みだ。
ここで今回の目玉要素となる,Wii U GamePadを射影機に見立てた操作となるわけだが,プレゼンをしてくれた柴田氏が実際にWii U GamePadを四方に向けて,あるいは縦に持つなどして,Rボタンでシャッターを切って霊と戦う様子は本当に,“零そのまんま”といったイメージで,直感的に分かりやすいだけでなく,とても説得力のあるものだった。
もう少し具体的に説明すると,主人公が射影機を構えた状態のときにWii U GamePadを霊のいる方向へと動かし,Wii U GamePadの画面に霊が写り込んだらシャッターを切って攻撃する。このときWii U GamePadの画面には,TV画面の一部を切り取った射影機ファインダー越しの画が映っていて,プレイヤーはTV画面で周囲の様子を確認しながら,Wii U GamePadの画面で霊を捉えて戦っていくというプレイスタイルだ。なお,バトル中はLスティックを操作しての移動や,Rスティックによるカメラ操作も可能だ。
バトルは通常,射影機を霊に向けてシャッターを切ることでダメージを与えることになるわけだが,霊を一定時間ファインダーに捉える(Wii U GamePad画面の丸いゲージが最大5個まで点灯していく)「シャッターチャンス」や,間近に迫った霊の攻撃が当たる寸前にシャッターを切ることで発動する「フェイタルフレーム」など,プレイヤーが有利になるテクニックも存在し,Wii U GamePadの動かし方なども含めて,このゲームでしか味わえない戦術を楽しめるのである。
この射影機は,主人公によって性能がそれぞれ違っているのもまた面白いところ。夕莉が持つ射影機はレンズを交換することで,攻撃力上昇や麻痺などさまざまな効果をもたらすことができる。蓮のそれは連写機能を持っていて,連続シャッターによって大きなダメージを与えられる。そして深羽は,夕莉と同じ射影機を使うが,シャッターを切る前に溜めを作ることで複数の箇所を攻撃できるという,「スローシャッター」能力を持っている。
前述の共通の戦術に加え,異なる性質を持った複数の射影機の存在により,ミッションごとにメリハリのあるゲーム展開が期待できそうだ。
「シャッターチャンス」 | |
「フェイタルフレーム」 |
このように,Wii U GamePadを使ったひと味違う遊びを盛り込んだだけでなく,敵となる霊たちもバリエーションに富んでいて,動きや攻撃方法などが違うものが登場するという。
主人公を襲う霊達はこの山で死んだ者たちがほとんどなのだが,霊を倒す,あるいは特定の条件を満たすことでその場にエフェクトが立ちのぼることがある。それに触れると,なぜ霊になってしまったのかが分かる「禁断の看取り映像」という,ちょっとしたサブストーリーを見られるようになっている。
ちなみに,この看取り映像は,最初にCGで製作したものをVHSのビデオテープにダビングし,そのテープにわざとキズをつけるなどしてノイズを乗せた映像を使用しているという。こうしたことから,恐怖を演出することに手間を惜しまない,開発陣の強いこだわりを感じられる。
幅広いプレイヤーに向けた要素や配慮
そんなバトルシステム以外にも,Wii Uユーザーに向けていくつかの新しいシステムが導入されている。その一つが「集中」だ。
マップ上に落ちている「寄香(よすが)」という失踪者の遺留品を取って[ZR]ボタンを押して「集中」すると,その人物がたどった残影が画面に現れ,跡を辿ることができる。また,寄香を持っていなくても,一度訪れたことがある場所なら,同じく[ZR]ボタンで目的地への経路を感じることができるようになる。これについては初心者に向けた救済措置の意味合いが大きく,集中を使わなくてもゲームを進めることはできるが,フィールドで迷ってしまいがちなプレイヤーは,これを活用すれば物語を進めやすいというわけだ。
また,前作ではアイテムを取るときにボタンを押している間手を伸ばすという操作があり,本作でも[ZR]ボタンで同様のアクションが行えるのだが,そのときにランダムで霊の手(ゴーストハンド)が現れ,掴まれるとダメージを受けてしまう。ビックリ箱的な怖さを演出するエッセンスが,至る所にちりばめられているというわけだ。
前述した集中などにおいて初心者にも優しい仕様が見られる本作だが,コアなファンに向けたやり込み要素も充実している。例えば,新たに用意された「シンクロ撮影」では,怪しいと思ったところにWii U GamePadを向けると射影機が反応するが,このときに正しい向きや傾きで撮影すると何か特別なことが発生する。
場合によっては特定の写真をヒントに,同じ場所で写真を撮るなど,ちょっとした目標を持たせているものもあり,これらを一つずつ集めていく楽しさもある。そのほか,先ほどの看取り映像やキャラクターのコスチューム(セクシーなものもあり)の収集,マルチエンディング,高難度の「ナイトメア」モードの存在など,ゲームのボリューム以外の部分でも遊びごたえのある要素がたっぷり詰め込まれている。
そして,ここで二つほど,開発陣からちょっとしたサプライズ情報も明らかにされた。
本作の(通常)のエンディングテーマ曲には,AnJuさんという若手シンガーが歌う「HIGANBANA」という楽曲が採用されている。しかし,主人公の夕莉がとあるコスチュームを着た状態でゲームクリアすると,エンディング曲がシリーズ2作目よりテーマソングを歌っている天野 月さんによるタイアップ曲「鳥籠-in this cage-」に変わるという。つまり本作はエンディング曲が2バージョン収録された豪華仕様となっているのだ。
そしてもう一つは,コーエーテクモゲームスより「DEAD OR ALIVE」(以下,DOA)シリーズのあやねが,新たなキャラクターとしてこの零に参戦するというもの。DOA開発を手掛けるTeam NINJAの監修のもと,あの美貌はそのままに,日上山にやってきた彼女のオリジナルストーリーを楽しむことができるそうだ。
あやねも対戦ステージやリゾートで水と戯れることはあっても,今回のように幽霊を相手に水に濡れるのは初めてのこととなる。使用できるのはゲームクリア後ということだが,日上山で彼女にナニが起こるのか,ファンは期待して待つことにしたい。
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